【IS】 転生したので普通に働こうかと思う 作:伝説の類人猿
「ISについて教えてほしい?」
「・・・まぁ・・・な」
こんにちは、山田真耶です。
先ほど午後のホームルームを終えて職員室へ戻ろうとしていたのですがその途中で声を掛けられました。
私に声をかけてきたのは蝶部 理場(ちょうべ りば)さんです。
蝶部さんはどんな子なのかというとナウでヤングなイケイケ女子です。
入学式の時にはとても苦労しました・・・。
彼女髪を金髪に染めて学校に来たのです。
IS学園はそのような行為を禁止していますからとりあえず生徒指導室の方へ連れて行って事情を聴いたのですが・・・髪を染めてきた理由が、
「だってそっちの方が男子に受けるもん」
来週は肌を黒くするつもりだとまで言い出しちゃって・・・その後織斑さんに来てもらって指導してもらいそれらの行為をしないと約束してもらったんです。
もっとも言葉づかいまでは直そうとはしませんでしたが。
彼女がここにこれたのはISへの適性がAもあったからで本人の意思で来たのではないんです。
日本ではIS適性がA以上あるとよほどの事情がない限りここに来るようになっているのです。
やはりISの適性というのはある程度までなら努力でどうにかできるのですが、適性Dの人がどれだけ頑張っても適性がAの人が努力をすればそれに追いつくことはほぼ不可能なんです。
適性というのは一種の才能なんです。
そして適性がAの人は世界的に見ても非常に珍しく下手をすればテロリストに狙われかねないのです。
これはなぜかと言いますとISの適性は=ISの稼働率を表しているのです。
つまり適性がDの人はISの持っている力のごく一部分しか使えず、この適性が上位であればあるほどIS本来の力を使えるようになるのです。
なぜ條ノ之博士がこのような特徴を持たせたのかは謎ですがこのことが分かってからはどの国も上位の適性者の囲い込みに力を入れています。
そして時には合法に、不可能ならば力ずくで・・・ありとあらゆる組織が手段をえらばず上位の適性者を狙っているのです。
そのような組織から狙われにくくするために日本では上位の適性者はほぼ強制的にIS学園に通わせているのです。
もっとも今年は男性操縦者が発見されたのでほぼすべての視線がそちらの方に向いてますからこのような人たちが狙われる可能性は低くなっていますが・・・。
ともかくそのような背景があったのです。
そして彼女は適性はありましたがそれを伸ばそう、使おうという意思はありませんでした・・・。
もちろんそのような道もあるとは思うのですがさすがにIS以外の教科でも同じなのは困るのです。
何度注意しても「あー」とか「うー」としか言わずに話を聞き流し、まったく勉強をしようとしなかった蝶部さんがISに興味を持つなんて・・・私感激です!!
「もちろんいいですよ!!ようやく勉強をしようという気になったんですね!!?」
「あ・・・いや、まぁ・・・教えてほしいのはISだけなんだけどさ・・・」
何か言っていますがそんなの無視です!せっかく勉強をする気になったのです、ここが人生のターニングポイントになるようにするのが教師の役目です!
と、大事なことを忘れていました。
まずはなんでそのような気になったのか理由を聞かないと。
「それで何でISについて勉強しようと思ったのですか?」
「・・・実はな・・・」
暗い顔をしながら蝶部さんは私に理由を教えてくれました。
*****
「ふうん、整備課希望ですか・・・」
ここはいつも私が通っている秘密基地。
私は今日のことを清掃員さんに話しました。
「ええ・・」
蝶部さんのやる気が出たのは教師として非常に喜ばしいことなのですがあんな原因でやる気が出てほしくはありませんでした・・・。
「弟が交通事故で足を切断・・・か。まだ小三だったんでしたっけ?」
「そうなんです。それで義足をつけてもらったらしいのですが・・・あんまり馴染めていないそうです」
「ISって元は宇宙で活動するためのパワードスーツなんでしたっけ?」
「はい。なので搭乗者の体に負担を掛けないように常に体調管理を行っているんです。また、ISを展開することは擬似的な体を作り出すのに近く感覚もそれに似たものになっていて・・・」
「義手や義足にはもってこいだと。考えたねぇ・・・」
蝶部さんのアイデァは本当にすごいと思います。
しかもその発想の原因となったのが以前に私が行った作文なのですから教師としてこれ以上嬉しいことはありません。
ですが・・・。
「ISは女にしか反応しない。山田さんが悩んでいるのはそこですか?」
「・・・はい」
確かに蝶部さんのアイデァはいいものです。
しかしながらそこには「ただし」がついてしまいます。
現状例外はあるとしてもほぼすべての男性がISの適性を持ってはいません。
もともとISはなぜか女性にしか反応しなかったのです。
「・・・」
ふむ、と考えてから清掃員さんは私にこう言いました。
「それって不可能なんですか?」
「いえ、理論上は男性にも微量の適性はありますが・・・」
が、あくまでも微量であって起動もできない量なのだ。
とてもじゃないが男性がISを使うことなど・・・。
「だったらISについて伸ばしてやらんね!!弟さんを救おうと考えて教えてもらいに来たんやろ!!それなのに教師がそんな態度でどうするんか!!」
「!?」
「・・・山田さん、生徒はどうして教師に教えてもらっていると思いますか?」
清掃員さんは真剣な顔で私に問いかけてくる。
教師に教えてもらう理由?
え、えっと・・・。
「生徒はみんな自信がないんですよ。このままの状態で社会に出る自信がない。だから学校に行って色々なことを教えてもらって自信をつける。これならもう世の中に出ても大丈夫って思えるようになるまで何年もかけてじっくりと自信を作り上げるんです。そして生徒に自信をつけさせるのが教師の仕事なんです。」
清掃員さんは私の目をじっくりと見て諭すように言いました。
「それなのに教師が自信を無くしていたらいかんでしょ?」
その言葉は私の胸に深く、深く染み込んでいきました。
*****
「あなたが怒るところは初めて見ましたよ」
「あ、轡木さん。見ていらしたんですか」
ええ、と言いながら轡木さんは俺の横の席に座る。
もちろんお酒を持って。
「怒りすぎちゃいましたかね・・・」
あの後かなりきついことを山田さんに言ってしまった。
山田さんは俺の言葉を全て聞き終えてから席を立っていったのだ。
・・・涙を流しながら。
「ええ、それはもう。外まで怒鳴り声が聞こえてきましたよ」
「冗談きついですよ轡木さん・・・」
かっかっかと笑いながら轡木さんは酒をコップに注ぐ。
「でも、外ですれ違った彼女の目。とてもいい目をしておりましたなぁ。あれなら大丈夫でしょう」
あの子はきっと伸びますよ、と言いながら轡木さんは俺のコップにも酒を注いでくる。
「だといいんですけどね・・・」
怒るというのはきついことなんだなぁと思いながら俺は注がれた酒を一気に飲むのだった。
なおこれより数年後ISの技術を応用した男女両方使用可能な義手・義足が世に登場することになる。
その開発者の名前は蝶部というのだがこれはまた別のお話である。
地球防衛軍4.1が面白すぎて話を書く暇がない・・・(・ー・;)
ところでこんな物語を読むのはよほどの暇人か物好きだと思うんですけどどうなんでしょうね?
IS要素とかほとんどないし・・・。