今回は短めです
所詮は原作主人公の一刀と、この作品の主人公の蒼夜も対して変わらないと言う事を示す話です
今更ながら、この世界は本当に不思議な世界だ。
基本的には古代中国、三国志と変わらない世界観なのだが、どうにも文化レベルのバランスがおかしい。
書籍は普及してるわ、服飾は最新的だわ、食事情も豊かだわで、一部の文化が突出している感じがする。
だって畑を耕している農夫が休憩中にファッション雑誌読みながら烏龍茶飲んでるんだぜ?
……ツッコミ所満載過ぎるだろ。
……終いにはアイドルが流行りだすしな。
いやまぁ、俺が詳しいのはあくまで物語としての三国志なので、前世の三国時代の正確な文化レベルを知っている訳ではないが、流石にここまで凄くはないだろうと思う。
特にその中でも、文化レベルと言うか、技術レベルがおかしい奴がいる。
「蒼夜様~、ご依頼の品完成したで~。」
「えっ?……お、おぅ、ありがとう。」
……真桜だ。
この世界でもぶっちぎりでヤバい奴の一人だろう。
俺が依頼しといて何だけど、何で完成したの?
『眼鏡あるだろ?あれって基本的に遠くを見る為にあるじゃん。あれを重ねたりして利用して、遠くの場所を見る為の道具を作れないか?』
こんな適当な依頼で望遠鏡が完成してしまった。
いや凄いよ?
めっちゃ感謝してるよ?
軽く尊敬もしてる。
……けどもおかしいって。
そもそも真桜は武器からしておかしい。
なんだあれ?ドリルじゃないか。
天元突破でもしたいの?
本人は槍と言い張っているが、完全にドリルです。
あれを槍と言うには、英雄王の
完全に時代が真桜に追い付いてない。
実は本名ダ·ヴィンチだったりしない?
マナプリ交換出来ますか?いや、持ってないけども。
……とりあえず望遠鏡の完成度を確認しよう。
「……おっ、おぉ~、凄いな。」
今俺が居る場所は街の南門の城壁の上で、城とは結構な距離があるが、望遠鏡で城の方を覗いたら城の窓から姉さんが書類仕事をしている姿が見えた。
クオリティたっか、真桜パネェ。
「改めて、ありがとうな真桜。これで出来る事が色々増えるわ。……これ、依頼金な。」
戦争時の偵察が捗るわぁ。
張曼成の有用性がまた上がってしまうな。
やったね曼成!仕事が増えるよ!
「毎度~。……って、ほんまかいな!?こんな貰うてえぇんですか!?」
「おぉ、貰え貰え。良い仕事した時には良い報酬があるもんさ。」
「おぉ、おぉぉぉ!……蒼夜様、いつでも私に声を掛けて下さい。これからも全力で働かせて頂きます!」
真桜は真剣な表情でそう言って去って行ったが、帰り間際に緩んだ顔をして、デッヘッヘと笑いながら金を数えていた。
……そこは最後までキリッとした表情しとけよ。
しかしまぁこの真桜の技術力、使わない手はない。
前世の知識を生かして物造りチートだ!
─────
……無理でした。
何故って?
結論から言えば、俺はチート出来そうな道具の作り方を何も知らなかった。
俺の前世の知識は多分普通な方だ。
日本の一般常識以外は三国志を中心に歴史系統の知識と二次元の知識しかない。
多分前世は歴史好きのオタクな感じだったんじゃないかな?知らんけど。
千歯扱を作って余った労働者をゲットするか!
じゃあ作り方は?
……。
黒色火薬があったら戦争で無双出来るんじゃね?
じゃあ作り方は?
