【IS】 転生したので普通に働こうかと思う   作:伝説の類人猿

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…なんかいろいろなモノの伸びが凄い。
…これがメインヒロインの力か……っ!!

注意として今回のお話は主人公がメインです。ISキャラは……後編は出てきます。


学園祭(裏) 前篇

清掃員の仕事は時期によってその忙しさが変わってくる。

これはどこの組織においてもいえることではあるがやはり大きなイベントがあるとそれに比例して忙しくなる。

つまり何が言いたいのかというと現在進行形で俺たち清掃員は忙しいのだ。

 

「いくら掃除をしても終わりが来ない…」

 

学園祭に限った話ではないがないか比較的ゴミが道端に捨てられることがないIS学園にしても学園外から人を招き入れる時にはその分ポイ捨てされるゴミの量も増える。

一応は目の前でポイ捨てがあった時は捨てた本人に注意をしてはいるのだが…。

 

「ポイ捨てをしないでください」

 

「……」

 

こんな風に堂々と無視をする人もいる。

しかもそれをしているのが大人だからたちが悪い…。

いや、むしろここまで堂々と無視をされると怒る気も起きなくはなるのだが…。

こんなんだからいくら掃除をしても終わりが来ないんだまったく。

 

「あ、そこの掃除が終わったら次は山の方を頼むよ」

 

「分かりました副長」

 

おそらくIS学園の清掃員にとって一番忙しい時期がこの学園祭なのではなかろうか。

通常の学校だったら臨時の人間を雇うのだがここはISがある故に早々簡単には学園外の人間を雇うことなんてできない。

つまりどうなるかというと通常の人数で普段の倍以上の量の仕事を捌かなければならないのだ。

…赤色の服でも来たら三倍の速さで仕事を片付けられるだろうか?

 

「おい、お前も山掃除なんだろ?俺もそっちだから一緒に行こうぜ」

 

「おう分かった。ちょっと待っておいてくれ」

 

IS学園の清掃員は総勢二百四十名いる。

学園の大きさに少々見合ってないかもしれないが基本的に学園内の掃除は落ち葉だったりゴミ箱のゴミの回収だったりとそこまで多くはない。

さらに言えばこの学校は生徒の道徳を育むため(人はそれを経費削減ともいう)校内と生徒の使っている寮の部屋に関しては生徒自身に毎日掃除させている。

だからまぁそこまで苦じゃないんだよ本当に。

 

ただしなんにしても例外はある。それが今やっている学園祭だ。

学園祭が行われている間は生徒は掃除が不可能で、おまけに普段と違いえらい勢いでゴミが増える。

そのためその時に関しては生徒の代わりに俺たちが掃除を行うのだ。

もっともそのためにいるようなものなのだが…。

 

「いやあ話には聞いていたが本当に三班全部がフルタイムで出てるんだな」

 

不法投棄された粗大ごみの回収に向かうために俺と同僚は軽トラックに乗り学園内に有る山まで向かう途中そんなことを同僚は呟いた。

今日の担当箇所はあの奇怪な形をした塔のある山だった。

 

基本的に清掃は八十人で一つの班を三つ作りそれを毎日交代で回していた。

ちなみに各班にはそれぞれ副長と班長がいる。まぁ責任者だな。

 

とにかく今日ばかりは三班すべてが仕事をしていた。

理由は単純、人手が足らないのだ。

学園祭をやっているうちは普段の仕事プラス生徒の分の掃除までやらなければならず一人が複数の仕事を掛け持ちしていることなんてこの日ばかりはざらである。

かくいう俺もここに来る前は寮の掃除と教室の掃除、廊下の掃除とグラウンドの掃除をやって来た。

唯一の救いなのは今日の俺の仕事はこの粗大ごみの回収で最後なことだろう。…終わる気がしないが。

まぁともかく。

 

「よし着いた。さぁ最後の仕事だがんばるぞぉ…」

 

「…疲れた」

 

…俺たちの士気はがたがたである。

 

*****

 

「えっさーほいさー…」

 

「……」

 

