【IS】 転生したので普通に働こうかと思う 作:伝説の類人猿
wikiより出典。
…投稿が遅れてしまって申し訳ございません。
「…あいつは楽しいのだろうか」
篠ノ之箒はそんなことを考えていた。
箒のいる一年一組は他の暮らすよりも忙しかった。
その原因はやはりIS学園にわずかしかいない男子生徒がいたせいなのだろう。
もう一つの理由として織斑千冬がいたからなのかもしれない。
箒のクラスが今年の学園祭で行ったのは喫茶店だった。
それもいわゆるメイド喫茶。
ただし世間一般のそれとは違ってメインとなるのは男子生徒である。イケメンの。
IS学園の男女比率は非常に極端である。まぁその理由は男にはISが動かせないからなのだけれども。
それゆえ生徒たちは基本的に男と関わる機会がほとんどなかった。
が、時期的に言えば花の高校生である。思春期の真っただ中なのだ。異性に興味のない人間などほぼいまい。
そう、一夏たちが入学した当初の彼らの目はまさに野獣のそれであった。
あの時ほど一夏が鈍感で助かったと思ったことは無かっただろうと箒は思う。
まぁそのせいで自分も苦労しているのだが…。
ともかくとしてきっとあの鈍感具合ならばすぐに周りは一夏を攻略することをあきらめるだろうと箒は思っていた。思っていたのだが…。
「一夏さ~ん。こちらがイギリス名物のウナギゼリーですわ!!」
「ちょ、ちょっと待てセシリア!モザイク!モザイクかかっているぞそれ!!」
「なんだあの物体は…」
未だに一人、一夏を攻略することをあきらめようとしないものがいた。
セシリア・オルコットだ。
彼女はなぜかクラス代表選をした後に一夏にすり寄って来たのだ。
その理由は未だに不明だ。
彼女のルックスは同じ女である箒の目から見てもなかなかだと思っていた。
出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。
そして何よりもすごかったのが金髪である。自分にはないそれを箒はとてもうらやましく思っていた。
「ああすみません。私としたことが。これの正式名称はジェリードイールですわ!」
「違うよね?訂正すべき点はそこじゃないよね?」
「骨に気を付けて食べてくださいまし!」
こんな時に長考してしまったなと思い箒がとりあえずセシリアから一夏を取り戻そうと顔をあげたところ一夏が何かモザイクのかかったぐちょぐちょしたものを口に含まされていた。
「いい加減にしろ!大体なんなのだお前は!私と一夏の間にいきなり割り込んできて何のつもりだ!」
「あら箒さん。大和撫子というのはあなたのように怒りをストレートに相手にぶつける方のことを言いますのね。勉強になりましたわ☆」
「うるさい!大和撫子なんてとうの昔に絶滅したわ!私が聞いているのはなぜ教室で働いているはずのお前がこんなところにいるのだ!お前の休みはもっと後だろう!」
「あまりにもお客さんが来るのでもう材料の在庫が切れてしまいましたの。ですのでもうお店はお開きですわ。今頃は他の皆様も思い思いに過ごしていると思いますわ。わたくしはそのことを知らないであろうあなたたちにそれを伝えに来ましたの」
「そ、そうだったのか…。すまないな怒鳴ってしまって…」
「いえいえ私の本来の目的は一夏さんと学園祭を二人で楽しむことですから。それでは私たちはこれでおさらばしますわ」
「ああ、それじゃあ…ってそんなことさせるかア!一夏は私と回っていたのだぞ!!」
「ど、どうでもいいから誰か水を持ってきてく…れ…なまぐ…さい…うえぇ…」
はたから見たときのこの光景はとてもカオスだったという。
*****
「幼馴染失格だな…いや、人としても失格しているのだろうな私は…」
あの後もしばらくの間箒とセシリアはお互いに言いあいを続けていた。…一夏を無視して。
水を飲んで何とか復活した一夏は別にいいさと私たちを許してくれた。
だがどんな状況であれども一夏を無視していたという事実は変わらない。
箒は当人を無視して勝手に一夏の所有権をセシリアと言い争っていたのだ。
「ふっ、何が私と回っていた…だ。結局は私に仕方なく一夏が付き合ってくれただけではないか…。それなのに私はあいつのことをいつも無視して…自分の考えていたようにうまくいかなかったら癇癪を起こして…。いつもだ…いつも。なんで素直になれないのだろうな…私は…わたしは…わた…し…は…」
私はバカだ。どうしようもないほどの大馬鹿だ。いつだって一夏は私と一緒だなんて思っていて…そんなことあるはずないのに。
いつも私は一夏と同じ土俵に立っていなければ満足できなかった。剣道だってそうだ。私は引っ越しをした後も一夏は剣道を続けていると思っていた。
私と一夏は同じ土俵に立っていると思っていた。
でも実際はどうだった?一夏は家庭のためにアルバイトをしていて部活をする暇なんて無かった。
当たり前だ。一夏の家の経済事情が苦しいのは私だって知っていたのに…。それで癇癪を起こして…ISの操縦もろくに教えずに私と同じ土俵に立ってほしくてずっと剣道を教えて…。
「おかしいよな私は…。挙句の果てに一夏と同じように専用機が欲しくて…家族を使って手に入れて…それでどうなった?幸せになったのか?多くの人に迷惑をかけたのにか?間違いなくアメリカのISの暴走を起こしたのは姉の仕業だ。私に経験を積ませるために暴走させたんだ。それで?パイロットが死にかけて…」
