どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い

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沢山の感想ありがとうございます。
返信は基本的にやめましたが、全部読ませて頂いています。

返信よりも話を書く方が皆様喜ばれると思いましたので、これからも頑張って更新出来るよう努力します。



反董卓連合軍編
漢王朝の滅び


日々の仕事を終えた夜間。

俺が部屋で独り酒を嗜み酔いが回りさて寝るかと思った時に、一つの書簡が洛陽の張曼成から届いた。

 

その書簡の最初の一文を見た瞬間に酔いと眠気が飛んだ俺は、直ぐに部屋を飛び出し近くにいた兵へ文若さんと姉さんに華琳さんの執務室へ向かう様に伝言し、また華琳さん自身には俺から説明すべく急ぎ華琳さんの私室へと足を向けた。

 

霊帝崩御

 

………時代の節目が来た。

 

 

 

 

 

_____

 

 

 

 

 

 

張曼成からの報告は情報量が多過ぎて、さしもの俺等でも呑み込むには些か時間が掛かる。

霊帝崩御から始まった内容は、その後の変遷が急過ぎた。

 

まず霊帝が崩御した事の知らせを受けた何進が急ぎ宮中へと駆けつけ、外威勢力の柱として喪主を務めようとした所を、十常侍を筆頭にする宦官勢力に_____何進は暗殺された

 

……何故そこで暗殺なんてするんだ、と奴らを問い詰めたい。

拷問すら辞さずに激しく問い詰めたい!

 

いや理解出来ない訳ではない。

喪主とは遺族の代表者だ。

皇帝の遺族の代表者として何進が表に立つのを政治バランス的に宦官が嫌った結果なのはわかる。

 

このままでは遺族…つまりは皇族の代表者として後の皇帝になる劉弁の後見人として何進の発言力や影響力が増し、宦官勢力が衰退していく未来になる事は想像に難くない。

 

だがそんなのはお前等の既得権益を守りたいだけじゃねぇか!

大陸情勢が少しでもわかれば今の漢王朝がどれだけ危ういバランスで成り立っているのか、何故わからない!?

何故暗殺なんて短絡的な方法で何進を排除した!?

 

害悪、それ以外でこいつ等を表す言葉は無いだろう。

 

しかしその結果、宦官は報いを受けた。

 

何進暗殺の報を聞いてブチ切れた、袁紹による宦官大虐殺である。

 

………気持ちは理解出来るつもりだ。

 

黄巾党討伐直後の大宴会の最中だけでも、袁紹が何進を慕っているのは察する事が出来たし、宦官嫌いは大々的に発言していた。

あの大宴会でバカ笑いする様な奴が、ここまでの行動をしたのなら…余程激しい怒りだったのだろう。

 

仮に俺が姉さんを暗殺されたら間違いなく似た様な行動をするだろうし…袁紹の気持ちは何となく察せる。

 

………けども、だからこの行動は正しいよね…とは言えない。

 

結果的に言えば、袁紹は失敗した。

 

宦官、十常侍の一部に逃げられたのだ。

それも次期皇帝の劉弁とその供回りを連れられて。

 

突発的な行動だったせいで宦官の完全排除・殲滅に失敗したのだ。

 

そして…史実通りに劉弁とその周りは、黄巾党討伐直後のおかげで未だに洛陽近辺に残っていた董卓に保護され洛陽の宮中へと帰還を果たした。

 

と言うのが張曼成からの報告だった。

 

いややっぱ情報量多いって!?

これが昨日今日の一日半で起きた出来事なのマジ!?

情報が大事つって洛陽からの情報を早く手に入れられる様にしたけど、これ聞いてどないせい言うんじゃい!?

 

この張曼成からの書簡を読み回した俺達四人は、全員が全員頭を抱えている。

 

「………大変な事に…なったわね」

 

そう重く呟く華琳さんも、未だに頭痛を抑えるかの様に額に手を置き困惑している。

 

「………ははっ、蒼夜の危惧…的中、しちゃったね…」

 

やめて姉さん。

こうなって欲しくなくて洛陽の情報集めてたの。

出来ればこうなる前に介入したかったの!

 

「………それにしても、皇子を保護したのがよりにもよって董卓とは…厄介だわ」

 

文若さんの言う通り董卓が劉弁を保護したという事実自体が、非常に話をややこしくする。

 

仮に他の陣営ならば、洛陽で待ち構えているだろう袁紹に引き渡し要求でもされれば断る事なんて無理に等しかった。

その場合は宦官が洛陽に戻るのを拒否しただろうが、しかし董卓は違う。

涼州で異民族と戦ってきてその地で雄と讃えられている董卓は、例え袁紹からの要求だろうが突っぱねる事の出来る武力がある。

そもそも涼州で領土を持つのにわざわざ中央に召喚して黄巾党討伐の将軍に任じられるとは、つまりそういう事なのだ。

 

猛将華雄に名将張遼…そして誰もが知る最強の飛将軍 呂布 奉先。

更にそれらを操るは軍師賈詡に、既に陳宮もいるらしい。

 

ははは…呂将軍、ここで自爆です!とか言って呂布で自爆特攻でも仕掛けるの?

