どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い

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平日昼間に投稿出来るとは……。
覇王様が居ると筆が進むなぁ。

今回は連続投稿します。


三十六計逃げるに如かず

麻雀のどんよりした空気から一転、話は孫家の話題となった。

 

……更に言うなら、俺が孫家で成し遂げた功績の話題となった。

 

……あんまり突っ込まないで欲しいんだけどなぁ、それ。

 

「貴方、文の方だけでなく、武の方もそれなりの様ね?」

 

「いやいや、大した事無いっすよ?」

 

「そうですよ、華琳様! こんな優男、私なら一発で倒して見せます!」

 

……いや、勝てるとは思わんが、流石に一発はどうだろう?

 

「あら? 野盗を百人切りしたって聞いたわよ? 守護鬼さん?」

 

……何で知ってるんだよ。

って言うか、

 

「百人切りなんてしてませんよ!?」

 

どうしてそうなった?

寧ろ百人切りしたのは、あのアホ当主なのだが?

 

「あら、そうなの? 他にも、江賊の頭目と一騎打ちして首を取ったとか、孫家の当主を蹴りあげたとか聞いたわよ?」

 

……何で毎度、雪蓮を蹴った話だけは正確に伝わっているんだよ。

 

「……江賊の頭目と一騎打ちして首を取ったと言うのも嘘です。」

 

一騎打ちはしたけど、あれは腕試しだし、何より引き分けだからね?

 

……まぁ個人的には未だに負けと思ってますけど。

 

「……ふむ。 孫家の当主を蹴ったと言うのは?」

 

……聞かないで欲しかったなぁ。

 

「……黙秘権ってありますか?」

 

「無いわよ? と言うより、殆ど答えじゃない。」

 

「……いや、まぁ、……はい。 色々、あったんすよ。」

 

雪蓮の馬鹿ヤロー!

お陰で言い訳が大変だぞ、このヤロー!

 

「う、うむ。 色々あるのは理解出来るが、……それで他家の当主を本当に蹴りあげたのか、良く冥琳が赦したな。」

 

「ははっ、寧ろ推奨派でしたよ?」

 

「そ、そうか。」

 

俺の遠い目をした空笑いに、妙才さんはこれ以上突っ込んではいけない空気を感じ取ったのか、納得は行ってない様だが、一旦引いてくれた。

 

「まぁ大方想像出来るわ。 どうせ無闇に突っ込んで、貴方達に怒られたのでしょ?」

 

大正解。

人の本質を良く理解してるなぁ、この人。

 

「……まぁ、雪蓮の名誉の為、一応は黙秘します。」

 

バレバレだけど。

 

妙才さんまで、あぁ成る程、って顔したからね。

 

「んん? 何故そこで怒るのだ? 雪蓮の奴なら賊程度何の問題も無いだろう?」

 

……本人と同じ事言ってらぁ。

 

「まぁそうっすねぇ。……例えばですけど、孟徳様が、自分の武力なら余裕だからって、賊百人に突っ込んで、囲まれたりしたら、どうします?」

 

「なっ! 華琳様が、わざわざ賊程度を相手にする必要は無い! 私が叩きのめす!」

 

「う、うん。……上手く伝わったかは、解りませんが、つまりそう言う事だと思って下さい。」

 

「? つまり、お前は雪蓮の為に自分が賊を叩きのめしたかったのか?」

 

なんか、若干ちげぇ。

いや、雪蓮の為ってのは、あってるか?

 

「ま、まぁ、似たようなもんです。」

 

「ほぅ、中々見上げた忠誠心ではないか。」

 

やっぱ、全然違うな。

……俺が雪蓮に対して欠片でも忠誠心がある訳無い。

 

「あら、そうなの? なら貴方は孫家に仕えるのかしら?」

 

んな訳無い。

 

「いえ、それは、……どうでしょうね?」

 

ここで無いって言ったら、じゃあ私の所に来なさいって、なりそう。

 

「ふふっ、曖昧な態度を取って、私の誘いをのらりくらりと躱すつもりかしら?」

 

バレテーラ。

 

「いやぁ、そう言うのは成人してから考えようかと。」

 

「あら、そんなの駄目よ。 有能な人物は成人の有無関係無く、国に尽くすものよ?」

 

正論言われちゃキツいなぁ。

 

「いえ俺が優秀等、……とてもとても。 いや、本当、俺より優秀な人って、数多に居るじゃ無いっすか?」

 

「いや貴殿が優秀でないなら、この世は一部を除いて凡人ばかりになるのだが? その数多に居る優秀な人材を是非教えて欲しいな。」

 

ちょっと、妙才さん、あんまり自分の主ばかり援護しないで?

 

「いや、ほら、……ちゅ、中央は凡才ばかりらしいじゃないっすか。 意外と優秀な人材は地方のそこらに隠れてるんじゃないっすか?」

 

……何か焦り過ぎて言ってはいけない事まで、言っちゃった気がする。

いや、しゃーない。

今更朝廷の批判なんて怖くないぞ!

