ヤンデレな彼女達   作:ネム男

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もうすぐクリスマスですね(白目)


指切りげんまん(後編)

 「いてて……」

 

 あの後俺達は家に帰って、幸希に傷の手当をしてもらっている。幸い深い傷ではないみたいで激しい運動を控えればすぐ治りそうだった。

 

 「はい、おわったぜ」

 

 「おう、ありがとな」

 

 俺の両足には包帯が綺麗に巻かれていた。

 

 「あいつらも今頃サツに世話になってるころだし、これで一件落着だな!」

 

 まぁ、幸希のおかげで《爆竹トラップ事件》に終止符が打たれたのだ。これで安心して生活していける。

 

 「………」

 

 「ん?どうした健人?」

 

 「あ……あぁ。いや、なんでもない。ありがとな」

 

 「変な健人だな。じゃあオレは飯作ってくるぜ〜」

 

 そう言って幸希はキッチンへと向かった。

 

 俺の頭にはまだあの光景がきっちり残っている。

 幸希は昔から喧嘩が強かった。小学生の頃によくやんちゃな男子達とよく喧嘩していてたのを覚えている。中学生の頃はよくヤンキー達に絡まれては喧嘩して、怪我をした状態でよく家に帰ってきていた。高校生になってからは改心して真面目な生活を送っている。

 

 しかし、さっきの公園での出来事で幸希の怒った顔は初めて見た。あんなに殺気を出している幸希を俺は見たことない。先程の喧嘩も一歩間違えればあの3人組は死んでいたかもしれない。

 

 

 それほどまでにあの時の幸希は、様子がおかしかった。

 

 

 ------

 

 

 

 「幸希……またこんな怪我して……」

 

 

 「……うるせぇ。お前に関係ないだろ」

 

 

 「いいからはやくこっちこい。今手当してやるから」

 

 

 「うぜぇなぁ!オレのことはもうほっとけっていつも言ってるだろ!」

 

 

 「そんな大怪我してるやつをまえにほっとけるかよ!つべこべ言わずに座って--

 

 

 「うるせぇ!」

 

 

 ドカッ!

 

 

 「ぐはっ……!」

 

 

 「ちっ……くそが」

 

 

 「……いてて、相変わらず……お前の蹴りは痛いなぁ……ははは」

 

 

 「………」

 

 

 「いてて……ほら、さっきの蹴りでまた足に余計な負担がかかったろ。ったく、いいからおとなしくしてろ……」

 

 

 「……なぁ、なんでお前は、オレに構ってくるんだ?オレと一緒にいるとお前まで悪くなっちまうぜ?お前の親にさんざん言われてただろ?」

 

 

 「……知っていたのか」

 

 

 「ハッ、そういうことだ。……頼むからもうオレに二度と近づかないでくれ」

 

 

 「……悪いけど、その頼みは聞けないな」

 

 

 「はぁ?」

 

 

 「だって、お前はもう家族だろ?だいたい大事な家族の1人が怪我しているのにほっとく方がおかしいだろ」

 

 

 「だって、お前……」

 

 

 「確かに、俺の母さんは幸希のことを良く思ってないし、お前のことになるといつも嫌そうにしていたよ」

 

 

 「………」

 

 

 「だけど、俺は1度も嫌とは思ったことない。幸希は俺の大事な幼なじみで、大事な家族だ。今頃構うな言われてもそりゃ無理な話だな」

 

 

 「…………」

 

 

 「ほら、いいからはやく座って。怪我の手当するから……」

 

 

 「……オレ、ヤンキーだぞ……?」

 

 

 「だからなんだよ。今更だな」

 

 

 「……オレと一緒にいると……皆から嫌われるぞ……?」

 

 

 「もう嫌われてるんじゃないかな?俺地味だし?あははは」

 

 

 「……オレ、女の子っぽくないし……なんにもできないぞ……?」

 

 

 「今から学んでいけばいいさ。まだ中学生だろ?」

 

 

 「……グスッ……かまってくれないと……おこるぞ……?」

 

 

