バカと無双と下剋上   作:走り高跳び

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番外編なので読み飛ばして頂いても構いません。
次回からは夏休み編となります。


期末試験9

「失礼します。」

そう言って学園長室に入ってきたのは、古典の教師でかつ二年Fクラスの担任である明智光秀。温和な性格で生徒からも慕われている。

「明智先生かい、どうしたんだね?」

イスに座って書類とにらめっこをしているのは学園長の藤堂カオル。明久や雄二からはババア呼ばわりされているが、この学校を作った中々のやり手だ。

「少し相談したいことが御座います。」

「相談?アンタがかい?」

「社宅の一室を開けてもらえないでしょうか。」

「社宅を?何だ、物置にでも使うのかね。」

「いえ…学園長、木下秀吉君はご存知でしょうか。」

「ああ、知ってるよ。Fクラスの。アイツがどうかしたのかい?」

「Aクラス所属の木下優子さん、それに加えてAクラス代表の霧島翔子さんによって食事に洗剤を入れられて現在入院中です。」

今日分かったことである、まだ西村から何も報告が無く知らなかったのか、光秀の言葉に目を見開いて驚き、直ぐに呆れ返った表情となる。

「何なのさ…清涼祭では不良を呼び込むし、強化合宿では下らない事をして学年全体を巻き込んだ戦争を起こすし…アタシの頭が足りないのかね。」

「それは何とも。話を続けます。それで、木下君自体は後二日したら退院するのですが、その後再び姉の木下さんと共に過ごさせるのは危険過ぎます。そこで…」

「木下に家を借りる力も無いから社宅を開けて住まわせよう、というんだね。」

「はい。」

藤堂は目を閉じて少し考えた後、結論を出した。

「却下。」

「理由をお聞かせ下さい。」

「今回の事件は聞いた限りでは家庭の問題。アタシ達がどうこうして良いような問題では無いよ。」

「この事件の非は間違いなく向こうにあります。しかし、今回の事件を起こしてしまった元凶は我々。何かあれば矢面に立たされるのは学園長です。そのためにも木下君を保護という名目で社宅に入れるのは賢明な判断かと。」

「それをしたら間違いなく霧島達が文句を言いにくるよ。家族と離れ離れにするなんて、みたいに詭弁を振りかざすのが目に見えているし、アタシは面倒だし。」

「ならば…社宅に木下君を迎える代わり、彼女達を不問にすると言うのは如何でしょう。」

家で 暴力やいじめを受けている生徒を守る、その上でそのいじめに関しては家庭の事情ゆえに関与しない。ということとなる。不問にするなら優子、翔子共に不満を述べることは無いだろうという光秀の考えだった。

「それでアイツらは納得するかね?」

「ほぼ間違いなく。姉の木下さんは木下君の事を快く思っていません。姉弟の仲を修復させるためにも、かつこれ以上木下君が悲惨な目に遭わない為にもこの処置は妥当かと。」

「…分かった。西村先生にもそう伝えておくよ。社宅の手配も今日中にしておくよ。」

「ありがとうございます。」

深く一礼し、光秀が退出する。それと入れ代わりで西村が入ってきて玉の持ってきた音声を学園長に提出、優子と翔子が関与していたことを確信した藤堂は先程光秀の言っていた事を西村に伝え、事は一段落した。

その後、この事件を原動力にFクラスは更なる高みに上り詰めていく事になる。


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