【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第9話 ララの地球見物

 結城家のリビングでは重い雰囲気が支配して居た。美柑とララは現在共にお風呂に入って居る為この場には居らず、居るのは真白とリトだけ。リトはギ・ブリーとの戦いの最中、自分が【ララの婚約者候補】になって居ると言う事実を知ってしまって居た。隠しておこうとして居た真白だが、それはもう無理な事。故に2人が居ない今の時間を狙い、帰る事無くリトに話をしたのである。

 

 話を聞いたリトは余りの内容に驚き戸惑う事しか出来ずにいた。だがやがて徐々に理解し、冷静になり始めたリトは自分の起きた出来事を思いだしながら「そっか……」と静かに呟く。と、真白は俯いて居た顔を上げてリトに視線を向ける。

 

「……私のせい」

 

「違うって。真白のせいでも、ララのせいでも無い。そりゃ、これから宇宙人に狙われる何て怖すぎるけどさ。あんな奴らばっかりなら、放って置けないって。それに、今はそれより怒ってる事がある」

 

 自分が巻き込んだと思いながら呟いた真白の言葉をすぐに否定し、自分の思いを告げたリト。そんな彼の言葉に顔を上げた時、リトは真剣な顔で続け始める。

 

「なぁ、真白。宇宙人とか、結婚とか、確かに難しくて俺達にはどうしようも無い話ばっかりだ。けどさ、だからって1人で抱え込むなって。少しは俺達の事も信用してくれよ。家族……なんだからさ」

 

「!」

 

 綴られる言葉に目を見開き、やがて少し照れた様に顔を反らして頬を掻きながら言いきった彼の言葉に少し黙った後に静かに頷いて返した真白。そんな彼女の行動にリトが笑みを浮かべて安心した様な表情を浮かべた時、リビングと廊下を繋ぐ扉が開かれる。そこには普段同様、バスタオル一枚に包まれているララの姿があった。そしてララは普段は居ない真白の姿に「真白、まだ居た!」と喜びを露わにして駆け寄り始めた。その勢いでバスタオルは落ち、リトはすぐに顔を真っ赤にして反対の方へ。真白はララの登場に小さく溜息を吐くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 週末は学生にとって基本的に休日であり、思い思いの時間を朝から過ごすことが出来る。真白やリト達もそれに漏れず、休日の日を迎えた彼女達はつい最近やって来たララが『地球見物がしたい!』と言ったことで外に繰り出す事となった。地球見物と言っても世界を見る事は不可能である。故に真白とリトが出来る範囲……彩南町を紹介して回ると言う事になった。真白たちが休日であるならば、小学生である美柑もそれは同様。彼女も一緒に揃って4人での外出となる。

 

 ララの恰好は制服以外に他に持って居る物が無いらしく、普段のコスプレの様な服装で外へと外出していた。が、それは当然周りの目を引く。3人はしばらくその光景に黙り続けて居たが、やがてリトがララの手を引いて建物の間の人気の無い場所へと駆けこんだ。美柑は走って行く2人を見て苦笑いを浮かべながら真白に「行こ?」と言い、真白はそれに頷いて2人の後を追う事にした。

 

 何事も無く見物をするならば、普通の人と同じ格好にならなければ目立ってしまうだろう。リトと美柑に説明を受け、町を歩いて居る人の中から選別して、ペケにその服に変身させて貰うと言う事になった。が、ここでララが選んだ服装が非常に駄目な物ばかりであった。男の物の服やどうして街を歩いて居るのか疑問に思ってしまう様な服等、個性豊かな服に連続でなるララ。数度変身を続けた後、決まったのはララにピッタリの非常に可愛らしい服装であった。それには思わずリトも少し顔を赤くして反らしながら納得する。

 

 無事に服が決まった事で止められていた見物を再び再開できる事になったララは真白の手を掴んで走り始める。今度はリトと共に置いて行かれた美柑。「楽しそうだね?」とリトに言えば、優しい笑顔で「だな」と返し、2人もまた彼女達の後を追い始める。

