そして戦闘回。でもこういうシリアス系バトルは苦手なんだよなぁ……
ま、ひとまずどぞー。
……俺の一日は基本不規則だ。
いつ起きるかも、いつ訓練するかも、いつ飯を食うかも特に時間を決めているわけではなく、ただなんとなくで生きている。
しかしそこに時々入ってくるのが仕事ってやつで、これまた厄介だ。
あまり考えることもないし依頼が来ることもないから忘れがちだが、ゾディアックガストレアとの戦いで二人が死んだあと、俺はそこそこの期間未踏査区域とモノリス内を出入りしてガストレアを殺戮する生活を送り……そのあとしばらくして落ち着くと、有り余る金でまず天童民間警備会社の入っている建物を買収した。
その管理は二人が生きていた頃から顔馴染みの光風ファイナンスの方々にお願いしている。
そして、残った天童民間警備会社は名義上の社長が俺となり、依頼をすれば必ず世界最強のプロモーターがどうにかしてくれるなんてことで一時期世間を賑わせたりもしたっけか……
お陰で大幅値上げをせざるを得なくなったのも良い思い出だ。ただまぁ、その額が客を減らすための物だったから法外な額になって、確か最終的に一件辺り前金400万、成功報酬3000万からってのになってたっけか。
しかし、残念なことに大幅値上げ程度では俺に依頼を受けてもらえるというネームバリューは衰えなかったらしく、やはり依頼は殺到した。
しかも今度は相当の浮遊層からくだらない依頼をされることも増えて……結局、天童民間警備会社は月に1日だけ営業する形になってしまっている。
……で、そんな史上もっとも面倒な民警である天童民間警備会社だが、今回はなんと国のトップから依頼が舞い込んできたわけだ。
内容は七星の遺産なるヤバいアイテムの回収。
はっきり言ってめんどくさいが、報酬も良いしな……
そう考えつつ、地面を強く踏んで跳躍し、手頃な電線に触れてみた。
そしてその瞬間に電気の流れを解析し、不自然に電気が流れていないところを探してみる。
電線ですら意外とバカにならん出費が必要になる現代、一度盗まれでもしたら張り直すのには少しだけ時間が必要になる。
当然、電気が止まればピンチになる住民たちはそんなことをしない。ならば誰がするか?それはガストレアだ。
そして俺はそれを利用し、不自然に電線の切れた場所はないか探すのだが……ダメだなこれは。見付からん。
面倒極まりないなこりゃ。これで一発で何かありゃ相当楽だってのに。
「ティナ、なんか見付かったか?」
俺は心中で何故仕事なんか受けやがった……とか思いながら、インカムでティナと連絡を取る。
『ダメですね。不自然に高速で移動する反応とかは感じられません』
しかし、ティナの方でも何か見付かった訳では無いようだ。
こういう捜索は俺よりもティナの方が得意だからもしかしたら……と思ったんだが、ダメか。
もうこうなったら素直に歩いて隅々まで潰して行くのが最善手だろう。
そう考えて、電磁波によるサーチを続けながら歩き出した。
俺のサーチ範囲は半径約500mほど。ティナの方は可変するが、大体50mくらいをサーチ出来るビット……確かシェンフィールドとか言ったっけ?が3つで、生物に対してのサーチ力はシェンフィールドの方が上、と言った感じだから見付ける時は恐らくティナが見付けるだろう。
まぁ俺の電磁波サーチもバカに出来ないくらいには性能が高いんだが。
少なくとも生物以外にたいしてはかなりサーチが効くからな。
特に金属や何やらの反応は割と見分けやすいから、三輪車あるいはそれを入れたケースの反応があれば……
意味がない思考を回しつつ歩いていたところ、不意に俺の電磁波のサーチ範囲にかなり高速で移動する金属の反応を感知した。
大体の感じでその種類を答えるなら、細い棒二本ある程度厚い金属板三枚に変な反応をしている箱が1つ、それと箱の数倍のサイズの金属塊が1つだ。
変な反応を示す箱ってことは……当たりか?
「ティナ」
ひとまずティナに情報を回して確認してもらおう。そこで追加情報が入ればより確実に補足できる。
『おにーさん、ターゲットは現在おにーさんの北東400m付近からおにーさんに向かって南下中です。なお交戦中のようですけど……どうします?』
……わぉ、何も言ってないのに欲しかった情報を次々と。
流石はティナ、そこに痺れる憧れるぅ……ってのは古いか。
とにかく助かった。とだけ伝えてから狙撃による援護を頼み、俺は南下しているというターゲットに接近する。
もちろん、その途中にも小細工は欠かさない。
まずこっちから接近すると言っても俺の能力の関係上金属の多い場所で戦った方が有利なのでまずは電信柱が建っている場所を選び、そこの上に陣取ってターゲットが来るまで待つ。
もちろんその場所でもただ待つのではなく、電磁波によるサーチを続けつつ平行して“充電”を行う。
え?なんのために充電なんかするのかって?
