【IS】 転生したので普通に働こうかと思う   作:伝説の類人猿

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毛虫って気持ち悪いですよね。


春の一日

騒がしい入学式も終わりいよいよ新学期が始まったこの頃。

新学期が始まったのでようやく生徒たちもおとなしくなるかと思ったのだがそんなことはなかったようである。

むしろ新生活に余裕が出てきたのか入学式の時よりも騒がしくなっている。

もっとも騒がしくなっているのは今年入ってきた男性操縦者たちが原因なのだが。

 

しかしながら騒がしくなっているのは人間だけではない。

動物や昆虫たちも春の到来に合わせて騒がしく夏に向けた準備を始めている。

準備をするのは構わないのだがどうせやるなら人のいないところでやってくれと思ってしまうのは人のサガである。

 

「なんでこんなにいるのかねぇ・・・」

 

日本の花と言ったら何を思い浮かべるだろうか。

おそらく大多数の人が菊や桜というだろう。

その中でも特に庶民になじみ深いのは桜だろう。

春と言ったら花見である。

桜の花びらが散っていくのを眺めながらお弁当や酒を飲む。

文字にすればただそれだけなのだがその時の記憶はいつまでたっても色あせることはない。

友と共に飲み食いした記憶は長い年月を経て思い出に代わるのだ。

”あの時は楽しかったなぁ”なんていう風に思い返せればいいのだが残念ながら俺の思い出はそうはいかない。どう頑張って美化しようとしても”毛虫がやばかったなぁ”という風に思い返されてしまうはずだ。それぐらい、

 

「毛虫が多すぎる」

 

おそらく花見という記憶のほうが強いので思い出すのに時間がかかるとは思うが桜と聞いて思い出すのはまず一番に花見が来て二番目に毛虫が来るのではないだろうか。

 

毛虫というのは基本的に蝶の幼虫と同じく葉っぱを食べて成長する。

これは蝶と蛾の祖先が同じだったことが関係している。

実は蝶というのは夜行性の蛾が昼間にも活動できるように進化したものなのだ。

そのため蝶と蛾の共通点は多い。

外国なんかではいちいち区別はせずひとくくりにバタフライ(英語)やパピヨン(フランス語)などと呼ぶ。

蝶や蛾などといちいち区別して呼んでいるのは実は日本人だけなのだ。

だがどっからどう見てもこいつらが同じだとは見えない。

 

ただ、細かく見れば違いがある。

たとえば幼虫期の食事だ。

アゲハチョウやモンシロチョウは金柑の葉やキャベツの葉を好んで食べるが蛾の幼虫は若い桜の葉などを食べる。

蛾の幼虫が増える時期は六月から八月の間だ。

ちょうど桜の葉が生い茂っているときである。

花が散った後の桜の木に毛虫がいるのはこのような理由なのだ。

 

しかも困ったことに毛虫の中には毒をもつ者がいる。

見た目のインパクトもさることながらこいつらは毒まで持っているのである。

おまけに今年は非常に暖かい春で例年より早く桜の花が散ってしまったためそれに合わせて毛虫も早めに出てきているのだ。

 

「今年はドクガもいるからねぇ」

 

今しゃべったのはこの学園の用務員をしている(おそらく最高齢者の)轡木(くつわぎ)さんだ。

この人はこの学園のこまごまなことを扱っている人で仕事も多い。

がしかし、身体的なこともあってこうしてしばしば俺たち清掃員や教師などが手伝だっている。

 

「悪いねぇこんなことにつき合わせちゃって」

 

「いえいえ、轡木さん一人では大変でしょうし何より駆除しないと桜の木がダメになって桜の花が見れなくなってしまいますしね」

 

「そう言ってくれると私の気持ちも晴れるよ」

 

桜は日本人の心だからねぇなどと言いながら轡木さんは毛虫をつまむ。

本当は殺虫剤でも撒きたいのだが撒きすぎると木が枯れてしまう上に毛虫の中には死んだ後も毒が残る者もいるのだ。

殺虫スプレーのせいでそんな死骸が広がってしまっては生徒が危ない。

そのためこうして一匹一匹割り箸でつまんで取っているのだ。

 

「特にこの木は弱っちゃっているからねぇ」

 

今毛虫を取っているこの木は日当たりの悪い校舎裏にあるためにあまり元気がない。

しかしながら毎年非常にきれいな花を咲かせておりそれを楽しみにする者も少なくない。

かくいう俺もその一人なのだ。

だから時たまこのようにして有志の人たちが毛虫の駆除をしているのだがいつの間にか毛虫が復活している。

 

「多いっすね・・・」

 

いくらとっても終わらない。取れば取るほど出てきている気がする。

たたけば叩くほど出てくるってホコリかお前らは。

しかしながらどんなものにも終わりはあるもので・・・。

 

「あぁ~。ようやく終わった・・・」

 

時間にしておよそ四十分。

確認しながらの作業だったので時間がかかってしまった。

 

「・・・学園にはまだまだたくさんの木がありますからね?」

 

「あっ・・・」

 

流石は我らがIS学園。ヨッ日本一!(白目)

果たして俺は後何匹の毛虫をつまめばいいのだろうか。

すっかりあったかくなった日差しの下、俺はそんなことを考えながら轡木さんと一緒に毛虫を取るのだった。




轡木さんの画像を検索したんですけど出てこなかった・・・。
いったいいつになったらほかの転生者を出せるのだろうかと思うこの頃。
なるべく早めに出せるよう頑張ります・・・。
皆さんも毛虫やムカデなどの毒虫には気を付けてくださいね。

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