どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い

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まだまだ続く孫家の話。
そろそろ話を進めたいのだが、中々上手く行きません。


恐怖の鈴の音が聞こえてきそう

さて、甘寧との交渉は非常にスムーズに行われた。

 

簡潔に纏めよう。

 

お前達の行いは特別に悪い事じゃないけど、孫家の許可無いでしょ?

周りから賊扱いされてるから、いっその事孫家に属して公的事業って事にしない?

一応頭目の貴女は武将って事で雇うよ?

 

本当ですか?

願っても無い事です。

きっとあいつ等も喜ぶと思います。

 

まぁ、こんな感じだ。

 

いや本当はもっと硬い口調で回りくどい言い方だったし、他にも話している内容はあるけど、ようするにこう言う事なんだ。

 

今回の交渉はお互いにwin-winの関係だからな、断る理由が無いだろう。

 

孫家としては、江賊を解散させたという功になるし、今まで戦い続けていた精鋭が手に入るし、将来の将軍候補が手に入る訳だ。

 

江賊側としても、今まで自分達がしてきた事が罪にならず、これからも同じ行いが出来る。

しかも今度は公的権力者の後ろ楯付きで。

 

だから問題が起こらず実にスムーズに交渉は終わった。

俺が最初にしていた心配は意味の無い物だった。

 

……ただこれだけは言いたい。

 

俺が居る意味あった?

 

いや本当、今回俺何もしてないもの。

時たま振られる冥琳からのパスに、おう、やら、あぁ、やら只肯定してつっ立っていただけだからね?

 

……何で冥琳はわざわざ俺を連れて来たのだろうか?

嫌がらせ?

 

確かに最初は冥琳の後ろでつっ立ってよ、と思っていたけども、ここまでする事無かったら逆に怖くなる。

 

……冥琳の意図が読めぬ。

 

「さて興覇、貴殿が正式に孫家の者となるには雪蓮……孫 伯符の許可が必要だが、まぁそこは問題無い。 後日、合流した際に正式に任命する。」

 

「はっ。 有り難く。」

 

「そこで、一応だが貴殿の実力が知りたい。 噂では貴殿は相当の腕前らしいではないか?」

 

んん?

何でそこで武力の話?

 

待って、待って、止めて冥琳。

 

「どうだろう? そこの廖 元倹と立ち会ってみないか?」

 

おいやめろ。

てめぇ、この為に俺を連れて来やがったな?

 

そんなもん雪蓮にでもやらせりゃ良いじゃねぇか。

あの戦闘狂なら喜んでやるだろうが。

何で俺なんだよ。

 

「まぁ待て冥琳。 お前がどう感じているかは知らんが、そこの興覇さんは多分俺より強いぞ? だから、模擬戦は雪蓮か祭さんに頼めよ。」

 

ね? そうしよ?

俺は戦わなくて嬉しい、雪蓮は戦えて嬉しい。

こっちもwin-winの関係だよ?

 

「ほぅ? それほどか、……ならばこそ宜しく頼むぞ蒼夜。」

 

……話を聞こうぜ?

 

何か知らんが、今回はやけに押しが強いな。

 

「いえ、私程度が最近噂である孫家の“守護鬼”に勝てる等、とても思えません。」

 

何で知ってるの!?

って言うか、俺の名前知ってる理由はそれか!?

 

「あの、……何故それを?」

 

「貴殿方孫家の戦を見てた奴等が、私の仲間内に居るのですが、何でも鬼の形相で賊を凪払っていたやら、もの凄い怒声が聞こえたやら、後これは嘘だと思いますが、主君である孫 伯符様を蹴りあげたやら言っておりました。」

 

……うん。

嘘じゃないね。

 

ってかそれ、全部初戦の奴!

……見られてたのかよ。

 

「その後もご活躍の噂が我々の耳にも届いております。 また孫家の兵の者達が貴方の事を守護鬼と呼んでいる噂も流れております。 この呉郡において、孫家の皆様の話は有名ですが、そこに新しく貴方の噂が流れた物ですから、物珍しさもあり、ここら近辺では貴方は有名だと思われます。」

 

……聞いてないぞ、そんな話。

 

嘘だろ? 嘘だと言ってよ冥琳?

 

俺がちらっと冥琳を見たら、冥琳は俺と甘寧から顔をそらし、プルプル震えながら必死に笑いを堪えていた。

 

……知ってやがったなこのヤロウ。

 

誰もこんなの望んでいないのに、どうしてこうなった。

人生とは儚く無情な物だ。

 

 

______

 

 

結局、それから俺は断る事が出来ずに甘寧と模擬戦をする事になった。

 

嫌だよぉ。 帰りたいよぉ。

 

俺は雪蓮と違って戦闘に喜びは見いだせないんだよ。

何で明らかに自分より強い奴に挑まなきゃいけないんだ。

 

俺は戦闘民族じゃないんだ。

ワクワクもしなけりゃ、死の淵から蘇ってもパワーアップしないんだよ。

純粋に痛くて怖いだけだからね?

