“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語   作:秋ピザ

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最近週1投稿みたいになっているけれど、決してそれは半ニートの執筆速度が遅いとかじゃないんだ。
ただ二作品平行しつつだと……週1が限界なんです……

みたいな言い訳をしつつ、投稿。



英雄vs狂った父娘

あー、疲れた。なんもやりたくねぇ。いやむしろティナに甘えまくって2日ほど眠りこけて過ごしてぇ。

労働なんて真っ平御免だ。さっきのはティナにカッコつけたいからなりふり構わず勝ったが、あれがティナじゃなきゃ絶対逃げに走ってたわ……ダルいし。つーかあんなもん相手にしたくねーし。

チクショウ、もう働きたくねー。

何故に一生遊んで暮らしても何十代かは生きていけるだけの財産があんのに働かなきゃなんねーんだか……いやまぁ、金はあるに越したことはないが……

 

そんな思考をループさせながら、俺は戦場となったスラム街を抜けて自宅への帰路についていた。

幸いにして何かが起こる予兆もないし、面倒事の種も残してないから、このまま帰ってさっさと膝枕されながらダラけて1日過ごすという最高の生活リズムを取り戻そうじゃないか……

そう頭の中では言いつつ、早く家に着かないかなとか思ってしまう俺の子供っぽい部分が体を急がせるのではなく、家までの距離を測ろうと無意識に電磁波を全包囲に飛ばし始めた。

しかしそれはもう、本当に本当に微弱なもので……それこそ誰かを見付けることは出来ないしガストレアも相当デカくなきゃ捉えられない、そんな電磁波をだ。

別に精度の高い奴にしたところでエネルギーを食うだけだしな。

それに距離だけ測るんならむしろ細かいものは探せないこっちの方が便利だ。

なにせ余計なものが範囲に入っても見えないし、長時間の展開でもまったく負担にならない。

そんな俺の精神衛生的にもエネルギー収支的にも優秀なコイツは出来れば四六時中展開していた方が奇襲を警戒しなくていいから楽なんだが……実は1つだけ欠点がある。

それこそとても重大な欠陥で、それが直らない限り継続してずっと使うってのは難しいだろう。

 

……その欠点とは、ティナとこの電磁波との相性が最悪に近いのだ。

どうやらティナが改造を受けた際に脳に埋め込まれたBICだかBMIだかは俺の放つ電磁波に反応してしまうらしく、妙な音が脳に直接聞こえてしまうらしい。

ティナの自己申告によればそれは狙撃に影響は与えない程度のものではあるのだが、流石に四六時中聞こえるとなると辛いそうなので……俺は電磁波を四六時中展開することはしない。

というか出来ないしやりたくない。

奇襲を警戒せずに済む程度のことのためにティナに負担を掛けるくらいなら、奇襲すらものともしないくらい強ければ良いだけの話だからな。

……まぁ、電磁波については先生辺りに頼んで対策をしてもらうって手もあるんだけどな。

しかしそれをするととある裏技というか、便利な手段が使えなくなってしまうのだが。

その手段とは……

『今帰るわー』

 

いわゆる念話、というか電話の一方通行かつ口に出さずに言葉として伝えられるバージョンである。

これは結構前、なんとかしてこの電磁波が生む雑音を無くせないかと試行錯誤しているときに思い付いたものなんだが、意外にも便利だったので愛用しているのだ。

なにせ戦場で言葉にせずとも意思を伝えられるというのは大きなメリットになるからな……それに俺が単独行動したとき、ティナからの援護を要請するかしないかの意思を伝えることも出来る。

なにげに便利な技術だ。ゆえにこれを捨てるのがもったいなくて根本的な対策を出来ずにいる。

あぁ、もどかしい。一方を立てればもう一方が立たないって状況に恨みすら抱くよ。悩ましくてしかたない。

俺がティナに合図を送ったあと、そんな特に今考える必要のないことを考えながら歩いていると、不意に酷く耳障りな、だがどこかで聞いたような音が聞こえてきた。

ううん、なんだっけかこの音……あえて何かに例えて表現するなら、救急車のサイレンとも消防車のサイレンともパトカーのサイレンとも違う、なんというか絶妙に耳に入ってくる感じの聞き覚えのある音なんて、なにかあったっけか?

