【IS】 転生したので普通に働こうかと思う 作:伝説の類人猿
なお今回の話は長めです。
「・・・ヒック」
「あの・・・本当に大丈夫ですか?顔真っ赤ですけど」
「がははは、もーまんたいアルヨ。んで、山田さんのほうは最近どうなんアルカ?」
どうもこんにちは、山田真耶(やまだ まや)です。
今は夜の十時です。本当ならまだ仕事をしなければならないのですが先ほど織斑先生が私の下にやってきて
「今日は私が山田君の分までやろう。なに以前君には私の分をやってもらったからな。今日はそのお礼だ。久しぶりにあの秘密基地に行ってきたらどうだ面白いものが見れるぞ」
と言われましたのでここに来ました。別にそんなって断ろうとしたのですが織斑先生が私の席に座って仕事をし始めましたのであきらめてここに来ました。
ここに来るのは久しぶりですし何より面白いものがなんなのか興味が湧きましたからね。
それでここにやって来たのですが・・・。
「まぁまぁ、どうです一杯。嫌なことはここで吐き出しちゃいましょうよ・・・ヒック」
そこにいたのは酔っぱらった清掃員さんでした。
*****
「実は最近の授業なんですが・・・」
結局清掃員さんに押し切られる形で席に着くことになりました。
それで今は清掃員さんに私の愚痴を聞いてもらっているところです。
「というと、男子生徒かな?」
「はい・・・今年はみんな例年に比べて浮ついているんです」
「それはISに関してかい?それとも色恋沙汰?」
「い!?ち、違いますよ!ISに関してです」
確かに恋愛のことでも浮ついていますが・・・。
「私たちの授業をみんなまじめには聞いてくれているんです。でも、あんまり現実を見ていないというかいまいちISに対する扱いが軽いと言いますか・・・ああもう!そのなんかこうもやもやするんです!」
どこがどうとかという話ではない。
私はまだここにきてからの日は浅いがそれでも感じれるぐらい今年の一年生の空気は軽い。
確かに授業中は真剣に聞いてくれているのだがどうにも教えたという感触がつかめないのである。
「こういってはなんですがやっぱり男性操縦者がいるのが原因かなって・・・」
およそ自分らしくはない意見だがやはり今年見つかった男性操縦者が原因なのではないかと思ってしまう。
彼らは全員これでもかってぐらいの美形で教師の私でもキュンとしてしまうぐらいだ。
大人の私でこうなのだから学生のみんなはもっとだろう。
みんな恋をするのに夢中になっているのが感触を掴めない原因になっているのではないだろうか。
「・・・ふうん。・・・ヒック」
「清掃員さんはどう思います?」
せっかくなのだからこの人からでも何か意見を得られればと思う。
何事も第三者の意見は大切である。
「要は教えたっていう感触がつかめないんだよね?それは多分山田さんたち教師のほうに問題があるんじゃないかな」
「!?いったいそれはどういうことですか?」
はたしてなにか私たちに問題でもあっただろうか?確かにここ最近はいろいろとごたごたしていたがそこまでのミスは起こしていないはずだ。
私がそう考えていると、
「ようはさ、山田さん生徒のことを高校生として接しているでしょ」
「それのどこに問題が?彼らは高校生ですよ?」
「いや、だからさ高校生なのは間違っていないんだよ。でもそれってさあくまでもIS以外のことだけでしょ。確かにここの生徒さんはみんな小っちゃいころから算数とか漢字とか習っているけどさISに関することはまったく習っていないでしょ」
そこでいったん話すのをやめてビールを一杯飲んでから清掃員さんは続けた。
「じゃあさ、ISについては高校生のレベルにあるわけ?」
「っ!!」
「IS以外なら高校生なのかもしれないけどさ、ISに関しては彼らは小学生なわけでしょ。だったらそれ相応に扱うべきなんじゃないのかなって」
ちゃんとそういう風に見てる?と言いながら清掃員さんは私の目をまっすぐ見てくる。
「わ、私は・・・高校生として扱っていました・・・」
「正直でよろしい・・・ヒック。」
それがわかれば十分でしょと言いながら清掃員さんはビールを飲む。
でも・・・。
「教えてください!彼らにはどう教えればいいんですかっ?」
答えを教えてほしい。きっと私ではたどり着けないはずだから。
「どうって、俺教師じゃないよ?」
「構いません!」
多分あなたは私以上に教師に向いています!
