緑谷出久が悪堕ちした話   作:知ったか豆腐

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とある研究員の手記2

 G01が来てからというもの、驚きの発見ばかりである。

 彼の“個性”というものは非常に研究しがいがある。

 研究を進める中、彼の“個性”は『引き受ける』ということの副次的なものなのか、薬物や外科手術に対する拒絶反応を抑える効果があることが分かった。

 

 以前の彼のデータには、そのような現象は見受けられなかったことから、“先生から”個性を与えられたことで『引き受ける』個性が強まったか、あるいは個性の与奪を繰り返す中で個性が変質したか……

 いずれにせよ、この事実は新たな改造人間の計画に役立ったのだ。

 その計画については以下の通り。

 

『サイボーグ型改人計画』

 以前計画されたものの技術的問題から凍結された改造人間計画だ。

 技術的問題の大部分は、手術による被検体の拒絶反応(リジェクション)を抑えることができなかったことにある。

 そのため、今回のG01の個性の特性を研究することでこの技術的問題を解決できる可能性が見えたことから計画の再始動が決まったわけだ。

 

 この計画の最大のメリットは、以前にも記した通り「戦闘力と思考力の両立」を目指せるほか、強力な改人を作り出すのに“先生”の手を煩わせることがないという点だ。

 脳無では、強力な個体にするには先生に個性を複数与えてもらう必要があるため、実質的に量産には“先生”の手が必要不可欠であった。

 だが、この計画では強化を外科手術に頼るため、たとえ個性が一つだけだったとしても増強型の個性と同じ力を持った改人を生み出せるのだ。

 ヒーローとの戦いにおいて質だけでなく量の確保もこの計画の目的の一つと言える。

 

 計画の試作品第一号(The First)にG01を素体として使うこととなっている。

 果たしてうまくいくとよいのだが……

 

 

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 実験、いや、手術は成功だ。

 G01は拒絶反応(リジェクション)を起こすことなくサイボーグ化を果たした。

 新たな改人の誕生だ。

 

 この新たな(タイプ)の改人に“先生”は「骸無」と名付けられた。

 「骸無」

 この名前にはいったいどのような意味を込められたのか。

 

 『(むくろ)は無い』

 

 この改人が敵の前で骸を晒すことは無いという、最強の改人を表しているのだろうか。

 私にはどちらかと言えば「死んだとて残る骸は人で無い」という悲しみが先立つような気がする。

 既にG01の身体の大部分は機械となっている。

 あのような体で、“人間の身体”だといえるのだろうか?

 

 いや、よそう。こんなことを考えたところで益は無い。

 

 今後の計画では、骸無のデータをもとに拒絶反応(リジェクション)を抑える方法を探っていくこととなる。

 個性との併用がどれくらい影響を及ぼすかはまだデータ不足であるため、しばらくの間は無個性相手に実験を重ねることとなりそうだ。

 ちょうど、以前までの実験で廃人となった無個性は残っている。

 素体として再利用するほうが資源の無駄にならずに済むだろう。

 

 ゆくゆくは個性との両立もしていきたいところだ。




短いですが更新。まだヴィラン側の強化は終わりません。

次回は原作でいう「ヒーロー殺し」編に入るわけですが、かなりオリジナルが入ってきます。
みんな大好き?ステインの扱いとか難しいですね(・・;)
プロットの組み立てで苦労してます。
とりあえず、次回は飯田君をいじめる予定。

それではお楽しみに。

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