東方暁暴走録 〜暁メンバーが幻想入り〜   作:M.P

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遅くなりました。


射命丸文の活動記録 2

射命丸文の家

 

「ああ〜っ」

 

原稿用紙やら何やらが床一面に散らばっている中私、射命丸文は机に突っ伏した。

だってしょうがないじゃん、いいネタがないんだから。

 

あの爆発の後、私は魔法の森や妖怪の山を見回ったけどあの人間の情報は一つも入らなかった。人間の攻撃方法が爆発という目立つものなのに風見幽香を爆破してからは音沙汰がなく、幻想郷はとても静かで平和そのものだった。いや、ちょっとしたことならあったけどそれは妖精の仕業だったし。

 

あの時に人間を全力で探していれば何かこの状況が変わっていたかもしれないのに。ああ〜っ、私何であの時探さなかったんだろう。

私はチラリと目を動かして時計を見る。

 

「げっ⁉︎もうこんな時間⁉︎マズい、早く原稿書かないと……って言っても書くものなし。はあ〜っ、どうしよ」

 

いよいよ記事の期限が迫ってきて私は焦燥感に駆られるが、書くものがないために何も出来ない。このままだと文々。新聞は白紙で出さないといけなくなる。

 

「椛に何かネタになるものがあるかどうか聞いても『ない‼︎』って言うし……いや、何か隠しているのは分かるけどあまり突っ込んではいけなそうな感じがするしな〜」

 

一週間前に河童達に定期報告に行った椛は何か様子がおかしい。何かを隠しているみたいだけれどバレバレだ。椛自身はバレていないと思っているみたいだけれど。

そういえばな〜んか上が騒がしいと天狗達の間で噂になっているけど椛が隠していることと何か関係があるのかな?

 

私は机に突っ伏しているのもあれだ、と出掛ける準備をする。行き先はまだ決まっていないけど、原稿が書けなくてあーあー唸るよりはマシだ。

 

「はたてのところに行ってネタがないか聞こうかな。いや、前に聞いたばかりだしそれに他人に頼りっぱなしってのもな〜」

 

新聞のネタがない時にはたまにはたてのところに突撃して強奪する。案の定、追いかけられるけどはたてに捕まったことは一度もない。

こんな私が言うのも何だが、正直ヒドいとは思っている。まぁ、ネタを持っていく以外にもあの引き篭もりを外に引きずり出したいというのもあるけれど、どちらかというと手のひらの上で転がっている姿が見たいというのもある。

 

「仕方ない。あの人間以外にもネタがないか探すしかないか」

 

とはいえ原稿の期限が迫ってくるのでうだうだする時間もない。私は一縷の望みをかけて家を飛び出した。

 

 

玄武の沢

 

私は今玄武の沢の近くに来ている。椛が隠していることを探りに来たからだ。

目的地である玄武の沢が見えてくると私は砂煙を捲き上げながら降りたった。こうやって降りると博麗神社のあの巫女にもっと静かに下りろ!って怒鳴ってくるけど天狗としての迫力がないからやめない。

 

さて、ここにやって来たはいいけど……このまま河童達のところに行こうかな。カメラの点検も兼ねて取材しよう。椛が定期連絡した時の状況も合わせて。はてさてどんなネタがあるのでしょうか?

 

「うおー‼︎」

「え?うわっ⁉︎」

 

河童達のアジトへ向かって歩いていると横から黒い何かが突っ込んで来た。私は体を反らして避け、向こうからやって来たネタを逃さないためにカメラを片手に持ち飛んで来た何かに目を向けた。

 

「貴方は……確かルーミア?何でこんなところに?」

 

突っ込んで来たのはチルノと一緒にいることが多いルーミアだった。

 

「ここは通さないぞ‼︎」

「いや、あの……私は」

 

私は取材しに来ただけ、と言い終わる前にルーミアはスペルカードを発動した。

 

夜符「ミッドナイトバード」

 

ルーミアがスペルカードを宣言し、私の視界には弾幕が展開される。

 

「ぐっ」

 

ルーミアの弾幕を紙一重で躱しながらこちらも応戦する。あの時と同じスペルカードだが厚さが段違いだ。何故ここまでの差があるのか、と考えていると弾幕がさらに厚くなった。さらに、ルーミアを中心にして辺りが黒くなっていく。

 

「ああ、もう‼︎そっちがその気ならこっちだってやりますよ!」

 

私はカメラを構えて弾幕へと突っ込んだ。

 

「またそのカメラで弾幕を消す気⁈今度はこの前のようにはいかないからね‼︎」

「残念ですが、今回は違いますよ」

「へ?」

 

カメラの照準をルーミアに定めてシャッターを切った。

 

「うんにゃ〜⁉︎」

 

ルーミアは視界が急に真っ白になり、目を閉じた。そんなスキを文は逃すはずがなく目が眩んでいるルーミアに弾幕を放ちピチュらせた。

ルーミアが気絶したことにより、闇ははれていき玄武の沢は再び太陽に照らされる。

 

「前よりレベルが違うのは認めますが、相手が同じ手を使ってくる保証はありませんよ。少しは貴方も手を変えないと負けは続きますよ」

 

文はそんな言葉を気絶しているルーミアに言い聞かせるが恐らく耳には入っていないだろう。

 

しかし、流石河童特製のカメラ。ストロボレベルのフラッシュ機能を内蔵しているなんて思わないでしょうねぇ。

さて、とお邪魔しますか。

 