……。
大体がこんな感じだ。
便利な道具自体は沢山知っているのだ。
だがその製造方法が全くわからない。
望遠鏡の時みたいに、曖昧でも良いから指示しないと流石の真桜でも物造りは出来ない。
そして俺は、ヒントのヒの字すら出て来なかった。
畜生、せめてマンガDr.Stoneをもっと明確に思い出せてたら何か出来たかも知れないのに。
何で物語の異世界転生者、もしくは転移者は日本の一般常識であそこまでチートが出来るの?
日本政治の簡単な仕組みくらいなら俺も当然知ってるけど、それで内政チートとか全く出来ないんだけど?
そもそも基本的人権の尊重が全くされてない時代だし、王政時代に民政をどう生かせと言うのだ。
殆どが役にたたんぞ。
三権分立なんて提唱したら本当に殺されるわ。
今となっては不思議なのだが、何でただの高校生、あるいは一般人を自称している主人公が、中世ヨーロッパレベルの文明世界に行って、千歯扱の作り方とか黒色火薬の調合方法を広めてるんだろ?
本当に一般人なの?逸般人の間違いじゃない?
……まぁ、何はともあれ、
この宝の持ち腐れ感、どげんかせんといかん!
とは言え、本当に何も思いつかん。
特別欲しい物は無いし、時代を変えるだろう便利な道具は作り方を知らない。
学校で習う様な理科の知識を考えてもピンと来るものはない。
……炎色反応とか思い出したけど、それでどうしろってんだ。
花火でも作って貰えってか?
真桜なら作りかねんが、意味あるかそれ?
……いやまぁ発煙筒みたいな感じで戦争中の連絡信号みたいな感じで使えない事もないか。
でもどうせなら煙玉の方が使い道あり___ん?
……ふむ、煙玉か。
奇襲の時とかに使えるな。
撤退時だって役に立ちそうだ。
この前雪蓮達とやった、偽装火計の時なんかは有効な手段だ。
俺は作り方を知らんが、真桜なら『点火しても発火せず煙を大量に出す道具を頼む』と言えば作ってくれそうだ。
真桜なら、真桜ならきっと何とかしてくれる!
不利な状況でも皆から期待と信頼をされてる、バスケが上手そうな真桜なら!
─────
「……無茶言わはりますわぁ。いや、いつでも声掛けてくれとは言うとりましたけどね?……流石にどないせいっちゅう話ですわ。」
うそん、真桜でも無理なの?
「便利なんはわかりますけどねぇ、それが簡単に出来るんやったら皆作っとりまっせ。」
正論過ぎて言葉もねぇ。
「煙を大量に出す方法を考えろ、て言わはるならまだわかりますけどねぇ、それを発火させへんととなると、……とたんに難易度がはね上がりますわ。」
うーん、出火をさせたい訳じゃないからなぁ。
「ってか、煙を沢山出す方法なら知っているのか?」
「知っとりますよ。基本的には燃え過ぎるか、不完全燃焼の時に煙が大量に出るんですわ。」
「へぇ。」
それは知らなかった。
「んじゃさ、例えばだが、空気が足りなくてあまり上手く燃えないだろう箱の中とかで、何かしらを燃やせば煙は大量に出るのか?」
「そらまぁ、確かにそうゆう事に___」
俺の疑問に真桜がピタリと止まった。
「……なるわ。確かにそうゆう事になる。」
ん?
「箱自体を燃えへんもんで作って、中のもん燃やしたら煙だけが大量に出る事になりますわ!……行ける、行けるで!」
お、おぅ。
「早速試作に取り掛かりますわ!蒼夜様は期待して待っといて下さい!」
は、はい。
真桜は走り去って行った。
……期待して良いのだろうか?
─────
後日、煙玉ならぬ煙箱を真桜は作り上げた。
導火線に火を着ければ煙が大量に吹き出す箱だ。
真桜マジチートだわ。
それでもやっぱり、本来はこの程度ではないんだろうなぁ。
絶対もっと有効に使える手段はある筈なのになぁ。
この作品では真桜による物造りチートはありません。
一般常識程度では多分そうなりますよね?