恐らく原作前最後のほのぼの?回です。
さて、地理が仲間に加わってから三ヶ月。
護衛業の面々は着実に仕事をこなして行き、俺もそろそろ手を引いても良さそうな雰囲気に達して来た。
実際に少数の賊に襲われた事もあったが、誰一人欠ける事なく、護衛を果たしたりもした。
……まぁ俺にビビって直ぐに賊が逃げ出したというのもあるが。
その護衛の合間に地理はようやく文字を読み書き出来る様になった。
まぁ三ヶ月なら充分早い方だろう。
やはり地頭は悪くない、と思っていたら、
『月に代わって、お仕置き致します』
……恥ずかしげもなく鏡の前でポーズをとっているのをこの前見てしまった。
学べとは言ったが、一体そこから何を学ぶのか。
……って言うか、美少女戦士読める様になったんだ、おめでとう。
まぁそれはさておき、護衛業だ。
この三ヶ月で黒字運営が出来る様になったし、張曼成もリーダーとして申し分無い働きをする様になった。
そこに地理の地図を組合せ、最適なルートを選択出来る様になった訳だから、俺達の護衛業はまぁまぁ名が知られる様になって来た。
給料もきちんと払えているし、自立して襄陽に住居を構える奴も出始めた。
……そろそろ休みでも与えるか?
ずっと護衛で長旅の連続だった。
みんなのストレスを解放する為にもここらで長めに休みを出すか。
ってか俺が休みたい。
ここ最近店を霊里と姉さんに任せっきりだったし、たまにはゆっくり書でも読んだり麻雀したりしたい。
俺はそう思い、少し長めの休暇を入れる事にした。
_____
「数え役満☆姉妹?」
「はい! 最近この襄陽にも来ていた人気がある旅芸人です」
俺が休みを入れてから一週間、休みだからと身体が鈍らない様に軽い調練を入れた後に、皆が上手く休めているかを張曼成に聞いてみたら、帰って来た答えがそう言う名の旅芸人だった。
「え? 何、皆その旅芸人に嵌まったの?」
「そうですね。 皆彼女達の歌や踊りを聞き、かなり気分良く楽しめたと思います」
ほーん、旅芸人ねぇ。
来ていたのは知ってたけど、俺は流石に興味出なかったな。
もっぱら、店番と称してダラダラと本を読んでたわ。
「まぁ皆が気分転換出来たなら良いんだけどさ」
「かなり出来たと思います。 彼女達には熱心な追っかけも居る様ですし、自分達も今の職が無ければ、もしかしたらと……。 まぁ流石に今はしませんが」
へぇ、そこまで有名で凄いんだ。
それは知らなかったな、俺も一度見れば良かった。
ってか、こんな時代でも追っかけとかいんのかよ。
アイドルはいつの時代も大変だな。
「でもよくもまぁ、こんなご時世に大陸を回れるもんだな」
「ですね。……ですがまぁ、彼女達は歌と踊りで大陸を制覇するのが夢の様ですし、それに心血を注いでいるのでしょう」
ふーん。
若干危険な発言だけど、……まぁ、歌と踊りでと言ってるのなら問題無いか。
「もう襄陽は去ったのか? そんなに有名ならこちらから護衛の営業に行っても良かっただろうに」
「あっ」
……全く抜けてるなぁ。
「まぁ今は長期休暇中だから良いけど、これからはよろしくな隊長」
「す、すいません。 つい楽しむだけで終わってしまいました。……これからはそういった機会を逃さない様にします」
「おう、がんばれー。 上手く行けばその旅芸人達を護衛して、近くで話せたかもしれなかったのにな」
俺がそう言うと、張曼成はかなり残念がっていた。
……そこまで好きか、その旅芸人。
俺も気になって来るわ。
_____
「姉さん達は、数え役満☆姉妹って知ってる?」
張曼成から旅芸人の話を聞いた夜、俺は気になって姉さん達にそう聞いた。
「ん?……あぁ、最近まで襄陽に来ていた旅芸人だろう? 僕は見てないし詳しくは知らないなぁ」
「私はそもそも旅芸人に興味が無いので良く知らないのです。 その名前も初めて聞きました」
まぁそうだよな?
