こんな駄作ですが今後ともよろしくお願いします。
今回はついに彼女たちが登場しますよ。
それでは本編をどうぞ。
side 雪ノ下雪乃
……彼、来ないわね。
彼というのは昨日平塚先生が連れてきた比企谷八幡という目の腐った少年のことだ。
平塚先生曰く「高校生活を振り返って」という内容の作文でとんでもないことを書いたらしく、このことを彼を呼び出して問い詰めてみると、余りにも捻くれたことを言ってきたので、その性格を端正するためにこの部活に強制入部させたとか。
全く迷惑な話ね。この部活は私1人で事足りるし、第一あの腐り果てた目をした男と一緒にいるなんて真っ平ごめんだわ。
彼が来ないのはむしろ喜ぶべきかもしれないわね。
そう思っていると、部屋のドアが開いた。
「失礼するぞ。」
「先生、ドアを開けるときはノックを」
噂をすれば何とやら、平塚先生がやってきた。
「まぁ良いじゃないか。それで、調子はどうだね?」
「まぁ。いつも通りです。」
「そうかそうか。それはなによりだ。まぁ1人でたいへんだろうが頑張りたまえよ。」
あれ?……1人で?
おかしいわね。平塚先生が彼のことを触れないなんて。
「あの、先生。彼は来ないのですか?」
「彼?誰のことだ?」
「昨日先生が連れてきた比企谷八幡という目の腐った男のことですよ。」
すると先生は驚くべきことを言った。
「は?比企谷?私が昨日連れてきた?何の話だ?雪ノ下。」
え……?
「何を言ってるんですか?昨日先生はその男をここに連れてきて『こいつの捻くれた性格を端正させたい』と依頼したんですよ」
「……雪ノ下。君こそ何を言ってるんだ?私は昨日そんなことしてないぞ?」
「でも、彼を連れてきたのは先生が課題で出した作文の内容に問題があったとか。」
「作文の内容?……確かに私が先日生徒に『高校生活を振り返って』という内容の作文を課題に出したことは事実だ。しかし全員分の作文に目を通したが、比企谷という生徒の内容は覚えている限り普通だったぞ。そう問題視するようなことは書いてなかったはずだぞ。」
……どういうことなの?
昨日のことなのにこんなに食い違うなんて。
一応確認してみようかしら。
「先生、失礼ですが昨日は何をしてたんですか?」
「昨日?……確か昨日は仕事を終えたあと、合コンに行ってそのまま帰ったが。」
「……うまくいったんですか?」
「聞かないでくれ。」
どうやら失敗したようね。
本当に何でこの人結婚できないのかしら。
それはそうと先生は惚けてるようではない様子ね。じゃあ何で昨日のあのことを覚えてないのだろう。
合コンが失敗したショックで覚えてないのか、あるいは……あの目の腐った男が何かしたのか……
「まぁそんなことより雪ノ下、君に依頼人だ。」
「依頼人ですか?」
「ああ。……さあ、入りたまえよ。」
先生の呼びかけと同時に誰かが入ってきた。
「こ、こんにちは。」
入ってきたのは、ピンク髮でお団子結びをした可愛らしい女子だった。確か名前は……
「2年F組の由比ヶ浜結衣さんね。」
「え?私のこと知ってるの?」
「流石雪ノ下だな。もしや全校生徒の名前を覚えてるんじゃないか?」
「いえ、そんなことは……それで依頼とは何かしら?」
あの目の腐った男のことは気にはなるけど後にしましょう。
今のこの人の依頼を解決するのが先ね。
私はそう心に決め、彼女の話に耳を傾けた。
side out
ー総武高校 屋上ー
「犯罪グループ?」
俺は今、其方とチップスと一緒に通信機の向こう側にいる署長から今回の任務の説明を受けている。
てか、学校に犯罪グループがいるってどうなってるんだよ。
〈どうも手に入れた情報によるとその犯罪グループは密輸を専門とするグループらしくてな。エルドライブでも現在指名手配されている。〉
「その密輸グループがこの学校に潜伏してると」
〈そう。奴らは今地球の文房具をターゲットにしているらしい。お前らクラスの奴らが最近文房具無くしたとか聞いてないか?〉
確か今朝リアの共が消しゴムがないやら、色ペンがなきやらと騒いでたな。
正直うるさかったなぁ。俺の睡眠タイムを邪魔しやがって。
「私は聞きました。今朝トクちゃんがお気に入りのシャーペンを無くしたって言ってましたよ。」
「…………」
「あと、一色さんが買ったばかりの消しゴムや色ペンを無くしたとか。」
其方、本当に友達いるんだな。
お、俺だってトモちゃんっていうのが………止めよう、寂しくなる。
〈なるほどな。んで、八幡はどうだ?〉
「……察して下さい。」
〈あ〜………すまん〉
「慰めは良いですから。」
何か隣で其方がプッと笑っていたが気にしない。
「本当に友達いないんですね。エルドライブでもぼっちになりたくなかったら辞めてもいいんですよ?」
気にしない………あれ?目から涙が……
「は、八幡!何故泣いているっチュか!」
「そっとしておいてくれ……それで、何で地球の文房具が密輸対象になるんですか?」
とりあえず、話しを変えよう。
