声が聞こえる
-????-
「そっちはどうだ?」
「順調です。署長。」
「そうか。それじゃあ、彼のことは頼んだぞ。」
「ヨーヨーサ!」
-千葉 総武高校-
どうしてこうなった。俺はそう思いながら下駄箱へ向かう。
高校二年になって早々国語教師に提出した作文の内容にイチャモンをつけられ、その罰として罵倒しかしない女のいる分けわかんねえ部活に強制入部させられるとは。
『それは八幡のせいだろ?』
また聞こえてきた。鬱陶しい。
『八幡はいつも捻くれてて後ろ向き。そして目が腐ってる。そもそも何であんな作文書いたんだ?』
「うるせー。俺は青春とは素晴らしいという価値観を持つ者にそれは幻想だということを気づかせるために書いたんだよ。それをあの先生は・・そもそも目が腐ってんのは別にいいだろ?」
『それだからいつまでも友達ができないんだぞ。』
「あ~?友達なんていらねーよ。よく言うだろ。友達を作ると人間強度が下がるって。」
『それこの間読んだラノベのセリフじゃないか。』
「良いじゃねーか。あの作品は・・あっ。」
やべ、周りの視線が痛い。まぁ端からみたら独り言喋ってる変態にしか見てないしな。別に好きで独り言を言ってるわけではないのだが。いつものことなので今更気にはしない。
この声は俺にしか聞こえない。この声は物心ついた時から聞こえている。小さい時は皆そういうものかと思っていたが、どうやら俺だけらしい。多重人格かと思ったが、色々調べた結果そうでもなかった。誰かに相談もしてみたが、結果は言うまでもない。この声のせいで、色々散々だ。この声どんな時でも話しかけてくるので、大事なことを聞き逃したり、痛々しいやつと勘違いされ虐められたリ、交通事故に遭いそうになったりする。まあ、高校入学初日に実際事故に遭って高校生活スタートに出遅れたが。お陰で友達はできず、この独り言のせいで痛々しい視線が刺さる。俺としては別にいいが、時には他人を・・・やめよう。あの時のことを思い出す。未だにトラウマだな。
さて、下駄箱についた。サッサと帰ろう。・・・ん?
『どうした?八幡?』
「いや、誰かに見られてるような。」
『いつものことだろ?それより八幡チビだ!』
「は?」
『八幡変なチビ!』
「何言ってんだよ。」
こいつはよく変なことを言ってくる。こういうときって大抵碌なことがない。ほんとやになっちゃう。
「ん?」
あれ、スリッパが入らねえ。おかしいなあ。
「い、いたいっチュ!」
「は?」
何か?入ってる?・・・何だ!この青い物体は?
「ん~!」
ポンッ
え?ナニコレ?なんか宇宙人みたいな人形が出てきたぞ。しかもなんか動いてるし。
「ヨーヨーサ!こんにちはっチュ。比企谷八幡!」
しかも突然敬礼したし。え?何で俺の名前知ってるの?
