“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語   作:秋ピザ

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なんか筆が乗って書けてしまった。
しかし3000字だし、蓮太郎くんがめっちゃブレてるしいきなり時間が飛んでる……うぅむ。
まぁ気にしないといけないのは分かっているが、とりあえず一旦本編をどうぞ。


それはまさしく機械であった。

あー、だりぃ。

俺は先生との電話ののち、やたらと広い寝袋の中でこの聖天子護衛ミッションだったナニカが非常に面倒くさいものになったことを時間をかけてようやく本質的に理解し、そしてだりぃとだけ結論付けた。

エイン・ランドが人の道すら外れたクズだってことも、先生の頼みも、イニシエーターが化け物になっているのが間違いないことも、秘密結社五翔会も不審バラニウムマンもクソジジイも東京エリアもこの際どうでもよくなってきた。面倒くさい。

そりゃ、さっきは驚いたりなんだりでガラにもなくそれっぽいことを言ったさ。それは認めるし事実だ。

だが俺は、里見蓮太郎という一人の人間の本質は何かと聞かれれば英雄でも人類最強でもゾディアック殺しでも復讐者でもなく、ただ真面目に生きる気力を失って惰性で生き延びて甘やかされることに全力を尽くす最低以下のクズ、という事実しかない。

ゆえに俺はコレをこう位置付けよう。

だりぃ。

「なぁティナー、俺もういっそ他人の思惑とか通すべき筋とか全部捨てて逃げたくなってきたわー」

 

「突然ですねおにーさん?」

 

「いや、さっき先生から電話かけられて色々知ったんだけどなー?今俺らがすげぇめんどくせぇ状態にあるってことだけ理解したのよ」

 

ティナと先程先生との会話で得た情報を共有する。

「あぁ……確かに面倒ですね……でも、バラニウムの塊みたいなイニシエーターなんて、私の知る限りではそれどころか全身を改造した子すら居ませんでしたけど……」

 

「それは多分技術の進歩かなにかじゃないか?」

 

「いえ、彼は確か、『呪われた子供たち』を改造して機械化兵士にする場合は全身を改造してサイボーグにするよりも脳を改造してオプションを付けた方が圧倒的に強いと言っていました」

 

「義肢そのものの技術が上がってもか?」

 

「だって、何かしら特殊な機構があったとしても、わざわざ偽物の動かしにくい体で動くより、同じくらいの基本性能で動かしやすい元々の体で動いた方が確実だし、そもそもそんなことをすれば寿命が一気にすり減ってしまいます」

 

……あぁ、そういえばそうだったか。

どうにも昔から『呪われた子供たち』とガストレアをイコールで繋げない性分なもんだから忘れてた。

イニシエーターを全身バラニウムで覆ったりしたら確かに死ぬ。

ガストレアよりも長い期間が必要になるだろうが、結局は体内のガストレアウィルスにバラニウムが反応していずれは自滅するわけだ。

それに、『呪われた子供たち』は元々の身体能力が高いから昔の俺みたいにスラスターでの加速機構とかが必要ないんだよな……

昔一度だけ延珠と全力で競争(と言う名の雑魚ガストレア追跡)をやったことがあったが、その時はスラスターで無理な加速をしてもギリギリで勝つか負けるかってくらいだった。

そんなスペックを素で持っているのに体を機械化する意味はなんだ?

しかも寿命を異常なほどすり減らすようなバラニウム塊レベルにまで………たしかに、理解不能どころじゃない。

「あと、彼は人間としては最底辺ではありますけど、ある種の芸術家気取りというか………私たちを失うことを極度に嫌っていましたから、どうにも不可解なんです」

 

「………そりゃそうか」

 

そこまで会話してから、本当に今回は面倒くさいと思った。

無駄に沢山の陣営の思惑が重なって、無駄に不可解な個所が多くて、無駄に陰謀のようなものが蠢いている。

面倒だ、面倒だ、面倒でやる気が出ねぇ。その上今回は関わることを避けられそうにない。

 

あー………だりぃ。

それに、眠い。

もうなにも考えたくない。

「なんか考えるの疲れた………」

 

結局俺は、頭の中が混乱して疲れてきたために『なるようになれ』という投げやりな思考に落ち着いた。

睡眠欲には勝てないのだ。

「つーか、俺が無駄に頭使っても疲れるだけだったわ………今日は寝る」

 

そしてティナに一方的に寝るとだけ言って抱き付き、目を閉じる。

俺はあくまで最低以下のクズに過ぎないんだ。だからもう自分の為だけに動こう。

ティナと或守を守れて、それで毎日イチャイチャグダグダ出来るならそれ以上のことは求めない。

五翔会だろうがエイン・ランドだろうが、来るなら来ればいい。

いつも通りに自分にとって不快なモノを悉く破壊し、自分勝手にやらせてもらうんだ。

 

