リーリエ「どうしてお母様と裸で抱き合ってるんですか!?」   作: junk

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リーリエ「レー島の護り神ガブ・リアス!?」

 リーリエは怒っていた。

 (いきどお)リーリエだった。

 理由はもちろん、母と“彼”のことだ。

 最近熱愛が発覚したあの二人だが、なんと、結婚式を挙げるというのだ。

 

 場所はここアローラ。

 アローラに伝わる伝統的なやり方で挙げるらしい。

 昨日、二人でソファーに座りながら、寄り添いながら、楽しそうに話していた……

 

 認められない。

 認められるわけがない!

 何故ならリーリエは“彼”が好きだから!

 そこにアニメ版リーリエが言う論理的に考えて云々的なものはない!

 ただただリーリエは嫌なのだ!

 

 そしてリーリエは考えた。

 考えて、考えて、考えて……結論を下した。

 

「結婚式に乱入して、“彼”をさらいましょう」

 

 アローラ地方の伝統的な結婚式が幸いした。

 ふつう、婚姻届を出した後、式をあげるものだが、アローラ地方では逆なのだ。

 しまキングと夫婦でダブルバトルを行い、勝って初めて夫婦と認められる。そのあとで改めて、婚姻届を出しに行くのだ。

 “彼”はもちろん、ルザミーネも一流のトレーナーだ。間違いなく、しまキングには勝つだろう。

 

 しかし、疲れはするはずだ。

 そこを狙って……。

 

「でも私には、ポケモンさんが居ません……」

 

 そう、リーリエはポケモントレーナーではない。

 

 ポケモンが傷ついて可哀想だとか、

 アニメで付け足された謎のポケモン触れない設定だとか、

 そんなことは一切ない。

 ただ普通にポケモンを持っていないのだ。

 しかし今から急ピッチでポケモンを捕まえてきたとしても、一流トレーナーである二人の前では……。

 万策尽きたかに思われた、その時!

 

「お困りかい?」

「──その声は!?」

「そう、オレサマだ。グズマだ」

 

 グズマ!

 声をかけてきたのは、グズマだった!

 

「オレさまもあの二人の結婚には、思うところがある」

「グズマさん……」

 

 考えてみれば、グズマも可哀想な男である。

 ルザミーネと共に訳のわからない世界に行き、ルザミーネがウツロイドをキメている時も、ウツロイドに毒されず、一途に彼女の事を思い続けていた。

 しかしルザミーネは結局、“彼”に取られてしまった。

 今のリーリエの境遇に似てる、気がしないでもない。

 

「オレさまも手伝う。ダブルバトルで、あの二人をブッ潰すぞ!」

「でも私、ポケモンさんを持って……」

「はぁ!? そういえば確かに、オマエはあのクソガキにくっついてるばかりで戦ってなかったな。それなら……オマエ、レー島の護り神、ガブ・リアスって知ってるか?」

「えっ?」

「最強、と言われるポケモンだ。そいつを使えば、あの二人にも勝てるかもしれねえ」

 

 グズマは現在、しまキングであるハラの元で修行をしていた。

 その時、ふと聞いたのだ。

 レー島という島を護る、最強の護り神の事を。

 

 レー島。

 それはこの世界で最も過酷な島らしい。

 その島に住む人々はみな一流のトレーナー……どころか、ポケモンに命を捧げた廃人トレーナーばかり。

 そんな恐ろしいレー島に王者として長い間君臨して来たガブ・リアス。

 もしかしたら、もしかしたら、ガブ・リアスならば、あの二人を倒せるかもしれない……。

 

 二人はガブ・リアスに一縷の望みを託し、旅に出た。

 レー島の護り神ガブ・リアスを探す、果たしてない旅に……。

 

 

 

 そしてなんやかんやあって結婚式当日!

 果てしない旅はディアルガが時を早めて省略してくれたぞ!

 

「結局、あの子は来てくれなかったわね……」

 

 アローラ地方の伝統的な花嫁衣装に身を包んだルザミーネが、物憂気にため息をついた。

 娘であるリーリエに招待状を送ったのだが、彼女は応じず、それどころか何処へ行ってしまったのだ。

 母としては、やはり娘に祝ってもらいたかった。

 

 ちなみに、グズマには出していない。

 普通に忘れているのである。

 

「……」

 

 そんなルザミーネを見て、“彼”はそっと後ろから抱きしめた。

 娘がいなくとも、俺がいる。

 そんな気持ちが込められた、熱い抱擁だった。

 

 ルザミーネは何も言わず、ただ“彼”の抱擁を受け入れた。

 普段はオッチョコチョイな“彼”を年上であるルザミーネが優しく抱き締めることが多い。だがやはり、いざという時は頼りになる。

 そんなギャップに惹かれたのかもしれない。

 なんてルザミーネは、結婚を前にして改めて思った。

 