 「おう。嫌っていうほど構ってやる」

 

 

 「……うっ……グスッ……」

 

 

 「……お前は、1人じゃない。約束する、俺がそばにいる。ずっと一緒だ」

 

 

 「……うっ……うぁぁぁぁぁ……!」

 

 

 ……………

 

 

 …………

 

 

 ………

 

 

 「……ん」

 

 夢を見た。それは懐かしいもので、思い出すと少し恥ずかしくなる。

 今日は土曜日で学校はなく、いつもより遅く起きた。

 

(そういえば……)

 

 オレはカレンダーの方にふと目を移す。

 そう、今日は12月24日。世間ではクリスマスイブでオレの誕生日でもある。

 

(健人、誕生日覚えてくれているかな……)

 

 オレは布団から出て、いつも通りに健人を起こしに行く。休日だからと言って起こさないわけじゃないんだぜ。

 

 「おきろ健人ー!」

 

 健人の部屋をドアを開ける。すると珍しくその部屋に健人の姿はなかった。なんということだ。あいつは誰か起こさないと昼まで寝ている奴だ。今は午前8時30分。休日の日にこんなに早く起きているなんて初めてのことだ。

 

 リビングに向かったが、健人の姿は見当たらなかった。代わりにテーブルに朝食と、1枚の紙が置いてあった。

 

 《買い物や色々と用事があるので外に出てます。悪いけど昼飯は適当にとってくれ。》

 

 紙には健人の字でそう書かれてあった。

 

(なんだよあいつ……今日オレの誕生日だってのになにやってんだよ……)

 

 流石に今日は何も予定はないし、あいつがいないんじゃあ色々と暇だ。買い物って言ってもどうせ何時も行っているショッピングモールであろう。あいつをおどかしに行ってやろうと朝食を済ませ、色々と支度して家を出た。

 

 いつも通っている近くのショッピングモールに到着する。店内に入って所々店を探してみるが健人の姿は見つからない。

 

(あっ、いた!)

 

 あれから1時間後。アクセサリー屋で健人の姿を確認する。

 

 

 

(……えっ……?)

 

 

 しかし、健人の隣にはオレの知らない女がいた。お互いに笑顔でとても楽しそうにしていた。

 

 

(…………嫌………)

 

 オレは頭が真っ白になって、その場から走り去った。

 

 

 「ん?」

 

(あれって……幸希か?)

 

 「どうしたの?健人君?」

 

 「ん、あぁいや。なんでもないよ。はやくあいつらと合流しよう」

 

 「そうだね!いこっ!」

 

 「あぁ」

 

(気のせいか……)

 

 

 数時間後---

 柏原家

 

 「………」

 

 ……なんで……

 

 ……なんで、なんで……

 

 ……なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで……!!

 

 「……くそがっ!!」

 

 玄関の壁を思いっきり殴る。

 

 「なんでだよぉ……健人……」

 

 健人が他の女性と一緒にいた。

 

 オレ以外の女とデートしていた。

 

 なんでだよ健人

 

 今日はオレの誕生日だろ?

 

 なんでそんな大事な日にほかの女と歩いてんだよ

 

 

 ずっと一緒にいてくれるんじゃなかったのか?

 

 なぁ……

 

 健人……

 

 ……………

 

 …………

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 あはっ…

 

 あははっ

 

 あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!

 

 

 嘘だよな!優しい健人がオレを裏切るなんて絶対しない!

 

 

 そうだ、あの女に何かされてんだな!