男二人で山の中に不法投棄された廃材を軽トラに詰め込み焼却所に運ぶ。

まぁできない仕事ではない。…ただし廃材の量が多くて夜中までかかりそうだが。

 

「んしょっとこらっせ」

 

「気を付けて持てよ」

 

どんどん廃材を積み込む。最初に来た時と比べれば幾分かはゴミの山は小さくなったようである。

軽トラを使っているのはゴミが捨ててあるこの場所に来るためには細い山道を使わなければならないからだ。

さらに言えば俺と同僚。どちらも大型車の免許を持っていない。

 

「……」

 

何だろうかこの空しさは。

そう、この感じ。たとえるならばクリスマスイブに家で一人で昨日作った料理の残りを温めなおして食べているような…。さらに言えばテレビではイブの夜の特集が流れていて…いやこれ以上は危険である。

ともかくとして要は空しいのだ。せっかく学園では祭りをやっているのに参加も出来ず人目のない場所でせっせと廃材を片付ける。

それが仕事なので当たり前なのだがなんだかハブられているような気が…いやまあ俺の気持ちの問題なのだが。

 

「…なあ。なんで俺たちこんなところでこんなことをしているんだろうな?」

 

どうやら空しいと思ったのは俺だけではなかったようだ。

同僚も手こそ動かしているものの何とも言えない顔で俺にそう言ってきた。

 

「大体このゴミ山も全然減らないし…」

 

時刻はすでに午後五時。ここに来たのが午後の一時だったのでかれこれもう四時間はゴミを撤去し続けている。

しかしながら依然として目の前にあるゴミ山が減っている様子はない。…むしろ増えてないか?

 

「ああ!もうやってられるかよ!!きりがないぞこの仕事!!」

 

思わずそう叫んでしまった自分は悪くないと思う。実際にゴミ山は小さくなっていないし。

 

「お前もそう思うか…」

 

同僚もそう思ったようで何か決心した目でこちらを見てきた。

 

「なあこのままじゃいつまでたってもここの掃除は終わりはしない。もう四時間だ。四時間。それだけの間俺たちはずっとここのゴミを運び出していた。だがどうだった!?ゴミは減るどころかむしろ増えてやがる!!俺はもう限界だ…。お前もそうだろう?」

 

「ああ。さすがにこれは限界だ…」

 

始める前は新品だったはずの軍手はボロボロに変わっていた。

昨日洗ったはずのくつには穴が開いていた。…もう俺の体力も服も限界だった。

 

「…………もし、もしも。この地獄を終わらせれるとしたらどうする?」

 

…今にして思えばそれは悪魔の囁きだったんだと思う。

 

*****

 

俺は同僚に連れられて港にある倉庫街までやって来ていた。

なんでも倉庫の中に欲しているものがあるんだとか。

 

「R計画って知ってる?昔クリーンセンター(うち)で持ち上がった計画なんだけどさ、要は学園の掃除を全て人間じゃなくてロボットにさせようとしていたのよ。IS学園は機密の塊みたいなところだからその手の情報が俺たち経由から外部に漏れることを上は危惧したってわけ。で、全部ロボットにやらせようとしたんだけどもいざやってみたら維持費や修理費で帳簿がまっかっか。結局上は普通に人間を雇うことにしたってぇわけよ」

 

クリーンセンターというのはその名の通り学園内の清掃に関するすべてを統括する場所である。

IS学園の清掃員はすべてここに所属しているのだ。

 

「でもねやっぱりさぁ~大きなゴミを運ぶのって大変ジャン?それに普通のゴミ袋だって中身があったら意外と重たいわけであって少しでもその作業を楽にしたかったのよ。いやぁ人間考えることは皆同じだねぇ~」

 

そう言いながらクッヒッヒと笑うのは昼に俺に山の掃除に行くように伝えに来た副長だった。

副長は鍵の束を持っておりどうやらその中のどれかが目的の倉庫の鍵になっているようだ。

 

「でだ、先輩方はR計画を聞いてヤッター!って思ったわけよ。ロボットがあれば重たい荷物を自分たちで運ばないで済むからね。所がその計画がとん挫しちまってさあ大変!どうにかして楽をしようと思っていた先輩たちは自分たちでそういう事をしてくれるロボットを作ったわけ」