もちろん大技のためさ。
相手は一応マトモな人間だからそれを直撃させちゃ死ぬだろうが、そんなことは知ったこっちゃないし、少なくとも七星の遺産とやらを使われたらゾディアックがやって来るわけだし、それ対策としても有用だろう。
問題は充電すると出力が上がりすぎて使える技のレパートリーが減ってしまうことだが……まぁ火力が上がればわざわざ小さい威力の技を使ってやるまでも無いだろう。
「チッ……小比奈!」
「了解!」
……よし、どうやらターゲットのおでましみたいだな。
スリーカウントで奇襲して大技を叩き込んでやるとしよう。
3、2、1……
「くたばれっ!」
俺はある程度の充電によって出力が大幅に上がった電撃を体に纏い、ターゲットの至近距離まで寄るとそれを……
全て磁力に変換して、ターゲットを地面に縫い付けた。
「ティナ!」
俺はターゲットが強烈な磁力によって七星の遺産の入ったトランクと共に地面に縫い付けられたことを確認すると、即座にティナへ合図した。
こういう時はどうするか、ってのは前々からある程度決めてあるんだ。
この場合は『動きは止めたから死なない範囲でぶっ殺せ』。腕や足の三本四本は覚悟してもらうとしよう。
ちなみにこの場合俺は心の中でこれから動けないところを狙撃される恐怖を味わうターゲットたちに心からの嘲笑……もとい、嘲笑を浴びせつつ磁力をジリジリと弱めたり強くーしたりすることになっている。
理由は簡単、その方が苦しめられて良いからだ。
そしてターゲットの二人に、ティナからの容赦ない狙撃が襲いかかる。
まずはトランクを持っている……仮面?いや待てこれなんか見たような気が……とりあえず仮面の奴の方から撃ち抜かれていく。
まず右手、左手、右足首、左足首、右肘、そして左肘、右膝、左膝、肩、腰と続いていって、しかしそれでもギリギリで処置をしてターゲット生かすのだ。
まぁ、狙撃もここまでくるとほぼ曲芸撃ちの領域に入るが、それでも痛みと恐怖は与えられるので良いとしよう。
パァン!と人に当たったにしてはやたら高い上に強烈な音と共に、仮面の男の体が弾け……ん?
本来ならその狙撃で撃ち抜かれて取れていてもおかしくない右手が取れておらず、しかも無傷で残っている。
どういうことだ?ここはまだティナの絶対半径(とりあえず確実に狙ったところへ当たる半径でOK)からは出ていないし、強烈な風が吹いてもいない……はずだし、そもそも風が吹いていようとティナならシェンフィールドでそれを読んで確実に当てられるはずだ。
少なくとも外れたとしても数cm程度のはずだし……
俺はそこまで思考を進めて、思い出した。
そう言えばさっき、コイツら戦ってたんだよな。ということに。
「オラァ!」
急に後ろから斬り掛かられたので、当然のように体を加速させて足で剣の腹を叩き、迎撃する。
ふむ、電磁波サーチを見るにコイツがさっきターゲットと戦っていた民警だろうな。
さっきの狙撃も恐らくコイツがなんらかの手段で……俺の想像によればある程度ライフルでも逸らせるような勢いで投げられた金属片か何かを命中させて……外させたのだろう。
と、なればきっと相当の実力者だろうな。IP序列三桁は固いはずだ。
ティナはほぼティナ単独の実力で元90番台だったし、それを不意打ちとはいえ防いだのならそれは恐らく三桁台でも上位の110~100番くらいが怪しいんじゃないだろうか。
俺は冷静に敵を分析し、そしてそこにこちらから無造作に攻撃してその実力を押し量ることにした。
攻撃は……とりあえず磁力の方は不意を打って食らわせた方が良さそうだし、ひとまずアレで行こうか。
「並列エレキパンチ!」
拳に強烈な電撃を纏わせ、高速で敵の体に叩き込む。
そしてそれは命中と同時に常人であれば耐えられないであろう膨大な電流を叩き込んだ。
しかし、どういうわけかそれと同時に俺もダメージを受けてしまった。
……どういうことだ?