 

 

 大丈夫だぞ……健人……

 

 

 オレが必ず守ってやるからな……♪

 

 ------

 

 p.m.18:05

 

 「じゃあね健人君♪今日は楽しかったよ」

 

 「あぁ、俺も。また集まって遊ぼうな」

 

 「おう!そうだな」

 

 「はやく帰って彼女にプレゼント渡せよ。きっと帰りが遅いって怒ってるぞ〜」

 

 「あはははっ、そうだな、じゃあな!」

 

 俺は今日、男友達1人と女友達2人で幸希のプレゼント選びに付き合ってもらっていたのだ。

 買ったプレゼントは幸希に似合いそうなネックレスと幸希の好物であるいちごのショートケーキ。さらにクリスマスイブということでターキーや、色んなごちそうを買ってきた。

 早く帰って幸希と一緒に楽しむんだ……!そう思いながら走っていると……

 

 「よぉ、お前か。俺らのダチが世話になったなぁ」

 

 ぞろぞろと俺の前にいかにも悪そうな奴らの集団が集まってきた。

 

 「……えっと、なんですか?」

 

 「おら、つべこべ言わずついてこいコラ」

 

 逃げるしかない。俺は集団から背を向けて逃げようと試みる。

 

 「おっと、逃がさねぇぜ」

 

 しかし奴らの仲間であろう者達が退路をふさぐ。

 

 「くそっ……」

 

 ここは既に街から離れた住宅街だ。あたりは暗くなっており、歩行者の姿は見えない。……あ、これ詰んだわ……

 

 それからは公園に連れていかれ、10人の集団に完膚なきまでにボコボコにやられた。

 

 「おら!」

 

 「がっ……」

 

 5人が俺を叩きのめし、もう半分は俺が買った食料を食い漁っている。

 

 「ほぅ……なかなかいいセンスじゃないか」

 

 集団の長である奴が箱の中に入っていたネックレスを手に取る。

 

 「やめ……ろ……それだけ……は……」

 

 傷だらけの体を必死に動かそうとする。しかし背中を足で押さえつけられてしまった。

 

 「へぇ……そんなに大事なものなのか、これ」

 

 幸希にプレゼントする物なんだ。大事に決まっている。だが俺は最悪の展開を予想していた。

 

 「そうか……じゃあ、ほれ」

 

 男は持っていたネックレスを思いっきり引きちぎり、バラバラになったネックレスだった物を俺に投げつけた。

 

 「似合ってるぜ。今のお前に最高のアクセサリーじゃねぇか。ひゃはははははは!」

 

 「……てめぇ……!!」

 

 「あ?」

 

 長である男から顔面に蹴りを入れられる。

 

 「が……」

 

 「なんだよその目は、腹立つな」

 

 「うる……せぇ……!」

 

 男は俺を持ち上げ、さらに殴る。倒れた俺に馬乗りになって、さらに顔面を拳で殴り続けた。

 

 「おぉお!」

 

 「いいぜ兄貴!もっとやれぇ!」

 

 「………」

 

 だんだんと意識が遠くなって行くなかで、最後に見たものは慌しく公園の入り口にたどり着いたある1人の金髪の女性だった。

 

 

 「-------!」

 

 

 その女性が何かを言っていたのかは聞き取れず、俺は意識を手放した。

 

 

 

 ------

 

 

 

 「……ん」

 

 目が覚めると、そこは暗い部屋の中であった。体を動かそうとすると、ガチャッと金属音がした。

 

 「なっ……これは……!」

 

 暗くてよく見えないが、手首に何かがかけられているのは確かだ。感覚からして恐らく手錠であろう。

 

(俺、あいつらに捕まったんかなぁ……俺特に何もしてなくね?なんで一方的にやられなくちゃいけねぇんだよくそ……)

 

 そんなことを考えていると、急に電気がついて周りが明るくなる。

 

 「おっ、目が覚めたんだな、健人」

 

 「……こう……き?」

 

 幸希がこの部屋に入ってきた。だが、幸希の服や顔に赤い汚れが所々ついている。

 

 「おまえ……それ……」

 

 「あぁ。あいつらオレ達に仕返してやりたかったんだってさ。ほんとに懲りねぇよな。まぁ、健人をこんな姿にしたんだ。あの10人にはこの世から消えてもらったから心配すんな!」

 

 幸希は笑顔でそう言った。いつも見ているはずのその笑顔は今はとても恐ろしいものに感じた。

 

 「……幸希、これは……」

 

 俺は手錠のことを問いかける。

 

 「ん?あぁ、それがどうかしたのか?」

 

