どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い

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もっかい投稿。
出来れば休みの間にまた投稿したいです。


壮絶、ダンガンロンパ!

「元倹君、良かったら授業をしてみないかしら?」

 

えっ? 嫌です。

 

……と、言えたら、どんなに良かっただろうか。

 

書物の受け渡しが終わった後、俺は司馬徽にそう言われたのだった。

 

「……私程度が授業等、とてもじゃありませんが、受け持てませんよ」

 

「そんな事無いわ。 貴方なら素晴らしい教師になれるわよ」

 

……一体何の確信があってそんな事を言うのだろうか。

 

「それに、さっきも言ったけれど、ここの子達は皆貴方の事を尊敬しているでしょ? もし貴方が授業をしてくれるなら、とても喜ぶと思うのよ」

 

……おいおいおい。

だとしても、俺が諸葛亮や鳳統、またはさっきの季常ちゃんなんかを教えるの?

 

……いやいや、寧ろ俺が教えを学びたいくらいなんですが?

 

……蓮華様もそうだったけど、あんたら俺の事を何か勘違いしてないか?

 

俺はあくまで物書き。

そりゃ姉さんから色々仕込まれたから多少は知識が有るけど、歴史に残る程の本物の天才や英雄に俺が一体何を教えるってんだ。

 

「私をかってくれるのは有り難いですが、私程度が先生のお弟子にお教え出来る事が何もありません」

 

「私はそうでもないと思うのだけど、……うーん。 じゃあ今日一日、好きにしてみてちょうだい? 私はちょっと山へ山菜を取りに出掛けて来るわ」

 

へ?

 

「ちょっ!? 先生!?」

 

「じゃあ悪いけど、少しの間よろしくね?」

 

「む、無理ですって!? 先生? 先生!?」

 

……い、行ってしまわれた。

 

…………。

 

……。

 

え? マジで?

 

ど、どうしよう。

 

 

_____

 

 

どのくらい時間が経っただろうか?

俺が一人、客室に取り残されて唖然としていると、季常ちゃんがやって来た。

 

「失礼します。……あの、元倹さん? 呆然としていますが、大丈夫ですか?」

 

「あー、……うん。 いや、大丈夫じゃないかも。」

 

ちょっと理解出来ない。

司馬徽さん自由過ぎない?

雪蓮でもここまでじゃないぞ。

 

「は、はぁ。……あの、失礼ですが、先生はどちらに行かれたのでしょうか?」

 

「ははっ、……それは俺が聞きたい。」

 

山って言ってたけど、……ここら辺山しか無いし。

 

「それは困りました。 そろそろ授業の時間なのですが……。 元倹さん、何か聞いていませんか?」

 

「へ!? き、聞いてない、聞いてない!」

 

俺は何も聞いてないぞぉ!

詳細とかな!

 

「ふむ、……そうですか。……では元倹さん、先生の代わりに授業をお願い出来ないでしょうか?」

 

な ん で そ う な る !

 

「いや、先生を待った方が良いんじゃないかな? 先生が来る迄の間は自習時間って事で各自好きに学べば良いよ」

 

「成る程、確かにそれは良いですね」

 

そうでしょう、そうでしょう?

俺は関係無いよ、襄陽に帰るからね。

 

「では元倹さん、私に勉学をお教え下さい」

 

…………。

 

……?

 

「あの、……話聞いてたかな? 自習って言ったよね?」

 

「はい。 ですので私は、元倹さんから学ぶ自習をする事にしました」

 

お前は一休さんか?

俺の意思は無視か?

 

「いや、あのね、季常ちゃ……「駄目、……ですか?」……良いよ!」

 

……幼女の涙目は反則だと思うの。

 

 

_____

 

 

「あー、……初めまして。 知ってる方も居ると思いますが、私は廖 元倹と申します。 えー、今日は特別に皆さんの教師をする事になりました。 少しの間ですが、どうぞよろしくお願いします」

 

……結局、俺は教壇に立って鞭を振るう事になった。

いや、鞭持ってないけど。

 

とりあえず、自己紹介して回りを見渡して見たけど、まぁ幼女ばっかりだ事。

俺と同い年の徐庶が居ると思ったのだけど、とっくに卒業したらしい。

 

……ちっ、居たら俺のアシスタントとかさせたのに。

 

流石に幼女ばっかりの中に、そこそこ成長して大きくなった男の俺が混ざっていたら、絵面がヤバいぞ?

 

何? 幼女を愛でつつ敵をくっ……ケホンケホン!

 

いかん、変な電波を受信した。

俺もこの異常な状況に頭がやられた様だ。

 

「とりあえず、名前だけでも良いから、簡単な自己紹介をお願いしようかな? 扉側のそっちから順にお願い」

 

俺は季常ちゃんの名前しか知らないし、定番の自己紹介くらいはやって時間を稼がないとね?