「ん~・・・ならまずは作文を書かせてみなよ。ISの利用方法について」
「作文ですか?」
「そ、作文。ISを将来どのように使いたいですかって。まずはそこからだよ」
小学生のころを思い出しなよと言いながら清掃員さんは続ける。
「ISの操縦方法なんて説明書さえあれば男女関係なく教えられるでしょ。それならさこんな学校なんていらないじゃん。じゃぁなんでこんな学校があるんだと思う?この学校で生徒が学ばなきゃいけないのはなんだと思う?」
「ISの・・・使い道?」
「そ、使い道。ようは夢を見つけるんだよ。ISまたはISに使われている技術をどのように使いたいのかね」
そういいながら清掃員さんはビールから手を放して体ごとこちらを向く。
「ISは宇宙で活動するために作られたものでしょ。でもさその気になれば宇宙じゃなくて深海にだっていけるし物体を粒子化する技術を使えば一度にたくさんの救援物資を運べるでしょ。そういう幅広い見方ができるようにさせるのがこの学校なんじゃないかな。今のままの教え方ならきっと彼らはISの操縦方法しか覚えないよ」
「・・・!」
それでいいの?と清掃員さんは聞いてくる。
「私は・・・彼らをそんな風にしたくはありません。でも、私が教えれるのは兵器としてのISだけです・・・」
私は教師失格だ。
そう思いながら顔を下に向けたその時、
「ならさ、一緒に考えればいいんじゃないの。ISをどうやって使っていくべきか。だって学校って答えのない問題の答えを教師も生徒も自分なりに探す場所でしょ」
「・・・ぁ、あぁ」
気が付けば私は泣いていた。
「きっとISの正しい使い道を知っている人なんて誰もいないと思うよ。たとえそれがISの開発者であっても」
そういいながら清掃員さんは私の頭を撫でてくる。酔っているせいなのだろう手つきがどこかおぼつかないが今の私にはそれが心地良かった。
「まずはみんながISをどう思っているかを知らないとね」
「・・・あぃ」
そう答えた私の声は涙で震えていた。
*****
「ほら」
そういいながら織斑先生は私にハンカチを渡してくる。
「・・・ありがとうございます」
「その顔からしてすっきりしたようだな」
「ありがとうございました」
あれからしばらくして私たちは秘密基地を出て行った。
私はその足でもう織斑先生しかいない職員室へ来たのだ。
「それでどうするつもりだ?」
「どうする」か・・・。織斑先生はそう問いかけてきた。
大丈夫もう私の答えは決まっている。
「生徒たちと共にISの新しい使い道を見つけて行こうと思います。そのためにもまずはみんなに作文を書いてもらおうと思います」
そうかと一言だけ言って織斑先生は私にコーヒーを持ってきてくれた。
「今日は本当にありがとうございました。あれって織斑先生の仕業ですよね?」
私がそういうと織斑先生はくっくっくと笑いながらこう言った。
「なんのことかな、私はあいつと飲み比べをして愚痴を聞く約束を取り付けただけだぞ。そこにたまたま山田君が行ったというだけだ」
まったくもう、この人は。
「ありがとうございました織斑先生。それに清掃員さんも・・・」
あの人には本当に感謝しないといけない。
あの人のおかげでもう一度頑張れそうだからだ。
「それで、明日からもまた頑張れそうか?」
「はいっ!もちろんです!」
織斑さんの問いに対して私はそう元気に答えるのだった。
皆さんならISをどのように使いたいでしょうか?
ちなみに私ならISを使って海に潜って宝探しをしたいです。
財宝って・・・いいよね(恍惚の表情)