次回は完全に戦闘シーンとなると思うので、頑張って急いで投稿出来るようにします。
「まず、お前達が俺達に味方してくれた事に感謝する。」
「なに、当たり前の事だ。」
形式的に礼を述べる雄二に根本がまたしても形式的に応える。
「それじゃあ作戦会議に入るか。まず、Aクラスの本陣は二階の臨時の職員室。俺達の本陣は四階の生徒指導室だ。高地の有利があって人数も有利。普通に戦えば負けないだろう。だが…」
「人数は私達が不利ね。それに私達Eクラスはまだ試召戦争は経験してないし、役に立てるか分からないわ。」
「…だが、Eクラスには前線に出てもらう。さっさとこの戦いは終わらせたい。」
本陣の守備を任せると言うかと思ったが、前線に出すか。此方にしても自分達の損害を抑えられるし、Eクラスも召喚獣を操る技術を学べるから悪い話では無い。
「じゃあ、本格的に作戦に移る。まず、あいつらがこの教室に辿り着くには東の階段を通るか西の階段を通るかの二つの選択肢がある。」
「普通に考えれば高所の有利を生かして相手を倒していく…だよな。」
平賀の言っていることは間違っていないし、雄二の作戦ももちろん階段を使う。少し違うのは、三階の存在を雄二は生かしていることだ。
「とりあえず相手を四階の階段近くまで釣り出す。これは戦闘中に少しずつ上に退いていけば大丈夫だし、向こうが突撃してくるかもしれん。で、相手は補充試験を受ける為には四階から二階まで降りなければならない。そこで、三階の部屋にDクラスに潜んでもらう。恐らく点数消費が激しいだろうし簡単に討ち取れるだろう。」
「成る程な…俺達は労せずして活躍できるな。」
「で、大切なのはAクラスと正面から戦う奴らだ。それは…」
「私と根本君の出番ね。」
小山が笑みを浮かべて発言する。
「ああ。あとEクラスも戦えよ。そして、これが重要だ。」
雄二が一呼吸置いて話し始める。
「絶対にタイマンに持ち込まれるな。少なくとも三人一組になって戦わないと各個撃破される。」
こちらの戦力でまともにぶつかってやりあえるのは姫路に俺に高虎、それにムッツリーニの保健体育位。後はBクラスの高得点者が数人といったところだ。
「なら、どこで迎え撃つの?階段で大人数の戦いは難しいし。」
「階段を登り終わった所が一番だろう。後ろが階段だから向こうは交代に手間取る。」
ふむ、まあ上手く行きそうだな。一対多の状況をAクラス相手に持ち込めるかは分からないが…
「とりあえず配置は、三階にDクラス、四階東側階段にCクラスとEクラス、西側にBクラスと俺達だ。」
「雄二、仮にAクラスが四階に向かわずに三階の制圧に向かったらどうする?」
「更に後ろから迎撃だ。翔子の事だ、そこまで読んでくるだろうからあえて三階で留まることは無いだろうよ。」
俺の疑問にも雄二は自信をもって答えた。だが、まだ不安は尽きない。
「それなら、仮にAクラスが攻め登って来なかったらどうする。あいつらは俺達への恨みにとらわれているだけで阿呆ではない。ホイホイついてくることは考えにくいが…」
「…なら、吉継ならどうする?対案の用意があるなら聞くぞ。」
「あえて戦力を分散させよう。恐らくそうすると相手は各個撃破を狙って動き出すはずだ。だが、霧島含め近衛部隊まで動くとは考えにくい。手薄になった本陣を突けば終わりだ。それでも動かなければ…力攻めだな。」
一番悪手だが、これだけ戦力差があれば確実に勝てる。
「…とりあえず、始まったら十人程度Fクラスから東側に陽動部隊を出す。そこにAクラスが食い付いたら西側からBクラスと俺達が攻め込む。それと同時に東側からもCクラスとEクラスも攻め込んでくれ。」
最終的に俺と雄二の案を混ぜた物になったか。
…そういえば、高虎は一言も話していないな。
「高虎は何か無いのか?吉継が提案してくれているし、話は聞くぞ?」
