マモレナカッタ主人公に転生したらしい   作:オールドファッション

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本編が始まってすらいないのに低評価を付けられた。(´・ω・`)解せぬ


第二話 それロックガガン何体分?

再び目覚めると白い濃霧のかかった場所にいた。目を凝らしてもまったく先が見えない。

 

「どこだここは……っ!」

 

ものすごく聞き覚えがあるはずなのに自分の声ではない声が出てきた。

心なしか目線がいつもより高いし、服もなんか白を基調としたものなっている。いつの間にか腰には剣がぶら下がってるし……。

 

(アスベルじゃん………)

 

どう見てもアスベル・ラントです。本当にありがとうございます。ちなみにゲームのパッケージイラスト通りのデフォルト装備。

◯田神め、マジでアスベルに転生させやがった。前世なら素直に喜べたかもしれないが、状況が状況だけに喜べない。しかしそれを憂いている暇もなかった。

 

現状の確認をしようにも霧のせいで場所が特定できないし、霧が一向に晴れる兆しもなかった。とりあえず霧から抜け出すためにしばらく歩いてみたのだが、驚くことにいくら歩いても霧から出れない。2kmくらいの距離は確実に歩いているはずだ。別に超がつくほどの方向音痴でもないのだが、ここまで来るとさすがに自信がなくなる。

 

それからまた暫く歩いた時だ。何かが羽ばたくような音と子供の声のようなものが聞こえた。

 

(あ、人いたんだ。よかった、人気が全くないから無人島にでも飛ばされたかと思った)

 

音源を頼りに歩いて行くと、漸く光が差す場所に出れた。

安堵と同時に、声の主に感謝を言うべく周囲を見渡した時だ。

 

「ひっ!」

 

『クルル』

 

(oh……)

 

巨大なドラゴンが幼女を睨んでいた。

うん。どういう状況だ?おっぱいはどこ?いや、幼女のちっぱいはあるのだが。

いや……なるほど、おっぱいファンタジーということか(混乱

どこのえろげのタイトルだそれ?

 

俺が混乱と現実逃避をごっちゃ混ぜ状態になっていると、ドラゴンの方がこっちに気が付いた。

 

『ん、なんだ貴様は?なぜこんなところに人間がいる?』

 

(キエェェェェェェェェェアァァァァァァシャベッタァァァァァ!!!)

 

喋ったよこのドラゴン!ありえ……いや、テイルズでもそういうキャラがいるから一概に否定はできないな。

しかし声がすごい美人声優さんぽい。見た目では判断できないが雌だろうか。

 

見た目は蒼い鱗に覆われた美しいドラゴン。背中から翼が生えた西洋のスタンダードな竜の体型だ。

ドラゴンというだけあって名前に恥じない巨躯なのだが……。

 

「小さいな……」

 

『!』

 

人間と比べると確かに大きいのだが、グレイセスfに登場するロックガガンと比べるとどうしても小さく見える。もしかしたらロックガガンの上半身にも満たないのではないだろうか。

だってロックガガンだよ?体内マップがあるくらい大きいんだよ?「東京ドーム何個分?」みたいに「ロックガガン何体分?」って感じでも使えそうなロックガガンだよ?そう考えるとロックガガンって不思議だね。全長何メートルくらいあるんだろう。

 

ん?何だかドラゴンが震え始めたぞ。

 

『人間ごときが……私を、このティアマットを矮小だと宣うか!』

 

ドラゴンもとい、ティアマットさん激おこである。

なぜだ!?いや、そういえばさっき思い切り心の声が漏れてましたね、すいません。

 

ティアマットさんは声を荒げ、翼膜を羽ばたかす。風圧で周りの木々がなぎ倒され、幼女の体が吹き飛ばされた。

モンハンのレウスの咆哮で吹き飛ぶアイルーみたいだなー。て、現実逃避してる場合じゃない。

ちょうど手元まで来たので透かさずキャッチ。アスベルの身体スペックおかげで反動もなく抱きしめられた。

 

安堵しつつ、抱きしめたままの幼女を見下ろすと、めっちゃ見つめてきた。

おそらくティアマットさんを怒らせたことに文句が言いたいのだろう。すまないな幼女よ。だからそんなに見つめないでください。罪悪感で吐くから(真摯

 

「……怪我はないか」

 

「え?あ…はい」

 

「よかった」

 

「!」

 

よかった。怪我はないらしい。君に怪我があったら全世界の紳士から制裁を受けるからね。

 

幼女はグレイセスfに出てくるリトルクイーンを銀髪にしたような容姿で、フリルのたくさん付いたドレスを着ている。背中からはコウモリみたいな羽が生えてたけど何かのコスプレかな?髪が伸びたらツインテールにするといいよ。

 

「あ、あの、あなたは…」

 

「逃げろ」

 

「え?」

 

「早く」

 

「は、はい!」

 