当然ながら俺自身が俺の電気で感電するということはありえないし、そもそも体が受けた電気全てを増幅して別の場所に送れるような仕組みになっているからあっちから電気を喰らった訳じゃない。
かと言って何らかのギミックであの速度に対応するなら電気くらいしか……
俺は高速で回転する思考の中、拳が受けた傷を電磁波で冷静に分析していた。
幸いにして体が頑丈だから(実際はそれ以上のものになるが)そこまで深手になっちゃいないが……なるほどこりゃ刃か何かで深く傷を付けられた感じだな。
それも鉄とかバラニウムとかの奴じゃなくて、超バラニウムっつーキチガイ染みて堅い合金と同程度以上の性能の武器で傷付けられたのだろう。
ナメたことしてくれやがって……!
俺は自分の傷を分析し終えると同時、全身に莫大な電流を流して強制的に充電する。
体に少々の負荷は掛かるが、これなら一度に使える電気の量は通常の数倍になり、十秒ほど溜めていれば大技も出せる。
急速充電モード、あるいは随分と古いゲームになぞらえるなら……超帯電モードと言ったところだろうか。
「死に晒せっ!稲妻包丁……からの雷刃!」
そして、準備を終えるなり即座に普通なら連続しては使えない電気量の技を使う。
稲妻包丁は電気で刃を作り、雷刃は自分あるいは持っている物に高圧電流の刃を付加する技だ。
その2つを重ねればどうなるかと言うと……
そりゃ残酷すぎて描写出来ないようなことには一切ならないだろうな。
雷刃を付加した稲妻包丁は俺の一部技の電気が実体を持つ特性ゆえに実際に体を切り裂き、さらに電流が一気に加熱するから即座に傷口が焼かれる。
だから斬った敵から血が飛び散らない。
まぁ、こんなとこで使っておいて難だがこれは元々乱戦に向いた技だ。
脳内でよく分からん説明を繰り広げつつ、稲妻包丁を振るって敵を一刀両断する。
「だあっ!」
……!?
だが、稲妻包丁はどういうわけか敵の体を両断するどころかダメージすら与えられず、ただ物理的にぶつかるだけで終わってしまった。
そしてそこに敵からのカウンターが襲い掛かる。
「クックック……噂には聞いちゃいたが、かのIP序列一位がこの程度なんてなぁ!くだばりやがれ!」
拳による単純かつ強力な打撃。それは恐らく俺の顔面に命中して鼻くらいは余裕で折ってくれることだろう。
……さて、ここで問題だ。俺の攻撃は何故防がれ、さらにエレキパンチのときは逆に刃で反撃を喰らってしまったのか、それは何故かを考えてみよう。
目の前の奴が知覚できない速度でカウンターした?
違うね、それじゃ稲妻包丁を防いだ理由にはならない。
だが、ここで稲妻包丁が通じない理由と俺がカウンターを受けた理由を合わせて考えると、不思議と訳の分からない結論以外はありえないということになるのだ。
こいつは体から自在に金属の刃やら針でも出して、それをアース線にしたり拳に突き刺したりしてるんじゃないかという結論に。
俺は、攻撃を受ける直前の一瞬の間に、自分の予測が的確であってくれることを信じてある攻撃を発動した。
俺の主力にして、周囲への被害が多大すぎるあの技……超電磁砲を、この敵そのものを弾丸として。
さっきまでは使っちゃいなかったが……これで体のどこかから出しているであろうアース線か金属製のパーツか何かを吹き飛ばすことで体勢さえ崩せれば……!
「なっ……」
よし……!
俺の予測は見事に的中し、敵の体は何かに引っ張られるようにして彼方へと飛んでいった。
結構な速度は出ていたが……まぁ、さっき俺の攻撃に物理でも耐えたんだから大丈夫だろう。
ただ、これで死んでしまったらこう言うしかなくなってしまうのだがな。
『そりゃ不幸だったな』ってさ。
とりあえず俺は飛んでいったアイツの不幸を祈りながら、そちらへ向かって軽めに超電磁砲を撃つのであった。
伊熊将監、登場。
原作じゃ影胤さんに蹴散らされあっけなく死んだし、むしろ二度しか出てこなかったけど本作じゃそんな彼も大幅強化なんだぜ。
ちなみに強化された理由は夏世ちゃん可愛いよね……まぁ死んでたけど。ということ。
つまりは救済ルートなのですよ!理不尽だけど!
理不尽だけど!(大事なことなので二回言った)