【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第110話 メア、正体を明かす

 体育の授業を次に控え、真白は体操着に着替える為に女子更衣室を訪れていた。着替え中の恒例と言っても良い里紗と未央の忍び寄る手を軽々と回避しながら、ヤミと共に着替えを終えた真白。そこでふと、同じく着替え終えていた春菜が辺りを見回して首を傾げる。

 

「お静ちゃんは? 次の時間体育だから、もう着替えないと間に合わないけど」

 

「あの子、ボーっとしてるところがあるから迷子にでもなってたりして!」

 

「……探す」

 

「あ、私も行くよ真白さん!」

 

 春菜の言葉を聞いて更衣室内に同じクラスメイトであるお静が居ない事に気付いた面々。里紗が笑いながら喋る中、着替え終えていた真白は探す為に一足早く更衣室を後にしようとする。当然何も言わずにヤミも後に続き、春菜もその背を追って更衣室を後にしようとする。だが真白が扉を開けた時、出るよりも先に入って来た何かが更衣室内で突然暴れ始める。それはララが発明したであろうアンコウの様な姿をした機械。上には何故かしがみ付くナナの姿もあり、だが機械は構わず開いた口で辺り一面の物を吸い込み始める。……被害は主に着ている衣服であった。

 

「きゃぁ!」

 

「この、止まれ!」

 

「!」

 

「馬鹿! 止めろ!」

 

 暴れる機械を必死で押さえ込もうとするナナだが、その効果は殆ど意味を成さない。やがて裸の生徒達が増えて行く中、機械の標的は真白たち3人に向き始めた。容赦無く吸引を開始する口に紙の如く破れ、吸い込まれ始める体操着。一瞬の内に3人の姿は生まれたままの姿になり、その光景を見てナナの顔は真っ赤になった。すると、ナナ同様に機械を止める為に追い掛けて来ていたであろうリトの声が廊下から聞こえ始める。騒ぎから間違い無く入って来ると気付いた真白は、逸早く扉を閉めた。

 

「お、おい! 大丈夫なのか!?」

 

「……入っちゃ……駄目」

 

「結城君! 大丈夫だから! 入ろうとしないで!」

 

 閉められた扉を叩きながら開けようとするリトに扉越しながら真白が告げた時、春菜が大声で言ったことで彼は少しだけ冷静になる。女子更衣室に入ろうとしていた事に気付き、もし入っていたら大変な事になっていたであろう事にも気付いたリト。扉越しにナナの名前を呼んだ時、更衣室内で唯一服を着たまま機械に跨るナナは赤い顔をそのままにそれを止める為に叩き始める。数度叩かれた機械は痛みを訴える様に暴れ、ナナを落として窓から外へ飛び出した。

 

「こら、待て!」

 

「……!」

 

「私が行きます」

 

 追い掛け始めるナナの姿に真白は加勢する為に動こうとするが、現在彼女は何も着ていない状態だった。そこで真白を止めたヤミが素早く戦闘服(バトルドレス)を着用すると、代わりにそう告げてナナの後を追う様に窓から飛び出る。窓の外は広い中庭であり、ナナが追い掛け回す光景を前にヤミは容赦無く髪をハンマーにすると、機械目掛けて振り下ろした。機体が潰れて損傷し、そのまま地に伏せる機械を前にナナは安心の溜息を吐いてヤミをお礼を告げようとする。だが、そんな彼女を前にヤミは首を横に振って「まだです」と機械から視線を逸らさなかった。

 

「な、なんだあれ!」

 

 ヤミの言葉に機械へ視線を戻したナナが見たのは、真っ黒な球体であった。徐々に空へ浮かび始めるそれを前にヤミが構える中、女子更衣室から状況を見ていた真白達の元に体操着姿のララが訪れる。何故か一様に裸の面々を見て首を傾げた彼女は、窓の外に映る光景を見て驚きながら窓枠を掴んで身を乗り出した。

 

「あれは、マイクロブラックホール!」

 

「ブラックホール、ですって!?」

 

 ララの言葉を聞いて外に居たナナや更衣室に居た一同が一気に戦慄する。ララ曰くそれは先程の機械に使われていた動力源であり、制御装置の破損で外に出てしまったとの事。軽々と学校を飲み込む程の力はあり、吸引力に拘って内蔵した。との事であった。唯がその説明を聞いて「何て危険なものを作るのよ!」と激怒する中、中庭にいたナナとヤミは目の前の光景に構える。まだ吸引は始まっていないが、ララの説明からしてそれも時間の問題であった。

 

「離れた方が良さそうですね」

 

「で、でもこのままだと学校が!」

 

「私が、抑えます!」

 

 ヤミの言葉を聞いてナナがどうするべきか迷い始めていた時、突然中庭にお静の姿が現れる。彼女は目の前に映るそれを前に、決意した様子で人差し指を向けた。途端、僅か乍ら縮小し始めるブラックホール。だが、彼女の様子もそれに伴って悲痛な面持ちに変わって行く。が、それでも彼女は止めない。例え自分が消える事になったとしても(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「私の、責任ですから……!」

