“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語   作:秋ピザ

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20日ぶりの投稿です。
なんかちょっとスランプな気がしてきたのでいくつかネタを浪費して先のルートを絞ることにしました。

それにしても菫先生が書きにくいったらありゃしない。
三回目の書き直し辺りでとうとう諦めたので、キャラ崩壊などには目を瞑ってください。

そんじゃ、本編どうぞ。


重なる思惑と……

……伊熊将監との交渉から3日。

幸いにして奴等が体よく代理として護衛任務を請け負ったことを確認して以降、俺にしては珍しく勤勉に準備を行っていた。

主に伊熊たちが逃げるための便の手配、空港などに届いた顔写真を即座に消すためのセキュリティホール開通、警察を抑えるためにそちらもセキュリティホールを開通して……と、正直仕事を受けた方が幾分か楽だろうと思えるほどの作業をこなしていた。

それに、あまり気乗りはしなかったが(主に精神衛生的な意味で)先生を訪ねて、いくつか有用な情報を聞き出すことに成功した。

エイン・ランドが送ってくる可能性が高い刺客全員の情報をある程度とはいえ教えてもらえたのもよかった。

その分だけえげつない心理ダメージを喰らってしまったのは……この際気にしないことにしよう。

 

あ、もちろん、ティナや或守とイチャイチャすることも忘れていないぜ?

……というか正直この3日間、欠かさず1日に10時間くらいグダグダイチャイチャしてた。

具体的には朝起きてから3時間くらいをベッドの中で過ごし、そのあと作業を済ませたり先生を訪ねたりして家に帰ると風呂とかリビングとかでグダグダと……

結構焦ったりするべき状況なのは理解しているが、やはり染み付いた生活習慣と言うものは直らないのだよ。

それに、あの日異常なほど足りないと感じたのは少しばかり甘える時間が少なかったからだと考えているからな。

これは合理的な判断である。

私情及び私欲7割だが、残り3割がしっかりと合理的なもので固められているから、合理的な判断である。

決して、この前から何故だか(理由は分かりきっているけれど)時々或守を羨ましそうな、あるいは怨めしそうな目で見てはポケットに隠してあると思われる暗器に手を伸ばしてはやめてを繰り返しているのを見て可愛いなんて思ってつい反射的に甘えている訳じゃないんだ。

嘘だ。

 

さて、とりあえずこの3日間をさりげなく振り返ったところで、現在に目を向けるとしよう。

俺が今いる場所は東京エリアの中心部に存在するビル……の屋上。

ベランダの手すりが鉄製なのをいいことに磁力でここまで登ってきている。

聖天子の護衛任務は伝えられていた予定を信じるならば明日だが、少なくともその日に監視を始めたら間に合わないのは明白だったからだ。

正直、これまでずっと早く起きたとしてもティナとベッドでダラダラしてただけだから時間に合わせられる気がしない。ならば最初から監視スポットに居ればいい……そんな魂胆である。

そして、わざわざ快適な家を離れてそんな場所に泊まるということで、かつてそれなりの金をかけて購入したものの結局出掛けること自体が少ないために倉庫の肥やしになっていたキャンプグッズがようやく活かされるなぁ、なんて感慨深い気持ちにもなった。

例えば、あえてキャンプ用テントの常識である三角錐型ではなく四角錐型にしたことで耐久力を犠牲に居心地と広さを確保した新型のテントだとか。

電源さえあれば米が炊けるしおかずも簡単に作れるという触れ込みのキャンプ向きでないキャンプ用万能鍋(ただし、電源を自前で確保できる俺は例外とする)だとか。

その他キテレツだが俺としてはそれなりに便利なキャンプグッズをいくつか揃えて持ってきた……ゆえに、久しぶりの外泊というかキャンプ(無断で借りたビルの屋上だが)といえど心配はない。

いや、心配がないというと流石に嘘になるな。

まぁもう飯も食ってあとは寝て明日を待つだけだから大丈……

 

prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!

 

「……はい」

 

『やぁ蓮太郎くん、元気かい?』

 

「世間話なら切るぞ先生。こっちは忙しいんだ」

 

『幼女とイチャイチャしてギリギリセウトなラインを探るのは忙しいと言わないぞ……おい、頼むから本気で切ろうとするなよ蓮太郎くん』

 

何故電話越しで通話終了ボタンを押そうとしたのが分かったのやら。

先生がなにか調べものを頼んでいたわけでもないのに電話をかけてくる、なんて異常事態が発生するというのは俺の心配ごとの1つだ。

そもそも先生が電話を持っていたかどうかすらも怪しいのに、そんな先生がわざわざかけてくるなんて……

それこそとんでもなく嫌なニュースのお知らせくらいしか思い付かないぞ、俺は。

『さて、ひとまずお知らせだが……良いニュース1つと悪いニュース3つがある。どれから聞くかい?』

 

「あ?なんで悪いニュースばっか……まぁいい、悪いニュースからだ」

 

ほら、やっぱり悪いニュースだ。それも3つ重なるとかどれだけ不幸なんだか。

思い付く限りでは暗殺にくるイニシエーターが予想以上に強いだとか、俺と致命的に相性が悪い相手だとか、実は集団ですだとか色々あるが……

先生のことだ、それ以上のバッドニュースを持ち込んでくれることだろう。

『じゃあ1つ目、その護衛ミッションが中止になったぞ』

 

「……ワンモアプリーズだ、先生」

 

『君は最近、嫌なことから目を逸らすのがクセになっていないかい?まぁ何度でも言ってやろう。護衛ミッションが中止になった』

 