俺は幼女を下ろし、早く逃げるように言った。なぜ一緒に逃げないのか?そうしたいのは山々なのだが、情けないことにさっきの咆哮で足がすくんでしまった。

ぼっちにドラゴンと戦う勇気とかあるわけないでしょ。ぼっち舐めんな。

 

『ふん。子供を逃がすために自ら囮になろうとする勇気と私を前にして微動だにしない胆力は褒めてやろう』

 

(すいません。足がすくんでいるだけです)

 

『しかし私を貶した罪は死を持って償ってもらおうか!!』

 

ティアマットさんの口から巨大な火球が放たれる。余波で樹々が燃え上がるほどの火球。おそらく直撃したら火傷どころか体が蒸発しそうな熱量だ。

そんなことを考えている間に回避不可能な距離まで火球が迫っている。

 

(あ、死んだ)

 

転生した早々、二度目の死を呪いながら目を閉じた。

 

 

SIDE OUT

 

 

グレイフィアSIDE

 

初めは両親への幼い反抗心から起こした行動だった。来る日も来る日もルシファー家の懐刀であるルキフグスの長女として意識を植え付けるための厳しい英才教育と戦闘訓練。それに加えて弟の狂信的なまでの愛情にはほとほと嫌気が差していた。そして到頭、我慢の限界が来て、家出を決行したのだ。しかし温室育ちの私に道先に何があるかも分からず、また、他に頼る相手もいなかった。

 

だからと言って素直にこのまま帰れるわけもなく、しばらくその辺を飛んでいたのだが運悪く濃霧に巻き込まれて方向感覚を狂わされた。漸く霧から脱出したものの、そこは見覚えのない未開の土地。困り果ているところに追い打ちを掛けるように、『天魔の業龍』と出会った。まるで一生分の不幸が今ここに現れているのかと思った。

 

『ふん、悪魔か』

 

「ひっ!」

 

美しくも、どこか冷酷さを含んだ声が辺りに反響した。蒼玉の眼はまるで無機物を見つめるように冷淡な眼差しを向けている。

私は恐怖で身を縛り付けられた。無理もない。相手は『天魔の業龍』だ。だが、このまま動きを止めていれば確実に殺されてしまう。

 

しかし、ティアマットの視線は私から逸れて、別の何かを多く見開いた眼で見つめていた。そう、私が先ほどまで囚われていた霧の中から彼は現れた。

 

(あれは……”騎士”?)

 

赤みがかった茶髪の青と紫のオッドアイの青年。白の衣装を身に纏い、腰には東洋の刀のような形をした剣を差している。

表情は何の変化もない無表情。しかしそれが凛々しくも感じる。

 

「純白の…騎士」

 

彼の姿は正しくその一言に尽きた。

 

『ん、なんだ貴様は?なぜこんなところに人間がいる?』

 

人間。

力弱く、低能で、矮小な存在だと両親から耳にタコができるほど聞かされた言葉。しかし私は目の前の存在を矮小だとは到底思えなかった。

 

彼はティアマットを見つめると目を細めた。

 

「小さいな……」

 

絶対的な強者を前にして吐かれた言葉は侮蔑の言葉だった。

その言葉で周囲の温度が急激に下がり、すぐさま空気が燃え上がった。

 

『人間ごときが……私を、このティアマットを矮小だと宣うか!』

 

先ほどとは違い激しい怒りの籠った咆哮が四方に広がる。ただの声の塊が鉛のような質量を持つほどの咆哮と上級悪魔でも縮み上がりそうな威圧に、子供の私はたまったものではない。刈り取られそうになる意識をなんとか保ちながら、真正面から敵意を向けられている彼を見た。

 

彼は変わらず、涼しげな表情で激しい咆哮を浴びていた。まるでその暴風が微風に思えるほど平然としている。

その態度でますます火がついたのか、ティアマットは苛立つ気持ちを発散するように翼を羽ばたかせた。風圧で地面が抉れ、木々がなぎ倒されていく。

当然、私の小さな体がその風圧に耐えられるはずもなく、私は砂塵の如く宙に舞い上げられた。

 

「きゃああああ!」

 

まるで濁流に流されているような感覚。飛行するためのコントロールを完全に失った私の体は真っ逆さまに落ちた。地面と衝突する衝撃に備え目を瞑る……が、衝撃は一向に訪れなかった。

目を開くと、彼の顔がすぐ目の前まであった。彼が落下する私の体を受け止めてくれたのだ。まるで騎士が姫を抱きかかえるような情景に心を奪われる。

 

「……怪我はないか」

 

「え?あ…はい」

 

彼の声で意識を戻された私は惚けながらも返事を返した。すると……。

 

「よかった」

 

彼は安堵したように表情を崩して微笑んでくれた。

それは私の能力を評価する両親の笑みとも、弟が向ける歪んだ感情の笑みとも違う。相手を慈しむような優しい微笑み。その微笑みは今まで誰にも向けられたことがない。

 

彼は見ず知らずの私の無事を心の底から心配してくれていた。

初めて真っ直ぐな眼で私は見てくれた気がした。

初めて理解された気がした。

 

