“プロモーター序列第一位”里見蓮太郎の物語   作:秋ピザ

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なんか人間として負けている気がする

少女の目に改造が施された次の日のこと。

朝っぱらからとんでもないものを見た。

いや、正確に言うと変な時間に目が覚めて二度寝したけど思ったより早起きで……んでその時になんとなく遠くの方を見たんだが、なんとそこには二組の民警が居たんだ。

正直な話ティナたちが寝てなきゃ雷数回を纏めて直撃させたくらいの威力の必殺技で殺してやりたいくらいの相手が、な。

そう、その二組は先日俺にダメージを与えてきたあの刃物野郎ペアと、やたら防御力が高い仮面男ペアだ。

イニシエーターは何やら中距離で戦おうとする奴と近距離で斬り合おうとする奴が泥沼的な戦いを行っているが……まぁこっちは至って常識的(どちらも中々に優秀だが常識的だ)な戦いだから気にすることはないだろう。

しかし問題はプロモーター同士の戦いだ。

見ただけでは細かい所まで分からないので電磁波で確認したが……仮面男はどうやら斥力のような物を操るようで、不自然に電磁波が曲げられる場所がある。それと仮面男自身はどうやら地面に足を付けていないタイミングが度々存在しているし、恐らく斥力で浮遊しているのだと思われる。

随分と昔、先生が今よりもっとマッドサイエンティストでキチガイしてた頃のことだが……確か先生のプロジェクトの違うセクションで『ガストレアステージIVの攻撃を防ぐ絶対防御』をコンセプトとして、何故か完璧にバリアーとしか言い様のない物を作り上げた同僚が居たと聞いたことがあるが、コイツなのかもな。

 

……で、俺個人としては仮面男よりも先に消し飛ばしたい奴である刃物野郎。

コイツは少々訳が分からない。

電磁波の情報を信じるのであれば、コイツはどうやら攻撃の瞬間に拳から刃を出してリーチを延長しているようなのだ。

そして銃による攻撃は体表に素早く刃を展開することで弾いているようだし……もしかしてコイツ、俺の同類だったりするのか?いや、はっきり言って異能という名のオンリーワンなアドバンテージがオンリーワンじゃなくなるし端迷惑な話だが。

ただ、俺の電気を操る力も大概に迷惑な能力だが、この刃……あるいは金属?を操る力はかなり迷惑そうだな。

使い方次第じゃバラニウムの巨大インゴットとかも作れそうだが、今のところの使い方を見るにむしろその力は直接的な攻撃にしか使われて無いっぽいんだよな……

だが正直な所、金属を作り出す能力のタネさえ割れれば、コイツは俺にとって相性のいい敵みたいだ。

なんたって金属と言うものは基本的に電気を良く通す。

アース線を作ればそっちに流すのも難しくないが、それをすればあまり動けなくなるからある程度離れて雷を落としてやればいい。

そして、剣やら何やらで攻撃してもカウンター気味に高圧電流が流れ体を焼く。

もういっそ面白いくらいにコイツと俺の相性は一方的に俺が強いと言える。

ポケモ○的に言うならば物理偏重気味に育てたレックウ○に特殊ばっか上げまくったメノコで吹雪を連打しているようなもんと言えば分かるだろうか?

とりあえず勝ち目はない。何かしら隠し玉があっても勝てる。それくらいの相手だ。

 

まぁ、助喜与師範(元師匠。人の域を越えたレベルで強い)に言わせたら油断してる分俺の方が痛い目を見ることになるんだろうがな。

……だがそういうときの為にも対策があるんだ。これが。

その名も……

「……ぁふ……おはよう…ございます……おにーさん……」

 

