どうも三國志のシーラカンスです   作:呉蘭も良い

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初めましてマイナー武将好きの作者です
かなり暇人向けの落書き的な作品になるかと思うのでどうぞご容赦下さい





幼年期
プロローグ


遠くから人の声が聞こえる気がした。

そう感じると同時に深海から水面に上がる様な感覚で微睡みの中俺は目を覚ました。

まるで長い眠りから覚めた様な気分を感じた途端に強い頭痛と目眩、そして吐き気を感じた。

 

「…何が起こったんだよ。」

 

ついそうぼやいてしまい、今自分が何処にいるのかを確認しようと周りを見渡したらここが自分の家だとわかった。

みすぼらしい民家の一室。というか一室しかない民家。

あの扉もそこの箪笥そして今自分が横になってる布団も見覚えのあるものばかりのはずなのに、不思議と違和感を感じる。

 

とりあえず自分の身に何が起こったのかを思い出そうとしたらまた強い頭痛が起こり気を失いそうになる。

そして思い出したのは両親と山に登り山菜を取りに行く最中、雨が降り出しどんどん強くなっていく光景。

なんとか山から抜け出したは良いが最終的に少量の土砂に巻き込まれる記憶。

 

「助かったのか。」

 

ほっと一息ついて両親がいない事にきがついた。

…この家にいないという事は恐らく駄目だったのだろう。

深い悲しみに襲われるが不思議と取り乱したり、泣いたりしなかった。

 

…これはおかしい。

自分はまだ五歳だ、こんなに感情のコントロールは出来ない。

それに先程から思考が大人びている。

 

何故かと思う前にまたもや激しい頭痛がすると共に様々な知識がまるで情報の奔流と言わんばかりにおれの頭を駆け回る。

 

そして全て理解した。

 

成る程違和感を感じる訳だ。

冷静で居られる訳だ。

 

俺は自分自身の前世を思い出した。

それは記憶では無く知識だが、確かに思い出した。

そして、だからこそ、ここが何処で、今が何時なのかが良くわかった。

 

今現在の知識が教えてくれる俺の暮らしているこの大陸と呼ばれる場所はその国の名前を漢と言った。

そして現在の漢を治める皇帝は霊帝と言う。

 

その事から前世の知識が教えてくれるのは今が中国大陸の後漢の末期、所謂三國志の時代であるということ。

それはまだ良い。

いや、良くはないがまだどうにかなんとかなると思えた。

問題は俺の名前だ。

もし俺の知識が正しかったら、俺は三國志の生きる化石。

黄巾党から蜀の崩壊までを戦い続ける。

マイナー武将。

 

廖化 元倹(りょうか げんけん)

 

その人である。

 

あかん、これ人生詰んだんじゃね?

だって廖化だよ?三國志のシーラカンスだぜ?蜀の山○昌だよ?

前世の知識を思い出した俺の結論はこれからの人生に希望が持てないという事だった。

 

何故かと言うと、どうやら前世の俺はそこそこの歴史好きらしく三國志の知識もまぁ(横山三國志やゲームがメインだが)豊富といえる程に色々と知っている事が逆に俺に絶望を与えてくれた。

 

廖化 元倹(りょうか げんけん)

俺の名前であり、三國志にも出てくるその人は、黄巾党の頃にはすでに存在していたらしいが、表だって出てくるのはかの有名な関羽が荊州を治めてる頃だ。

その関羽が呂蒙・陸遜に負けて死ぬ戦いにおいて最前線で戦い、援軍を呼びに単騎で抜け出した事が幸いして死ぬ事は無かったが、結局援軍は来ず、その間に上司である関羽が死んでしまう事になる哀しい人。