 

ここだここと言いながら副長が歩みを止めたのは倉庫街の中でも一番隅の方。若干古びた倉庫だった。

 

「えぇっと鍵はぁ………お!ドンピシャリ!!運がいいなぁ」

 

そのまま副長がカギを回す。

 

「ほらほらなあにぼさっと見てんのさぁ。若いもんは働く働く。ほら倉庫の扉を開けちゃって。これって意外と重いのよ」

 

慌てて俺たちは扉を開けにかかる。扉は鉄製だったので確かに重たかった。

 

「でだね、とりあえず先輩たちはロボットの開発には成功したんだけど結局上が新しく人を雇ったからこいつを使うことはなくなったていうわけ」

 

倉庫の中には防水シートがかけられた軽自動車よりも二回りほど大きな物体が置かれていた。

副長はかぶせられていた防水シートを取り外す。

 

「見よオ!これこそ我らが清掃員が誇る世界最高のお掃除ロボット…その名も『ロボタン』ダア!」

 

「「おおう!」」

 

防水シートの下に眠っていたのは恐竜のような形をした一つ目のロボットだった。

 

 

 

「じゃあとりあえずこいつを運ぼうか」

 

「えっと…どうやってですか?」

 

見たところロボタンはそのままの状態で地面に置かれている。

せめてキャスターの着いた台なんかに乗っかっていればまだ楽に運べたのだが…。

 

そう思った俺が副長に聞くと。

 

「ファイト♪」

 

…副長、いい笑顔っすね。俺は涙が出そうです。

 

「…楽するって難しいな」

 

「…ああ、だな」

 

「ああ、そうそうあいにくだけどこいつの重さは三トンだからね。まず軽トラの荷台じゃ運べないよ。頑張って引っ張るんだね」

 

「「……」」

 

ノーリスクハイリターンなんて存在しないんだな。

そう悟った清掃員であった。

 

*****

 

「つ、疲れた…」

 

「言い出しっぺの俺が言ったらいけないとは思うが…まともに掃除をした方が早く終われたかもな」

 

「いやあ、噂には聞いていたけどここが賽の河原かぁ…」

 

紆余曲折あったが何とか俺たちはロボタンをここまで運んで来ることに成功した。

もっともキャスターの着いた台に載せて引っ張って来たから予想よりは早くここまで来れたのだが。

 

…台に載せるまでが大変だったが。

 

さすがにもう軽トラで三トンの物を運びたくはないな。ちょっと走っただけですぐに道からそれてしまうのでうかつにスピードが出せなかった。

 

「…なんです賽の河原って」

 

「あれ、知らないの?ここっていくらものを片付けてもきりがないから裏でこっそりそう呼ばれているんだよ。前に一度ここに不法投棄していく業者を捕まえるために俺たちと教師、それに警備の連中まで一緒になって追っかけたんだよ」

 

「それで…結果は?」

 

「今の状況がその答えだがね。まぁかろうじでピントのずれまくった犯人の写った写真が一枚手に入ったぐらいかな」

 

「そこまでしてここに捨てたいのか…」

 

言うな同僚。…しかし凄いなその業者。

下手したら世界最強の織斑さんとか、まだ見たことないけど篠ノ之束とか超えるんじゃなかろうか。

 

「まぁともかくとしてここまでお疲れちゃん♪さぁ~てそんな君らの働きに免じてこいつの起動とかその他もろもろは俺がやっちゃうよ~。さあてはずはこいつの起動ビスケットを…」

 

「それちゃんと動くんですか?」

 

こう言ってはなんだが結構放置されていたように見えたし本当に動くのかには疑問が…「動いたア!」…問題なかったようだ。

 

『グオオオオオオオオオン!!』

 

独特な機械音を出しながらロボタンは起動した。

錆が出来てしまっているのか若干関節部分からぎしぎしと音がしていた。

が、しかしそれ以外には特に問題は無かったようでロボタンの視線はゴミ山へと向かっていた。

 

『グオオオオオオ!』

 