名君論が世に出てしまった時から覚悟していた事だからな!

 

「ふふっ、確かに中央は一部を除いて凡才ばかり。 だからこそ、貴方の様な地方の人物が光って目に止まるのでしょ?」

 

墓穴掘ったぁー!

い、いや、まだ慌てる様な時間じゃない。

既に慌てているのは、無しの方向で。

 

「いやぁ、俺より優秀な人材がまだ出て来て居ないだけですって。 今のうちに沢山出て来ますよ、いや、本当に。」

 

司馬懿とか荀彧とか荀攸とか!

他には、……そう、郭嘉とか、えーと、他に、程昱とかか?

 

とにかく、あんたは待っていたら優秀な人材が仲間になるから、一旦落ち着け。

 

「それは、それ、これは、これよ。 第一、まだ出て来て居ないのが問題なんじゃない。 現在野に居る一番優秀な人材が欲しいのよ。」

 

確かにそうかもしれんけども!

 

いや、それでも俺必要無いじゃん?

頭の良さは曹操本人の方が上だし、武力は夏候惇が上、両方出来る奴なら妙才さんが居るじゃん。

 

何故俺にこだわるし。

 

「か、買い被りですって……。」

 

「ええぃ! まどろっこしい! お前は華琳様の何が一体不満なのだ!? 雪蓮に付くなら、そう言え! でないのなら華琳様に付けば良いではないか!」

 

いや、極論そうなんだろうけど。

 

最終的には魏か呉かのどっちかだよ?

でもそれまでは、好きにしたいじゃないか。

 

「いえ、不満があるとかではなくてですね?」

 

「ならば、華琳様に従うか?」

 

「いえ、そうではなく。」

 

「やはり雪蓮を取るのか?」

 

「いえ、ですから……。」

 

「はっきりしろ!」

 

……助けてあねえもん。

話を聞いてくれない相手への接し方ってどうするんですか?

 

「ど、どちらにも、今は付きません。」

 

「なんだとぅ! 華琳様の一体何が不満なんだ!」

 

……この無限ループもうヤダ。

はっきり答えたじゃないですかぁ。

 

「落ち着きなさい、春蘭。」

 

「ですが、華琳様ぁ。」

 

「ふっ、姉者、こう言うのは人に強要するものではないぞ?……すまんな、元倹殿。」

 

「い、いえ。」

 

出来ればもっと早く助けて欲しかった。

夏候惇はまだぐぬぬ言ってるし。

 

「ふっ、“今は”っね。……まぁ良いでしょう。 選ぶ時間はもう少ないわよ、元倹?」

 

……そんなプレッシャー与える言い方しなくても良いんじゃないですかね?

 

「ふ、深く考慮しておきます。」

 

「そうなさい。……それにしても、そこまで出仕を拒む理由でも何かあるのかしら?」

 

……まぁ、ない事もない。

今すぐにやりたい事ではないけど、言い訳にはなるかな?

 

「……一応、物書きとして、挑戦したい事があるんすよ。」

 

「へぇ? それは出仕をしたら不可能な事かしら?」

 

「まぁ、難しくなるのは確かっすね。」

 

って言うか、仕事しながらは無理。

 

「ほぅ、私も気になるな。 天下の物書き、廖 元倹が挑戦したい事は。」

 

天下の物書きは、恥ずかしいなぁ。

 

「……一字千金、って知ってますよね?」

 

「えぇ、呂氏春秋の著者、呂不韋がその書物を仕上げる時に行った事ね。……まさか!」

 

「その、まさかです。 自ら書物を著した孟徳様なら、気持ちが解ると思いますが、……一字千金、挑戦、してみたくないですか?」

 

呂氏春秋からおよそ四百年以上の時が経っているんだ。

今なら、もしかしたら、書き加える事や添削する事が出来るかもしれん。

 

「俺一人で成し遂げたいとか言うつもりはありませんけど、是非挑戦したい夢なんですよね。……まぁ、今すぐにとは言いませんが。」

 

本当に可能なら、この時代の傑物と呼ばれる様な奴等を集めて、皆で挑戦したいなぁ。

 

……今の所、冥琳しか呼べる相手居ないけど。

 

「……なんと。」

 

「くっ、あははははっ! ふふっ、……面白いわ、元倹。……貴方、やっぱり欲しいわね。」

 

どうやら俺の夢は曹操のツボを押さえていたらしい。

 

「一応これ、冥琳や雪蓮にも話してないんで、秘密でお願いしますよ?」

 

「ふっ、こんな話、誰にも思い付かん。 話した所で信じる奴は少ないだろうよ。」

 

そんな大袈裟な。

 

「貴方の夢、叶えるならやはり私に仕えるのが良いと思うのだけど、……いえ、これ以上は不粋ね。 今回は止めておきましょう。」

 

おぉ、なんとか今回も逃れられる事が出来たか、……良かった。

 




呂氏春秋に関しては本当は呂不韋の権力を怖れて誰も添削等が出来なかったそうです。

この作品では完璧だから何も出来なかった扱いにします。

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