プールに行くことを高虎が了承した二日後、遂に夏期補習も最終日を迎えた。
「ようやく終わるな…」
備え付けの緑茶を飲みながら雄二が言う。コイツにとってはそこまで補習は必要としないからな。
「だな、これが終わったら一度自宅に戻って昼前に現地集合、だったか。」
今日行くプールは市民プールの様なモノではなく、リゾート施設の一つになっている所だ。話によると明久の姉も来るらしい。
「ああ。幸いにも今日は英語だけだ。十時半には学校を出られるぞ。」
「何だかんだで一日もサボらなかったな、お前は。」
「鉄人に絞られる事を考えたらサボるなんて選択肢は無くなる。」
「別に成績が悪い訳でも無いだろう。お咎めは無いとは言わんが軽いと思うが。」
そんな感じで駄弁っていると、高虎と姫路が到着した。
「吉継に雄二、早いな。」
「家に居てもすることが無いからな。お前はどうなんだ?」
「補習の後は基本的にバイトだからな…箱を包むだけの簡単な作業だがいかんせん数が多い。集中力が切れて家に帰ったら直ぐにベッドだ。」
「だから最近オンラインゲームもずっとオフライン状態だったのか。」
「雄二、そもそもお前だって言うほどやってないだろ…」
「まあそれは良いとしてだ。今日のこれからの予定は二人共分かっているな?」
「十二時に目的地のプールの入り口に集合、で大丈夫ですよね?」
「ああ。明智先生から許可が出なかった玉は昨日の夜に来ないと言ってきたから、島田に伝えて置いてくれ。」
「玉ちゃん、どうかしたんですか?」
「今日から関西に旅行に行くことを忘れていたらしくてな。」
関西、ねえ…家族旅行で何度が行ったことはあるな。京都に一泊、神戸に一泊だったか。
と、西村教諭がやってきたな。
「それじゃあ始めるぞ。席に着いて昨日やった最後のページを開け。」
さて、教科書を開いてその下にスマホを置いて…良し。
吉継『あと一時間』
雄二『授業始まるなり携帯開くのかお前。』
吉継『さっきの会話の流れからそうだろう。』
高虎『俺らは受けても受けなくても同じだからな。』
明久『皆キチンと授業受けようよ。』
高虎『そういうお前は携帯開くな。』
明久『すみませんでした。』
…明久、アイツ一列目だよな。アイツがばれたら俺らも一斉に検挙されるかも知れないな。どうしよう。まあ、真剣に受ける気なんて無いし、多少怒られても良しとするか。
~時間経過~
「良し。これで補習は全て終わりだ。良い夏休みを過ごせよ。」
西村教諭はそう言って足早に退出して行った。
「ああ~疲れた…」
明久が伸びをしながらこちらに来る。そりゃあ一列目なら西村教諭の目があるから緊張は解けないな。
「おう。一列目なんてツイてないな。」
雄二がニヤニヤしながらからかう。
「ホントだよ…もう少し早く来てたら良かった。」
「いや、普段から早く来いよ…」
高虎が呆れたように突っ込む。容赦なく突っ込んだり出来るのはコイツだけだな。
「まあそれは良いとして、さっさと帰るぞ。明久も家で姉貴が待ってんだろ?」
「おっと、そうだった。それじゃあまた後でね。」
鞄に荷物を詰め込んで明久が退出していく。
「良し、俺らも帰るとするか。吉継、高虎。」
「だな。」
二人も帰る用意を始める。ちなみに俺は既に終えているので何時でも帰れる状態だ。
「そういや吉継、真夏なのにマスクしてるんだな。暑く無いのか?」
「偶に外してるぞ。というか登下校中は外ししている。」
流石にプールに入るときは外さなければならんな…まあ常識か。