どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い

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連続投稿です。

前もって言い訳をさせて頂きますが、かなり大雑把な展開になります。
もうちょい考えて書け的な思いをする方もいるでしょうが、ご了承頂けると有り難いです。


たまにする真面目な話

よし、切り替えて今のうちに孫家のこれからを聞かなきゃな。

 

「なぁ雪蓮、冥琳、ちょっと真面目な話するぜ? 答えられない事は言わなくて良いから、質問させてくれ。」

 

「えぇー? お酒飲んでる時くらい真面目な話は止めましょうよー。」

 

「……どうした? 藪から棒に、それは酒の席で話す様な事なのか?」

 

「……ふむ、邪魔な様なら儂は退散するが?」

 

別に邪魔ではないけど、下手したら不愉快になるかもなぁ。

 

「いや、そこまで身構えなくて良い。 あくまで一友人として聞きたいだけだから、……だから祭さんも居てくれて構わないっすよ。」

 

出来ればもうちょっと気軽に聞きたかったけどな。

 

「……孫家は、これからどう舵をとるつもりなんだ?」

 

……あかん、ちょっと聞き方間違えたかもしんない。

全員の杯を持つ手がピタリと止まってガン見されちゃった。

 

「いや、すまん。 答えられないなら何も言わなくて良い。」

 

俺がそう言うと、全員が一斉にため息を吐いた。

……あんたら仲良いっすね。

 

「……儂から言う事は何も無い。……ここからは静かに飲んで様子を見て置こう。 後は策殿と冥琳でどうするか決めよ。」

 

うわぁ、まじすんません。

 

「……私は別に蒼夜だったら言っても良いと思うけど、……話すかは冥琳に任せるわ。」

 

「……はぁ、……話すかどうかの前に一つ聞かせてくれ。 仮に話を聞いたとして、お前はどうするつもりだ?」

 

あー、思った以上に重い空気に、胃が痛い。

 

「聞いてみなきゃ、どうするかもわからん。……けど俺が助けになれるなら、そうしたい。」

 

孫堅にもそう報告したしな。

 

「……そうか。 まぁお前の事だ、粗方予想はついているんじゃないのか?」

 

「……まぁ、当たってるかは知らんが多少はな。」

 

前世の知識が大部分だけどな。

 

「ふーん、……蒼夜の言う、洞察力と推察力ってやつ? 聞かせてみてよ?」

 

そんな大それた物じゃないがな。

 

「……はぁ、……まぁ俺の考えだと、このまま行けば孫 文台の持っていた権力は朝廷に返還する事になるので、孫家は権力が無くなる。 権力が無くなったら、この建業を含めてその他もろもろの土地を統治する事が不可能になるので、兵も含めて現在孫家に仕えている人達を養う事が不可能になる。 また、孫 文台を恐れて統治されていた豪族等もこれを機に孫家から離れて行く事が予想される。 それに、呉郡一帯の県令達が孫家を離れ再び独自で統治を始めるとも思われる。 まぁ簡単に言えば、孫家は瓦解する可能性が高い。」

 

……何で俺がこんな死刑宣告みたい事を友人達に言わなきゃならんのだ。

 

「離れて行く豪族や名家、県令達はともかく、孫家に仕える人達を含めて、このまま孫家を瓦解させない為には孫家は急ぎ雪蓮に権力を与えなければならない。 ……が、まだ成人して間もないし、実績の無い雪蓮に孫 文台と同等の権力を与えるのは不可能に近いと思われる。 なので、考えられるのは何処かの権力者に頼る事だ。 だが、規模が小さくなってもそれでも孫家は大きい。 孫家くらい大きな所を匿えるのは、州牧並でもないと不可能だ。 それにこの呉郡の近くでないと意味がない。 なので考えられるのは、隣接している荊州の劉表か、豫州の袁術だ。 だが、劉表は直接的ではないにしろ孫家へと害をなした人物だ。 頼る事はあり得ない。 それに劉表自身もそんな申し出があった所で却下するだろう。 だから、孫家は袁術を頼るのではないか? 幸い、冥琳の周本家は袁家とも近しいだろう? おそらく袁術も孫家に頼られて断る事をしないだろう。 と、いうのが俺の予想だ。」

 

得意気に語ったけど、何も面白くねぇ。

こんな未来は認めたくないね。

 

「……はぁ、お見事。 細かい所は少し違うが、大筋は間違っていない。」

 

……やっぱ袁術を頼るのか。

 

「……やっぱ蒼夜も色々おかしいと思うのよねー。」

 

「言ったろ? 只の推察だ。 こんなもん頭が回れば割とわかる奴はいる。」

 

多分曹操とかも余裕だと思う。

 

「……それで? これ以上何が聞きたい? 全てお前の予想通りと言えるのだが?」

 

「ん? あぁ、雪蓮と冥琳はどうしたいのかと思ってさ。」

 

「? お前が言った通りにするつもりだが?」

 

「違う違う。 それは孫家がどうするかだ。 雪蓮と冥琳はどうしたいの?」

 

こいつらの個人的意見を俺は聞きたいんだ。

それから俺の方針が決まる。

 

「……私は、か。……そうね、私としてはやっぱり母様が築いたこの建業、呉郡を孫家のものとして取り戻したい。 時間が掛かってもそうするつもりよ。」

 

……呉を孫家に、か。

 

「私も似た様なものだな。 文台様が築いた呉郡一帯の平和をそのまま孫家の手で成したい。」

 

こちらも呉か。

 

………。

なんと言うか孫 文台に縛られているようにも見えるが、とにかく必死なんだろうな。

 

「わかっているだろう蒼夜。 気持ちはとても嬉しいが、一個人に手伝える範疇をこの件は超えている。」

 

「私は蒼夜が助けたいって言ってくれただけでも嬉しいわ。」

 

ちっ、そんな嬉しくなさそうな笑顔なんざ見たくないな。

 

それに俺のターンはまだ終わってないぜ!

