【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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【5話】完成。本日より5日間、投稿致します。


第131話 お礼の午後

 真白が力を奪われた事件から数日後。すっかり体調も元通りになった真白はあの場に居なかった故にララ達から話を聞いた春菜達にも心配され、その後は何時も通りの日常に戻っていた。

 

 その日、休日を迎えた真白はとある人物との約束を果たす為に街へ赴いていた。約束に伴う条件は1人で来る事。故にヤミを置いてやって来た真白は待ち合わせの公園へ向かう。時間は昼を過ぎた頃であり、到着した真白を待って居たのは元気に遊び回る子供達と保護者。……そしてサングラスにマスクをした明らかな不審者の姿だった。が、真白はその姿に目を細めると近づき始める。

 

「……ルン」

 

「あ、真白ちゃん!」

 

「……待った?」

 

「ううん! 今来たところだよ! (本当は30分くらい早く来ちゃったけど)」

 

 明らかに浮いている姿に子供の保護者達が警戒する中、真白が声を掛けた事でその不審者……ルンはサングラスをずらしながら嬉しそうに返事をする。約束の時間にはまだ40分程早く、10分前に到着した真白。だがルンはそれよりも早くこの場所で待って居たのだった。因みに真白がもう5分遅かった場合、警察に連絡されていたのを2人は知る由も無い。

 

「今日は楽しもうね!」

 

「ん……」

 

 真白の約束。それはルンと一緒に今日の午後を過ごす事であった。事の発端は数日前のあの事件。御門の家にルンの姿は無かったものの、リトからルンも協力してくれた事を聞いた真白は彼女へお礼を告げた。すると彼女はそのお礼を受け取った後、珍しく仕事の無いオフの日に一緒に遊ばないかと真白を誘ったのである。その際、ヤミは抜きで2人っきりと念を押して。例え助けられなくても、彼女の誘いを断る事は無かっただろう。だが今回はそれも重なり、真白は了承。そして今日を迎えたのである。

 

 2人で公園を離れて行く中、それを草陰から見守るもう1人の不審者がそこには居た。誰にも気付かれずにサングラスをずらして離れ行く2人の姿を観察するのはルンの友達でありアイドルでもある少女、霧崎 恭子だった。彼女もまた、珍しくこの日はオフだったのだ。そして楽屋で真白と約束をしたとルンから聞いた恭子は気になった故に後をつけて来たのだった。

 

「ルン、頑張れ!」

 

「ひっ!」

 

 草陰から少し身を乗り出してルンへ激励を送る恭子。突然現れた不審者に怯える子供の保護者。そうして真白は彼女に見守られながら、ルンと共に街の中へ入って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何、する?」

 

「えへへ。実はね、こんなのがあるんだ!」

 

 真白の質問にルンが取り出したのは2枚のチケットだった。それは映画のチケットであり、タイトルから何となく恋愛ものである事が伺える。真白がそれに首を傾げる中、ルンは説明を始めた。

 

「実はこれ、私も出てる映画なの。アイドルのRUNとしてのちょい役だけどね? あ、でも主題歌は私とキョーコなんだよ?」

 

「……どんな、話?」

 

「あ。え、えっとね……女の子同士の……こ、恋の話」

 

 アイドルとして活動するルンや恭子は当然ドラマや映画に出る事がある。今回はアイドルとして活動するRUNとしてそのまま出ている様で、楽しそうに語るルンは真白から続けられた質問に少々恥ずかしそうに両手の人差し指を当て乍ら答えた。

 

 話をする間に映画館へ足を進めていた2人は到着すると、ルンが2枚のチケットを店員へ差し出した。不審者の様な姿に一瞬訝し気な表情を浮かべた店員。だが受け取ったチケットを見て目を見開いた後に、店員は2人を丁寧に上映される部屋へ案内した。その際、真白は明らかに向かう先が違う事に首を傾げる。数える程しか映画館に来た事は無いが、明らかに一般の人達と向かう先が違うのだ。

 

「さっきのチケットは特別席のなの」

 

「……特別席?」

 

「うん。どんな場所かは……入ってからのお楽しみって事で!」

 