 

 ララの彩南町見物は4人に取って有意義な物と言える物であった。気になったお店の中に入り、気になったお店の食べ物を食べる。常に笑顔であったララの姿は3人にとっても嬉しい物であった。そしてその途中、ゲームセンターのクレーンゲームでララが欲しがる物をリトが1発で手に入れる等の活躍も見せる。

 

 目に見える楽しそうな物を一通り楽しんだ時、リトは何時の間にか美柑が持って居たチケットに気付く。どうやら買い物の際に貰った物の様で、水族館に入れるチケットとの事。ララが『水族館』と言う言葉に興味を示した時、リトがララの服を見て気付く。

 

「おいララ! 服が、消えてる!」

 

「……ペケ」

 

「申し訳ありません。先程の連続フォームチェンジが負担になった様で……エネルギーが切れてしまった様です」

 

 リトの言葉に全員がララの服を見る。その布は所々穴が開いた様に消えて居り、それは現在進行で広がりを見せて居た。ララの服の元はペケ。故に真白がその名を呼べば、弱弱しい声でペケが説明をする。連続で変身したことで、ペケに限界が来てしまった様である。そしてもしこのまま放って置けば、ララはすぐに町の中で素っ裸になってしまうとの事。それを聞いた時、リトと真白は同時に走りだして居た。お互いにララの片手を掴み、猛ダッシュする2人。焦った様子を見せないララと、焦った様子のリト。無表情の真白は町の中で走った結果目立ってしまう。そして周りに居た男たちは一様にララの姿に鼻の下を伸ばし始めた。

 

「……間に合わない」

 

「一先ずその辺の店に入るしか無いよ!」

 

「なら、ここだ!」

 

 消えていく服にこのままでは手遅れになると思った真白。リトは必死に何処か問題の無い場所を考えるも、この様な町中に問題の無い場所など存在しない。故に美柑はせめて人が沢山居る今の場所よりも何処かすぐ傍にある場所に逃げ込むことを提案。リトは目の前に見えたそこに一気に乗り込む様にして足を向ける。無我夢中だった彼はそのお店が男性の入る場所では無い、ランジェリーショップであると入ったと同時に理解。場所を変えようとするが、素早く美柑が服をかき集めて真白がララを試着室に押し入れる。ララの手を掴んでいたリトは試着室に一緒に入る事は免れるが、お店の中から出る事は出来なかった。

 

「……セーフ。あむっ」

 

「真白さん、ララさんの服探そ!」

 

「ん……はむっ」

 

「おい、店の物を汚すなよ?」

 

 何とか事無きを得た事で安心したリト。そんな彼に走る時にも片腕で抱え、ずっと持って居た袋から鯛焼きを1つ取り出して食べ始めながら言う真白。先程の買い物の最中に買った物であり、その袋の中にはまだ沢山の鯛焼きが入って居る様子である。すると同じ様に安心した美柑が真白に服を共に探すことを提案。真白は頷いてもう1度鯛焼きを齧り、リトは念の為に注意しながらも居心地の悪さを感じ始めた。

 

 先程までのペケで出来た服では無く、地球の本物の服。しかも持って居ないとなれば、これから着る可能性のある服だ。急ぎながらも慎重に決め、2人で決定した服を持って行った時。そこにはリトとララ。そしてもう1人、リトの想い人である西連寺 春菜が居るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 美柑が貰って居た水族館のチケットで水族館へと足を運んだ真白、リト、ララ、美柑。そして春菜。既にララは春菜と友達であり、美柑もまた春菜とすぐに打ち解ける事が出来て居た。真白も春菜と面識は当然あり、仲は良くも悪くも無い所謂普通の関係。春菜を前に緊張して居るリトのみが、真白を覗いた3人の会話を聞きながら春菜を気にし続けて居た。そうして目的地の水族館へとたどり着いた時、最初にその魚の住む水槽を見て歓喜の声を上げたのは他ならぬララであった。

