【IS】 転生したので普通に働こうかと思う   作:伝説の類人猿

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なんか微妙な話になってしまった・・・。


ホームシック

「明日は確か休日だっただろ?」

 

「はい、そうですけど何かありましたか?」

 

秘密基地でいつものように愚痴をこぼして酒を軽く飲む。これがIS学園での俺の日課みたいなものだ。

もっとも俺が愚痴をこぼすことよりも山田さんとか織斑さんとかが愚痴をこぼすことの方が圧倒的に多いのだが。

 

それで今日もいつものように酒を飲んで帰ろうとしたところで織斑さんに引き留められた。

明日なんかあるのかな?

 

「あぁ、明日もちょっと学園の方に来てもらえるか。場所はここだ。時間は朝の十時だ」

 

「・・・ずいぶんとまた山の中ですね」

 

「まぁちょっとな」

 

「・・・まぁ構いませんよ。どうせ休みの日にすることなんてほとんどありませんし」

 

若干言葉を濁したことが気にはなるがまぁ変なことをするつもりはないだろう。

それにどうせ明日やることだって寝ることぐらいだし。

 

織斑さんとそんな会話をして俺は帰宅するのだった。

 

*****

 

「もっとしっかり空気を入れてくださぁい!」

 

「まったくこのぐらいもできないのか」

 

「つ・・・疲れた・・・」

 

「駄目だぞそんなんじゃ!そんなことでは世界一位はねらえないぞ!!」

 

「はっはっは、若いというのはいいものですなぁ」

 

やあみんな、清掃員だ。

今何をやっているのかというとペットボトルロケットの打ち上げ準備をしている所だ。

材料は各自で家から持ち寄った。

 

ロケットの本体はペットボトル、羽は牛乳パック、あとはロケットの鼻先に重石代わりの新聞紙を詰め込む。

接着剤は使わず粘着テープで全部くっつける・・・と非常にエコロジーだ。

ちなみに重石を乗っけておかないとうまく飛ぶことが出来ない。

 

ちなみにペットボトルロケットで重要なのが発射台だ。

こいつが無きゃロケットは打ちあがらないからな。

これを自作しようとすると結構手間がかかってしまう・・・が最近はペットボトルロケットの工作キットなんかが出てるから千円ぐらい出せば手に入ると思う。

 

ちなみに俺たちは後者の方を選んだ。

と言っても買ったのは同僚なのだが。

 

さてといい加減今の状態を説明しようか。

翌日になって俺は時間通りに指定された場所へ来たのだが、そこにいたのは織斑さんと山田さんと轡木さんと同僚の四人だった。

 

で、同僚が若干興奮気に俺に説明してくれたのだがなんでもペットボトルロケットを打ち上げるそうで、それに俺も参加しろと。

しかも各自でオリジナルのロケットを作って誰が一番とんだかを競い合うらしい。

 

それで材料一式を渡されたのだが、これがなかなか。

意外とロケットを作るのが楽しいんだわ。

いやぁかなり熱中してしまった。

あんまりにも熱中しすぎてみんなから温かい目で見られたのは今すぐにでも消し去りたい思い出です。いや本当に。

 

なんか周りが静かだなぁと思って見回したらみんな温かい目で見ていたんだもの。

非常に恥ずかしかったとです。

まぁでも最近あんまりこういう事してなかったから新鮮だった。

 

織斑さん、山田さん、轡木さんの順にロケットを打ち上げて今は俺の番だ。

現在の所一位は織斑さんの百九十三メートル。

ちなみに飛距離の計算は山田さんの持ってきたISで図っているからほとんど間違いはないはずだ。

 

「じゃぁ準備はいいですかな?三、二、一っ!」

 

轡木さんの合図とともに俺のロケットが打ちあがる。

飛距離は百五十メートル。

ぜんぜんだったな。

 

「あちゃぁ~一位は無理だったかぁ」

 

「残念でしたねぇ~。ラストは同僚さんですよ!」

 

ファイト!と山田さんに励まされながら同僚がロケットに空気を入れ始める。

その様子を眺めている俺に織斑さんが近づいてきた。

 

「その様子だと楽しかったようだな」

 

「あ、織斑さん。えぇおかげさまで、すっかり子供になってしまいました」

 

