出来れば一日一回は更新したかったのですが。
土日の内にもう一回は投稿したいです。
「……正直な事言えば、僕はいつかこうなるんじゃないかと思っていたよ」
難民者を連れて来た翌日、急に姉さんがそんな事を言いだした。
「……なんでさ?」
言っちゃなんだが、俺自身こんな事考えも予想もしなかったんだぞ?
ってか最初は殺そうとしたくらいだし……。
「君は優しいからね。 ああいう人達放って置けないだろう? 実際、連れて来たくらいだし」
……。
「……こんなのは“優しい”って言わねぇ。 ただ“甘い”だけだよ」
「……かもしれないね。 じゃあさ、君にとって“優しい”って何だい?」
……姉さんみたいな人だろうか。
でもそれも、乱世においては“甘い”なんだろうな。
「……知らん。……けど、多分、もっとこう根本的に救う人の事じゃねぇかな? 俺がしてるのはただの施しだけどさ、本当ならあの人達に職や住居を与えて難民であるという前提を変える様な人を“優しい”って、俺は思う」
俺はそんな事が出来ないのに、ただ手を差し伸べただけの偽善者でしかない。
彼等の困難を何も解決出来ない。
「私としては、当然の結果だと思っております。 人を見捨てられない、そんな兄さんだからこそ、私はここに来たのです」
……霊里。
「……だね。 そんな蒼夜だからこそ、僕も姉として誇らしいよ」
……はぁ。
「……とりあえずこの“甘さ”を“優しさ”に変える様にはしてみるよ」
一度差し出した手だ。
彼等を根本から救ってやる様に努力しよう。
「無論、手伝わさせて頂きます兄さん。 私はこういう時の為に来たのですから」
……助かる。
「僕は言うまでもないよね? 弟のしでかした事は姉が責任を負わなくちゃね?」
……すまん。……いや、ありがとう、だな。
「よろしく頼む」
_____
とは言った物の、どうしようか?
姉さんと霊里の力を借りるって言っても、大元の案は責任者として俺が考えないといけない訳だし。
六十八って微妙な数字なんだよなぁ。
最初は自警団でも立ち上げようかとも思ったけど、こんな人数じゃ精々百人程度の賊を相手にするのが精一杯だ。
そんなんじゃ襄陽郡で名を上げる所か、邑の護衛で手一杯なんじゃねぇか?
……人を集めるか?
いやいや、それこそ本末転倒だ。
この人数でも困ってんのに、増やしてどうする。
……そういやあいつらの前職は何だ?
もしかしたら襄陽の街で職を紹介出来るかもしれんな。
……うん、俺が口利きしたらそこそこ紹介出来るんじゃねぇか?
襄陽じゃ俺はかなり顔が広い訳だし。
……いや、駄目だな。
職を紹介出来ても住む場所が提供出来ない。
六十八人も急に住む場所なんてある訳ねぇ。
そんなんじゃ宿無し職有りの訳解らん状態になる。
……爺に頼んで邑に……、
……アホか俺は。
そもそも邑を襲おうとした連中だぞ。
邑の奴等がどんなに良い奴等でも流石にそれはない。
ってか農業は出来るのか、あいつら?
仮に畑を用意した所で出来ませんじゃ洒落にならんぞ。
いやいや、そもそも畑の用意なんて出来ねぇよ。
……あーくそっ、中々纏まらん。
……一旦本人達に話を聞くか。
_____
「あ、元倹さん!」
俺が襄陽城からほんの少し離れた場所に居る難民達を訪れたら、彼等の中の一人が俺に気づき声をかけて来た。
「よぉ、全員居るか?……少し話が聞きたいんだけど」
「はい、全員揃ってます。……おーい、皆! 元倹さんが話を聞きたいそうだ! 集まってくれ!」
俺に近寄って来た年若い青年がそう言うと、皆が集まりだし、俺の目の前に集合した。
……へぇ、もう新しいリーダーみたいなのが出来たのか。
正直有り難いな。
俺は常に側に居てやれる訳ではないから、こんな風に纏め役が居てくれると色々助かる。
「君、名前は?」
「自分ですか?
「張曼成ね……へ?」
ちょ、張曼成だとぉ~!?
南陽黄巾党の大物じゃねぇか!?
……あぁ、そういやこいつら南陽から来たんだっけ?
いや、だからって何でここに居るんだよ!?
「あの、……自分の名前が何か?」
「あぁ、いや、何でもない」
急な事なんでビビったわ。
……一応有名人が全員女って事はないんだね。
「えっと、曼成? って呼んで良いのかな?」
「はい、好きに呼んで下さい」
「うん、じゃあ曼成、これから君が皆の纏め役として、意見だなんだと、皆の総意を纏めてくれるか?」
張曼成なら余裕だよな?