その後に一将軍として、諸葛亮の指揮の元ちょくちょく名前が出てくる様になり、諸葛亮亡き後の蜀末期で最終的に大将軍になる。

その廖化の最大の功績と最大の失敗は、対曹魏におけるvs司馬懿戦だろう。

三國志における公式チートの一人諸葛亮が司馬懿を孔明の罠にかけてズタボロに破り司馬懿が逃走する。

その司馬懿を追いかけるのが廖化である。

単騎になった司馬懿は二股の別れ道で片方に己の冠を投げ捨て反対側に逃げる。

その後に来た廖化は冠を拾い、冠が落ちてた方向に追いかけるが、結局司馬懿を取り逃がす事になった。

この戦は蜀軍の大勝利で終了し、廖化は司馬懿の冠を手に入れた事からこの戦の第一功になる。

が、諸葛亮からは関羽だったら司馬懿本人を捕らえて来ただろうにと軽く失望される。

 

まぁ、ここまでは良い。

苦労人だが、物凄く大変かもしれないがここまでは俺次第でどうにかなるかもしれない。

(本当は関羽とか関わりたくないけど。)

 

それでも俺が絶望を感じる最大の原因は劉禅だ。

劉禅とは、蜀を築く三國志の英雄である劉備の子供だ。

廖化は劉備軍のほぼ初期から共に戦ってきた宿将で劉備等と苦労を共にしてようやく、蜀を築く事になる。

前世の知識が様々なエピソードを教えてくれるが、それは割愛して本当に苦労して蜀を築くのだが、この劉禅のせいで蜀は滅びる。

蜀が滅びた後、魏軍に捕らえられた廖化は魏の都に送られる最中に年齢的問題もあったのだろうが、蜀が滅びた哀しみの中、牢の中で死ぬ。

 

はっきり言おう。

嫌過ぎる。

 

冗談じゃない、せっかく今回生き延びたのにそんな死に方ゴメンだ。

俺は床の上でゆっくり眠る様に死にたい。

というか、何故五歳なのに死に方の希望を考えないといけないんだ。

前世の知識のおかげで精神年齢が上昇してるせいもあるのだろうが、俺が廖化であるのがいけないんだ。

 

せめて、せめて趙雲だったら。趙雲だったら良かったのに。

スペック的にも。

廖化とか我ながら微妙スペックじゃねぇかよ。

 

最初は勿論、同性同名同字の可能性を考えたさ。

でも前世の知識がそれを否定した。

廖化は荊州の襄陽出身。

そして俺の住むこの邑は、荊州ですぐ近くに襄陽城があります。

 

そうだ、廖化は大将軍にも抜擢される武将だ武力もそこそこはあったはずだ。

確かゲームでは80近くあったはず。

と、思ったが俺は前世の知識を思い出す今日よりも前に小型とはいえ、普通に山で猪を素手で狩った事がある。

 

結論

俺の人生が難易度エクストリームな件

 

やべぇよ。

これ完全に詰んでるよ。

やっぱり劉備軍は鬼門なのかな?

蜀に属さない方が幸せなのだろうか?

 

普通に考えて俺が蜀に属さない、もしくは、他軍に属する事になったとして三國志の歴史は変わるか否か。

…まぁ悲しい事に何も変わらんだろうな。

細かい所は変わるかもしれないが、そもそも廖化が歴史のターニングポイントに関わる事は殆ど無いだろう。

 

つまり前世の知識がある俺が好き勝手した所で三國志は変わらないのではないか?

あれ?こう考えると自由度高いぞ?

蜀に属さなければ案外人生ノーマルモードじゃないかこれ?

別に何処かの軍に属す必要もないし、一人で生きていく武力も最低限の知識もある。

なにより前世の知識がある。

俺が歴史に対する影響力が低いなら、俺の行動によって変わる人の生死も大きくは変わらないだろう。

それなら罪悪感も感じずにすむ。

 

よし、俺は自由に生きる。

誰にも邪魔はさせない。

 




山○昌、日本プロ野球チームの中日竜軍の投手
彼もまた伝説の生きる化石です


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