真・恋姫†三國伝~群雄飛翔~   作:椛颪

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あれ?文章書くのってこんなに難しかったっけ……

書き直す可能性が無きにしも非ず


五話

 孫策率いる琅邪軍二万が安定郡臨涇(りんけい)に到着すると、其処には撤退戦を生き延びた官軍が集結していた。韓遂は宣言通り緒戦に大勝し、安定近郊まで兵を進めていたのだ。緒戦で活躍が著しかったのは絢の配下であり、各々三千の兵を率いた八騎衆、そして絢の義姉閻行(えんこう)字を彦明という猛将だった。彼女たちが率いる騎馬隊によって官軍は四散し、唯一まともに動けた張温の軍を殿軍に据えることで、辛うじて臨涇まで逃げ帰ることが出来たのだ。

 

「酷いザマね。天下の官軍が聞いて呆れるわ」

 

「そういう事は、思っても云うものじゃ無いと思うんですよねー。何処に耳があるか、分かったもんじゃ無いんですから」

 

 孫策の言葉に忠告を投げかけたのは、軍師として従軍していた諸葛瑾だ。彼女は愛想笑いにも似た笑みを浮かべ、

 

「さてと、取り敢えず皇甫崇閣下にご挨拶といきましょう。わざわざ二万も兵を連れて来たのです、粗略には出来ますまいよ」

 

 孫策を促し、天幕の方へと向かっていった。

 

 孫策軍の陣容は、前衛に珠蓮と十座、中軍に彪と韓当――懐園(かいえん)、雪蓮と翠里、後衛に全琮――四季(しき)と朱然――風露(ふうろ)を配置した三段構えの陣だ。前衛六千、中軍八千、後衛六千を率いるのは比較的最近孫家に登用された武将が多く、孫策や周瑜たち首脳部がこの出陣で新人の技量を図ろうとしていることが見て取れた。

 

「つまり、我々にとって今回の出兵は試金石に当たる訳なの。気を引き締めて当たらないと……」

 

「んっふふふ、そういう事になるでしょうね。我々後衛ですから、そこまで関係ないとは思いますけどね。ふふっ」

 

 中軍の陣屋で語らっていたのは、全琮と朱然だった。彼女達は兵の配備を終わらせたため、軍議の時間を待っているのだ。孫策と諸葛瑾の二人は本陣に出向しているために姿が無い。

 

「後衛だからといって、雪蓮様が遊ばせておいてくれるとは思わない事だね、風露ちゃん」

 

「そんな事言ってもですね、懐園さん。我々後衛ですし……」

 

 朱然は韓当が放った言葉に複雑な表情を浮かべた。定石からして有り得ないという感情と、孫策ならばやりかねないという予測が鬩ぎ合っているようだ。

 

「――いや、大いに有り得そうですね、んふふ」

 

「余裕そうだな、四季」

 

「んっふふふ、まあ、前衛のお二方が頑張ってくれている限り?我々に御鉢が回ってくることなんて有り得ませんから。ね?珠蓮ちゃん?」

 

「……なんかそう言われると、態と負けたくなるんすけどね」

 

 兵の調練が終わった孫皎が、徐盛と共に陣屋に戻ってきた。二人とも涼州の寒さには慣れないのか、少し身体を震わせている。

 

「そういえば、お二人は寿春以北に来るのは初めてなんでしたっけ?」

 

「あぁ。俺はずっとあの辺りに居たからな。よもやこっちの方まで出てくる羽目になるとは思ってなかった」

 

「同じく。――風露さんは、烏丸で修行してたんでしたっけ?」

 

「んっふふふ、良く知ってるねえ。もしかして私の追っかけかい?」

 

「そんな訳ないじゃないですか。風露さんが前に、自分で教えてくれたんですよ」

 

「んふ?そうだったっけ……」

 

 朱然は口の端を釣り上げてにやりと笑う。掴み所のない言動をする彼女の事が、孫皎は不思議と嫌いにはなれないと感じていた。孫皎に限らず、孫家の面々は彼女を信頼しているのである。特に根拠のあるものでは無かったが、それが孫家らしさと云うものなのだろう。

 

「烏丸の皆さんは、元気でやってますかねえ……。久しく文も出していないですし、心配です……んふふ」

 

「言うほど心配してないみたいっすけど」

 

「信頼はしてるからね。あの人たちなら元気でやっている、自信を持ってそう言える程度には、だけども」

 

「それだけ信頼してるなら、十分だと思うわよ。ね?翠里」

 

「そうですねえ。出来ればその調子で、我々の事も信頼して貰いたいものです」

 

 軽口めいた朱然の言葉に返事を返したのは、孫皎ではなく孫策であった。背後には賀斉と諸葛瑾が控えている。

 

「や、嫌だなあ雪蓮様。私は孫家の方々を信頼しておりますよ?」

 

「態度で示してくれないとわっかんないな~。飲みに誘っても、何かと理由付けて断って来るし」

 

「で、ですから私は下戸なんですってば……」

 

 朱然はたじろぐ素振りを見せていたが、徐盛と孫皎がニヤニヤと笑って居るのに気付くと咳払いを一つし、

 

「雪蓮様、官軍の様子はどうだったのですか?その辺りを参考にして、すぐにでも対策を練ったほうが宜しいのでは?」

 

 半ば強引に、話の流れを変えてしまった。流石に朱然を弄り倒す以上に重要性が高い案件だったため、孫策達もその流れに乗ってゆく。

 

「ちょろっと情報収集した限りでは、叛乱軍は全軍を十三部隊に分け、それぞれを明確な分担でもって動かしているみたいだね。叛乱の盟主として全軍を指揮している韓遂、相当なやり手みたいだ」

 

「厳しい戦いになりそうね」

 

「ただ、勝算はありますけどね。盟主に韓遂を担ぎ出した宋揚・北宮玉・李文侯・王国達四人の部隊は、調練不足なのか動きが悪かったみたいです。此処にこそ付け入る隙も生じるかと」

 

 朱然が不意に陣屋の外に出たと思えば、直ぐに戻ってきた。手には、竹簡が握られている。

 

「失礼。――間諜が戻って来たようですので。ふふ」

 

「何時の間にそんなの出したのかしらね。……まあ良いわ。態々此処で明かしたからには、それなりに有益な情報が手に入ったのでしょうね?」

 

「えぇ。飛び切りのネタがね。――んふふふ」

 

 朱然は勿体を付けるかのように一拍の呼吸を置き、

 

「韓遂が、宋揚・北宮玉・李文侯・王国を官軍にぶつけ、相討ちにさせるようです」

 

 にやりと、嗤った


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