『彼女と彼女の主の思惑が私に結城 リトを殺させる事で成り立つのなら、今の私を見てそれは不可能だと理解する事でしょう。そうなれば、必ず別の手段を講じて来ます』
「ヤミちゃんは私が再会する前、貴女達に襲われた。そして偽りの情報を与えられて、それでも彼女は真白と真白の家族を守る事を選んだ」
それは御門から聞いたヤミの言葉だった。真白を隠して数日彩南町から姿を消した後、戻って来た彼女はある事実を知っていた。それは自分の中に自分の知らない何かが眠っているという事。再会した後にティアーユはその内容を聞き、彼女の決意を嬉しく思うと同時にヤミの中に眠る何かについての解析を始めた。そして初めてネメシスと遭遇した際に彼女が告げた『ダークネス』と言う言葉がヤミに全てを【思い出させた】。
「貴女がヤミちゃんの中に眠るダークネスを狙う事は前から分かっていたの。ヤミちゃんが自分の意思で彼を殺害しないなら、暴走の末に殺させる事を手段に選ぶだろう。と」
「俺を、殺す!?」
突然自分が話題に上がり、しかもその内容が余りにも物騒な事だった為に驚かずにはいられなかったリト。そんな彼の姿を軽く横目で見た後、ネメシスは面白く無さそうに鼻で笑うと再びティアーユへ視線を戻した。
「私の狙いを最初から理解していたのは分かった。だが、あれは研究員共が金色の闇に刷り込んだ言わば最終兵器だ。発現したら最後、破壊衝動の赴くままに暴走してあらゆるものを破壊する」
「で、でも彼女がしたのは真白を……真白を取り込むだけ。その後は何処かに行っちゃったわ」
ネメシスの言葉に話を聞いていた唯が口を開き、自分が見た光景を思い出して悲痛な面持ちで続ける。今すぐにでも追い掛けたいと殆どの者達は思っているだろう。だが唯の言葉を聞いてティアーユは「大丈夫よ」と告げた。彼女の言葉に驚き顔を上げる全員を前に、ティアーユは続ける。
「貴女はヤミちゃんに言ったそうね。彼女は真白と言う光に当てられた存在だと」
「……まさか」
「確かにダークネスに真白の光は届かなかった。だけどダークネスに真白の光を消す事もまた、出来なかったのよ」
何時かメアの力を借りて凛の精神世界に入った時と同じ様な感覚で真白は目を開いた。真っ暗な闇の中、何処までも続く深淵なる闇を前に真白は静かに目を閉じると胸の前で両手を握る。途端に彼女の胸元には眩い光が生まれ、その光は真っ暗な闇の中を照らし始めた。……そしてその闇の中に紛れて眠るヤミの姿を見つけた時、真白は泳ぐようにして彼女の元へ近づき始める。光を胸にその傍へ寄り添い、ヤミと真白は光に包まれた。
「……ここ、は」
「……おはよう」
やがて目を開けたヤミは辺りを見渡し、自分を見下ろす真白の姿を前に浮かびながらも立ち上がる様に身体を立てる。何があったのかあやふやであったヤミは頭を強く振って意識をはっきりさせると、少しの間を置いて全てを思い出した。自分が自分の中に眠るダークネスに飲まれた事を。そして真白を取り込んだ事を。
「発現、したんですね」
「ん……」
ヤミの言葉に頷いた真白はヤミの手を取って移動し始める。自ら出現させた光を頼りに何かを探し続ける2人。終わりの無い深淵を進み続けた2人はやがて光に照らされる闇を見つける。光を傍に置いて尚、決して照らされる事の無い球体の様な闇。それは現実にて姿を現した事でようやく視認出来る様になったヤミの中に潜む
「これが、ダークネス。……真白」
「……ん」
片手を刃に
「ダークネスそのものを倒すつもりか?」
「えぇ。その為に真白は
「それじゃあ、今2人は!」
ネメシスの言葉にティアーユが答えた時、驚き空を見上げながら告げるナナの言葉にティアーユは頷いて肯定した。今現在誰にも視認する事は出来ないが、空高い雲よりも更に上でヤミは自らの髪を使って自分を動けない様に球体を作り上げ、閉じ籠っていた。破壊衝動に暴れそうな身体はヤミが無意識に抑え込んでおり、それを聞いた面々は今現在壮絶な戦いがあの小さな身体の中と外で行われている事を理解する。
「彼女達なら、必ずやり遂げられる。だから私は、私がするべき事をするわ」
「……」
ティアーユはネメシスを見つめ、その目で語る。今現在ネメシスはメアの身体を操っており、外に居る者達にその声は聞こえない。何度も身体を返して欲しいと言い続けるメアの悲痛な叫びはネメシスだけが聞いており、だが聞こえずともティアーユはそれに気付いていた。変わり始めた彼女なら、今の会話を聞いている筈の彼女なら決意すると。
「『
容赦無く振り下ろされる一撃。それを腕を盾にしてヤミが受け止めた時、ダークネスの横に真白が姿を見せる。そしてその身体目掛けて足を振るうが、ダークネスは片手をヤミと同じく盾にしてそれを防いだ。その後身体を回転させて2人を振り払えば、1体と2人の間に距離が生まれる。
「流石は破壊するためだけに作られたシステム。強さは私以上ですね」
「……でも……負けられ、ない」
『……』
既に何度か攻防を繰り返していた2人はダークネスの強さを前に改めて気を引き締める。すると突然、ダークネスは片手を上に上げてそれを握った。途端にその身体は闇に包まれ、片手でそれを払う様にして現れたのは現在外で見せているダークネス化したヤミの姿であった。変わらず肌の色などは真っ黒のままだが、先程よりも危険になった事は説明されなくても分かった2人。ゆっくりと髪先が円を作った時、灰色の空間が出現した事でヤミは訝し気に警戒する。……そして、その空間とまったく同じ物が真白の背後に出現していた事に気付いた。
「! 後ろです!」
「っ!」
ヤミの声に振り返った真白。それと同時に空間の中にダークネスは手を入れており、空間と空間は繋がっている様子で真白の背後からその手は近づいた。逃げる事も出来ずにその腕を掴まれた真白は空間の中に引きずり込まれる。そしてすぐにダークネスの元にその身体は連れて行かれ、真白は続けて髪に四肢を拘束された。
「っん! ん、ぁ!」
ダークネスの手が真白の乳房や太腿を掴み、髪が乳房の先にある突起を弄る様に攻め始めた事で真白は思わず嬌声を上げてしまう。自分と殆ど同じ姿をし乍ら、自分では無い相手が真白を攻めている光景はヤミにとって許せるものでは無く、彼女は両手を刃にして拳にした髪と共に急接近した。だがその刃が振るった先にダークネスは真白を配置し、思わずヤミの手が止まった隙を突いてその身体を真白同様に拘束し始める。
「くっ! にゅ、にゅるにゅる……は、苦手……です」
自分の中に居たからこそ、自分の弱点も理解していたダークネスによってヤミは無力化されてしまう。苦手なニュルニュルに纏わりつかれて目を回し、真白が喘がされる光景を見せつけられる。……状況は余りにも絶望的であった。
各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?
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サブタイトルの追加
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主な登場人物の表記