俺は聞き覚えのない音に一瞬困惑し、思考を少しの間止めてしまった。

しかしすぐに思い出した。

あぁ、これステージV襲来の合図だなって。

懐かしいじゃないか。この音を聞くのはあのクソゴミ以来だ。

このサイレンは鳴らないに越したことはないのだろうが……俺としては少しありがたいな。

まだ少し痛めつけ足りて無い気がしてたんだよな。キャンサー。

だから新しく来たステージVも、思いっきり全力で確実に消し飛ばしてやりたいところだな。

それこそさっきの戦いでぶつけた力の数倍、いや数十倍の威力で周囲への影響なんざ一切考えない、手加減自重一切なしの悪夢のような雷撃を。

 

……おっと、その前に忘れずにティナに連絡入れておかないとな。

しかし、決戦の前にやることを思い出したりすると、どうにも締まらないもんだな……

俺はそんなことを考えてから電磁波でゾディアックのいる方角へ走り出すのであった。

 

 

 

……さて、突然話が変わるようで悪いのだがこんな言葉をご存知だろうか。

『戦場で最も厄介なのは、賢い敵ではなく愚かな味方だ』と。

誰の言葉かは知らんし、もしかしたらこれを教えてくれたどこぞのおっさんが考えたのかもしれないが……これは紛れもなく事実だと俺は思う。

特にその『愚かな味方』が下手に強いほどその傾向は顕著で、さらに数が多いと一番酷い。

まぁ愚かな味方であっても、数が少なければ皆殺しもやむを得ないとしてやりやすいだろう。

だがしかしそれが100人、1000人となれば話は別だ。

たとえ大義名分があろうとも俺はそいつらにとっての敵になり、そしてそれに対する防御で俺の火力が足りなくなり、結局全員滅びるって展開もありえない話ではない、と言えばその面倒臭さと最悪さをご理解頂けるだろうか。

 

そして今、そんな最悪の味方がざっと300人ほどでゾディアックと殺し合っていた。

いや、ゾディアックとだけじゃない。

そいつらが戦っているのはゾディアック+仮面野郎だ。

何かと悪運の強さで生き延びてる仮面野郎がここにきて一番の面倒事を引き起こしてくれやがるとはなんとも笑えない冗談だよ、まったく。

今すぐこの場所から今度こそ確実に仕留めてやりたい気もするが……すると今度は大勢の味方もどきに当たって損するんだよなぁ。

いっそ全滅してくれた方がまだマシだぜ。特に俺みたいなワンマンアーミーにはな。

まぁそもそも軍人じゃないからワンマンアーミーというのは違うが。

「ハハハハハッ!素晴らしき哉!勝てぬと分かっていながらも私を殺そうと立ち向かうその姿勢、実に結構!しかし気合いや根性で届くほど私という壁は低くないのだよ!」

 

……前言撤回しようかな。このまま皆殺しにしてや……ると延殊の遺言に反するからダメだとして、誰彼構わず半死半生くらいにしてさしあげれば良いかもしれない。

なんせあの一匹の雑魚に過ぎない仮面野郎が無双してる絵面とかこっちからすりゃあ気持ち悪い以外の何物でもないし。

そうだ、いっそのこと天罰でも落としてやるとするか?

神話において天罰を下す神様ってのは雷を起こすやつが多いし、その点においては俺も当てはまるからな。

うんそうだ、それがいい。

まぁこれでは延殊の遺言には反してしまうが、きっとあんなやつが消えてくれた方がみんな喜ぶはずさ。

まず俺は敵が減って喜ぶ。

あの味方もどきも強敵が一人消えて喜ぶ。

一部政界の奴等もテロリストを一人消せて喜ぶ。ついでに聖天……いやアイツの場合は変な人類愛でむしろ悲しむかも。

しかし考えただけでも喜ぶ奴等がうじゃうじゃ出てきたな。流石は仮面野郎、嫌われてるぜ。

そうだ、気が変わったから嫌われ者を極めかけている仮面野郎にはプレゼントをあげよう。

なに、遠慮はするな。ありがたく首で受け取りやがれば良いだけさ。

俺はポケットから、珍しく弾丸ではなく一本の針金を取り出す。

ちなみにリング状に曲げたやつだ。

そう、今回はこれを上手いこと首に電磁砲で飛ばして首を切ることにしたのだ。

いくら針金という脆く柔らかい金属であろいとも、亜音速で首に当たればマトモな人間の首を斬ることは熱したナイフでバターを切るように容易であるし、マトモじゃなくても普通に斬れるから実はそれなりに有用だ。

ただ、欠点として多少俺の方から軌道のサポートをしてやる必要があるんだが……それを差し引いてもそれなりに対人に便利ってのは変わらない。

何故かって?