 

 今回、ララの発明が暴走した原因。それはお静の念力を受けてしまった事がそもそもの原因であった。掃除機としてしっかり機能していた機械だが、犬が苦手と知るメアが揶揄うつもりでお静を脅かし、驚いたお静が放った念力が機械を暴走させた。……故にお静は責任を感じていた。

 

「……」

 

 そんな様子を違う場所から眺めるメアの姿が廊下にはあった。そして必死で抑えようとするお静の姿を見てメアは僅かに溜息を吐くと、窓から外へ飛び出る。彼女は真白達以外にまだ正体を明かしておらず、責任を感じていたお静にも手助けしないと告げていた。止める為には力を使う必要があり、それは正体を明かす事に繋がる故に。だが、自分の存在を掛けてでも守ろうとするお静の姿を前に彼女の考えにも変化があったのだろう。

 

「仕方ないなぁ」

 

「! メア、さん……」

 

「私が村雨先輩を脅かしたのが原因なら、責任は私にもある訳だし……それに学校が消えたら、困るからね」

 

 そう言って腕を変身させたメアはお静が抑えていたブラックホールにそれを飲み込む程の威力を持つビームを放つ。大きな風圧と共に一瞬世界の色が変わり、やがて全員が視線を戻した時には何処にもブラックホールの姿は残っていなかった。

 

「な、何が起こったんだ?」

 

「今、手が変わった様な……」

 

「あれじゃあ、まるで2年に居る」

 

 一瞬静まり返った校舎内で、ひそひそと声が聞こえ始める。今まで普通の女子生徒だった筈のメアが行った行為。彼女が守りたかった唯の女子生徒としてのメアが崩れ去って行く瞬間であり、それを聞いていたお静が何とか言い訳をしようと振り返った。だがそれよりも早くメアの元に近づくも者が1人。

 

「彼女は、私の妹です」

 

「ぁ……ヤミ、お姉ちゃん……」

 

 見ていた者達全員に聞こえる声で静かに告げたヤミは、驚き目を見開くメアを横に自分と同じ力がある事を説明する。血の繋がりは無いが、長年離れ離れになった末にこの学校で再開した事も説明すれば、再び学校内は静寂に包まれる。……そして数拍置いた後、彩南高校には歓声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「て事で、改めてよろしくね! 先輩達!」

 

「まさか、貴女も宇宙人だったなんて」

 

「ナナ、貴女まさか知っていたの?」

 

「まぁな。でもメアの事をあたしが言い触らす訳には行かないだろ?」

 

 黒咲 芽亜がメアとして受け入れられた後、昼休みは彼女に質問する生徒達でごった返す事となった。そして放課後を迎えた時、帰らずに教室で待つ真白とヤミの元に笑顔でナナとモモを引き連れてメアが姿を現す。彼女は改めて自己紹介を行い、新しい事実に唯が頭を抑える横でモモがナナへ目を細めて質問する。ナナは頭の後ろで手を組んで答え、尤もな答え故にそれ以上モモが何かを言う事は無かった。

 

「でもまさかヤミに妹が居るなんてな。真白は知ってたのか?」

 

「ん……前から」

 

「色々ありましたので。彼女の存在は私もこの街に来てから知りました」

 

「色々あったよね~!」

 

 リトの質問に頷く隣で、ヤミが答え始める。そして僅かにメアへ視線を向ければ、彼女が軽い様子で続けた。実際にはかなり重い話なのだが、詳しく知るのは当事者達のみである。ヤミの言葉を聞いて「そっか」と納得した様子を見せたリト。そんな様子を見ていたメアの背中をナナが軽く叩いた。

 

「前に言ったろ? 受け入れてくれるのは、あたしだけじゃない。って」

 

「……そうだね。本当に彩南(ここ)は、お人好しばっかり」

 

 メアはそう言って自分を囲む人達の姿を見回す。全員が笑顔に溢れ、その笑顔は正体を明かした自分にも向けられる。初めて彩南を訪れた時には考えられなかった光景に、思わず彼女は窓の外に映る天を仰いだ。

 

 その後、解散する事になった一同。帰宅する事にした真白はリトが学校に残ると言う事で、ヤミとメアの3人で帰る事となった。

 

「ありがとう、ヤミお姉ちゃん」

 

「突然何ですか?」

 

「ううん。何でも無い。唯、ヤミお姉ちゃんの『妹』で良かったと思っただけ!」

 

 笑顔で告げるメアの言葉にヤミは少しだけ目を閉じて、何も言わずに前を向いた。それはその言葉を受け入れた姿であり、メアは楽しそうに帰路を歩き続ける。それからメアは2人と別れて帰宅するまで、笑顔のままであった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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