……ティナが起きたみたいだし、遠くで起きている戦いについて考えるのは後回しにするか。

俺は素早く思考を切り替え、戦闘に関することを頭から追い出す。

この1年で学んだことの1つだ。

くだらない日々を怠惰かつ無駄に過ごすコツは、戦いと仕事と正義についての思考を頭から追い出すこと。

戦いについて考えてるようじゃくだらない日々は過ごせない。何故なら人は戦うことを考えると無意識にその為の備えをするから。

仕事について考えるようじゃ怠惰には過ごせない。何故なら日本人の国民性は仕事について考えると働かなければいけないという強迫観念じみたものを持たせるから。

正義について考えてるようじゃ日々を無駄に過ごすことは出来ない。何故なら正義を正義として動かすには常日頃からの莫大な努力が必要になるから。

ゆえに、俺は戦う時になるまでその3つについて考えない。いや、最後の1つについてはどんな時であっても考えない。

「朝から哲学者みたいな顔して、どうしたんですか?」

 

「……なんでもない。ニートなクズの為の言い訳みたいなことを考えてただけだ」

 

ついでに言うと、正義について考えてるとティナに甘える時にどこか少し倫理的な正義感がストップを掛けるから俺は決して考えない。正義についてを。

……しかし、朝からこんなこと考えてると気分沈むわ。

何故に朝一番で憂鬱な気分にならなきゃなんねーのか疑問しか覚えないね。チクショウ現実め、どこまで俺の気分を悪くすりゃ気が済むんだ。

「あ、今度は良く分からないけどそれとなくイライラしている感じがします」

 

「心でも読んでるのか?」

 

そしてそんなやりとりを繰り返すこと、数回。

とりあえず着替えて飯を食うことにした。

気分が微妙に沈んだままだし、変な時間に起きたのもあって正直まだ寝たい気分ではあるが、良く考えると昨日晩飯を食った覚えがない。

そこまで空腹を感じる訳ではないが、とりあえず生活リズムの崩れっぷりがすでに致命的なレベルにまで達しているのだからそれ以上崩す必要はない、と考えたのだ。

ついでに言うと健康のためってのもあるが。まぁ本来ならこっちがメインなんだろうがな。

話を戻そう。

そして俺は適当に朝食を作ろうとキッチンまで移動した、のだが……そこで、驚きの光景を目にした。

 

なんと料理がすでに作られているのだ。

しかも、なにげに俺より上手い。

一体誰が?……答えは分かりきっているが、とりあえずお約束的にそれを言ってみると、すぐにその答えは提示された。

「おはようございます?」

 

拾った少女、コイツがこの朝食を作ったようなのだ。

幼い見た目に反して料理の腕は俺以上、ねぇ。

俺のやることなんざ戦うことと家事とだらけることくらいなのに、家事を誰かに取られたら俺のやることが戦うかだらけてるだけのダメ人間になっちまうじゃないか……

由々しき事態だ。早急に俺の長所を考えなければ……

「……えと、その、ダメでした?」

 

俺が『うわぁ……』という顔をしたのを勝手に料理をしたことに問題があったとでも思い込んだのか、少女はそんな質問をしてきた。

それに対して俺はなんかもうコイツ拾ったの正解だか失敗だか分かんないなー。とか考えながら適当に答える。

「いや、料理作ってくれるのはありがたいさ……ただ俺から家事という取り柄を取ったら単純に強いことくらいしか残らないと気付いて自己嫌悪に陥りかけてるだけ」

 

「……」

しかし、どうやらティナは自分がやればよかったかなぁ……みたいなことを考えているのか、なんだか微妙な顔だ。

まぁ、こういうときは自然にフォローすれば良いのさ。

それこそ1年以上にも及ぶ退廃的な二人暮らしが活かされる時だ。

「……なんで目が見えなかったはずなのに料理が出来るんですか?」

 

「……なんか、作ってみたら……出来たんです」

 

……あ、いやどうやらティナは少女が目の見えない生活を送っていた筈なのに何故これを作れたのか気になってたのね。なんだ良かった。

 

にしても初めて(多分)でこのレベルとか、才能あるよな……明日辺りからはちょっと料理を仕込んで俺が楽できるようにするのも良いかもしれない。

期待が膨らむぜ。

ただ料理道の先輩として格好を付けたいし、ちょっと練習しないとな……

俺は密かに、料理の特訓の予定を立てるのであった。




幼女(10歳)に料理の才能で敗北して色々負けた気がした蓮太郎……と、いうのが今回の話のメインです。
しかし深い意味はないです。

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