『変なチビ!変なチビ!』
しかも、俺の頭の中はなんかはしゃいでいるし。
『変なチビ!変なチビ!』
しつこい・・・はあ。
「じゃあな」
「え?ちょっ」
ここは華麗にスルーしよう。誰かのイタズラだろうし。大体あんなもん学校に持ってくるとは。女子かな?犯人は。
「ちょっと待つっチュ!」
後ろから何か聞こえるがスルーしよう。はあ、早く帰ろう。
「し、失敗したっチュ」
-八幡の家-
さて、家に着いた。あ~よかった早く帰れて。ちなみに言うが、家はマフィン屋だ。さあ、入ってなんか食おう。
カランッ
「たでーまー」
「あら、ハチ君おかえり~」
店の奥から元気いっぱいなおばさんがでてきた。この人はミミおばさん。家族を亡くした俺を女手一つで育ててくれた恩人だ。俺の親戚連中は俺よりも妹のほうを可愛がっていたが、このミミおばさんは俺のほうを可愛がってくれた。家族を失って親戚が誰が俺を引き取るかを揉めたときも、真っ先に名乗り出てくれた。本当にこの人には感謝しぱなっしだ。いつか恩返さないとな。
『ミミは今日も元気そうだな。』
頭の中の声はスルーして、おばさんのマフィンはとてもうまい。世界一うまいといっても過言ではない。だが、
「ごめんハチ君。帰ってきて早々頼みがあるんだけど。」
「ん?何かあったの?」
「実は…大事に使ってたんだけど…お店の雑巾が…」
「ほつれたとか」
「うっ!…そうなの…」
あ、おばさん落ち込んじゃったよ。このようにおばさんはマフィンを作るのは超一流だが、家事全般に関してはだめなんだよな。だから家事はほとんど俺がやってる。まあ、これぐらいしかできないしな。
「そういうと思って、昨日ストック作っておきましたよ。確かここに…あった。」
「ほ、ほんとだ。ありがとう!ハチ君!!」
「うおっ!」
突然、おばさんが抱き着いてきた。今に始まったことではないが、まだ慣れないな。
「ま、まあ。これ位は専業主夫を目指している者としては当然ですよ。」
「ほら、またそんなこと言って。」
おばさんが冷めた目で見てる。痛いなあ。
「そ、それよりおばさん疲れてません?疲れてるなら休憩してくださいよ。俺店番変わりますから。」
「あら?いいの?ハチ君さっき帰ってきたばかりでしょ?」
「良いんですよ。店番しながらでも宿題とかできますし。」
「…なら、お願いしようかな。ちょうど昨日徹夜で疲れてたとこなの。ありがとねハチ君。愛してるわ!」
ミミおばさんは去っていった。
『えらいぞ八幡』
また、聞こえてきやがった。
『ミミは喜んでいたな。あんな気遣いを他人にもやればいいのに』
今更だが、この声は上から目線で言ってくることが多い。
「うるせーな。他人にはやらねーよ。ミミおばさんだからだ。あの人は俺の恩人だ。」
『そういうとこも八幡だな。』
「どういう意味だ?コラッ」
まあいい。ミミおばさんのためにも、漫画読みながら店番しよ。ちょうど読みたかったのがあんだよな。
『八幡。その男たちが全裸になって飲み会やったりダイビングしたりする漫画のどこが面白いんだ?』
「うっせ。原作者はバカテスの人だぞ。面白いに決まってんじゃねーか。」
『この間ミミに見つかって結構怒られたくせに?』
「うっ!」
確かに前に見つかって怒られたな。あんときのおばさんは怖かった。・・・さて、気を取り直して店番しよ。客来るかな?
ー二時間後ー
ミミおばさんが元気になったからって、部屋で休みなさいと言われたので現在部屋に戻っている。さて、部屋に戻って寝るか。さあ、部屋に着いたぞ。扉を開けるとそこには愛しのベッドが・・・あれ?
「遅いっチュ!!何してたっチュか!」
俺のベッドの上にさっき学校の下駄箱に置いたはずの青い人形が居た。てか、しゃべってる!
「時間もないっチュから無理やりでも署に連れていくっチュよ。」
は?何言ってんの?連れて行くってどこに?今署って言った?
すると突然青い人形は頭から光を出し、俺の額に当てた。え?え?
「ターゲット遊動物質への変異を確認。OKっチュ!」
え?何が?
「転送よろしくっチュ!」
<ヨーヨーサ!>
え?今の声どこから?
そう思ったとき、突然周りが光だした。
『まぶしい』
頭の中の声もテンパっていらっしゃる。って言ってる場合じゃねえ。何?どうなってるの?
『まぶしいぞ。八幡、どうなってる?』
「俺に分かるかー!」
俺が叫んだと同時にあたりが真っ暗になった。どうなるの?俺。
続く