 

「おい、今からお頭が孫家の将と模擬戦するらしいぞ。」

 

「へっ、いくら孫家の将って言ったって、お頭に勝てるもんかよ。」

 

「いや、わかんねぇぞ、相手はあの守護鬼だ。」

 

「何?……あれがそうか。 強そうには見えねぇが、本当に守護鬼か? 噂だけが先行してるんじゃねぇか?」

 

「見てわからねぇから恐ろしいんじゃねぇか。 あれで孫家の兵から恐れられているんだぞ?」

 

「な、成る程なぁ。」

 

……どこから聞き付けたのか、周りから人が集まってきた。

 

やめろ、俺に変な期待をするんじゃない。

あんたらのお頭に俺は勝てんよ。

 

俺がブルーになって居ると、冥琳が近寄って来て俺に耳打ちした。

 

「蒼夜、お前は今回孫家の代表として戦う。……言いたい事は解るな?」

 

……解りたくねぇ。

だったらそれこそ雪蓮を戦わせろよ。

 

「……負けるなと。」

 

俺がそう言うと、冥琳はニコッと笑って去って行った。

 

俺はその冥琳の様子に大きく溜め息を吐き、相手の甘寧の様子を見た。

 

ギンッ

 

……おっふ。

やる気満々でござる。

寧ろ殺る気と言って良い。

 

今回の目力は多分気合だろうな。

緊張している様子は無いし、何やら闘気とか見えそうだもの。

 

……まぁ仕方ないやるだけやってみよう。

今回は自然の戦いや戦場での戦いではない。

負け=死ではない分いくらかマシだ。

 

……それでも虎よりこの人の方が強そうだけどね、多分。

 

……い、いやネガティブになるな俺!

大丈夫、俺は虎に勝った男。

素手で虎に勝つなんて、そうそう……

 

ギンッ

 

……そうそう……

 

ギンッ

 

…………。

 

……多分この人なら一睨みだけで虎も逃げると思う。

だって俺が既に逃げ出したいもの。

 

 

_____

 

 

「それではこれより、廖 元倹と甘 興覇の模擬戦を始める。」

 

オオー!!!

 

……いつの間にか全員に知れ渡り、俺と甘寧は周りを男達に囲まれていた。

 

それにしても凄い盛り上がりだな。

 

「お互い、相手を殺す様な事はしないように。 また後遺症が残る様な事も極力無いように。」

 

「はっ。」

 

「おぅ。」

 

「……よし、それでは審判は私、周 公瑾が勤める。 では、……始め!」

 

……始まったは良いが、意外にも甘寧は自分から動こうとはしなかった。

無論俺も動く訳が無い。

 

それは俺が消極的になっているからではなく、俺と甘寧の武器の性質上の問題で、俺から動くのが得ではないからだ。

 

俺は双頭槍、甘寧は片手で扱える剣。

つまり、間合いの長さなら俺が有利なので、自分から間合いを詰める様な事をする訳が無い。

逆に間合いの中に入られたら一気に劣勢になるので、自分から攻撃を仕掛けてどのくらいの長さが自分の間合いなのかを教える必要も無い。

 

遠くから一方的に攻撃が出来ない訳ではないが、正直このレベルの相手になると不可能だ。

 

俺は雪蓮との立ち会いで嫌と言う程、その事を学んだので、自分から仕掛けるのではなく、カウンターを狙う待ちスタイルを今回は選んだ。

 

これでソニック○ームが出せたらどんなに良い事か。

 

待ち廖化は反則とか俺も言われてみたい。

 

そんな事を考える余裕がある程、お互いに動きが少なかった。

 

甘寧は腰を低く落とし、剣を右手で逆手に持ちかなり警戒している。

 

一方、俺の方も穂先を常に甘寧に向けたまま、一瞬の動きも見逃さない様に集中した。

 

双頭槍と言う武器の性質上、俺は背後を捕られるのは恐ろしくない。

そのまま背後に突きを入れる事が出来るからな。

けど凪払いの様に線での攻撃は弱いし、側面からの受けも弱い。

 

簡単に言えば、俺のやる事は常に甘寧を正面から捉え、俺の間合いに入り攻撃を仕掛けたらそれを弾き、迎撃する事。

相手の攻撃を強く弾き、いかに体勢を崩すかがポイントだな。

 

お互いにゆっくり時計回りに動いて元々自分達の居た地点を交換する様になってから、この模擬戦の行方が動き始めた。

 


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