まぁとりあえず、今回は衝撃の真実ゥ!的なことしてみました。
ドガッシャン!
そんな音を聞いたのは、午前11時頃……つまりはグータラ過ごす1日において腹が減ったり減らなかったりする時間である。
ちなみに今日はその時間、おっさんに貰ったカードゲームの整理をしていた。
これでも意外とレア物だからな……カードゲームって。
それに実はどこかに一枚ウン万するような物があったりすることがあるという話も聞いていたので、とりあえず中身を改めようかと思って書斎(またの名を倉庫と言う)に居たのだ。
もちろんティナも一緒だったので何度か対戦してみたのだが……意外と泥試合化して面白かった。
当分は暇潰しのメインになるだろうとか考えるくらいには、面白かった。
そしてそんなことを考えていられる程度には平和だった。
しかしあるタイミングで突然俺の電磁波(実は最低限の感度の電磁波を無意識に飛ばしている)に音速の七割くらいの速度で飛来する謎の影が映ったのだ。
……で、俺は思ったね。
この反応、なんか先日の変態仮面の反応にそっくりじゃね?って。
はっきり言って金の為に処分することを真剣に考えているあの変態仮面だって。
それに気付くなり俺は家を出て迎撃しようとしたわけさ。
唯一の誤算といえば……音速の七割くらいは俺でも身体能力だけでは追い付けない速度であったことだろう。
変態仮面は、我が家に激突した。
しかも平穏を破るかのように塀を突き破りながら。
塀が突き破られて平穏崩れ去る……というとなんだか素敵な詩的表現に聞こえなくもないが、とりあえず言っておこう。
マジで死ね変態仮面。
俺は、一切の容赦なく十発近い弾丸をポケットから取り出し、超電磁砲で飛ばした。
その威力は下手な戦車程度なら一撃でぶっ壊せるほどの物だから……当然、人間(かもしれない)である変態仮面は死ぬ、あるいは最低限吹っ飛ぶ筈なのだ。
しかし変態仮面は消え去らない。
戦車を余裕で壊せるどころか、レベルIIIガストレア程度であれば一発で沈むような威力の超電磁砲を十発近く受けてなお、消え去らない。というか立っている。
……どゆこと?
いやおかしいでしょ。戦車砲なんかとは比べ物にならない威力を秘めた超電磁砲を十発撃ちこんで倒れないとか頭おかしいだろ。
俺はそう思って、追い撃ちに高圧電流やら何やらをぶつけてみるが……効いた様子はない。
というかむしろ攻撃するたびに変な音が鳴ってくるようになったし、逆効果な気もする。
だったら直接触れて熱で脳味噌レンジやれば流石に死ぬか?
いや……超電磁砲を防ぐような敵に流石にそれは効かないよな。
しかし、このまま倒せないだと俺が世界最強の座から降ろされちまうかもしれないな……世界二位辺りの奴に。
もういっそコイツに対してあの刃物男戦用に取っておくはずの超帯電モードを解放してみるか?
いや、でもそれはもったいない。
実のところあれをやると解除後僅かな間だが出力が多少減衰するから、出来るものなら刃物男戦にとっておきたいのだ。
そういうことで、俺は超帯電モードの使用を頭から追い払った。
通信モードでこのやたら頑丈な変態仮面を消し去る方法……何が良いだろうか。
まず当てることは難しくないから、出来るだけ威力を重視。
そして速度を捨ててでもえげつない威力を叩き出す大技。
そんな技はあるのか?と聞かれたらあるとは言えないが、まぁ造ってみせよう。
新たな技を。この変態仮面を消し去るためだけの必殺技を。
「……く……人間にしては、やるじゃないか……」
変態仮面は何やら俺を見て言っているが、そんなことは気にせずに技の作成をする。
基礎にはやはり超電磁砲を使うとして、そこに威力を上げるオプションを全部乗せ。
具体的には射程、発動から発射までの隙、コントロールもろもろを全部捨て、その上で威力に全振りする。
そうすることで、超電磁砲は……戦術級の兵器になる。
「喰らいな」
俺は超電磁砲の調整を終えるなり、変態仮面に指を向けた。
ちなみにその指の先には不思議な形をした弾丸があり、先端を変態仮面に向けている。
これは『衝撃槍』と呼ばれる凶悪極まりない弾丸で、なんと様々な科学の応用によって空気の流れなどを操り、弾丸前方に文字通り衝撃の槍を作り出して敵を貫くのだ。とは先生の談だが……威力については保証できる。
先生は人をバカにするのが大好きで堪らないタイプの人だが、ことこういうものについては絶対に嘘を吐かないからな。
だから安心してこれを放てるのさ……【超電磁砲・撃滅ver(現在命名)】!
