“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語   作:秋ピザ

20 / 46
いつもよりちょっと早めの投稿。
しかし今回の話は……うん、原作の蓮太郎なら絶対やりませんわこれ。的な。

そんじゃどーぞ。


鉄砕く理不尽なる拳

我が家の前にて。

俺の想定よりもそれなりに早く、あの刃物野郎はすぐそばに迫っていた。

あの時は遠慮せずかなりえげつない速度で飛ばしたと言うのに、バケモノかっての。

……まぁ俺もコイツのことは言えんが。

しかしリカバリーがここまで早いと厄介だな。作戦を少し巻きでやらないといけなくなる。

俺だからいいものを、普通のやつならプランの修正を余儀なくされているだろうな。

 

まず作戦の肝として、戦闘にちょうど良い位置を探し出す。

ここからなるべく近く。かといって相手の機動力を活かせる場所ではなく、なおかつ金属の多いスラム街で、刃物野郎の進行ルート上……と、なると多少場所は絞られるが、最悪の場合戦いながら整地してやればいいさ。

何せ今回はこっちの手札のほとんどを封じられてるんだからな。その手札を贅沢に整地に使おうとどうってことはないさ。

だから場所を迅速に決めて、迷わず移動しよう。

それこそ疾風の如く、いや雷光の如く。

 

で、辿り着いたら早速戦闘の準備だ。

準備と言っても大したことはしないが、せめて電気で身体能力をいつでも強化出来るようにしておくのは常識だろう。

何故かって?そりゃあ……

「くたばれ世界最強ッ!」

 

刃物野郎が突如加速して俺の目の前に現れたらいつでも避けられるようにだよ。

俺は刃物野郎が目の前に現れた瞬間、筋肉を電気で刺激して限界以上の力を生み出す。

それこそ常人の肉体なら一瞬で文字通り壊れるような速度で、だが……しかし俺の体は問題ない。

生憎とあまり戦わなかった期間があるが、そうは言っても3日に一度はガストレアを軽く殺戮する運動をしてたからそれほど体は鈍っちゃいないし、何よりどういう訳か四肢がほとんど金属に近い性質の何かになっているからな。

 

電気を操る力を手に入れた際、おまけのように四肢が超バラニウム(とりあえずバラニウムの強化合金という認識で問題ない)製の義肢だった体が不可思議極まりない現象の産物として本物の肉体になったのだ。ただし材料である義肢の性質はそのままでな。

 

だから俺の体は限界以上の加速であっても耐えられるし、さらに言えば力を使ったならありえない挙動も思いのままだ。

つまり急に攻撃を回避して次の瞬間流れるように逆へ移動して殴る、なんてのも出来るってことさ。

「……!」

 

こんな風に。

俺は自分の肉体を無理矢理気味に動かして拳を叩き込むと、そこからかつて特殊な戦闘術を使っていた経験を活かして『剄力』とかいう自分でもさほど頭では理解していない力を利用し、遠くに飛ばす。

まぁその戦闘術は今や使わなくなって久しいし、技も使えなくなってしまっているが……それでも基礎はしっかりと俺に根付いているからな。

だから純粋な格闘戦となった今回、上手いことコイツをぶっ飛ばすのに使わせてもらった。

 

だが恐らくこの程度じゃ沈んでもくれないだろうし、ここからはかなり汚いと言われても仕方ない手段の為の準備をするか……

遠くに殴り飛ばした刃物野郎がまだ戻って来ないのを確認しつつ、俺は電磁波を普段より相当広めに展開して目的のものを探すことにした。

探す対象は……っとあぶねぇ。

電磁波による捜索を始めた瞬間に跳んで来やがったぞコイツ。

野生の勘で俺の作戦に危機感でも抱いたのかってくらいに今の動きは素早かった……が。

しかし幸いにして展開していた電磁波で上手く刃物野郎のリカバリーを察することが出来たため俺に損害はない。

いやむしろ利益があった。

刃物野郎が自分の勢いゆえにむしろ遠ざかっているのだ。

 

これは思いもよらない幸運だぜ。

この隙に目的のヤツを探し出させて貰うとしようじゃないか。

俺はある程度高い場所……それこそビルの屋上や塔の天辺にいる奴を片っ端から広めの電磁波でサーチし、怪しいやつを発見したら出力を上げて鮮明にする。

この行動を大体0.1秒前後で何度か終わらせて、やがて八回目のサーチでここから500mほど離れたビルの屋上にいる小柄な人影(電磁波のレーダーで見ているから影というかは分からないが)を捉えた。