 

っと、そしたらまぁ、有名な名前が出る事、出る事。

 

向朗、韓嵩、尹黙、李仁、潘濬、宋忠、崔州平。

 

流石に詳しくは知らないが、三國志を読んだり、プレイしたりしたら、どっかで出てきた名前ばっかだ。

 

……そして、ついに来た。

 

「は、はわ! しょ、諸葛 孔明でしゅ。……です」

 

お、おう。

まさかのはわわ幼女が諸葛亮だったでこざる。

 

え?

これが知力百?

 

……いやいや、人は見た目によらない。

化け物の様に強い美人達を俺は知ってるじゃないか。

きっとこの子も後数年したらど汚い“孔明の罠”を使う様になるんだろう。……きっと。

 

「あわわ~。 ほ、鳳 士元でひゅ。……で、でしゅ。……うぅ、朱里ちゃ~ん」

 

「が、頑張って、雛里ちゃん」

 

う、うん。

君が鳳統か。

 

……俺の中のイメージが……。

 

 

_____

 

 

「とりあえず、全員自己紹介したよね? じゃあ授業を始めようと思うけど、……あっ、今日は書物を使わないよ? 今日は討論会をしようと思う」

 

そう、俺は考えた。

いかにして今日の時間を潰すかを。

それが討論会。 つまりディベートだ。

 

これなら組分けして一つのテーマの肯定派と否定派を討論させるだけで、かなりの時間が潰せる。

しかも幼女とは言え、歴史に残る傑物達の討論だ。

これなら俺も聞いてて楽しい。

それに、俺が直接何かを解説したりして教えなくて良いしね。

 

「あ、あの、討論会とは何をするのでしょうか?」

 

まぁ普通は知らんわな。

 

「討論会って言うのはね、一つの題目を肯定派と否定派に組分けして、お互いの意見を戦わせるんだ。 どっちが勝ったかはあまり重要じゃないけど、一応審判は私が務めるよ」

 

「それにどんな意味があるのですか?」

 

「うん。 これはね、将来君達が何処かに仕官する事があれば大いに役立つと思うよ? 自分の意見を相手に納得させる為に理論的に説明をしないといけないからね。 例えば策を考えた時や、君主を諫める時、または仮想敵地に論説しに行く時とかね。 それに、自分の意思ではない組分けになった時は、新たな視点からの新たな考えをする訳だから、凝り固まった頑固な考え方も無くなるよ?」

 

と、俺がディベートの説明をしたら、しきりに幼女達がキラキラした目で俺を見る様になった。

 

……いや、そんな反応は求めてなかったんだが。

 

「ま、まぁとにかく、一度私と君達で簡単に試してみて、それから本格的にやってみようか?」

 

「「「はい、よろしくお願いします、先生」」」

 

……先生は止めて欲しい。

 

「それじゃあ、題目は『始皇帝は英雄であるか、否か』……これで行こうか。 私が肯定派で、君達が否定派だ。 それでは、始めよう」

 

とは言ったものの、こんなもん俺の勝利以外はあり得ん。

 

高祖が絶対のこの時代、始皇帝は暴虐の皇帝と皆教えられている。

だから彼女等は嬉々として否定的な事を言ってくるが、……俺はその全てに反論出来る。

 

まぁ確かに非道な行いはあるが、それら全ては『大陸を統一した』の一言だけでも覆る程だ。

 

ましてやこの時代の知識だけでなく、前世の知識やキン○ダムの知識が有る俺からしたら、出来レース以外の何物でもない。

 

彼女達の有利かと思わせといて、俺が絶対に負けない仕組みだったのだ。

……すまんな、幼女達よ。

 

 

_____

 

 

「うぅ~、……始皇帝は英雄? でも反乱は起こっているし……」

 

「駄目、高祖様が悪人に思えてくる……」

 

「始皇帝は英雄。 私は解ってた」

 

や り す ぎ た

 

「はい、ここまで! 言ったでしょ? どちらが正しいかは関係無いよ? こんな風に自分の意見を相手に納得させる練習なの!」

 

俺がそう言うと、ぐったりした幼女達は俺に尊敬の眼差しを送って来る。

 

……いや、本当、すまん。

今回は俺が悪い。

 

「じゃあ、少し休んで本番と行こうか。 四半刻後に再開するから、それまで休憩」

 

俺がそう言うと、席を立つ者、さっきの討論を反芻する者、友人と意見を出し会う者とそれぞれ自由に動き始めた。

 

俺はそれを見てようやく一息つき、改めて自分が教師に向いてない事が良く解った。

 




幼女がグッタリするまでロンパする主人公。
最低だな、こいつ。

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