緑谷出久はショッピングモールにお出かけしました プロローグ
−−−−雄英高校 会議室
雄英高校で行われる週一回の定期会議。
今回の議題は先日行われた期末試験の結果と、その後に行われる合宿訓練についてだ。
「さあて、結果は様々だったけれど無事に期末試験を終えられてなによりだったね」
根津校長の開始の言葉は無事に試験を終えたねぎらいの言葉だった。
USJ、体育祭と襲撃があったことから、定期試験の際もヴィランの襲撃を警戒していたのだが、問題もなく終わり、ホッと安堵の吐息を漏らしたものだった。
「ですが無事に終わったと喜んでばかりはいられませんよ」
緩みかけた雰囲気を引き締めるように相澤が発言する。
試験の次には合宿が控えているのだ。
「そうねえ。なにかと今は騒がしいから、合宿の危機管理は厳重にしないといけないわね」
「まったく、ヴィランといい
ミッドナイトが相槌を打ち、プレゼント・マイクが愚痴をこぼす。
プレゼント・マイクの言う通り状況はあまり良くはない。
ヴィランの活性化は相変わらずだが、そこに加えて
保須市の事件で表面化した
ヴィランとの戦闘が頻発し、ヒーローや警察は被害を増やさぬよう難しい介入を余儀なくされている。
そうした問題の対処に追われて肝心のヴィラン連合への捜査が滞っているなど、問題は山積みだ。
オールマイトがヴィラン連合について尋ねる。
「ヴィラン連合の動きはどこまで追えているのですか?」
「残念ながらヒーローからも警察からも有力な情報は来ていないね。
保須以来、不気味なことに彼らの動きが途絶えているんだ。何かの準備段階なのか、それともすでに水面下で動き出しているのか……」
「シット、死柄木め。何を考えている」
先に述べた状況もあるが、ヴィラン連合は表立った動きを見せていないのだ。
不穏な空気を感じ取り、爪を噛むオールマイト。
相澤がさらに懸念材料について質問をする。
「ヴィランもそうですが、過激派自警団――とくに組織化されたものは脅威です。彼らの中には今のヒーロー制度に不満を感じてヒーローたちに対して敵意を抱いているものも多い。
雄英高校は良くも悪くもヒーローの象徴の一つです。彼らから狙われる可能性もあるのでは?」
新たな懸念材料、
「彼らに関しては私の特別な伝手を使って調べているよ。あるヒーローに応援を頼んでおいたのさ」
「あるヒーロー? それはいったい?」
「変装ヒーロー『アンダーカバー』さ。変装の名人の彼には
「チェイス君か! アメリカのヒーローの彼なら実力者だ」
「彼ですか……実力は確かなんだが」
根津校長の協力者の名前を聞いて喜んだのがオールマイト。反対にげんなりした様子なのが相澤だ。
陽気な性格の彼とオールマイトは気が合うが、どうも合理的に思えない方法で事件を解決するらしいアンダーカバーとは相澤は相性が悪いらしい。
かつて偶然いっしょに仕事をした相澤は当時のことを思い出す。
ヴィランの下っ端を捕まえ、アジトを尋問していた時のことだ。
『さあ、お前たちのアジトを吐いてもらおうか!』
『誰が言うもんか!』
『なら仕方ないな。ほらよっ』
『うっ、やめてくれ! 頭が割れそうだ』
『ならさっさと吐くんだ。いまなら好きな味を選ばせてやろう』
『……マスクメロンはあるか?』
『あるとも! なんならチョコレートミントもつけてダブルにしてやろう』
『トリプルだ! ラムレーズンもつけてくれ』
『よし、いいぞ! さあ、アジトの場所は?』
『あ、ああ、アジトは3丁目の―――』
アイスクリームディッシャーを片手に尋問する姿を思い出し、頭が痛くなる相澤。
あんな尋問をするほうもするほうだが、答える方もどうかしている。
あいつがいるとアクション映画を見ていたはずがギャグ漫画の世界に変わっているのでついていけない。
相澤はため息を吐いた。
それでも実力は確かなのだ。