この技は撃滅という名の通り命中すれば命どころか死体すら残らんし、レベルIVガストレアであっても喰らえば文字通りひとたまりもない威力を誇る(多分)技だ。
具体的には通常の超電磁砲の……しまったどっちにせよ大抵のものは一撃で壊れるから分からん!まぁとりあえず撃滅verの方が圧倒的に威力は高いぞ!
俺は、人に向けてはいけない系の技である撃滅verを変態仮面に向かって発射した。
そして弾丸の特殊な形状が衝撃槍の名前の通り衝撃の槍を生み出し、変態仮面の体を貫く……
筈だった。
俺の目の前に壁が産まれ、さらに四方を覆うようにして分厚い金属で出来ている壁が発生する。
その上物理法則を嘲笑うような速度で生まれたその壁は撃滅verの超電磁砲を飲み込んだようで……チッ、威力が減衰したなこりゃ。
「やってくれるじゃねぇか……クソ野郎がぁぁぁぁ!」
まぁあれだ、変態仮面の抹殺を防いでくれやがった落とし前はこの壁の持ち主にでも請求することとしよう。
とりあえず壁を蹴って脱出し、俺は電磁波の精度を上げる。
これまでは広い範囲をカバーする代わりにそこまで高い精度は無かったが、ここからは範囲を犠牲に精度を上げ……人間の顔の輪郭の細かいところまで分かるようにする。
そして同時に目を瞑り、体の中の電気を操作して超帯電モードへ突入する。
のっけから本気だ。手加減は一切しないし、相手を人間として見てやるつもりもない。
自分が仕留めようとした瞬間にそれを無効化されることほど腹立たしいことはないし……何より単純にイライラしてるんでな。
「【超電磁砲・散】!」
まずは挨拶代わりに一発、周囲の適当な砂鉄を適当に弾丸にして加速した超電磁砲もどきを浴びせてやる。
イメージとしては即席の地雷みたいなもんだろう。
ちなみにその弾丸にされる砂鉄は割と適当に選んでいるので、もしそれが直撃したなら……それは相当に運が悪いことになるな。
まぁ本来であればこんなことをするよりも砂鉄を固めて宙を舞う剣にした方が効率もいいし何より強いんだが、今回あえてこれを選んだのには理由がある。
それは単純な話、ティナが言っていたこの刃物野郎のイニシエーターへの対策である。
ティナと鉢合わせしたということは同じスナイパーとして戦うことがあり、なおかつ近接型の可能性は低いと言うこと。
その攻撃方法はある程度考えられるが……中でも警戒するべきは狙撃。
ゆえにその狙撃への牽制としてここであえてこんな技……つまりはランダムな絨毯爆撃に近い技を使ってこう思わせたのだ。
『奴は近くの金属全てに電気を流せるのでは?』とな。
実際のところ、もし触れずに金属を操作して弾丸にするならばある程度意識していなければ狙撃を受け止めることなんざ出来ないが……ハッタリにはちょうどいいだろう。
それに万が一バレて狙撃が来たとしても、それならそれでその軌道を無理矢理修正するなりなんなりしてコイツに当てれば止まるだろう。
誤射のリスクってもんは一対一の戦場への助太刀の際なんとしても避けたいものだしよ。
俺は脳内で解説を終わらせると同時、あえて隙だらけの動きで構える。
実際それは隙に過ぎないが、相手は多くの場合警戒して直接殴りにはこない。
だからその猶予を使って思いきり隙の大きい技を放つわけさ。
……そんじゃ、大技行きますかね。
帯電した電気全てを一瞬で放出し、確実に息の根を止める必殺技……しかも俺が暴れまわっていた頃にレベルIVガストレア『アルデバラン』を仕留められた数少ない技の1つ……
「“直列”!」
その名も……
「大・帯・電・撃ィ!」
直列大帯電撃。名前にすると字面的にそれほど強そうには見えないこの技の内容は、言ってしまえば威力の高い雷だ。
それこそ天然の雷数百回分にも……いや、もしかすると数千回に相当するであろう威力だけどな。
しかしただの電撃だ。超電磁砲のように物理的な威力はないし並列シリーズにありがちな物理的な実体を持った電気でもない。
その上燃費は最悪でそれなりに疲れる超帯電モード中になら体内で一気に使える電気の許容量がある程度大きくなるからあまり負担はないが、通常時に使おうものなら凄まじい疲労と全身の痛みが俺を襲う。
まだ超帯電モードをロクに使っていなかったあの頃にはこの技のせいで苦労したよ……それこそ何度か死にかけたし。
しかしだな、この技には他の技には存在しないオンリーワンの長所がある。
それは『帯電』。
名前にも入っているからお分かりのことと思うだろうが……大帯電撃の電気は命中した対象に帯電し、その肉体が焼け焦げて消えるまで幾度となく焼くのだ。
ハッキリ言ってオーバーキル。
だが……こんなバケモノ同士の戦いの始まりの一撃には、ちょうど良いだろう。
俺は拳を握り締め、今度は出来るだけ隙のない動作で構える。
「がぁぁぁぁァァァァァ!!!」
やはりな。
俺の目の前に居る刃物野郎は俺の電撃を自分の腕を地面に突き刺して即席のアース線にしたらしい。
なるほど悪くない判断だ……あのままなら帯電した電気が延々とお前の体を焼いていて、とっくに死んだだろうさ。
だけどな?甘いんだよ。
そこはアース線で電気を逃がしつつ空いた手でありったけの足止めを講じるくらいはしねーと。
俺は刃物野郎の選択をバカにしつつも油断なく、周囲の砂鉄を集めて剣を数本作り上げ、全てを磁力で操って刃物野郎へ飛ばす。
速度は300km/hと言ったところか。
まぁ何も考えず単純な磁力で飛ばしたにしては及第点、てところだろう。
無論そんな攻撃が通じるとは思っていないので、砂鉄の剣が稼いでくれる最低限の時間を新たな攻撃のために費やす。
その攻撃はあえて表現するなら、プロモーター殺しとでも言ったところか?