どんどんどんどん思考が暗くなっていく。
でも実際にそれを私はしたのだ。
「恥ずかしくなったらすぐに暴力に出て…痛かったよな一夏。当然だろうな…木刀も持ち出していたしな…」
何でこんな凶暴な女に一夏がついてきてくれると思うのだろうか。
すぐに殴ってくる女。常人なら耐えられないだろうにあいつはなんで…。
「なんで怒ってくれないのだ一夏ぁ…!」
泣いた。
*****
箒は本来ならば生徒会主催のシンデレラ…「新訳:灰被り姫」に出るはずであったがどうにも気分が乗らず土壇場で参加を拒否した。
ああまた人に迷惑をかけたなぁと思いながらも箒としてはとにかく今は一人でいたかったのだ。
時刻はすでに夜へと移っていた。もう他のクラスも出し物を終えてみんな生徒会主催の最後の出し物を見に行っていた。
そんなか箒は島の中央にある奇怪な形をした塔に来ていた。
さすがに塔には登れないがその周りにはちょっとした原っぱがありそこからはIS学園を一望することが出来、箒のお気に入りの場所であった。
この場所を教えてくれたあの清掃員には感謝しなければなと思っていた。
「はぁ…」
この場所にはベンチなんてものは無い。箒は服が汚れることも気にせずに地面に座った。
そこから見えたIS学園は眩しかった。特にアリーナのあたりはひときわ眩しかった。
「今頃はあそこで一夏が逃げ回っているのだろうな…」
必死に女子生徒から逃げる一夏の姿を想像すると思わずくすっと笑ってしまった。
「…………」
あのあとは結局、箒と一夏とセシリアの三人で一緒に学園祭を楽しむことにしたのだがその途中でも何かとセシリアと箒で張り合ったりして一夏には多大な迷惑をかけてしまっていた…と思う。
箒は箒であって一夏ではないのだからあの間の一夏が何を考えていたかなんてわかりはしない。
でもその時の状況を聞けば十人中十人が迷惑だと答えるような行動をしたと言えるだろう。
「嫌われて……はないのだろうなぁ…。ああ、きっとあいつのことだ何事も無かったかのように明日もあってくれるに違いない…」
箒はそのことがうれしくも思ったが同時に悲しくも思った。
嫌われたくないという気持ちと怒ってほしいという気持ちが二つぐちゃぐちゃに混ざってしまって箒自身ももうどうしてほしいのかよく分からなかった。
「あいつのいいところは優しいところだ…でも、あいつは優しすぎる…。どんなにひどいことをしてしまっても絶対に許してくれる…。それじゃあ、それじゃ駄目なんだよ…一夏。そんなんじゃ、そんなんじゃ…そんなんだから私は……お前に甘えてしまうんだぁ…!」
泣く。-どうしようも出来なくて泣く。
泣く。-こんな自分が嫌で。
泣く。-寂しくて泣く。
泣く。-誰にも近寄ってほしくないから。
「うぅ…うぁああん…ひぐっ…うぅ…いやだよぉ…いやだよぉ…あぁぁ…ぐすっ…」
何が悲しくて泣いているのかなんて泣いている本人ですらわからない。
でも、なぜか急にとても泣きたくなって、悲しくなって。
何がいやなのだろうかと箒は泣きながら妙に冷静な頭で考えていた。
いやなのはいつまでも変わらない自分か?
いやなのは思い通りに回ってくれないこの世界か?
いやなのは私を許し続ける一夏か?
そのどれも違うのかもしれない。どれも当てはまっているのかもしれない。
ひょっとしたら理由はないのかもしれない。
でもこれだけは分かる。
「………一夏と一緒に居たい」
依存しているのかもなと箒は自嘲した。今だってそうだ。
こんなに悲しいのに一夏に会えばすぐにうれしくなってしまうのだろうと心の奥で確信している。
「私は大馬鹿だな…」
どうしようもないくらいの大馬鹿者で短気ですぐに殴ってお礼の一つも言わない。
「人間として必要なものが何もないのだな私は」
でも私は言葉を知っている。感謝の気持ちを伝える方法を知っている。心というものを持っている。
「今すぐは無理かもしれない。一生変わらないのかもしれない。でも」
一回だけでも…いや、本当は何回でも言いたい。伝えたい。
でもそれをする勇気はまだ無いから。
「いつもありがとう………一夏」
今はここからで勘弁してほしい。絶対にいつか隣で言うから。
その時が来るまで。
「一緒にいてくれ。一夏」
そう言った箒の顔にはもはや悲しみなんて存在していなかった。
その時だった。
「!!?」
アリーナが光り爆発音が届いたのは。
そしてその時だった。
「!!!!!?」
『ウオオーン!!』
「た、助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」
「右だ!右!右にまがれぇぇぇ!!!」
恐竜のような姿をしたロボットに追いかけられている二人組の清掃員の姿を見たのは。
…せっかくのシリアスが台無しである。
実を言うとほとんど書く気が失せていました(小声)。
ただ、久々に小説情報を見たら評価で十が付けられているし、お気に入り登録が増えているし…これは投稿せないかんでしょと思い投稿いたしました。
評価をくれた皆様本当にありがとうございます。次回の投稿がいつになるかは不明ですが近いうちに投稿いたします。
次回『ロボタン現る』シリアスなんてありませんでしたとさ。