「初めから力攻めだ。変に作戦を出すより正攻法で行く方が手っ取り早い。」
考えは俺とほとんど同じか…
「だから俺は吉継の策を支持する。思うところは同じ様だしな。」
「そうか、なら良い。…それじゃあ会議もここまでだ!総員配置につけ!あと十分で戦争が始まる!」
~時間経過~
戦争が始まって十分が経過した。須川達の陽動部隊はどうだろうか…っと、伝令が来たな。
「Aクラスおよそ三十人がやって来たとの事!現在は少しずつ退いて三階まで上がったと言っています!」
「良し、掛かったな!坂本、本陣に突撃だ!お前達、行くぞ!」
雄二に借りを返してやると息巻いていた根本がクラスメイトを連れて階段を降りる。
「Bクラスに遅れるな!俺達も行くぞ!」
『おうっ!』
「お、おうっ!」
姫路、少しタイミングが遅れたな。
まあ良い。俺達もAクラスに攻め込むか…
階段を降りて本陣に入る。すでに中ではBクラスとAクラスが白兵戦を繰り広げていた。だが…
「…霧島と木下、久保は動いていないな。高虎、姫路、仕掛けてみるか?」
「面白い。行ってみるか。…フィールドは日本史か。俺達の得意教科、絶対に負けん。」
そう呟き、高虎が奴らの目の前まで進み、言い放つ。
「Fクラスの藤堂がAクラス、霧島に召喚獣勝負を申し込む、サモン!」
「アタシ達も行くわよ、久保君!」
「分かってるよ、サモン!」
「姫路、行くぞ!サモン!」
「はいっ、サモン!」
六人の召喚獣が魔方陣から出てきて、点数が表示される。
『 Fクラス 姫路瑞希
日本史 355点
Fクラス 藤堂高虎
日本史 502点
Fクラス 大谷吉継
日本史 517点 』
VS
『 Aクラス 霧島翔子
日本史 368点
Aクラス 木下優子
日本史 378点
Aクラス 久保利光
日本史 375点 』
点数だけ見ると、姫路とAクラスの奴らは余り変わりが無い。とすれば...
「高虎は木下に、姫路は霧島に当たってくれ。久保には俺が行く。」
「了解だ。」
短いやり取りをし、久保と相対する。
...Aクラスの全員に言えるが、今までの覇気が無い気がする。自分達に味方が居なかった事がショックだったのだろうか。
「ねえ、大谷君。」
「...何だ?」
「僕は、Aクラスの設備を取り戻す為にこうやって戦ってる。」
「...」
「でも、こうして誰も僕達の味方をしてくれない。少しの間、考えてみたんだ。」
「...言ってみろ。」
「僕達のしてる事って、ただ単に他の人に迷惑をかけてるだけのものなんじゃないか、ってね。」
何か様子、というか雰囲気が変わったな。俺達に対する敵意が無い様に見える。
「...何故、その結論に至った?」
「仮に僕達のしている事が正しいのなら、賛同者は居たはず。でも、誰も賛意を表すクラスは無かった。つまり、僕達のしていることは間違いなんじゃと思ってね。」
「それについては俺からは何も言えん。自分で結論を出して、自分の考えに基づいて動け。」
ここで間違っていると言うのは簡単だ。だがそれを言ってしまうと久保は自分で善し悪しを考える事を放棄するかも知れない。それに、あいつもAクラス、阿呆では無い。少し考えれば気付く事だろう。
「それじゃあ、戦うか...って、何故武器を放り投げる?」
久保は自分の召喚獣の武器である鎖鎌を投げ捨て、フィールドの外に出した。
「言っただろう、僕たちは間違っているのかも、と。無駄に戦うのを避ける為にも、少し頭を冷やす為にも、ここで戦いたくはない。君が討ち取ってくれ。補習中にゆっくり考えるよ。」
「そうか。それなら...」
仕込采から刃を出し、首もとを斬る。点数はすぐに0点になった。
「久保、戦死者は補習だ。」
「...はい。」
久保が連行されていく。
「...アイツなら気付くだろう。心配要らないか。それよりも姫路達だな。」
思考を切り替え、俺は霧島相手に苦戦する姫路の助太刀に向かった。