単純に相手の体を中心にかなり強力な磁力を発生させて、俺の攻撃を誘導できるようにする。
………え?なんでこの状況でただの磁力を選んだのかって?
そりゃ簡単さ。この磁石化によって与えられる磁力は下手すりゃネオジム磁石と同等以上はあるから、まず身に付けている電子機器類を全滅させる。
さらに銃を使う場合はもっと悲惨なことになる。
銃弾の材質にもよるが、少なくともバラニウムか鉄さえ含んでれば撃った瞬間から逆方向の力が働いて威力が大幅に減衰するし、その上バレルの長い銃………それこそ狙撃銃なんかは、最悪の場合銃身に弾が詰まってロクに使えなくなっちまうのさ。
んで、それに加えて体が磁石になるわけだからバラニウム製の武器は体に張り付くし、ナイフとかならそのまま刺さってもおかしくない。
そして相手がプロモーターなら、どんな奴であろうとバラニウム製の武器を持っていないなんてことはありえない!
ゆえにこの技は『プロモーター殺し』と呼ぶに値するのだ。
まぁ、唯一の弱点としてこの技は相手の体そのものを磁石化するのではなくあくまで相手の体の座標に磁力を発生させるよく分からん力を置いてるだけだから、素早く金属を手放して逃げりゃあ意味がなくなっちまうんだけどな。
しかし今回は相手が体から刃を生み出すことだし………効果は確実に出る。
俺は自分でも悪人面をしている自覚が生まれるくらいに悪い顔をしながら、刃物野郎が自分の体を中心に発生する磁力に引かれて速度の増した砂鉄の剣にいかにして抵抗するのかを見物する。
………相手が悪かったな、刃物野郎。お前の力は相手が俺でさえなけりゃ多分勝てただろうよ………しかし、俺という電気と磁力を操れるバケモノが相手じゃ、勝ち目がなかったのさ。
「だぁらっしゃぁ!」
しかし、刃物野郎は俺の予想を裏切り、あっさりと磁力の拘束を抜け出してこちらへと跳んできた。
人間のそれとは思えないような瞬発力で接近してきた刃物野郎に、俺は久しぶりの命の危機を感じた。
つーかこんなの嘘だろ………事実だとしてもふざけんなよ。
電磁波で確認したが、ありえないだろこれ。
"全身を金属に限りなく近い絶縁体にしつつバラニウムを全部それに変換して抜ける"だ?ありえねぇだろ………いくら俺でもそこまでは出来ねぇっての。
俺は流石に分が悪いと判断し、その場からの逃走を決意した。
相手は絶縁体の肉体で俺の電撃は効かず、バラニウムでも鉄でもないから磁力による足止めは出来ない。
だがそれがどうした。
俺だってこれまで伊達にガストレアを殺して回ってないんでな。逃走するための手管ならいくらか持ってる。
「………【鉄輪縛鎖】【超電磁砲】」
単純な拘束と、拘束に使った砂鉄の塊を利用した超電磁砲。そのコンボだ。
かつてガストレアレベルIVからの逃走すら容易としたこのコンボ………あんまり早く破ってはくれるなよ?
俺はそう願いながら、自宅へと戻っていくのだった。
このまま次回に続きます。
それとあとがきのネタがないです。
そんな訳であとがきが恐ろしく内容が薄いです。むしろ何もないです。
それと………次回投稿は一週間以上かかる可能性が大です。