“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語   作:秋ピザ

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投稿が遅れたのはもう色々理由がありますが、変に弁解するのも正直寒いなとようやく自覚したのでとりあえず次を急ぐことで示そうと思ってます……まぁ、とりあえずどぞ。


日常の中に潜んでいる異常という名の異音。

ピザをおかずにパンを食うこと20分。なんとか用意された分の食事を食べきった俺は1つ提案をすることにした。

「なぁティナ」

 

「なんでしょう?」

 

「次からはピザをおかずにパン食うのは避けたいんだが」

 

「了解しました」

 

いくらティナが作ったものが美味いとは言っても流石にこの組み合わせはよくなかった。

口の中がすぐ渇くというか、食いながら身体中の水分を抜き取られているというか。

まぁ、どれもこれも美味いことに変わりはないんだがな。

俺はひとまず重要な案件を済ませ、そこから間髪入れずにティナの横まで移動して抱き付いた。

朝食は食べたし今日は特に予定もない。そもそも普段から予定なんてものは存在しないので、次の夕食までこうして抱き付いたり、撫で回されたり、抱き締められたりして過ごすのだ。

そうして1日が終わって次の日が来る。自堕落に時間だけが過ぎ去っていくのを感じてなにもしない。ただただ安らかな停滞の中でゆらゆらと海草のようにゆらめく日々を送るのだ。

そのためなら人類最強でなくなっても構わないし、いっそIP序列なんて下位の方になってしまっても構わない。

元々世界最強の地位なんてもの、望んで得たわけではない。

ただ憎しみのままに殺し回って、飽きるまで殺して何もやりたくないくらい無気力になったころ俺の殺戮を功績と勘違いした、真っ白な服を着て自分自身も真っ白だが性根は真っ黒などこかのお偉いさんによって気付いたら付けられていたものでしかないわけだ。

いや、まぁ地位ってものはあるに越したことはないから自分で捨てたいと思ってる訳じゃあないがね、だって世界最強の地位はティナとダラダラグダグダ過ごし続けるために便利なアイテムとしても使えるわけだしさ。

例えばそう、ちょっとした公権力に対して便利な交渉カードになるし、よほど地位の高い奴じゃなきゃ軍人である限り命令権を行使出来る。

それとIISOからちょっとした特別扱いを受けるから少々の違法行為とかルール違反を見逃して貰えたりだとか。

身近なところに例を示すなら、本来ならイニシエーターとして登録してない筈の或守の分の侵食抑制剤を貰えたりだとか、な。

とりあえずこの世界最強の地位はそれなりに使い道が多く、便利なものなのだ。

なくても構わないがあったら便利ってくらいの感覚で。

 

俺はそんなくだらないことを考えつつ、ティナに抱きついてその胸に顔を埋めてみた。

するとティナは、普段通り俺を甘やかすように抱き締めて、撫でてくれる。

やはりティナに甘やかされるというのは素晴らしい。

至高停止して何時間でも甘えていられるよ。それこそいくらでも。

まぁなんというか……今ばかりはこの感覚だけが全てだと迷いなく思えるほどに心地いい。

全身を快楽で溶かされるのではないかと思うほどに心地いい。

あぁそうだ。もうティナ以外はいらない、いっそこの世に俺とティナだけになったとしても一向に構わない。

今ティナに甘やかされてこの感覚を味わっているためならばなんでもやれる気すらしてくる。

「あぁ……ティナぁ……」

 

そして、心地いい感覚に包まれていると不意に眠気を感じて、『とりあえず寝る』という意味を込めてティナの名前を呼ぶ。

多分伝わるだろう。今は喋るのも億劫だ。

「……まったく、ご飯を食べてすぐ寝ると太りますよ?」

 

ティナはそんなことを言ったが、むしろ大歓迎だと言わんばかりに声は嬉しさに溢れているようだ。

それに可能性としてはありえないが、拒否されたとしてもこの状況であれば俺にはこのまま眠ることくらいしか出来ないだろう。

俺は、そのままゆっくりと、意識を微睡みの中へと沈ませていった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

………うるさい。

幸せな微睡みに沈んでいた意識を、何か酷い雑音に引っ張られる感覚。

正直キレて高圧電流で焼き切ってやりたいくらいに耳障りな音が俺の耳を刺激する。

いわゆるモスキート音に近い酷い音だ。

コイツは俺が知る限りもっとも嫌いな音であり、この世で何番目かくらいに滅ぼしてやりたいものだ。マジでさっさと滅べばいいのに。

別にモスキート音そのものに恨みがあるわけじゃないんだが、どうにも生理的嫌悪感に近いものがあるんだ。

蛇が嫌いな奴は見るだけでも無理なように、モスキート音が嫌いな俺はこれを聞いてるだけでイライラしてくる。

この状態ではいくらティナに癒されまくっていても気分はさほどよくならないというか、プラマイゼロだし………何より強引に叩き起こされたってのが気に食わない。

………原因は何だ?