私は河童のアジトへ入り、どんどん奥へと進んでいく。最初は特に違和感がなかったが、奥へ進んでも誰とも会わないことに少し怖くなった。

その反面、これは集団失踪の事件か、とワクワクしたが部屋に貼られているスケジュール表には今日の日付のところに『荷物運搬のため留守』と書いてあり、がっくりと項垂れた。

 

アジト内を色々探索したが、特に何もなかった。変化があったとすれば人形みたいなものを作っている途中だということが分かるぐらいだった。

 

 

 

妖怪の山 近辺上空

 

「はあ、何もつかめなかった。どうしよう、ネタがない」

 

結局、ネタは何もつかめず椛が隠していることも分からないままだ。カメラも点検もできなかったし、散々だ。

ため息をついてがっくり項垂れていると開けた道を歩いている人影が見えた。

 

「うん?あれは」

 

何かな、と目を凝らすとあの人間と同じ格好を着た人間だった。……え、マジで⁉︎

 

「いよっしゃー‼︎」

 

私は喜びのあまりガッツポーズをとる。この二人を取材してあの人間のことを探ろう。それにまだ他に仲間がいるかもしれないし。

 

しかしあんなに大きい鎌を背負うなんて何考えてんだろ。あれほど大きいと動きが遅くなるし、死神のつもりかな。

 

まぁ、そんなことはともかく私は道を歩く二人の前に音もなく降り立つ。目の前にいきなり現れたのがそんなに驚いたのか二人は身構えた。

それだけでこの二人が戦闘経験があることが分かる。先日に見たあの人間も戦闘経験があったのだろうか。

 

「どーもどーも、私は射命丸文。ちょっと取材させてくれませんかね?」

 

私は馴れ馴れしく接するも二人は警戒を解かない。ふむ、見た目が女でもそう油断はしないですか、中々期待できますね。いや、空からいきなり現れて警戒しない方がおかしいか。

 

「残念だが、オレ達はそんな気はない。他を当たれ」

「いやいや、そうはいきませんよ。私は取材と見張りを兼ねているのですよ。こちらとしては貴人達の目的を聞かないと困るんです。そうしないと上がうるさいし色々と面倒なことがあるので、ここは一つ」

 

そうなのだ、ここをこのまま歩いていくと妖怪の山へと入ってしまう。私は見張りじゃないけど出会っておいて何もしないと上から難癖つけられる。前にそんなこともあったし、同じことを繰り返さないようには努力している、と思っているつもりだ。

 

「けっ、鬼や鯰ときて今度は天狗かよ。何でもいるなー、ここ(幻想郷)は」

 

(うん?今鬼って言ったような……聞き違いだよね。いや、もし鬼と出会っていたとしても何で生きてるだろう)

 

大鎌を持った男の言葉を聞いて私の頬を汗が垂れる。

そもそも鬼は地底にいるはずだ。それに人間があんなところから無傷で出られるとは思えないし……地霊殿の主が一枚噛んでいるのかな。

って、そんなことより取材を優先しなきゃ。

 

「どかねーなら無理矢理通させてもらうぞ」

 

そう言って大鎌男は背中に背負っている大鎌に手をかける。

 

「あやややや、これは素直に聞かせてはくれませんね。ならば、力尽くで取材させてもらいます。こちらも都合がありますので」

 

(締め切りやばいし)

 

「おーう、どうやらやる気のようだな。よっしゃー、いくかァ‼︎角都ゥ‼︎」

 

大鎌男がもう一人の方に呼びかけると手にかけていた大鎌を思い切り振り下ろし地面に引きずりながらこっちに走って来る。角都と呼ばれた男の方も渋々といった様子で走って来た。

 

私は空に少し浮かび上がり相手の出方を見る。風見幽香と戦ったあの人間のような攻撃でもくるのか、と。そう思っていると、大鎌男は飛び上がり奇声をあげながら大鎌を振り回してきた。結構なスピードだが見切れない程ではない。

 

「おおっと、危ない危ない」

 

私はそれをギリギリ当たらない距離をとって躱す。もう十センチ程ズレていたら服が傷付いただろうけど、当たらなければどうということはない。

 

「ふっふっふ、その程度の攻撃では私には当たりませんよ」

「チッ」

 

大鎌男は大鎌を肩にかけ忌々しげに文を見る。

 

どうやら空を飛べるのはあの人間だけのようですね。ならば怖いものなしだ。

私は風を操り人間達を跳べなくする。あの脚力だとそこらの木ならひとっ飛びで天辺にまで届くだろう。

しかし、頭巾の男の方は何もしてきませんねぇ。さっき言ったことを気にしているのかな?

 

「あー、うざってーなー。この風は」

「確かにそうだが、別に対処できない訳ではない」

 

二人の男は私が操る風を腕でガードしながらこちらを観察している。

 

「……風、か」

「ええ、そうです。私は風を操る程度の能力。私を捉えることはそう簡単ではありませんよ」

 

ふふっ、何だか楽しくなってきました。さて、次はどうきますかね。

 

 

別日

玄武の沢 河童達のアジト

 

機器や器具などが溢れかえる部屋の中でにとりが壁に追い詰められている。その追い詰められたにとりの表情は恐怖に包まれている。

 

「ま、待ってくれ。もう邪魔はしないからさ」

「お前達が見たい、と言ったから見せているじゃないか。それとも何だ、()()の性能を自身で体験するか?」

 

サソリは少し笑った顔で新たに作った絡繰達を動かした。絡繰達はにとりと他の河童達に向かい迫っていった。

 

「ちょっ、待っ、ギャアアアアアアア‼︎」

 


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