教室を出てから五分ほど経った時、高虎が帰ってきた。
「おう、お疲れ。大丈夫だったか?」
「問題無い、何もされなかったぞ。」
「そうか、それで開戦時刻は?」
「午後二時とのことだ。」
あと5時間位か。午前中は通常授業になるのだな。
「よし、全員開戦までに準備を整えておけ。午前中は普通に授業だ。」
午前中は何事もなく終わった。
「明久、ムッツリーニ、秀吉、姫路、島田、吉継、高虎、明智、一緒に屋上まで来てくれるか?」
「何をするんですか?」
「作戦会議だ。」
それだけ言うと、足早に雄二は屋上へと向かっていった。
屋上に着き、皆が弁当や買ってきたパン等を食べ始める。・・・ただ一人を除いて。
「吉井、そちはなぜ塩と水しか持ってきておらぬのじゃ?」
「あ、明智さん・・・ちょっとお金が無くてね。」
「明智、放っとけ。ゲームに金を使って食費にまで手を出すバカだ。」
「左様か。ならいいのじゃ。それより、明智では父上と同じじゃ!玉と呼んで欲しいのじゃ!」
下の名前か・・・明智先生に変な誤解をされなきゃ良いが。
「分かった、これからはそう呼ばせて貰う。さて、試召戦争についてだが・・・」
「少し良いか?」
秀吉が手を上げる。
「ん、何だ?」
「何故AクラスでもEクラスでもなくDクラスなのじゃ?」
「いい質問だな。まず、何故いきなりAクラスに仕掛けないのかだが・・・簡単だ。今のままでは絶対に負ける。」
だろうな。姫路や俺、高虎の点数がほとんど無く、明久を除いて召喚獣の操作をほとんどしていない。今のまま突っ込んでも玉砕に等しい。
「つまりは、俺達に召喚獣の操作に慣れて欲しいと言った所か。」
「高虎の言う通りだ。」
「ても経験を積むだけなら木下の言う通り、Eクラスでも良かったんじゃないの?」
「いや、姫路に問題が無く、吉継に高虎がいる今、Eクラスは敵ではない。それならランクを一つ上げたDクラスに攻め込もうと思ったんだ。」
「つまり、Dクラスには簡単には勝てない、ってこと?」
明久の言うことは間違っては居ないが…雄二からすれば倒しがいがある、って感じじゃないか?
「そうだ。お前達が上手く立ち回らないと勝てないだろう。今から編成を発表するぞ。」
編成と言ってもDクラスとぶつかるのは渡り廊下の一ヶ所のみ。姫路がテストを受け終わるまでどれだけ持ちこたえられるかにかかっている。
「まず、姫路に高虎に吉継。お前達は開戦してすぐ
テストを受け始めろ。」
「雄二、それなんだが…俺は振り分け試験の時、化学と数学は本気で受けたからその二つのみ300点を越えている。」
「マジか!それなら吉継は前線に出ろ。化学教師と数学教師を手配しておく。」
「頼んだぞ。」
「ああ。次に、秀吉。お前は吉継と一緒に先行部隊十五人を率いて戦え。指揮は吉継と秀吉で分担しろ。後ろに明久や島田の中堅部隊十五人を配置する。こっちは指揮権を明久に全委任する。」
「ぼ、僕に?」
「お前なら何だかんだで上手くやってくれると思っているんだが…」
まあ、他の奴らに任せたら不味いのは目に見えているしな。
「分かったよ・・・でもしくじっても文句は言わないでよ!」
「もししくじったら・・・両手の爪を剥がす。」
「コワッ!?」
それくらい責任重大だと雄二は伝えたかったのだろう。逆効果になっている気もするがな。
「後の事は教室で言う。とりあえずさっさと昼飯食おうぜ!」
「そうだな。目の前に饅頭があるのに食べない訳には行かないよな!」
「高虎、ここは惣菜パンの流れでは無いか?」
「どんな流れだ。」
と言った感じで平和に昼休みも過ぎて行き・・・
試験召喚戦争の開戦時刻まであと五分となった。
「吉継よ、お主は化学のフィールドにしか居ないのであったな?」
「ああ、総合科目や物理なんかで戦っても点数が無いからな。その分、何人か俺がいない方のフィールドに回してくれ。」
「了解じゃ。」
俺は秀吉と最終調整をしている。既にこちらには化学の布施先生がいる。俺は常にこの先生のそばで戦えば良い。
キーンコーンカーンコーン・・・
チャイムが鳴った。Dクラスの生徒達がこちらに向かって来ている。
相手が連れている教師は・・・高橋先生か。秀吉側のフィールドは総合科目になるのだな。 俺の方にも向かって来ている。準備をしなければな。
「Dクラス鈴木二郎、Fクラスに召喚獣勝負を申し込みます!布施先生、召喚許可を!」
「承認します。」
化学のフィールドが展開される。いきなりだが、行ってみるか。
「サモン!」
「Fクラス大谷が受けます。サモン!」
互いの召喚獣が現れ、点数が表示される。
『 Dクラス 鈴木一郎
化学 87点 』
VS
『 Fクラス 大谷吉継
化学 322点 』
俺の召喚獣の見た目は、白い頭巾に白い装束、武器は仕込采(中に刀が仕込んである)。
「え?大谷?」
相手がキョトンとしている。今が好機だ!
「悪いが、一気に決める!」
持っている仕込采で頭部を叩く。相手の召喚獣は消えた。
と同時に近くのロッカーから西村教諭が出てきて、鈴木を抱える。
「戦死者は補習だ!」
「い、嫌だ!鬼の補習は嫌だっ!」
「安心しろ、終わった時には趣味は勉強、尊敬する人は二宮金次郎と言った模範的な生徒にしてやろう!」
「そ、それはせんの・・・」
悲鳴を上げながら鈴木が連れ去られていく。
「・・・死にたくなければ戦うのじゃ!サモン!」
「俺達だって死にたくないんだよっ!サモン!」
各地で戦いの火蓋が切られた。俺は果たして生き残れるのだろうか・・・