張曼成の話ぶりに俺がおかしいのかと思ってしまったぜ。
「その旅芸人がどうかしたのかい?」
「いや、護衛隊の面々がその旅芸人に大分入れ込んだ様でな? どんなもんかと思ってさ」
下手したら追っかけになってたかもしれんと言うくらいだ、余程なのだろう。
「私は見に行きましたよ。 確かに面白いと思いましたね。……ですが周りが熱狂的過ぎて少々あれですが」
おぉ、地理は見に行ったのか。
「熱狂的って? どんな?」
「そうですね、……こう、彼女達の歌に合わせて、……ほわ! ほわぁ!……と、こんな感じでした」
お、おぅ。
……こいつ絶対楽しんで来てるわ。
めっちゃノリノリですやん。
ってか、それ何てオタ芸?
……そいつら時代を先取りし過ぎだろ。
「ふーん、僕も一度見に行けば良かったかな? そんなに盛り上がる旅芸人なんて中々見る機会無いだろうし。 少し勿体無い事したかな?」
「私はやはり遠慮して良かったです。 その様な場所は苦手です」
あー、まぁ霊里は仕方無いな。
「俺も折角だから一目みてくりゃ良かったな」
「……ふむ、でしたら私が人相書きでもしましょうか? 彼女達の容姿は良く覚えているので詳しく書けますよ?」
おぉ、その手があったか。
「頼んで良い? 後出来れば護衛隊の連中にも見せてやりたいから何枚か頼みたいな」
「了解しました。 少々お待ちを」
地理はそう言って、紙と筆を取りだし、さらさらと書き出して行く。
……うむ、やはり上手い。
是非我が小説にも頼みたいな。
「……出来ました。 細部に違いがあるかもしれませんが、おおよそこれで間違っていない筈です」
地理が書いた絵には三人の少女が書かれていて、まさしくアイドルに相応しい可愛さの少女達であった。
「へぇ、可愛いなぁ。 やっぱ見に行けば良かったな」
個人的には眼鏡の子が好きだな。
「そうですね。 ちなみに私はこの三姉妹の一番上のお姉さん、天和さんが好きです」
天和?
変わった名前だなぁ。
「三姉妹なんだ?……姉が天和なら妹は地和に人和かな?……なんてな」
「流石の洞察ぶりです。 その通り、真ん中の子が地和さんで、一番下の眼鏡の子が人和さんです」
……おい、マジかよ。
それで数え役満☆姉妹なのか?
数え役満じゃなくて、普通に役満じゃねぇか。
いやまぁ人和は地域によって取り決め違うらしいけど。
「おい、それ本当に名前か? 芸名とかじゃねぇの?」
「彼女達の真名です。 彼女達は客に親近感を与える為に敢えて真名で活動しています」
……おいおい。
いや、まぁ本人達が自分の真名をどう扱うかは自由だけど、流石にそれはどうだろう?
「ふーん、俺にはよう解らんな。 普通に名前で活動すりゃ良いのに」
「ですが、そのお陰で彼女達と客は一体感が出ているのは事実です。 特に彼女達の追っかけと、彼女達との舞台前のやり取りは中々面白いものでした」
前座のトークか何かかな?
そりゃ追っかけとかやるくらいだし、乗りが良いんだろうけど。
「彼女達が最初に舞台に出てきて、名前を言う、……言わせるのですが、『みんな大好きー?』
『天和ーちゃーん!』と、言うやり取りをします」
コールアンドレスポンス!?
時代を先取りし過ぎでしょ!?
「あー、……やっぱり僕はそういったノリにはついて行けそうにないや」
「おぅ、俺もちょっと厳しいな」
大ファンならともかく、素でそのテンションはキツいだろうな。
「そうですか?……私は楽しかったのですが……」
う、うーん、まぁ好みは人それぞれだからね?
俺や姉さんや霊里には合わないってだけで。
「私は機会があればもう一度、彼女達の舞台を観たいですね。 護衛業は他の街に行く機会が多いので少々期待しています」
「まぁ、会えると良いね?」
正直俺は興味が失せたわ。
朝な娘達だったり、地元中心に活動する四十八人な女の子達でもそろそろ出てくる可能性あるな。
……本当に乱世近づいてる?
今週中に、出来れば直ぐに、ルート確定致します。