オールマイトを亡き者にした骸無は、オール・フォー・ワンに呼び出されていた。
「ご苦労だったね。骸無。よくぞオールマイトを殺してくれた」
「当然です。彼の存在は邪魔でしたから。これで懸念となるものはしばらくは現れないでしょう」
オール・フォー・ワンからの賛辞を受け取る骸無。
だが、オール・フォー・ワンの骸無を見つめる視線には不穏な色が混じっていた。
「いや、まだ懸念はある」
「……それは君だよ。骸無」
オール・フォー・ワンの言葉と共にトラップが作動し、骸無を拘束する。
オールマイトという宿敵がいなくなった今、ヴィラン連合を脅かす可能性があるのは皮肉なことに骸無であった。
「つまり、ボクの存在が脅威であり、邪魔になったと?」
「邪魔とまではいかないさ。ただ、君は強くなりすぎた。僕と同じ“個性”を放置するなんてことはできないからねぇ」
“オール・フォー・ワン”と同じく、他人の個性を奪う個性。
その有効性をよく知るがゆえに、敵となった時の脅威を身をもって実感しているのが“先生”だ。
この懸念材料は一刻も早く排除せねばならない。
「なあに、君を殺すことはしないさ。その厄介な君の個性を僕に渡してくれれば今まで通りだよ」
駒として身に余る個性を奪い、従順な兵士に戻す。
それは正しい判断だろう。
ただ、オール・フォー・ワンには一つ見落としがあった。
「これは……どういうことだ!?」
無抵抗の骸無に個性を使ったオール・フォー・ワンは、突如異変に苦しみだす。
全身から力が抜けるような虚脱感。
ぽっかりと何かが無くなったような喪失感。
オール・フォー・ワンは、個性を奪うつもりが逆に持っていた個性の半分近くを奪われてしまっていた。
オール・フォー・ワンの失敗。
それは自らの“
緑の目をした怪物は、かつての裏社会の支配者すら呑み込む化物だったのだ。
「ぐぅ、馬鹿な」
「アハハ! ボクを侮りましたね? “先生”。既にボクの力はあなたより上だ。そんなあなたがボクから個性を奪うことはできない。
でも、あなたには恩がある。だから全部は奪わないでおきました。
あぁ、死柄木クンにも言ったけれど、これまで通りヴィラン連合のためには働きますよ」
見下したように、用件を一方的に告げる骸無。
「ただし、ボクを思い通りにできるだなんて、間違っても思わないでくださいね? もしそうなった時には……」
警告をして立ち去る骸無。
それを見送ったオール・フォー・ワンは、一人つぶやいた。
「僕は、とんでもない化物を作り出してしまったようだ」
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オールマイトの敗北後、社会は大きく変化した。
一つはヒーローの存在。
“平和の象徴”が敗北し、有力なヒーローたちが無力化されたあの事件以降、ヒーローたちの信頼は崩れ落ちていった。
ヴィランによる事件に徐々に対処できなくなっていったヒーローたちに、国はある決断を下す。
『ヒーロー制度の廃止』
各ヒーロー事務所ごとの方針に任せていた個性犯罪の対処を、強力な権力の管理のもとで組織的に行うよう変更したのだ。
いままでのヒーローたちはその資格をはく奪され、新しく出来た個性犯罪対策の組織に所属を強制された。
反対するヒーローは、危険分子として拘束されていく。
こうしてヒーローたちは社会から抹殺されていった。
新組織により表向きの秩序は取り戻されたが、実態はヴィラン連合の息のかかった組織でしかない。
表向きの平和とは裏腹に、ヴィラン連合による恐怖の支配がはじまっていたのだ。
これに対抗するため、かつてのヒーローたちは地下にもぐり、『レジスタンス』と名前を変える。
レジスタンスの中心は雄英高校のOBを中心とした元ヒーローたちだ。
そして、そのレジスタンスの一員に、爆豪の名前がある。
「デク……おまえは、俺が止めてやる」
のちに“正義の象徴”と呼ばれる爆豪と、“恐怖の象徴”となった骸無。
二人の戦いの決着はまだ終わっていなかった。
と、続きがあるっぽい感じで終了。
アフターは希望があれば、気が向いたときに書くかもしれません。
ちなみに最近出してなかったルート分岐条件。
バッドエンドの条件は、
1.殺人経験済み。
2.お茶子とショッピングモールで会話。
3.爆豪と戦闘し、勝利する。
4.母親と再会していない。
5.オールマイトへの感情が最悪のまま
6.ヒーロー側の体制が整っていない。
です。
ルートの一つを完結させたあとがきなんかはまた後日活動報告にでも載せたいと思います。
そのときはまたよろしくお願いします。
それでは、ここまで読んで頂き、ありがとうございました。