【IS】 転生したので普通に働こうかと思う   作:伝説の類人猿

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すみません・・・風が思ったよりも長引いちゃって・・・。
手洗いうがいは大事ですね。皆さんも風邪をひかないように気を付けてくださいね。


宿題

たくさんの学生が駅に向かって歩いていく。

その顔はどれもこれからの予定が楽しみなのか笑顔だ。

 

「おお、おお・・・。果たしてあの顔もいつまで持つかな」

 

国立IS学園は今日から本格的な夏休みだ。

いや正確にはもうすでに夏休みだったのだが昨日まで夏の課外が行われていてほとんどいつもと変わらなかったのだ。

 

そしてその課外も昨日で終わり。

これから二週間が本格的な夏休みになるのだ。

 

外国の学生も日本の学生も、みんな年齢国籍関係なく久々の大型の休みに心を躍らせているのだ。

 

だが!!忘れてはならない。

・・・八月三十一日の悪魔を・・・。

”だ い ま お う は ち か ら を た め て い る”

い、いかん!?このままでは大魔王が目覚めてしまうぞ!!

勇者よ、目覚めよ。目覚めるのだ!!今こそこの国を、世界を守るのだ!!

 

「なぁ~にをバカなことをやっているのだお前は」

 

「あ、織斑さん。こんにちわです。今ちょっと俺の右手が疼いて・・・冗談ですよ。織斑さんも帰省ですか?」

 

俺が箒を片手にRPGの最初の方でよく出てくる大賢者の真似をしていると織斑さんがやって来た。

スーツケースを持っているということはおそらく家の方に帰るのだろう。

IS学園はこの時期に関しては教師も学生もゆっくりと休める。

もっとも教師たちが休めるのは一週間ほどだがそれでも社会人としてはかなり休めているのではなかろうか。

 

・・・ちなみに清掃員は夏休みの間もしっかりと掃除を行って学園をきれいに保っておかないといけない。

まぁその代り毎週一日は休みが確保されているからいいんだけども。

 

「まぁそんなものだ。それでお前は今日も仕事か?」

 

「ええまぁそんなところです。ま、いつも通りってとこですね」

 

「そうか。・・・実家に帰ったりはしないのか?」

 

「まぁ近いうちに行くつもりですよ。ただ、実家が福岡なのでなかなか費用が・・・。ま、帰省ラッシュが終わってからになりますかね」

 

「福岡とは・・大変だな」

 

実際問題大変である。

飛行機のチケット代とかもあるし・・・最近は新幹線もあるがあれはあれで大変だ。

東京から福岡まで新幹線で行くと五時間ぐらいかかるからもう本当に疲れる。

新幹線は大阪までが限界だな。

 

よって必然的に一時間ほどで行ける飛行機で行くことになる。

・・・お金はかかるが。

まぁ最近は格安のチケットもあるし多少は財布に優しくなったかな?

 

「それでもやっぱりたまには親に顔を見せなきゃいけないですしね。これも子供の義務ってやつですよ」

 

それにいつ会えなくなるかも分からないからな。

だから会えるうちに会っておく。後悔をしないように。

これは前世から学んだ知識だ。

 

「・・・義務・・・か」

 

俺の話を聞きどこか遠くを見つめながら織斑さんはそうつぶやく。

 

・・・っていうかそういえば織斑家って両親が消えたんだっけ。

・・・やばい、すっかり忘れてた。この手の話をするべきではなかったなぁ・・・。

 

「あの・・・すみません。嫌なことを思い出させたようで・・・」

 

「いやなに、昔を思い出していただけだ。なぁに気にするな。特にそう言ったものではない」

 

そう言って織斑さんはほほ笑む。

 

「・・・なぁもしも親にもう二度と会えなくなったってしまったとき、どうしてももう一度親に会いたくなってしまったらお前ならどうする?」

 

そう織斑さんは俺に聞いてくる。

 

「そうですねぇ・・・タイムマシンでも作りましょうか。なるべく燃費のいいものを。ガソリン代がかかりすぎるのも問題ですしね」

 

「クッハハハ、そうかそうか。なるほどな、タイムマシン、しかも燃費のいいものか。ああ、確かにタイムマシンがあってもバカみたいに燃料費がかかってしまったらどのみち使えないものな」

 

俺がほとんど冗談で言ったことに織斑さんは大笑いする。

あ、何でほとんどかっていうと燃費に関してはそういう考えだから。

だってねぇ・・・タイムマシンがあってもその燃料がドラゴンボールとかだったらどうするよ?

まず普通の人間なら集めれないぜ。

 

つまりどんなにすごい機械であってもそれの燃料は一般的なものでないとただの珍品になってしまうというわけだ。

 

「もっとも織斑さんなら世界最強なんですし多分気合と根性で親と会えるんじゃないんですかね?」

 

「ほう?つまり私が脳筋だとでも言いたいのか?力だけで物事を解決する脳筋だと?」

 

痛い痛い痛い!!やめてアッパー掛けないで!!

死ぬ、死んじゃう!!あかんこれじゃ主人公がしぬぅ!!

 

「まったく・・・。今度からは言葉に気をつけろ」

 

「うへぇ・・・了解しました・・・」

 

いやしかし思った以上にあの技は効いた。

はぁ・・・。

 

「・・・まぁでもそんなに深く考える必要はないんじゃないですかね?どんなことがあったのかはわかりませんけど少なくとも織斑さんのご両親はこの世に存在しているんでしょう?そりゃ別次元に飛ばされてしまったとかならもう絶望的ですけど少なくともこの世界にいるのならいつか会えますよ。あ、いやまぁ会うことが出来ないと仮定したときの話ですよ?」

 

「・・・そうだな。確かにその通りだ。この世界にいるのだから必ず会えるに違いない。うん、すまないなこんな話に付き合わせてしまって」

 

そう言って織斑さんは頭を下げる。

 

「織斑さん、ここはそうじゃないでしょ」

 

「え?」

 

不思議そうな顔で織斑さんは俺を見てくる。

 

「こういう時はすみませんじゃなくてありがとうですよ」

 

「・・・ッ!?・・・ああ、ありがとう。助かったよ」

 

ハッと気づいた表情をして、織斑さんは改めて俺に言葉を投げかけてきた。

うんうん、それでよろしい。こういう時の言葉は素直に感謝の気持ちを伝えるもんだよ。

 

「どういたしまして」

 

織斑さんの言葉に俺は笑顔でそう返事をするのだった。

 

蝉の声が青空に響き、どこまでもはっきりとした気持ちのよさそうな白い雲が漂う夏の空。

ありがとうと言った織斑さんの表情は向日葵のようだった。

 




今週と来週がちょっと個人的なことでいろいろとごたごたするので更新が不定期になります。再来週からは通常通りに投稿できると思いますのでなにとぞご勘弁をお願いします・・・。

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