 一方で“彼”もまた、ルザミーネの事を思っていた。

 白くて、細い身体だ。

 ちょっと力を込めれば、折れてしまいそうなくらい。

 それでも何処か温かみがあって、柔らかい。

 ああ、俺はこの人が好きなんだ。

 改めて、“彼”はそう思った。

 

 ちなみに、二児の母である。

 しかし“彼”にとってはむしろチャーム・ポイントであった。

 

「……」

「……」

 

 二人の間に、優しくて、穏やかな時間が流れた。

 ルザミーネは振り返り、“彼”の顔に己の唇を近づけた。

 “彼”も抱きしめていた腕を、ルザミーネの胸元へと動かし……

 

「あー、ごほん!」

 

 その時、しまキングであるハラがやって来て、気まずそうに咳払いした。

 いつの間にか、二人だけの世界に入っていたらしい。

 ルザミーネが妖艶に微笑み、“彼”は顔を赤らめた。

 いよいよ、結婚式が始まる。

 二人は相棒のポケモンをつれて、控え室を出た。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 ──瞬殺。

 

 しまキングのハラと、

 しまクイーンのライチを、二人は文字通り瞬殺した。

 具体的に言うと、“じしん”と“なみのり”連打である。

 

 初代にして最強と謳われるアローラ地方チャンピオンである“彼”と、元々ラスボスだった上にカントー地方で更に鍛えられてきたルザミーネ。しかもコンビネーションも最高ときている。いかにしまキングとしまクイーンのペアといえども、急仕立てのペアでは二人に勝てるべくもなかったのだ。

 

「──それでは、誓いのキスを」

「はい」

 

 最早二人を祝しない者は、アローラにはいなかった。

 そして二人は幸せなキスをして終了──

 

 

 

「その結婚、ちょっと待ったあああ!!!」

 

 ──とはならなかった。

 二人が幸せなキスをする前に、リーリエとグズマが乱入してきたのだ。

 結婚式参列者たちを掻き分けながら、二人の方に歩いていく。

 

「……」

 

 ……場が凍った。

 当然だ。

 参列者たちはルザミーネと“彼”の結婚を祝いに来てるのだ。乱入者にいい顔をするわけがない。

 というかそもそも、親同士が決めた相手と無理矢理結婚させられる〜的なアレ以外で結婚式に乱入するのは、あまりに非常識である。

 しかし、リーリエとグズマは動じない。

 事前にふしぎなアメとウツロイドをキメてきた二人に、隙はなかった。

 

「あー、えっと……」

 

 これには流石のルザミーネも動揺した。

 さすがに実の娘とプラスαが結婚式に乱入して来るとは思わなかったのだ。

 

「お母様!」

「はい」

「そしてお父様になりそうなそこのあなた!」

「……」

「私達とポケモンバトルをしてもらいます!」

 

 それを聞いて、思わずルザミーネは泣き出してしまった。

 すかさず“彼”が肩を抱く。

 ルザミーネは勘違いしてしまったのだ。これがリーリエなりの、激励だと。

 

 むすめに なりそうなリーリエ と はかいということばがひとのかたちをしているグズマ が しょうぶをしかけてきた!

 

「お願いします、ガブ・リアスさん!」

「頼むぜ、グソクムシャ!」

 

 リーリエがレー島の護り神ガブ・リアスを、

 グズマがグソクムシャを繰り出した!

 

 グソクムシャは“ふうせん”で浮いている。

 

「……」

「お願いいたしますわ、ミュウツーさん」

 

 “彼”はアルセウスを、

 ルザミーネはミュウツーを繰り出した!

 

「……ん?」

「……は?」

 

 ──ここで一つ、悲しい事実を告げておこう。

 レー島は、確かに過酷な島である。その護り神ガブ・リアスは、なるほど強力なポケモンだろう。

 しかしレー島はある特殊な護りにより、一部のポケモンが出入り出来ないようになっている。ガブ・リアスが最強なのは、あくまでその一部のポケモンを除いた世界での話。

 つまり……、

 

 二人は負けた。

 瞬殺だった。

 戦闘描写を書くのもめんどくさくなるほど、二人は一瞬で負けた。

 そして“彼”が提示した“おまもりこばん”の効力で、金を巻き上げられた。財団の娘であるリーリエは払えたが、グズマは約2,000,000の借金を負った。

 

「リーリエ」

「ぐす……ひっぐ、お母様……」

「そんなに泣いて下さるなんて。そこまでわたくし達のことを祝福して下さっているのね」

「いえ、あの……」

「リーリエ。わたくし、幸せになります」

「あっ、はい」

 

 二人は幸せなキスをして終了。

 

 

 

 

 一方その頃病院では、グラジオ・ハウ夫妻が新たな命を授かっていた。












グラジオがTSしたらリーリエの容姿を持った厨二病系相棒ヒロインが爆誕すると気がついて以来、夜も眠れない。

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