そして、俺はその場所に向かって淀みない動作で、出てくる直前に用意した特殊な弾丸を持ちつつ腕を伸ばす。

そう、俺が狙っているのは『イニシエーターを人質にしたプロモーターへの脅迫』。つまり外道の策だ。

正直な話ここからあっちのイニシエーターに攻撃を当てることは通常であれば不可能に近いが……少なくとも俺であれば命中させられる。

まずこの弾丸が俺専用にチューンした特殊な弾丸であること。

飛ばすための火薬を抜いて、その代わりに命中した瞬間に火薬の力で弾けて対象の肉体を内から破壊する弾丸に作り替えたくらいしか分かりやすい特徴はないが、ここで注目するべきはこの弾丸の素材だ。

なんと素材は超バラニウム。バラニウムをベースに多くの金属を配合したらしい現状期待し得る最高の金属素材なのである。

ゆえに通常の弾丸に比べて超電磁砲で撃ったときの射程も長いし、貫通力も高い。

それこそ一対多の戦いで使えば時として逆転の一手にもなり得るだろう。

俺は今回それを使って、イニシエーターを狙う。

そして何よりこの狙撃の肝となるのが磁力によるサポート。

軌道となる位置に磁力を発生させておくことで弾丸の軌道をある程度コントロールするのだ……まぁ、負担は物凄いことになるからあまりやりたくはないんだけどな。

その2つの要素が絡んだこの狙撃は外れない。

何が、あろうと。

「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

俺が狙撃の準備を終えたころ、刃物野郎は再びバネのような勢いで接近してきたが……

 

もう遅い。決着は付いちまったのさ。

「おい刃物野郎!イニシエーターの命が惜しけりゃ今すぐ降伏しろ!俺はここからお前のイニシエーターを撃ち抜くだけの技術がある!」

 

俺の口から飛び出る、脅迫の言葉。

はっきり言って俺自身も驚くくらいにこの言葉がすんなり出てきた。

堕ちるとこまで堕ちたなぁ、俺も。

まさか子供を人質にするための言葉をスラスラ言えるとかちょっと軽いショックだわ……あ、これ二重表現。

まぁこんなタイミングで自分の思考における日本語の使い方の間違いは気にするほどのことではないし、とりあえず一旦置いておこう。

今は刃物野郎の一挙手一投足に気を付ける必要がある。

何せ、人質を気にせず攻撃してきたら俺の計画が狂うからな。

……だが俺は、警戒すると同時に確信していた。刃物野郎はこの脅迫に屈するってな。

理由は無いが、強いていえば同族意識に近いものだろうか。

同じ異能を持つ者として、多分コイツはイニシエーターを捨てられるような奴じゃないってなんとなく理解できたんだ。

だから、恐らくこの脅迫は成功する。

「チッ……分かった、だから撃つな。もしそれで撃つようなら……俺は命懸けでお前を殺すと思え」

 

ほらな?成功しただろう?

「約束しよう、お前が素直にここから去って、金輪際関わらないと約束できるならな」

 

俺は脅迫が成功したのを確認しつつも、油断なく刃物野郎に要求を伝える。

当然ながらこれは口約束なのでもしかしたら守られないかもしれないが……

その時は体を絶縁体化しても無効化できないほどの高圧電流を喰らわせてやれば良いだろう。

それに、最悪の場合東京エリア全土を焼き払う覚悟で人質を取ることも不可能じゃないからな。

「……分かった」

 

「よし、交渉成立だ」

 

交渉が成立したが、俺はなお腕を下ろさずに油断なく刃物野郎の方を確認する。

……無言でこちらを睨んでいるが、それだけだ。

しかし先程までの戦闘を考えても油断は出来ないし、あちらが帰るまでは腕を下ろさずにいた方が得策だろう、

しかし、正直さっさと去ってくれないものだろうかと思う。いい加減腕を上げっ放しで疲れてきた。

 

 

 

……なお、刃物野郎が実際に去っていったのはこの五分ほど後のことだった。

お陰で腕が棒のようになっている……恨んでやるぜ。しばらくな。

 




半ニートは思う。伊熊くんってもうちょっと夏世ちゃんに優しければツンデレっぽいよねって。
そんな妄想を抱いた結果、伊熊くんは原作の数倍夏世ちゃんに優しい仕様に……うわぁやめてください低評価の嵐だけは!

ただ個人的にはこれでバランスを取っているつもりで居ます。
延殊&木更さん死亡の分のバランスを取るために二人が生存……と、いう訳でもないがとりあえず、原作では死んでしまった二人はこの作品では死にません。異論反論は許すが今のところこの方針が変わる予定はない!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。