 

「いや、まだだ、まだ終わらんよ! 冥琳、最後の質問に答えてくれ。」

 

「蒼夜?」

 

「ぶっちゃけ聞く、……今の孫家は兵を挙げるとしたらどのくらい、出せる?」

 

「……何故そんな事を聞く?」

 

「俺の考えた腹案が出来るか確かめる為だ。」

 

「……はぁ、良くて二千だ。」

 

充分だ。

 

「なら行けるかもしれん。 冥琳、直ぐ様兵を挙げてこの呉郡の盗賊、山賊、江賊、何でも良いが数百人程度の賊を討て。 その功を持って雪蓮を呉郡の県令にしよう。 権力は小さくなるし、少し苦しいかもしれないが、そしたら孫家は独自でやっていける。」

 

「それは考えたが無理だ。 その程度の功で県令に出来る訳が無い。」

 

それが出来るんだよ。

 

「甘いぜ冥琳、わざわざ本当に数百人なんて報告する必要は無い。 戦の報告の様に多少人数を盛れば良い。 そうだな、五・六百程度なら妥当か? そんでこちらの戦力は少なく報告すれば良い。」

 

この時代に地方の正確な情報なんて存在しねぇ。

 

「……だとしても、それで確実に県令に成れる訳ではないだろう?」

 

「成れるんだよ。 何の為の売官制度だ。 中央に賄賂を贈ってその地位を買えば良い。 その為に功を立てるんだ。 周本家なら可能だろ?」

 

この時代の最低な制度だが、この状況で使わない手は無い。

 

「な!……いや、だがしかし、孫家にそんな金は……。」

 

「言ったろ冥琳。 助けになるって。 俺が今まで貯めた全財産を以て助けてやる。 孫家の財と合わせりゃ、地方の県令くらいなら買えるくらいにはある筈だ。」

 

「……いや、だが……。」

 

冥琳は額に手を置き、黙ってしまった。

恐らく俺の案が出来るかどうか思案しているのだろう。

 

「……修正は必要だろうが、本当にギリギリ、……可能かもしれん。」

 

よし。

 

「なら、雪蓮。 俺の案を採用するか、……決めるのは、お前だ。」

 

何故なら、雪蓮の決定が孫家の決定だからだ。

 

「……その前に、……何で蒼夜は私達にここまでしてくるの? 正直、少し異常だと思うわ。」

 

……まぁ確かに普通じゃない。

 

「理由は色々あるが、……こんなもん当然の事なんだよ。」

 

「何で? 何がそこまで蒼夜をそうさせるのよ。」

 

「……雪蓮、俺が孫家にどれ程感謝してるかわかるか?」

 

多分この程度の事では到底返せないレベルだと俺は判断している。

 

「俺の家族は姉さん只一人だ。 その姉さんを死の淵から救って貰う切り札を孫家は俺に与えてくれた。 あの時、俺の無力感と言ったら酷かった。 武力も、知恵も、金も、俺の持つ何もかもが役にたたず、只毎日姉さんが苦しんでいるのを見ている事しか出来なかった。 金で買える未来があの時は無かった。」

 

……だが今回は違う。

 

「今回は孫家の未来を金で買えるんだ。 俺が受けた恩を金で誤魔化す様なもんだぜ、こんなの。……言ったろ? 当然なんだよ。 雪蓮や冥琳を助けたい。 孫家に恩を返したい。……けど俺に出来る事なんて、案を出して金を渡すくらいしか出来ない。 本当は申し訳無いくらいなんだよ俺は。」

 

……熱くなっていらん事まで言っちゃった。

 

呆然と見つめる雪蓮達の目線が痛い。

……恥ずかしい。

 

「と、とにかく、どうするか決めてくれ。」

 

「……はぁ、……冥琳はどう思う?」

 

「……お前が決める事だ。 と、言いたいが、個人的にはともかく、孫家としては蒼夜の助力を受けるべきだと思う。」

 

「……祭は?」

 

「……儂は静観すると言った筈じゃがの。……しかし、そうじゃな、これ以上なく有り難い申し出ではないかの?」

 

俺の案を採用した所で良い未来が確定した訳じゃないがな。

でも助けにはなると思う。

 

「……決まりね。 蒼夜、今回は甘えさせて貰うわ。」

 

……その笑顔を見る為なら多少は頑張るさ。

俺の数少ない愛すべき親友達だからな。

 




次回の投稿にはまた暫く掛かると思います。

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