“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語   作:秋ピザ

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調べ物×能力ローラー=満身創痍

聖天子から地獄への招待状が届いたその日の夕方、俺は長らくアクセスしていなかったデータベースにアクセスしていた。

能力を手に入れるまではアクセスキーを先生に渡して欲しい情報を調べてもらっていたのだが、電気関係であれば無敵に等しい能力を持つ今の俺であればそれをするまでもない。

ただ単純に、調べたい情報をある程度絞り込んでからローラーすれば良いのだ。

 

今回欲しい情報は、俺が知る限り人類で俺の次に強いバケモノ……あの刃物野郎の名前と、所属と、弱点と秘密。

最後の2つについては乗っていない可能性もあるが、まぁエゴサーチで俺自身の項目を覗いてみたら『弱点:重篤な小児性愛者。和英辞典の和製英語の欄でTSUNAMIの次辺りに書いてあることを気にしている』とか書いてあったし、何もないってことはないだろう。

ちなみに重篤な小児性愛者ってのは前に十人くらいを同時に住まわせて生活していたことからで、和英辞典に乗っているというのは……一度見てみたが本当にあって、『SATOMI:(1)ジャイアントキリングの類義語。(2)世界最強の人間』とか書いてあった。頭おかしいと思う。

まぁそれはともかくとして、まずは検索用のキーワードをいくつか入力していくとしよう。

日本在住であることを前提としたら……まずは特徴。それについてはドクロのスカーフを巻いていたこととプロモーターが前線に出て戦うスタイルが特徴といえば特徴だろう。

それと目付きの悪さも一応は特徴……流石にこれはないな。

俺は2つの検索ワードを入力し、絞り込む。

そして画面に表示された検索結果を確認する。

【伊熊将監】

引っ掛かったプロモーターは一人。

つまりコイツが例の刃物野郎である可能性は高いと言うことだ。

しかも、俺が持つレベル12のアクセスキーを使えばコイツに関して『その気になれば金を積めば誰でも手に入れられる情報』ではなく『何をどうやっても普通は手に入らないような情報』を盗み見てやることができる。

無論それがマトモなものである保証はないのだが。

俺は自身の閲覧権限を全力で利用し、刃物野郎こと伊熊将監のデータを読み漁る。

それはまぁ熱心な伊熊将監ファンでもやらないくらい真剣に、全力で。

 

【備考:趣味は自分のイニシエーターへの暴行。どこからどう見てもアウトかつ、典型的な暴力男。しかし何故かイニシエーターとの仲はかなり良好な模様】(閲覧時必要権限レベル:11)

 

【備考:本人による自己申告ではないが、重度の性的倒錯者。殴る側殴られる側と言う形でしかイニシエーターと向き合えない】(閲覧時必要権限レベル:10)

 

ふむふむ……かなりクズで、俺には及ばないもののそこそこ重度のロリコンかつ、イニシエーターとはいわゆるDV夫と離れられない妻的な関係あるいは性癖の一致。

俺は携帯にメモを取りながら、伊熊将監という男は知れば知るほど俺と似ている部分の多い男であることに気付かされていった。

まずロリコンである点。これに関してはまぁ、もうどっちにしろ自分のイニシエーターが大好きで仕方ないということが共通してる。

そして能力持ちである点に加え、イニシエーターとは性癖の一致で上手くやっている。

ほら、こんなにも共通点がある。

俺は甘やかされるのが好きで、ティナは誰かを甘やかしたかったから、性癖の一致で相棒になった。

 

うーむ………考えれば考えるほど、俺とコイツは似ているもんだな………その割になんか普通に襲われたけど。

同族嫌悪、いやむしろ俺が全力で荒れてた頃に何かやらかしたって可能性の方が高いな。

まぁ俺が何をやったのかなんてここには載ってないだろうし、流石にそんな個人的というかあまり普遍的な需要のない情報を載せようと考える奴がこれを編纂していたりはしないだろうなぁ。

そう思いつつ、僅かな望みをもって続きの項目を閲覧してみる。

すると、しばらく下にスクロールしたところで行動記録なるものを発見した。

必用な権限レベルは………伊熊将監のそれと同じレベル。

1000番台程度の閲覧権限レベルで他人の行動記録を自由に閲覧できるってのはアリなのか?

まぁ、個人情報と思わしきものがあるという事実がありがたいことには変わりない。

それに行動記録という事ならば、弱みとも言える情報だって載っているだろう。

俺はほぼ無制限に等しい権限レベルを持つ自分のアクセスキーを打ち込み、行動記録を覗いてみる。

これで行動記録ってのが単純に伊熊将監の日常を記した日記だったりしたら速攻で閉じさせて………

読めねえよ。

閲覧開始と同時にそんなコメントですまないが、読めねえよ。

行動記録を読み始めた俺は、そこに記されている情報の多さに愕然とした。

内容をおおまかに整理してみると食事、睡眠時間、移動の3つに分類することが出来たが………1つ1つをとっても情報量が凄まじい。

1000番台程度のアクセスキーで読めるわけだよ………普通はこんなもの読めるわけがない。

………いや、普通は、だがな?

普通じゃない俺は能力を使用してローラーさせてもらうことにしよう。

俺は自分の脳を強引にデータベースへ繋ぎ、今開いていた行動記録のページにアクセスする。

そして、そこに記されている情報にフィルターを設定、不必要な『食事』『睡眠時間』の項目を取り除いて………一気に読み込む!

「がっ………」

 

流石にこの量の情報を人間の脳で処理するのは厳しいのか、脳が悲鳴を上げるかのように痛みを生み出す。

ちょっと自分の力を過信しすぎたかもしれない。

だが、残念なことに俺はこれまでの戦いのせいで痛みに対してかなりの耐性を身に付けてしまっているために………脳が痛みと言う形で出し続ける危険信号を無視、無理矢理情報の処理を行う。

これはいわばチキンレース。俺の体が限界を迎えるか膨大な情報が尽きて目的の情報を引き出されるか。どちらが早いかだけの単純な勝負だ。

勝負が単純あれば単純であるほど、その命運はいかに地力で差をつくるかにあるだろう。

………そして俺は、電脳世界においても、現実世界においても最強だ。

地力では勝っている。だからあとは気合の問題でしかない。

「あぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁアアァァァァ!」

 

あまりの痛みに悲鳴を上げつつも、能力の行使を止めない。

これが自分にとって最良のルートを作るために必要な痛みだと分かっているから。

今すぐに止めろと何回も訴えかける本能を無理矢理に抑え付け、ただ1つの情報を探す。

そして、何時間にも感じられた時間が経過し………俺はようやく目的の情報へとたどり着く。

 

 

 

ただ、その情報はあまりにも身に覚えのないというか、かなり理不尽なもので。

 

【2030/4/5/8:25 里見蓮太郎と遭遇したイニシエーターの千寿夏世が怯えながら帰宅したことで里見蓮太郎に敵愾心を抱く】

 

………ふぁっきん。どこまで俺とお前は似ているんだ。

俺は刃物野郎が敵対する理由のあまりのバカバカしさの床に倒れ込み、意識を失うのだった。




今作における将監さんは蓮太郎にある意味で精神構造が似通っています。
大体この一言でこの章のオチが分かってしまう新事実。


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