華雄とかゲステラされそうだな!

 

………現実逃避しちゃうわ。

 

「………期せずして董 仲穎殿は、宦官の保護者にもなってしまいましたからね」

 

劉弁を保護するとは、劉弁を連れ出した宦官をも保護すると言う事だ。

普通に考えて宦官だけを排除して、劉弁のみ洛陽に連れ戻すなんて事する訳がなかった。

 

そしたらどうなるか?

袁紹は宦官を殺したい。

董卓は劉弁含め、宦官を守らなきゃいけない。

袁紹には力がある。

董卓にも力がある。

 

………これは終わったかなぁ。

どう足掻いても乱世の未来しか見えねぇ。

史実通り反董卓連合路線の流れだよなぁ。

 

「………宦官だけでも袁 本初殿に引き渡すとか_____」

 

「する訳ないわ」

 

ですよね。

自分でも無理と思いつつ、期待を込めてそう発言したら食い気味にそう華琳さんに否定された。

 

袁紹の目的を遂げさせ、劉弁だけを庇護したら戦争回避もあり得るかなと一瞬考えたが、問題はその後だ。

宦官が消えた後、誰が劉弁の面倒を見るんだ?

正確には後宮の取り仕切りなんて宦官以外に誰が出来るんだ?

 

宦官制度を廃止して後宮の機能が停止したせいで、結局は宦官制度を復活させた政権があるのは、史実が証明してるぞ?

 

ただでさえ袁紹の大虐殺でマズイ状態だろうに、全滅されたら後宮が一切機能しなくなるのは目に見えている。

それで困るのは劉弁じゃないか。

庇護を語る一方で負担を強いる矛盾をする訳ないよな。

 

…それにまぁ袁紹だって何進の敵討ちで宦官を全滅させた後は全部赦すなんて事にはならんだろうしな。

 

「それに麗羽_____袁紹の性格上、まず間違いなく自身の手で皇子の庇護をしたがる筈よ」

 

成る程。

自身の慕っている何進の姪。

既に漢王朝においては絶大な権威がある袁紹からしたら、次期皇帝の後見人とかの権力よりもそっちの方が大事なのか。

 

………張曼成からの報告では、その後の董卓と袁紹の経緯は書かれてなかったが、まず間違いなく今この瞬間にでも、二人が拗れているだろうことは推測出来る。

 

…董卓は盛大に貧乏くじを引かされた様だな。

史実と違い、この世界の董卓は仁君にして徳人な漢王朝の忠臣だと聞く。

 

誇張表現や多少の嘘が入っていたのだとしても、恐らくは漢王朝の再興の為に尽力しようとするのだろう。

例え害悪だとわかっていても宦官を完全に排除する事なく、寧ろ奴らを正しくコントロールすべく庇護する側に周り、劉弁の為に尽くそうとするのだと思う。

 

だが…だがそれこそが、限りなく袁紹の行動と相反する。

 

これまでの行動から見るに、袁紹は漢王朝とういうシステムではなく何進や劉弁といった個人を大切に考えて行動している。

極論で言えば、劉弁さえ………いや、劉弁と何太后さえ無事ならば洛陽の宮中の政治システムが崩壊しようが、自分がどうとでもすると思っていそうだ。

 

………けどもそんな漢王朝のシステムを尊重しないやり方こそが、漢王朝の崩壊そのものであり………董卓は漢王朝のシステム再興の為に行動するだろうし………。

 

………終わったな。

 

未だに重々しい沈黙が広がるこの部屋で、俺はなるべく冷静を保つべく息を整える。

 

「曹操 孟徳様_____」

 

片膝を付き抱拳礼をして確信を持って告げる。

 

「今この時を以て………漢王朝は滅びました

 

………嫌な役目だ。

ここにいる全員がわかっていただろうけど、誰も言葉にはしなかった。

 

出来る訳がない。

自分の国の滅びの宣言なんて、誰がしたいんだ。

 

けど俺はしなくてはならない。

それが、華琳さんとの約束だから。

 

………いつかのあの日、覇王を導けと言った、華琳さん本人との大事な約束だから。

 

「………ならば今の混乱は好機。 この機を逃さず我等は更に飛翔する。 この大陸を制するのは、安寧をもたらすのは、この曹 孟徳だとわからせる足掛かりにしてみせましょう!」

 

その覇道の舗装こそが、俺の仕事だ。

 





死後ずっと放置されていた霊帝「とてもつらい」





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次回投稿予定日、17日までに投稿予定。


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