 

俺は少々不機嫌になりつつも、ひとまずその原因を探ろうと自分を中心とした半径20mくらいに電磁波を発して隅々まで精査してみる。

それこそ部屋の隅々から、屋外のマンホールの模様の1つ1つ、アリの巣の構造すら隅々まで分かるレベルの、もっとも探査能力の高い電磁波を。

無論他の電子機器やティナの脳に埋め込まれたチップに不調を起こさないように細心の注意を払って発動しているから本当の意味で一番探査能力の高い電磁波ではないのだが、まぁひとまず置いといてチェックだ。

子の家に何か仕掛けたバカが居るだけなら機会を壊すだけで許してやらんこともないが(ただしものすごく恨む)、もしこれが俺やティナに何かしらの害を与えんとするものであるならば容赦なく報復をさせてもらうとしよう。

もちろん、ティナに甘えまくっているついでに出来る範囲でな。

俺はわざわざ自分のやりたいことをほっぽってまで仕返しに奔走できるほどマトモな人間じゃないんだ。

ま、とりあえず何事もなくて今のモスキート音が本物の(モスキート)のせいであることを願っておくかな。

そう思いつつ、電磁波が伝える情報を隅の方からすこしずつ精査していく。

別に人間を探すとか、そういうある程度のサイズがあるものを探すのなら俯瞰するような見方をしても問題ないのだが、今回みたいに探すもののサイズや形が分からないのならばこうしてある程度細かく精査していく必要があるのだ。

………当然ながら細かく精査する代わりに一度に見る事が出来る範囲は狭くなるけどな。

どれくらいで見れるのかを言うとまぁ、電磁波の届く範囲を半径20mくらいに限定した今回であっても大体最速でも10秒くらいかかる。

それでも十分早いなんてツッコミはなしだぞ?

普段なら大体入ったその瞬間には理解してるんだから。

それに、こんなに細かくやっていたら戦闘じゃ使い物にはならない。

幸いにして今回は戦闘じゃないからそれについてはそれほどの問題にはならないのが救いだがな。

 

そして、宣言通り10秒ほどが経過したのちに俺はようやくモスキート音の発生源と思わしき物体を発見する。

形状は球体の下部に穴が空いたものというか、けん玉の球に近い。

そして俺自身あまり機械関係には詳しくはないから断言は出来ないが、この球体の内部を電磁波で解析してみると構造がティナの使うシェンフィールドに近似している。いやむしろほぼ同じだ。

少々飛び方の方式などが違うようだが……ティナのシェンフィールドもそこそここれに近い音が出ることから考えてもコイツがモスキート音を発している犯人と見て間違いはないな。

つ・ま・り。俺の安眠を妨害して起こしたのもコイツだということだ。

まったく、ティナに甘えて眠るという至高の行いを邪魔してくれるなんてな……

 

……いや、もう死ねよマジで。

 

俺の脳内法廷はありとあらゆる審査をスキップして即座に罪状からこの言語道断な球体に対して判決を言い渡した。

当然ながら死刑だ。

機械が相手のようだから実際に殺せたりはしないんだが、まぁこの際気にしないことにしよう。

俺は発していた電磁波をある程度狭い範囲に限定しつつ、限定したエリアに僅かな電流を流し、どれくらいの出力なら必ず壊せるかを確認する。

そして、出力を決めたところで、ティナに異変を感じさせないよう(もしかしたら気付いているかもしれないが)細心の注意を払ってごく狭い範囲に展開した電磁波を、モスキート音を発する不愉快な装置を破壊するための強烈な電流に変え、破壊する。

その不愉快な機械が浮いていた状態から落下したことによって音が発生するのを見越して磁力も使って落下を緩やかにしたら……よし、完璧だ。

これでもう、俺とティナを邪魔するものはなくなった。あっちゃならないものは消えたんだ。

即ち自由、フリーダム、そしてティナの甘やかしを受け放題ということさ……

 

ピンポーン。

 

そんなとき、不意に来客を知らせる音が鳴った。

うわぁ、なんでだか分からんが、今一番来てほしくない奴が来た予感しかしねぇや。

……あの機械、壊さずに玄関に設置すりゃ良かったな……しくじった……


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