 「いや、これ外してくれよ」

 

 「嫌だ」

 

 「……は?」

 

 「こうしておけば、もうお前はずっとオレと一緒にいられるんだぜ?」

 

 「な、何言ってんだよ。いつも一緒じゃないか……」

 

 「じゃあなんで今日オレの誕生日だっていうのに、ほかの女と一緒に遊んでんだ?」

 

 「ッ!」

 

 なんで幸希がそのことを知っているんだ?何処かで見られたのか。

 

 「それは、お前のプレゼントを選ぶ手伝いをしてもらうために呼んだんだ。俺、女子が好きそうなプレゼントがあんまりわかんないからアドバイスをもらってたんだよ」

 

 サプライズのつもりでプレゼントを渡すつもりだったが今となってはもう遅いことなのでここで真実を打ち明ける。

 

 「そうか……そのプレゼントがこのネックレスってわけか」

 

 幸希はポケットからバラバラになったネックレスを取り出した。

 

 「お前、持って帰ってきたのか……」

 

 

 「当たり前だろ?お前からのプレゼントだったら何でも嬉しいぜ?ただ……」

 

 

 「ただ?」

 

 

 「これはあの女と一緒に選んだやつだろ?そんなものはいらない」

 

 

 そう言って幸希は手に持っていたネックレスを握りつぶして粉々にする。あぁ……それ結構高かったのに……

 

 

 「誕生日プレゼントなんて、わざわざ黙って買いに行く必要ないだろ?オレは今日1日お前と2人っきりで過ごせればそれでよかったのに……お前はほかの女と……!!」

 

 

 そう言っている幸希の目は光を宿しておらず、黒く濁っていた。

 

 

 「もうお前を外に出したりなんかしない。この部屋でずっと2人っきりで暮らすんだ。誰にも邪魔されない、2人だけで……あははははははははははははははははははは!!」

 

 

 「幸希……」

 

 彼女はどこか狂っている。このままだと本気でここに監禁され廃人になりかけない。

 

 「勝手に黙って行ったのは悪かった!本当に申し訳ないと思う。だから頼む!この手錠外してくれ!」

 

 「何言ってんだ。外したらまたお前はオレを置いていくだろ?」

 

 「置いていかない!約束する!今度は2人で出かけよう!もう2度とお前をひとりにしない!」

 

 俺は必死になって、幸希にお願いした。

 

 「……わかった」

 

 彼女は気が進まないような感じだったが承諾してくれたみたいだ。

 

 「じゃあ……約束してくれ」

 

 そう言って手錠を外すと、幸希は俺の前に小指を差し出してきた。

 

 

 「これからはオレ以外の女と喋らない。オレ以外の女と些細な関係を持たない。そしてこれからはオレとお前は恋人同士になる。これらが約束できるなら、ここから出してもいいぜ」

 

 

 「……あぁ、わかった」

 

 幸希から放たれる殺気と恐怖に勝つことが出来ず、俺は渋々承諾して、幸希の小指に自分の小指をひっかけた。

 

 

 「指切りげんまん♪嘘ついたら針千本のーます♪指切った……!!」

 

 

 「!!」

 

 

 するとバキリと嫌な音がして俺の小指はあらぬ方向に折り曲がっていた。

 

 

 「あああああああああああああああ!!」

 

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

 

 どんな力してんだ幸希は!小指だけで俺の小指の骨を折りやがった……!

 

 

 「この折れた小指を見たら、いつでもこの約束を思い出せるよな?なに、小指の1本くらい大したことないさ」

 

 「……っ……っ……」

 

 「さて、めでたく恋人同士になったことだし、今日はとことん付き合ってもらうぜ?」

 

 そう言うと幸希は服を脱ぎ始めた。逃げようにも奴らから受けたダメージが効いていて、抵抗することすらできない。

 

 

 「たっぷり愛し合おうぜ……?健人……♪」

 

 

 12月24日、クリスマスイブ。この日の夜は今までで1番長かった。

 

 

 

 




無理矢理感はんぱない……(´・ω・`)

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