中止?どういうことだろうか。

聖天子が攻撃されて動けなくなったからか、それとも何か別の理由か。

『どうやら聖天子の護衛を専門の人員が自分達だけでやるとか言い出したらしい』

 

「へぇ、それで?ミッション中止なら俺的にはグッドニュースだぜ?」

 

『あぁ、確かにな……それがあくまで本当に聖天子の護衛が自分の意思で言ったなら、だがね』

 

「操られて言ったとでも?」

 

『そうだ、しかもな……バッドニュース2つ目だ。恐らく今回は五翔会とかいう訳の分からない組織が背後で糸を引いてるっぽいな……気を付けたまえよ、蓮太郎くん』

 

五翔会。

先生が言ったその名を聞いたことはない。

しかしいやに何かが引っ掛かる名前だ。

喉に引っ掛かる魚の骨と言うほど分かりやすくもないが、歯と歯の間に収まったシーチキンの欠片程度の存在感がある……違和感と言うのか?そんなものだ。

実際に聞いてみると何か違和感があるものの、聞かなければ気付きもしなかったような、微細な違和感。

……考えると疲れたうえに徒労で終わりそうだし、やめておこう。

『そして3つ目のバッドニュースだが……それについては座標を指定するからそこを電磁波で確認してくれ、としか言えないな。説明が面倒くさい』

 

「アンタ科学者だよな、説明くらいしろよ」

 

『君の性能の悪い頭にそれを言葉だけで叩き込むとなると、多元宇宙理論を赤子にも分かるくらい詳しく長くしたものの三倍くらい長くなるけどいいかい?正直私の貴重な時間を無駄にされると困るんだ。今の恋人との別れが迫っているからさ』

 

「長すぎだろ!っつーか死体を腐るまで恋人とか言い張るなよ!?」

俺は一旦思考を放棄すると、先生が唐突に切り出した3つ目のバッドニュースの話題の適当さ加減に久しぶりに大声で突っ込みを入れ、そして結局先生が読み上げる座標を電磁波で解析する方向にまとまった。

 

俺は電磁波にある程度指向性を持たせつつ出力を強化し、指定された座標に何があるかをチェックする。

指定されたポイントは3つ。

聖居付近にある公園、エリア内の公営団地、そして、俺にとって非常に思い出深い場所……天童民間警備会社跡地だ。

どう考えても関連性が思い当たらないが、先生は一体何をさせたいんだろうか?

そんなことを考えつつも、いくら先生でもこんなタイミングで適当なことは言っていないと判断し、指定されたポイントを念入りに確認する。

時間にして約30秒。

脳を高速回転させて3つのポイントを同時に観測させたためか俺には何倍にも感じられた時間が過ぎ去った時、俺は奇妙なものを発見する。

正確にはモノというよりも者だが、とにかく奇妙な者を発見した。

団地には、電磁波で見たときに思わず中世の騎士かよ。と言いそうになるほど全身をバラニウムで覆った上から服を着ている不審な男。

公園には老人。しかも俺の知る限り最強のクソジジイこと、天童助喜与……はっきり言って二度と会いたくない……が居た。

今すぐに超電磁砲を叩き込んだらどんな顔で死ぬのかね?殺したら自分ルール的にアウトだからやらないけどさ。

 

そして、天童民間警備会社跡地に居たのは。

「うわぁ……これは笑えねぇわ……」

 

身長130cm前後、性別は多分女で、恐らくイニシエーターなのだが……おかしい。

俺の電磁波で見るとそのイニシエーターがバラニウムの塊にしか見えないのだ。

それこそ人間というよりもバラニウムオートマタとかバラニウムアンドロイドの方が近いんじゃないかと思うほどに。

一応、脳があることについてはギリギリ確認できたからイニシエーターである可能性は高いが……改造兵士にしてもおかしすぎる気がする。

恐らくはエイン・ランドの送り込んだ刺客だろうが……これは。

もはや人ですらなく、かといってイニシエーターでも、怪物でもなく。

ただただ純粋に機械にしか見えないなんて……初めて見たね。

『蓮太郎くん、3つ目のバッドニュースを確認したならば、ここで1つだけ私から頼みたいことがある』

 

「……」

 

俺が、確認した3つ目のものの異常さに言葉を失っていると、先生が珍しく真剣な声音で頼んできた。

『君のルールに反することは重々承知している。だが……頼む、エインのイニシエーターを破壊してくれ』

 

「……」

 

『ヤツはティナちゃんを改造した時すでに医者でなくなっていたが、もはや人と呼ぶことすらおこがましい』

 

ふむ、エイン・ランドの刺客を破壊か。

破壊という表現を使ったのはあのイニシエーターが完全に人でないと判断したからか、それとも俺に壊させるための合理的な判断か。

どちらかは知らんが、しかし……答えなら最初から決めている。

「……残念だが、俺は俺自身の身内に何かない限りはこっちから手を出してやるつもりはないぞ?」

 

『そこをなんとか出来ないのか?』

 

「いや、無理だね。なんたって俺はあくまで戸籍上民間人だぜ?自分に火の粉がかかるまではわざわざ他人の火の粉を払いにいったりはしねーよ……」

 

まぁ、あちらさんは俺を逆恨みしてるらしいが。

最後にそう付け加えてから、これ以上話したらいくら相手があの先生でもさらに面倒な流れになってしまいそうだ、と考えて電話を切った。

 

……バラニウムの塊と、クソジジイと、不審なバラニウム男、か……

 


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