「じ、自分がですか?……わ、解りました、やってみます」
うん、君なら余裕だ。
なんたって南陽黄巾党の三十万人の指導者にだって成れるであろう人物だもの。
「頼むな?……それで、本題なんだけど、皆ここに来る前は何の職をして働いていたんだ?」
……俺がそう言って解ったのは、思った以上に農民が少ない事だ。
どうやら殆どの奴等が街の中で働いていた人達の様で、ちょっとした職人とか工事夫みたいな人達が多かった。
……そりゃそうか。
食事情が良いなら、税金が重くて飯が買えなくなった奴等が難民になるんだよな。
自分の畑持ってるなら、多少は賄えるだろうし。
……畑案は却下か?
いや、最終手段だな。
もしどうしようもなくなったら、適当な場所を開墾させて、そこに小規模な邑を作るしかねぇ。
その当面の資金や飯は俺が提供して自立するのを待つ。
畑なら教えられるしな。
……けど、正直あんまりしたくねぇな。
金と時間がかかり過ぎる。
……何か良い方法は無いかな。
…………。
……。
……! 閃いた! これで七英雄にも勝つる!
……いや、いねぇよ七英雄。
……あれ? この時代なら逆に居るのか?
えっと、曹操、劉備、孫権、諸葛亮、司馬懿、周瑜に、……呂布?
いやまぁよく解らんけど、この時代に英雄は沢山居るな。
……やべぇ、閃いた所で全く勝てる気しねぇ。
って言うか、何気に半分以上知り合いじゃねぇか。
……俺のコネも中々捨てたもんじゃねぇな。
っと、思考がずれた。
俺が思いついたのは、護衛業だった。
最初、こいつらの前職を活かしてどうにか出来ないかと考えたが、それはどうも難しそうだったのだ。
工事夫は襄陽に満ち足りているし、職人の様な仕事は結局の所、何かを作っても物が売れなきゃ意味が無い。
そこで俺は、じゃあどうにかして売る方法は無いか考えたが、そんな物は思いつかなかった。
……けど、売らなくて良い。
って言うか、何も作らなくて良い。
売る奴を、商人を守って金を取れば良いのだ。
それなら資本は身体一つ。
……まぁ、食事を与えて鍛えはするが、おおよそ一ヶ月も俺が調練をしたら充分だろう。
祭さんから習ったんだ、簡単に出来る。
そして、襄陽から他の街に往き来する商人の護衛をして金を貰う。
最初こそ難しいだろうが、慣れたらいずれは俺の手を離れるだろう。
それに纏め役にも張曼成がいる。
最初の拠点は工事夫が居るから、適当に小屋でも作れば良い。
金が入ったら襄陽に家でも買えば良い。
経理なんかの金の管理は、姉さんや霊里、俺だって教えられる。
……よし、纏めてみよう。
……まずは一ヶ月間、飯を食わして身体を鍛える。
その後、俺のつてで襄陽の商人に護衛として雇って貰い、金を貰う。
その金を給金として払い、自立を促す。
そして護衛業を俺の手から離し、独立させる。
……もしかしたら、襄陽の警備隊に雇って貰える事もあり得る。
……まだ草案だが、いけるかもしれん。
この案は、思春さんが知り合いだったからこそ思い付いたのかもしれんな。
あの時の江賊のやり方とほぼ同じだ。
違うのは、商人達の許可を得るか得ないかだ。
……そして今の世情なら間違いなく雇う。
……よし、一旦持ち帰って姉さんと霊里に相談してみよう。
いけそうならよし。
駄目なら仕方ない、畑案をするしかねぇ。
_____
「う~ん、……それってさ、良い言い方をしてるだけで、要は傭兵だよね?」
「ち、違いますぅー! 護衛業ですぅ!」
そんな物騒な事させる訳無いだろ!
……いや、護衛も物騒なんだけどさ。
「言い方はどちらでも構いませんが、どのくらいのお金で護衛する予定なのでしょうか?」
「あー、うん。 護衛する距離によって変えようと思うんだ。 近くなら安く、遠くなら高く」
「……成る程。 私はあながち悪くないと思います。 最初に必要となる資金は多いでしょうが、今の荒れた世に適した職かと」
まぁな。
こんな世だからこそ、必要なんだよな。
「とりあえずやってみるから、協力お願いします」
「はいはい」
「了解です」
……こうして俺は、彼等を鍛え始めた。
張曼成について
一応新キャラではありません。
ちょくちょく出すとは思いますが、モブの一人としての扱いになります。
真名も決めてませんし。
とりあえず、トップと下っぱの橋渡し役の中間管理職の為に出しました。
七英雄について
こちらはとりあえず三国志で有名な名前を羅列しただけです。
まぁ、ただのネタとして出しただけですが。
異論、反論は多いに認めますので、感想欄にでもどうぞ。