「うわっ!?」

 

「おうう!?」

 

「お~どうやら問題はないみたいねぇ。食べてる食べてる」

 

どうもロボタンは掃除機のようにゴミを吸引するのではなく直接口?らしき部分からとっていくようだ。

なんというか本当に食べているように見えるなこれ…。

恐竜が仕留めた獲物を食べているみたいだ。

 

「は、早い…」

 

「や、やつの速さはさんば…ゲフン。俺たちも見習いたい速さだな」

 

同僚よ。以前の日本ならともかく今の日本は非常に著作権に厳しい国になったのだ。そのような発言は我が身を滅ぼすぞ。

…もっとも同人誌というものは未だになくなっていないが。これがジャパニーズオタクの魂か。

 

しかし早い。ロボタンの掃除は本当に早い。

ロボタンの口はショベルカーのショベルが二つ上下に組み合わさったようなもので見ただけでも固そうだと分かる。

関係ないけどショベルカーってかっこいいよね。

俺がこの世界に来て真っ先にやったのはショベルカーに乗ったことだったりする。いや、ほら体に心が引っ張られるというかね。まあそう言うものが好きだったのよ。

中身はともかく見た目は子供だったから割と簡単に載せてくれたのはいい思い出だ。

 

「「「おおう!!」」」

 

時間にして三十分。たったの三十分でロボタンはあふれんばかりであったゴミ山をきれいに野に帰した。

俺たちの四時間とはいったい…。

 

「あぁ~やっと帰れる!!」

 

「だなぁ…」

 

時刻は午後の七時。今頃は学園祭の〆生徒会主催の観客参加型の演劇「新訳:灰被り姫」が行われている真っ最中だろう。

しかしもはやそれを見ようとも思わない。

俺も同僚も今日は一日働きづめだったのだ。もう体も服もボロボロだ。

 

「おまえらぁちゃんとロボタンを倉庫に持っていくまでが仕事だからなぁ?ほらほら最後のひと踏ん張りよオ!」

 

「いやはや、先輩方には本当に感謝しないといけませんね…」

 

「おいおい俺にもちゃんと感謝の気持ちを示せよオ?本当はロボタンは持ち出し禁止なんだからな」

 

「へえ、何でですか?」

 

「そりゃお前さんあんなのがいたら俺たちの仕事が無くなっちまうだろうが。あんなのがあったら俺たち清掃員はすぐに用無しになっちまうよ」

 

ああそう言うことか。意外とせこい理由だったのね…。

いやまぁ確かにIS学園としてはなりべく部外者は校内に入れたくないわけだからこんないいものがあったら絶対にそっちを採用するよなぁ。

まぁいいやとにかく仕事は終わった。さあさっさと帰るぞオ!

 

「あのう、副長。こいつってどうやって停止させるんですか?」

 

同僚が副長にそう聞いてくる。

そういえばまだ停止方法を聞いていなかったな。

 

「確かに。どうやって停止させるんですか副長?」

 

「え?そりゃもちろん…もちろん……もちろン…………」

 

「「え?」」

 

「………………どうすんだろう」

 

 

 

 

 

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオン!!!』

 

瞬間その場が凍りついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はふ、副長…なんかあろロボット俺たちの方を見ていませんか?」

 

「ふ、副長。お、おれもそう思うんですけど…!」

 

ロボタンはゴミ山のゴミを全て片付け終えると今度は目を怪しく光らせながら俺たちの方を見てきた。

 

「ひょ、ひょっとして半日の間ずっとゴミと触れてきたユーたちにゴミの匂いが染み込んじゃっているとか…?」

 

「つ、つまり……?」

 

「………同僚。どうやらやっこさん俺たちを片付けようとしているみたいだ。……あの自慢の口を使って」

 

「………おーまいごっと」

 

「にっ!!」

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!』

 

『逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

学園祭は終わりを迎えようとしていた。




補足としてロボタンの絵でも……一応見なくても話しは分かるように書いているつもりですが念のため。


【挿絵表示】


次回の投稿は本当に未定です。評価・感想を下さった皆様、本当にありがとうございます。

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