 

 ふとリトの視線に気付いた美柑はララと春菜が話をして居る為、気付かれない様に少し距離を取るとそのまま歩いて居た真白の元に近づく。既に鯛焼きを食べ終えていた真白は水槽の中をボーっと見つめて居り、美柑は誰にも聞こえない様にひっそりと声を潜めて真白に話しかける。

 

「ねぇ、真白さん。あの春菜って人はリトと中学からのクラスメイト何だよね? もしかして?」

 

「ん……青春」

 

「へぇ~。やっぱり」

 

 リトが春菜に好意を抱いて居るのは傍から見て丸分りであり、美柑はそれを確認するために真白に話しかけたのだ。当然真白も気付いて居り、美柑の確認に頷いて答える。と、何かを企む様に楽しそうに納得して美柑がそこから離れる。そしてそれと同時に今度はララが真白の傍に駆け寄った。

 

「真白! しじみが居ない!」

 

「……ここには……居ない」

 

「そうなの? じゃあじゃあ……」

 

 何時か美柑が作った味噌汁の具として存在して居たしじみを探して居たララ。真白が居ない事を告げれば、ララは不思議そうな顔をして他の魚の質問を始める。基本的に食べられる魚の名前しか出ないのは、ララがそれしか知らないからである。

 

 話をして居た時、ふと何か面白そうな物を見つけたララは真白の手を取って走り出してしまう。ララが興味を持ったのはペンギンの集まって居るペンギンコーナーであり、楽しそうにその水槽の中を覗きこむ彼女の姿は何処にでも居る可愛らしい少女である。……背後にフラフラと揺れる尻尾が無ければ、だが。

 

「う~ん、何か皆元気が無いね?」

 

「……そう?」

 

 ペンギンたちの群れを見たララはその光景にやがて楽しく無さそうに呟いた。しかしペンギンたちに関して詳しく無い真白は見える光景に違和感を感じる事は出来ず、ララの言葉に首を傾げるのみである。と、ララが突然何かを取り出した。それは謎の錠剤の様でありながら、怖い顔のマークが付いて居る物。真白はすぐにそれを不味いと思うが、時既に遅かった。

 

「バーサーカーDX(デラックス)! これで元気が出るよ、きっと!」

 

「!」

 

 無情にも投げられたその錠剤はペンギンたちが泳いでいた巨大な水槽の中に落ち、徐々に溶け始める。すると真白たちには見えないが、水槽の中に居たペンギン達の瞳が一斉に赤く光り始めた。と同時にペンギンたちが一斉に水槽から飛び出し、様々な方角へと飛び出し始める。それは当然傍に居たララと真白の傍にも飛んで来ており、その内の1匹が真白たちの傍……2人の後を追って来た美柑へと迫り始める。止まる気配の無いペンギンたちだ。美柑の様な小学生が当たれば、怪我では済まない可能性もある。

 

「! 美柑……!」

 

「へ?」

 

 それに気付いた時、真白はすぐに美柑の目の前に立って居た。そして迫るペンギンに容赦なく下から蹴りを放つ。スカートだったため、見る場所によっては中が見えてしまう。が、今の真白にそんな事は関係ない事である。ララは元気になったペンギンたちに喜び、美柑が余りの事に呆けて居るその間にも迫り続けるペンギンたち。真白は自分と美柑に迫るペンギンたちを弾き返しながら、美柑を守り続ける。やがてペンギンたちの突撃が自分達の方に余り来なくなった時、真白は美柑の手を引いて曲がり角へと避難した。

 

「ど、どうなってるの、これ?」

 

「……ララの……仕業」

 

 基本的に一直線にしか飛んで来ることが出来ないペンギンたちの為、曲がり角を曲がった事で安全な場所となり安心する真白。美柑はようやく我に返るとどうしてこうなったのかを聞き、静かに答えた真白の言葉に嫌でも納得することになった。……そしてその後、事態が収まるまで真白は美柑を守りながら内心で頭を痛めるのであった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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