………おやすみ。

疲れたと言って勝手に話を切り上げたのに、なにも言わず抱きしめてくれたティナの体温で安心感を覚えつつ、俺は眠りに着いた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

東京エリア内某所にある団地の一室にて、とある少女は悲鳴を上げていた。

彼女には名前がなく、親も居ない。

あるのはただ、生まれて間もない頃に捨てられ、7歳にしてすでに死にかけていた自分(呪われた子供)を拾ってくれた親代わり(狂人)への盲信と、狂気。

自分には心などなく、ゆえに痛みも感じないと口癖のように言う、壊れた少女だった。

しかしそんな彼女が悲鳴を上げるのはただただ痛いからではない。

 

『呪われた子供たち』へのバラニウム製特殊義肢移植実験。

被験者の寿命を著しく………それこそ侵食率10%の状態で行っても寿命が3ヶ月程度にまで縮まってしまう上に成功率の低いそれを彼女は受けていたのだ。

とある天才科学者がつい最近思いつき、偶然その科学者と出会った彼女が命を削ってでも殺したい相手が居たために受けたそれは、確かに大きな力を与えた。

『呪われた子供たち』の短い一生ではどうやってもたどり着けないような成長の果てまで一気に押し上げ、さらに脳の記憶領域を限界まで削って無理やりに多くの戦闘技能を詰め込み、そしてその殺したい相手を確実に殺すためのギミックまで搭載した………

それによって、彼女はギリギリその人物を殺害可能なレベルにまで上り詰めたのだ。

 

だが、そんな無茶をすれば体は悲鳴を上げるし、そもそも『呪われた子供たち』である以上体内に少なからずガストレアウィルスを持っている。

そんな彼女がバラニウム製の義肢を身に付ければ、拒絶反応からくる耐えがたい痛みが襲うのは考えるまでもないだろう。

一応、彼女には改造を施した科学者から『痛み止め』と称した痛覚を遮断する薬物を与えられてはいるが………

「ああああああああぁぁぁっぁあァァァァァ!」

 

しかし、その痛みも苦しみすらも、彼女はあえて受け入れていた。

これは失敗作になってしまっら自分を受け入れ、作品と呼んで大事にしてくれていた(エイン・ランド)を裏切った罰だと自分に言い聞かせ、ただただ苦しみに耐え続けていた。

それがなんの言い訳にもならない自虐に過ぎないことは理解している。

それでも苦しみから逃げるのは自分が納得できない。だから耐えた。

もしそれで狂ってしまったら、それは自分がその程度の存在であっただけなのだと必死に思い込んで。

彼女はひたすらに苦しみを耐えていた。

全ての感情を削ぎ落とし、ただただ憎しみを力に変換、対象の抹殺と破壊だけのためにリソースを注ぎ込む。

どうせここで終わる命だ、帰りのことは考えず、証拠隠滅もせずに目的だけを果たそう。

彼女はその肉体の寿命……体内侵食率を思い出しながら、その“調整”のために瞳を赤熱させ、わざと肉体をガストレアウィルスに蝕ませた。

世間一般には伏せられているし、知っている僅かな人間も出来るだけ隠している情報ではあるのだが、侵食率が高まれば拒絶反応で寿命は縮まる代わり、より因子に合った力を引き出せるからだ。

彼女の持つ因子はタカ……侵食率が高まれば高まるほど、その影響で視力が上昇し、瞬発力と速度が上がるという寸法である。

が、しかし。

侵食率が高ければ強くなるとはいえ、今の状態の彼女がそれを行うのには生半可でない覚悟が必要なことだった。

だが彼女は苦しみを恐れない。

痛い、辛い、苦しいという感情はとっくに捨て去って、今感じているのはただの電気信号だから。

 

……まさに、彼女は、いやソレは1つの機械であった。

体にバラニウム、血潮は赤く、しかし心は鉄のごとく。

ただ一人の親すら捨て去り、全てを捨てて憎しみを矛にする。

齢10の少女でありながら、憎悪に溺れ命を削る。

ただの一度も後悔はせず、されどただの一度も自らを許さない。

ゆえに。

ソレはまさしく機械であり、同時に少女でもあった。

ソレの名は……




最後のは我ながら圧倒的蛇足感。
UBWの詠唱を参考にして適当なこと書きました。

あと時間が飛んだのはアレです、正直グダグダを書いてるんでもないのに話が停滞したので強引に動かそうとした結果です。
というか後半のやつはイニシエーター版の蓮太郎的なイメージで書いたのに気付けば訳の分からん狂気系になっていた。
何故だ解せない……

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