彼はグレイフィア・ルキフグスではなく、グレイフィアとして見てくれた。

 

(知りたい。あなたのことを……)

 

私の思考はただ目の前の騎士に向けられた。

 

「あ、あの、あなたは…」

 

「逃げろ」

 

「え?」

 

「早く」

 

彼は私を降ろすと背を押した。

私は現状を思い出す。今は質問などしている暇はない。

 

「は、はい!」

 

私は一刻も早くこの場から離れるために再び飛び立った。

しかし彼は仁王立ちしたまま微動だにしない。彼の行動に私が困惑していると、ティアマットは感心したような声音を発した。

 

『ふん。子供を逃がすために自ら囮になろうとする勇気と私を前にして微動だにしない胆力は褒めてやろう』

 

(わ、私を逃がすために?)

 

『しかし私を貶した罪は死を持って償ってもらおうか!!』

 

圧倒的なまでの熱量を伴った火球がティアマットから放たれる。あれを受けて無事な生物などこの世にはいないだろう。

しかし彼は無表情のまま、その場から一歩も動くことはなかった。

 

(逃げて!!)

 

『死ね!矮小な者よ!!』

 

しかし私の願いも虚しく、彼はティアマットの炎に飲まれた。

 

「嘘……いや、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

もはや飛ぶ気力もなく、私の体はその場に崩れ落ちる。

すぐそばにティアマットがいることさえ忘れ、私は最初で最後の理解者を失った悲しみに暮れて咽び泣いた。

 

『ふははははは!馬鹿め!小さいくせに図に乗るからこうなるのだ!!ばーかばー……ファッ!?』

 

「……!」

 

驚愕するティアマットの声に私の視線は燃え盛る業火の中心に向けられる。そこには赤い障壁に包まれた無傷の彼の姿があった。服には焦げ跡すらなく、その純白さは一切失われていない。

 

『なぜだ!なぜ私の炎を受けて無傷でいられるのだ!?』

 

彼はその返答に終始無言のままを貫き通し、彼はゆっくりと腰の剣に手を伸ばした。

鮮やかな紫の瞳がティアマットを射抜いた瞬間、彼は叫んだ。

 

「魔神剣!」

 

『ぐお!?何だこれはッ!!』

 

「意思を刈り取る!吹き飛べ!」

 

『くッ!?がぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?』

 

居合の構えから刀を引き抜いた瞬間、斬撃が地面を這ってティアマットを切り裂く。怯んだ隙を突き、彼の周りから黒色の波動を放つ球体がティアマットに纏わりつくと彼の元へ収束する球体は数メートル前までティアマットの巨体を押し出した。縮まった距離からさらに数回の斬撃を与え、彼の体から獅子の形をした闘気が衝突する。

ティアマットは浴びせられる華麗な剣舞の数々に苦痛の表情を浮かべた。

 

「す、すごい!効いてる!」

 

『図に乗るな人間がぁぁぁぁぁ!!!』

 

「あ…!」

 

「!」

 

私は身を乗り出してその光景に見入っていた。吹き荒れる炎の渦が周囲を包み込む時にはもう遅かった。

私は恐怖で再び目を閉じたが、先ほどまでの絶望感はなかった。きっと彼が私を守ってくれる予感があった。

 

「無事か」

 

「は、はい!」

 

目を開けると私を抱きかかえる彼の姿があった!

私はその言葉に笑顔を咲かせて答える。

 

『殺す!灰の一つも残さずに焼き尽くしてやる!!』

 

ティアマットの血走った目が私たちを睨むが、不思議と怖くはなかった。きっと彼が私のそばにいるからだろう。

彼は平然とした表情のままこう言った。

 

「この子は俺が守る!」

 

「騎士…さま」

 

私の騎士。私の理解者。そして……始めて恋した人。

 

 




【ロックガガン】
セイブル・イゾレ先の砂漠に生息しているガメラのような魔物。その体長は途轍もなく巨大で、体内はダンジョンマップのひとつでもある。知能が高く外見とは裏腹に大人しく、人に迷惑をかけることはないという。勝負を挑む事もできるがHPや攻撃力が非常に高い。

【リトルクイーン】
『未来への系譜編』の追加キャラクター。ソフィの前に幻のように現れる謎の少女。ソフィのことを「フォドラの子」と呼び、人間ではない故に孤独に悩むソフィに対して、永遠の時を共に生きようと何度も語りかけてくる。
ラムダと同様にフォドラの意思によって生み出された存在であり、フォドラの防衛本能で自分を守る存在。
割とビジュアルが気にいたので続編では是非出してもらいたい(土下座

【魔神剣】
武器を高速で振りぬき地面を這う衝撃波を放つ剣技。
「テイルズオブ」シリーズの代名詞的な技で様々な派生技が存在する。

【砕陣霊臥】
黒色の波動を生み出し、敵を引き寄せる技。その波動には意識を刈り取る効果があるらしい。

【裂震虎砲】
獅子の形をした闘気を相手にぶつける技。

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