「彼の情報によると、いまは地固めをしているらしく、地域に影響力を伸ばしているところらしいね。
おそらくだけど、彼らが当てにしていたステインが脱退したのが影響しているみたいだ。脱退した理由が思想面で対立したかららしいが、詳しくは分かっていないんだ」
「
「それは分からねえぜ! 小さくともビッグな野心を抱いているところなんざたくさんあるんだ。警戒は必要だろうぜ」
「むしろ一匹狼のような存在が行動を起こすのが厄介だ。調べようがありません」
次々と意見が交わされる会議室。
だが、状況を劇的に変える策は出てこないままだった。
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――――ヴィラン連合 アジト
「ようこそ。悪の親玉ども」
死柄木が笑って告げる。
部屋に置かれた大きな円卓。
その円卓には死柄木をはじめとしたヴィラン組織の長たちが席を並べていた。
「俺たちを呼び出したんだ。さぞ価値ある話をしてくれるんだろう?」
オーバーホール。ヤクザ『
「もうけ話ならなんでもいいぜ。ここにいるのは俺のお得意さんばかりだ」
「さっさと話してくれないかな。僕も暇じゃないんだ」
「こんな場所での会合とは下の下ですね」
「我々に有益ならば話は聞く。そうでなければつぶすだけだ」
『ギアス饗団』、『スマートブレイン』『ギルド』などなど。
ヴィラン連合が密かに接触を図った悪の組織がここに集まっている。
それらを集めた理由を死柄木が語りだした。
「せっかちだなあ。まぁ、実際仲良くおしゃべりなんてキャラでもないからさっさと本題に入ろう。
あんたらをここに呼んだ理由は一つだ。
“ヴィランの組織をまとめあげる”
これが俺たちからの提案さ」
「それはつまり……俺たちに傘下に入れと言っているわけか?」
死柄木の言葉を受けてヴィランたちが殺気立つ。
好き勝手したくてヴィランをやっている連中ばかりだ。誰かの下につくなど考えたくもない。
いまにも飛びかからんばかりの彼らを死柄木が手を出して抑える。
「まあ待て。誰も傘下に入れなんて言ってないだろ。話は最後まで聞くものだ。
俺たちがやるのは、ネームバリューを使わせたり、資金を提供する。兵器の供給に戦力の派遣をする。
代わりに、ある程度こちらの都合に合わせてもらったり、協力を要請させてもらう」
「つまり、ヴィラン同士で同盟を組もうというわけか」
ヴィラン連合の名のもとに相互の不可侵条約と協力関係を結ぶ。
また、利害関係の調整なども行うなど、これまで一枚岩でなかったヴィランをひとつにまとめあげようというのだ。
この提案を受けて、各組織の長は考え込む。
受け入れるメリット・デメリット。
提案の裏があるのか、ないのか。
その中でいち早く意思表明をしたのは、オーバーホールだ。
「その提案を受けれよう。裏社会の中で今一番ネームが売れているのはヴィラン連合だ。そこに協力してもらえるなら俺たちもやりたいことがしやすくなる」
もはや過去の遺物と化しているヤクザにとって、状況を変える千載一遇のチャンスだ。
逃す理由がない。
彼の答えを受けて次々と参加の意思を示すヴィランたち。
まさしくヴィラン“連合”が結成されたのだ。
「死柄木弔、参加するにはこれからの展望を教えてほしい。計画のない目標は妄想と言う。俺たちを集めたからには計画は立てるのだろうが、その目標を聞きたい」
オーバーホールの質問に死柄木は笑って答えた。
「目標はヒーロー社会の終焉と俺たち日陰者による支配だ。そのために……オールマイトと雄英高校には消えてもらわないとな」
いろいろとネタをぶっこんでみたりしました。
悪の組織は思いついたのを適当に並べました。
みなさんにとって悪の組織で真っ先に思い浮かぶのはなんでしょう?
次回、出久くんが誰かと出会うぞ! お楽しみに