【3話】完成。本日より3日間、投稿致します。
EX1話 何もしてはいけない日
朝の陽射しが入り込み始める真白の部屋。そこで部屋の主である真白は目を覚ました。休日だったこの日、それでも普段通りの生活リズムを送るならば起きて同じ様に起きるであろう美柑と共に朝食を作る。が、布団を捲ってベッドから出ようとした真白は昨日言われた言葉を思い出した。
『普段、2人は休みの日でも休めて無いだろ? だから明日は2人の休みだ!』
『明日は全て、私達が家事を引き受けます。シア姉様と美柑さんは1日何もしないでください』
『普段任せっきりだからね! ゆっくり休んでね!』
平日は勿論の事、休日も家事炊事洗濯等を美柑と熟す真白。それを知っているララ達が突然言い出したのはその全てを引き受けると言う事。話の中でリトもララ達に協力すると言い始め、その結果生まれた『何もしてはいけない日』。目覚めてしまったものの、今下に降りれば誰かと遭遇して怒られてしまう可能性がある。故に真白は少し考えた後、もう1度自らに捲った布団を掛けた。
『真白さん、起きてる?』
「……美柑?」
だが再び横になる寸前、部屋の扉がノックされる。そして聞こえて来る美柑の声に真白は首を傾げた。静かな部屋の中と廊下では例え大きな声で無くても響き、美柑は真白の声を聞いて起きていると確信した事で「入るね」と告げて扉を開けた。
「あ、今起きたって感じ?」
「ん……美柑も?」
「あはは、うん。こう、自然と目が覚めちゃってさ……」
毎日同じ時間に起床している2人はその身体が起きる時間を覚えてしまっていた。故に同じ時に目を覚ました2人。だが美柑も真白と同じく降りれば自ら全てを請け負うと言ったララ達に不満を感じさせてしまうと思ったのだろう。それを察した真白は僅かな間を置いて美柑を手招きした。
「真白さん? って、うわぁ!」
「……二度寝」
自分を招く真白の姿に近づいた美柑は、そのまま布団の中へ引きずり込まれてしまった。まだ着替えずパジャマの姿だった美柑はそのまま自らの身体に布団を掛けられ、焦っている間に真白も横になって布団を被ってしまう。結果、隣り合って眠る事になった2人。もう何度も経験している事だが、美柑は思わぬ形で真白と添い寝する事になったと分かって頬を赤く染めた。
「……美柑」
「へ? な、なに?」
「……おやすみ」
「え、あ……うん。おやすみ」
まだ状況に追いつけていなかった美柑は突然名前を呼ばれて真白に身体を向ける。すると彼女は美柑の片手を掴み、表裏両方を包む様に握って声を掛け乍ら目を閉じてしまった。焦りや混乱が一周回って多少冷静になれた美柑は自分の片手を大事そうに掴む真白の姿に答え、少し考えた後に自らも真白の片手を包む様に握って目を閉じた。……それから2人が目を覚めるのは1時間程後の事であった。
リトを含めてララ達が作った朝食は地球の料理であった。宇宙人だからこそ作れる真白達の知らない料理は夕飯の時にとモモに言われ、現在真白はリビングのソファで雲1つ無い空を唯ジッと見上げていた。ナナによって干された洗濯物が風に揺られ、結城家に訪れていたのは平穏で退屈な時間だった。
「……平和」
「平和ですね」
「平和だね」
「まぅまぅうぅ」
真白の言葉に賛同するのは左右に座るヤミと美柑と、真白の膝に座るセリーヌだった。ララ達は現在夕食の準備をする為に買い物へ出ており、リトは才培に呼ばれて手伝いに。結果、結城家に残った4人はリビングで寛いでいた。
「ふぁ~。また眠くなって来たかも」
「……寝る?」
「う~ん。朝も二度寝したし、余り寝ると夜眠れなくなっちゃうんだよね」
「ま……うぅ……」
「セリーヌは眠そうですね。……何か食べますか?」
欠伸をする美柑の姿に真白が提案するも、美柑は悩んだ末に涙を拭きながら首を横に振った。真白の膝上では既に船を漕ぐセリーヌの姿があり、ヤミはそんな彼女を眺めた後に提案する。何か食べている間は眠くならないと思ったのだろう。他意はあるかも知れないが、察した2人は特に何も言う事は無かった。そして美柑が立ち上がろうとすれば、ヤミは片手を出してそれを制する。
「私がやります。今日は真白と美柑が何もしてはいけない日、ですからね」
「そこまで徹底しなくても……じゃあ、ヤミさん。お願い」
美柑は徹底するヤミの姿に頬を掻き、彼女にお願いする事にした。2人は知らないが、ヤミはモモから『何かしようとしたら止めてください』と言われていたのだ。ソファから立ち上がった彼女はキッチンにある冷蔵庫に向かい、備え付けられている冷凍庫を開ける。
「今川焼き。大判焼き。鯛焼き。どれが良いですか?」
「全部焼き方が違うだけで中身は同じ気が……ど、どれでも良いよ?」
「……ん」
「では、適当に」
基本的にヤミが好む中身は餡子であり、他の面々も嫌いという訳では無いが餡子の印象が強い故に全種中身は餡子だけ。つまりどれを選んでも見た目が違うだけで中身は同じであり、美柑の言葉と真白の頷きを確認したヤミは適当に4つ取り出して電子レンジへ。冷凍を4つ一気に温めるとなればそこそこ時間が掛かる為、ヤミはレンジの前で待たずにソファへ1度戻った。
「ララさん達が作る料理、どんなだろうね?」
「朝はパン。お昼は麺でしたが、夜は分かりませんね。プリンセス・モモの言葉通りなら地球の料理では無く宇宙の料理にする様ですが」
「ヤミさんは地球以外の料理を食べた事あるでしょ?」
「無い訳ではありませんが、最低限空腹を満たせれば良かったので余り考えてませんでした」
真白を探しながら暗殺者として生き続けたヤミにとって、その間の食事は拘る必要のない物だった。故に宇宙の料理を余り知らず、美柑の質問に答えられなかった。真白も幼い頃に食べていた物の記憶は殆ど無く、覚えていてもティアの元で自分が作っていた故に無難な物。その後地球に来た為、宇宙特有の料理に触れる事は殆ど無かった。……結局この場に居る全員、どんな料理が来るのか想像もつかなかった。
「リトも手伝うって言ってるし、変なのは出来ないと思うけど……ちょっと不安かも」
美柑の言葉に真白とヤミが頷いた時、電子レンジの温めが終わった高い音がリビングに響いた。その音で船を漕いでいたセリーヌも目を覚まし、ヤミは電子レンジへ向かった後に鯛焼きが2個。他2種が1個ずつ乗ったお皿を手に戻る。
「どうぞ」
「ヤミさんはやっぱり鯛焼きでしょ? 真白さんはどうする?」
「……セリーヌ」
「まぅ!」
「セリーヌは鯛焼きか。じゃあ、私が今川焼きで良いかな?」
「ん……」
「熱いので気を付けてください」
ヤミの注意を聞いた後、真白達はそれぞれ1つずつ両手に持って同時に齧りついた。……そして結城家のリビングには4つの笑顔が咲くのだった。
因みに夕食でララ達とリトが力を合わせて作った宇宙の料理は予想通り初めて見るものであり、問題無く美味しい物であった。
「偶にはこんな日も良いかも、ね?」
「ん……」
各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?
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サブタイトルの追加
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主な登場人物の表記