少し雑にし過ぎたかな…?
「自首、か…で、誰だったんだ?」
落ち着いた様子で高虎が尋ねる。
「それは話せぬ、と父上が言っていたのじゃ。それと…」
そこで玉が言葉を詰まらせる。が、直ぐに再び話し始める。
「高虎と吉継は生徒指導室に来て欲しい、との事じゃ。」
「俺と高虎が…?ああ、そうか。」
被害に遭ったのは俺達の部屋だったな。
「分かった。高虎、行くぞ。」
「ああ。」
立ち上がり、荷物を軽くまとめて部屋を出た。
~移動中~
「入るぞ。」
「おう。」
中に入ると、西村教諭に明智先生、雄二に明久、そしてオレンジ色の髪をツインテールにした少女が一人居た。
「明久、この女子が…」
「うん。Dクラスの清水さん。この子が監視カメラを仕掛けた犯人だよ。」
当の清水は俯いて表情が見えない。まあそれは余り関係無い。自首したのなら恐らく全てを話してくれるはずだ。
「…とりあえず、事情を話して貰えるでしょうか。」
落ち着いた声で明智先生が話しかける。
「…」
それでも彼女は答えない。俯いたまま震えている。
「それでは少し聞き方を変えましょう。貴女の意思でやったのですか?それとも、誰かに頼まれたのですか?」
そう聞くと、ゆっくりとだが話し始めた。
「…頼まれました。」
「っ!誰にだ!」
「ひっ…」
「西村先生、落ち着いて下さい…」
「あ、ああ。申し訳ありません。」
西村教諭、明智先生に敬語なんだな。そんなことは別に良いとして、だ。
「誰に頼まれたんだ?」
「…Aクラスの霧島さんと、木下さんです…」
…まさか、と一瞬思った。だが、すぐに納得は出来た。
確か工藤が、
「優子と代表、それに久保君は最近いつも三人で卓袱台を囲んでクスクス笑ってるけど…」
と言っていたな。あれは別に手紙を書いていたのではなく、これの打ち合わせだったのか…?
とにかく犯人が分かった以上、迅速に動いた方が良いだろう。
「明智先生、西村教諭、早速木下と霧島に呼び出しを…」
「吉継、まだ早い。」
横から止めたのは雄二だった。
「…何故だ?清水から証言は取れている。」
「翔子と木下姉の事だ。アリバイや証拠隠滅位の事はするだろ。最悪清水を切り捨てる事だってするぞ。」
む、すぐに反論ができんな。
「なら、どうするのさ?」
「あと二日泳がせる。そして、決定的な証拠を掴んでやろうじゃないか。明智先生、鉄人、強力してくれよ。」
「分かりました。」
「西村先生と言え、全く…まあ良い。俺も出来るだけの事はやろう。」
この二人を中心に、教師全体が動いてくれれば良いが…布施教諭とかは面倒くさがるだろうな。
あと、Aクラス内にも協力者が居れば楽なんだが…
「…工藤か。」
「?吉継、どうした?」
左から高虎が聞いてくる。
「いや、少し考え事をしていただけだ。Aクラス内に協力者を作ろうとな。」
「協力者だと?翔子や木下姉が動くとは思えんし、久保も恐らく動かんだろう。後は…工藤か?あいつも難しいと思うぞ。」
「その工藤を動かす。雄二、俺に工藤の説得をさせてくれないか?」
ある意味賭けだがな。この短期間に心変わりしているかも知れない。しかもどうやって工藤と接触するかも考えていない。取り敢えず工藤が一人の時を狙って話し掛けるしか…
「…ムッツリーニに、工藤が一人になったら吉継の所に来いと話すよう言っておこう。」
「感謝する。」
これで会うことは出来るな。後は俺がどうにか説得しなければな。
「高虎に吉継、もう戻っても大丈夫だ。急に呼び出して済まなかったな。」
「構わん。また何かあったら言ってくれ。俺も吉継も出来るだけの事はやってやる。」
「ああ。」
取り敢えず戻ったら姫路達に報告しておくか…