 無表情乍ら疑問に思っていると気付いたルンが真白へ告げ、2人はそのまま店員に連れられて特別席へ到着する。どうやら一般客の席が1階になっており、2人が居るのは2階の様である。そしてそこにあったのは座り心地の良さそうなソファと注文する為のメニュー表。他にも特別席はある様だが、壁で仕切られている為に殆ど個室と言っても良かった。

 

「ここなら他の誰も居ない2人だけで映画が見れるの」

 

「……凄い」

 

 ルンがRUNである故にこの席に座る事が出来る。真白は彼女の凄さを改めて再確認した後、下を見降ろして気付いた。一般客の席は殆どが満席になっている事に。それだけ今から見る映画は人気なのだろう。だがそれ故に真白はルンへ感謝する。もし下に座る事になっていたら、その人混みに入らなければいけなかったのだから。人混みの苦手な真白の場合、最悪逃げ出す可能性もあった。

 

「今の内に注文しちゃおっか? お昼はもう済んでると思うから、アイスとかケーキとか。あ、飲み物は絶対だよね!」

 

 メニュー表を手にソファへ座るルンの姿に真白は隣へ移動すると、座って一緒にメニュー表を覗き込む。そして互いに注文を決めた後、予告編の間にそれを受け取り……2時間少々ある映画を2人で鑑賞し始めた。ルンの言った通り話は女性同士の恋愛。アイドルになりたい少女とそれを支える女性の話であり、アイドルの先輩役としてRUNが登場する場面もあった。その際、少し照れた様に自分の演じるシーンを眺めるルンは真白の様子を伺う。注文した飲み物をストローで吸いながら、彼女はディスプレイを見続けていた。

 

 映画が終わり、エンディングの曲が流れ始める。聞き覚えのある2人の声で歌われる曲は恐らく新曲なのか真白には聞き覚えが無かった。するとルンは曲が流れる中、「今度発売するからまたあげるね」と笑顔で告げる。そして映画館が明るくなり始めた事で完全に上映は終了した。

 

「どうだった?」

 

「……勉強、出来た」

 

「勉強?」

 

「ん…………」

 

 ルンには真白の言う勉強が何なのかは分からない。だが無表情乍ら何処か真剣に見えるその姿にそれ以上聞く事は無かった。そして映画が終わった事もあって部屋を出ようとした真白。しかしルンが顔を俯かせたまま完全に立ちあがるその前にその手を掴んだ事でそれは止められる。突然の事に真白が首を傾げる中、ルンはゆっくりと顔を上げた。

 

「あ、あのね。この部屋は一応好きなだけ居て良かったりするんだ。街も歩きたいけど、人が多いでしょ? それに、私一応有名人だから気付かれると不味いし……その……」

 

「……ここに、居る?」

 

 休日故に街の中は人が多く、ルンの正体が露呈してしまえば騒ぎにもなりかねない。そしてルンは今居る特別席が前方のシャッターを閉めてしまえば完全な個室となる事も知っていた。防音設備の為、完全に閉めてしまえば次の上映で流れる大音量も聞こえない。更にシャッターが閉まればそれに伴って備え付けのディスプレイが降りて来て何か他の映画などを見る事も可能になる。所謂漫画喫茶の1室の様になるのだ。人混みから逃れる事が出来て危険も無く、更に更に言えば2人きりで居られる。ルンはそれを逃すつもりは無かった。

 

「駄目、かな?」

 

「……分かった」

 

 不安そうに聞いたルンの姿に真白は頷き、再び座る。そしてルンが前方のシャッターを閉めれば、2人は一緒に静かな部屋で過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、下の階では。

 

「う~ん、見えない。あ、シャッター閉まっちゃった」

 

「あの、お客様? 上映は終わりましたのでそろそろ」

 

「へ? あ、御免なさい!」

 

 変わらず不審な恰好をした恭子が何とかして上の階に居る2人を見ようと必死になり、見えなくなった事に肩を落として店員に注意されていた。彼女は2人が見れないと分かってようやく自分が目立つ行動をしていたと気付き、謝りながら映画館を後にするのだった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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