……そりゃあ簡単さ、誰だってこれまで相手してた奴の首が斬れたら怖いに決まってるよな?

そんな心理を利用して、敵にパニックを起こさせ統率を崩す。そういうテクニックのために針金が俺のポケットに入っているのだ。

今回はその使い方はしないけどな。

 

……さて、ひとまず誰に対してなのか分からない説明を終えたところで狙撃に移ろう。

「恨むなよ仮面野郎……もし恨むとしても、俺じゃなくガストレアでも恨んでくれ」

 

俺は仮面野郎より幾分か高い場所に陣取りつつ、仮面野郎の動きを先読みして確実に当てるべく電磁波によるサーチを開始した。

しかもいつもより精度重視にしたから……仮面野郎の心臓の動きまで丸見えだ。

うへぇ気持ち悪い。

電磁波の精度を上昇させて心臓を見えるようにしたは良いけど、これは……機械だろうか。

仮面野郎の体内にはかなり大きい機械が存在した。

それこそ仮面野郎の胴体部分の七割から八割ほどを占めるくらいに大きい機械が。

ついでに言うなら、その機械はバラニウム製かつ原料になんらかの混ぜ物をされているようで……俺の磁力で狂わせることは難しそうだ。

磁力に反応する筈のバラニウム製機械で磁力に反応しないというのも妙なものだが、恐らく先生が作ったと言っていた試作の合金だろう。

まぁこれは先生からの受け売りになってしまうのだが、超バラニウムの完成までには数多くのバラニウムを配合した合金が生まれたらしい。

それこそ電気抵抗が極限まで高められた特殊なバラニウムや、少し脆くなった代わりに発する磁場がとても強くなった特殊なもの、さらに既存のバラニウムとはガストレアに対して毒となる効果以外ほぼ全てと特性が異なると言えるバラニウム合金すらあったらしい。

そして、あの仮面野郎の体内の機械は電磁波によるサーチを信じるなら……ほぼ確実に磁力の影響を受けないタイプのバラニウム合金を使われていると思われる。

 

まぁ、確かに世界を探せば異常進化によって磁力を操るガストレアもいると聞いたがな……

何故に体内の機械にそんな合金を使ったのやら。

今時の精密機械は磁力で狂わされることがほぼなくなったし、怖いのはせいぜいが『磁力に引かれてパーツが歪む』ってことぐらいだろうに。

それならいっそパーツが歪まないように普通に超バラニウムあるいはそれに準ずる強力なバラニウム合金を使えば良いはずなんだが。解せぬ。

……まぁそんなことは良いとして、今回に限っては磁力の影響を受けないという特性は少し面倒だ。

針金の誘導にアイツ自身を使うことが出来ないのは痛い。

 

だからその分しっかり狙わないとな……俺は構えた針金を仮面野郎の首に向け、放つ。

速度的には音速は越えず、しかしそれでも十分速いと言える速度で。

まるで暗殺者が忍び寄るように、針金は静かに仮面野郎の首に接近する。

そして……次の瞬間、俺も一瞬認識出来ないような速度で新たな敵が現れて針金を斬り払ってしまった。

「パパに……近付くなぁ!」

 

……そういや、仮面野郎のイニシエーターが居たっけな。

完全に失念していた。完全に油断からのミスだ。

俺は自分の失敗を反省しながら、ひとまず先にイニシエーターから片付けてやろうと構えを取るのであった。




あぁ……早く日常パートに戻りてぇ……ダラダラした話を書きてぇ……
いっそ番外……ってやっても大して本編の日常パートと変わらんわ……

いっそ蓮太郎とティナの過去編みたいなのをやってみるかねぇ?

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