〈あ、ああ。今宇宙コレクターの間で地球の文房具を集めるのがブームになっているらしい。それに便乗して文房具を高値で売ろうってことだろう。〉
なるほど。確かにそれなら文房具を使うことが多い学生のいる学校は、最適な場所ってことか。考えたもんだな。
つか、文房具って宇宙人にとってそんなに珍しいの?イマイチ分からん。
〈また、ある星に麻薬として横流しするのが目的だろうな。〉
は?今なんて言った?文房具が麻薬だと。
「どういうことですか?文房具が麻薬って」
〈地球の文房具である色ペンにはシンナーが含まれてるものがあるだろ?シンナーはある惑星の住人にとっては麻薬と同じだからシンナーの出入りが全面禁止になってる。だが、最近その星にシンナーが流通していて中毒者が続出している。〉
「それってもしかして」
〈おそらく、密輸グループがその星に横流ししているからだろう。だから、エルドライブに何とかしてほしいとその星から通報が来た。〉
なるほど。地球でも麻薬の密輸があちこちで起こってるが、宇宙でも似たようなことが起こってるんだな。
何か怖い。
『面白いな、八幡。』
「おいドルー、不謹慎すぎるだろ。」
「八幡、何が不謹慎なんッチュか?」
「な、何でもない。」
余談だが、ドルーはあの試験から姿を現すようになっても声は俺しか聞こえないらしい。どうでもいいが。
「それで、密輸グループの特徴は何ですか?」
其方がレイン署長にそう聞く。
〈構成員は全てピグ星人らしい。〉
「ピグ星人ですか。……彼らが使うSPHってそこまで大したことないはずですよね。」
SPH?
ああ、昨日身体検査のときイサク教授が言ってたな。
エルドライブの署員は日本の警察のように拳銃などを使わないで、体臭で戦うって。そのニオイが《SPEACE PHEROMONE》略して《SPH》。
先日、ドルーが放った雷がまさにそれらしい。どうもそれは地球の科学では理解出来ない代物らしく暗黒のエネルギーとされてるらしい。よく分からん。
また、例外的に俺ら地球人はそのSPHを生成する《SPH器官》がないので使うことはおろかSPHを感じることは出来ないらしい。
そんな俺がエルドライブに入れたのはドルーのお陰と言っても過言じゃない。
「あの……ピグ星人ってどんなやつなの?」
〈おっと、八幡は知らなかったな。ピグ星人は体形は小人並で地球人より力は弱いが、すばしっこい。また、SPHは風景に擬態するものを使ってくる。〉
「なるほど。密輸するにうってつけの奴らってことですね。」
〈そういうこと。でも、擬態すると言ってもSPHは痕跡を残すからな。だから、今回の任務はSPHの痕跡を探すのが十八番の捜査2課にアサインした。〉
「え?そうなのか?チップス。」
「そうッチュよ。ミーはともかく美鈴は鼻がいいッチュからね。エルドライブでもトップクラスの良さッチュから。」
「マジかよ……」
「そんなことはありません。むしろわたしにとっては普通のことです。」
〈それとこれは未確認情報だが、どうもその密輸グループは危険な武器も所持しているらしい。相手がピグ星人だからって油断するなよ。〉
「分かりました。注意します。」
何か物騒な話になってきたな。密輸グループをサクッと捕まえるだけの話がデンジャラスになってるけど……帰っていいかな?
〈説明は以上だ。八幡、初任務だが気張れよ。任務成功したらMAXコーヒー2本やる。〉
「頑張ります!」
「急に態度変わりましたね。さっきまで帰りたいオーラを出してたのに。本当はそのまま帰ってエルドライブ辞めて欲しいんですけど。」
「うるせぇ。俺はマッカンのためなら何だってやるんだよ。」
「そうですか。単純な人ですね。それよりもモノで釣られるなんて警察としてどうかと思いますけどね。」
「ほっとけ。俺は無償では動かねえんだよ。」
「最低ですね。そんな性格だから目が腐ってるんですね。やっぱり貴方は警官よりも不審者か犯罪者がお似合いです。だから、エルドライブ辞めてください。」
「おい。目が腐ってるのは関係ねえだろ。それと何でイチイチ辞めさせようとするの?やめてくんない?」
「辞めてくれるんですか?」
「そうは言ってねえだろ!」
こいつ出会った時からそうだが、何で俺にこう突っかかってくるんだ?それに何かやたら俺を辞めさせたがるし。本当にわけが分からん。
もしかして、俺に泣かされた時のことまだ根に持ってる?
〈お話は終わりだお二人さん。喧嘩なら任務のあとでやってくれ。〉
「……分かりました。」
「すみません。」
〈よろしい。それじゃあ、任せたぞ!新生捜査2課!」
「「ヨーヨーサ!」」
「よ、ヨーヨーサ……」
……今更だが何か恥ずいぞ!この掛け声。他にないの?
ともあれ、こうして俺のエルドライブでの初任務がはじまった。
でも、後になって俺は知ることになる。
何か大事なことを忘れていること。そして、そのことが今回の任務を面倒なことにするということを。
続く