たまには何かに打ち込むことも大事だなぁって思った。

ここんところ何もしていなかったからなぁ。

 

「そうか、それは良かった。・・・実はなお前のことを心配していたんだぞ」

 

「え?」

 

「ここ最近のお前は何か元気がなかったではないか。仕事が終わった後はぼーっとしていたり、何か思いつめたような顔をしていたりして、心配していたんだぞ」

 

そんな風になっていたのか・・・気づかなかった。

 

「別に何があったかは聞かん。ただあんまりにもお前の元気がなかったからな、気分転換でもさせてあげようと思ってこの企画を考えたのだが・・・予想以上にいい気分転換になったようだな。もうすっかり元の状態だぞ」

 

「そうだったんですか・・・。すみません迷惑掛けちゃって・・・」

 

「馬鹿者、お前にはいつも世話になっているからな。これはその分のお返しだ。それとこういう時にはありがとうと返事をしろ」

 

「ははは、おっしゃる通りで。・・・本当にありがとうございます。まぁその・・・元気がなかったのはちょっとしたホームシックにかかっちゃって・・・」

 

まぁあれだ、俺は転生してもう二十五年になるわけだがやっぱり時たま前世のことが恋しくなっちゃうんだよ。

不思議なもんであれだけ「消費税が値上がりするぞ」とか「若者が少ない」とか「不景気だぁ」とか騒がれていたとてもじゃないが良い環境とは言えないあの世界でも恋しくなっちゃうんだよなぁ。

 

ここ最近は特に前世の親父たちのことを考えてた。

俺の前の親父はものすごい飲んだくれで給料の三分の一ぐらいが酒代に使われて、母さんはものすごい節約化で穴の開いた靴下だっていつまでも履かせられて、いろいろ両親とは喧嘩したけれどやっぱり親なんだよなぁ。

いざあえなくなると途端に会いたくなってきちまう・・・。

 

前世では正月くらいにしか会いに行ってなかったのにな・・・。

本当不思議なもんだよ。

 

今の俺の両親はとてもいい人だ。俺のことを心から愛してくれたしな。

もっともそんなのは親だったら当たり前か。

今の親にはいろいろ感謝してるよ。もっともやっぱり何かと喧嘩はしたけど・・・。

 

「上がったぞぉ!!飛べぇっハクオウ!!!」

 

と、そんなことを考えている間にとうとう同僚のロケットが打ちあがったようだ。

 

「織斑さん、本当に今日はありがとうございます。気分が晴れました。もう大丈夫です」

 

ペットボトルロケットはかなりの気分転換になった。

ロケットづくりに集中したことでどうやら俺のホームシックはどっかへ行ってしまったようだ。

 

「なに礼なら私ではなく山田君に言いたまえ。彼女が一番お前のことを心配していたんだぞ。ちなみに気分転換をさせようっていだしたのは彼女だ」

 

もっともペットボトルロケットを飛ばそうって言い出したのはお前の同僚だがな、と言って織斑さんはくっくっくと笑う。

 

「それってあいつがただ単にそれをやりたかっただけなんじゃ・・・。まぁ結果的にいい気分転換になったので別に何も言いませんけど」

 

「そうだな。・・・どうやら結果が出たようだ。一位は私だな」

 

「なら優勝記念に素麺でも作りますか」

 

それはいいなと言いながら織斑さんはうなづく。

よし、ならば今から材料を調達しなければ。

 

「それなら天ぷらもだな!」

 

「うぇ!?いつの間に来たんだよお前」

 

織斑さんと話していたら同僚が割り込んできた。

 

「天ぷらもあるならご飯も必要ですなぁ」

 

「あ、それいいですね!から揚げでも用意しましょうか」

 

「もちろんビールもあるんだろうな?」

 

あ~あ、他の人まで来ちゃったし。

 

「言っときますけど作るのは俺一人じゃなくてみんなでですからね?」

 

さすがに俺一人で作るのはきつい。

よってここはみんなにも参加してもらおう。

おい同僚、いやそうな顔をするんじゃない。

 

「じゃ、材料を調達しましょうか」

 

「「おぉ~!」」

 

俺の言葉にみんなは元気よく答えるのだった。

 

季節は夏。蝉の声がわんわん響く森の中で俺たちは昼飯を作るためにあれこれと準備を始めるのだった。




明日の投稿はお休みします。

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