やっと合宿一日目が終わりました。
時間は経過し、晩飯の時間になった。
「…霧島や木下が俺達の部屋に突っ込んできたと言うことか。」
「姉上…」
「ですが、隠しカメラは仕掛けられていたんですね。」
「だからって、アキや坂本を真っ先に疑わなくても…」
雄二や明久には説明を済ませている。だがムッツリーニと秀吉、姫路に島田にはまだしていなかったので、説明した。
玉は…少し遠い所に居るな。後で話そう。
「正直、翔子や木下に何を言われても俺は余り堪えない。だが、あいつらは女子の中でも発言力が強い。学校中の女子を敵に回してこれからの学校で過ごせるとは思えん。」
「てことは、早く誤解を解かないといけないんだよね?
」
「おお。お前にしては頭の回転が速いな。」
「いや~それほどでも。」
明久、別に褒めてはいないのだぞ。
「で、誤解を解くに当たってだ。高虎と吉継の二人を中心に調べて欲しい。」
「俺と吉継が?何でだ?」
「俺は鉄人や明智先生と連携して別行動だ。明久は恐らく使い物にならんだろうしな。」
「ちょっと、酷いよ雄二!」
「ムッツリーニはAクラスの情報を集めてくれ。何かカギがあるかも知れないからな。姫路に島田、秀吉は女子との会話で掴めるものがあったら掴め。俺達には出来ない任務だ。」
「はいっ!」
「ワシは一応男なのじゃが…」
元気出せよ、秀吉。
まあ今日は風呂に入って寝るだけだし、調査は明日以降になりそうだな。
~時間経過~
晩飯を食い終わり、部屋に戻ろうとしたわけだが…
「坂本君と吉井君を呼んで来なさい。」
何で部屋の前に木下が居るのだろうか。高虎は飲み物を買いに行くからと遅れて来るだろうし、雄二と明久は西村教諭に呼ばれて女子の事情聴取の内容を聞いているはず。明久に聞かせてもどうにもならん気もするが、そこは考えないようにしよう。
「…部屋に戻らせて貰うぞ。」
そう言ってドアノブに伸ばした腕を木下が掴んだ。
「まだアタシの用事が終わってないわ。」
「雄二と明久なら俺は知らん。」
「そう言ったら逃れられると思ってるの?どうせ部屋に籠ってるんでしょ?」
知らんと言っているのに…つくづく人の話を聞かない奴だな。
「人の話を聞く気はあるのか?あの二人なら西村教諭と話してるはずだ。あと、呼んでどうするつもりだ?」
「自白させるのよ。俺達が盗撮をしましたって。」
「…あの二人がそのような言葉を吐くと思っているのか?」
「吐かせるわ。何としても。」
やっていない罪を認める何て事は拷問でもされない限りしないだろう。それは霧島や木下もわかっている。ならば、奴らがやることも自然と分かる。
「そもそも、俺達はアリバイを提示したはず。それが信じられないのか?」
「ええ。アンタ達の言葉何て信じるに値しないわ。」
「その信じられない相手から自白の言葉を頂いても、その言葉も信じるに値しないだろう。違うか?」
「…」
木下が言葉を詰まらせる。詭弁だが、相手が頭に血が昇っている時には効果が出るな。
「早く手を話せ。教師を呼ぶぞ。」
「…」
こちらを睨みつつ手を離し、無言で去っていった。
まあ別に、あいつの言い分を無視して部屋に入るのでも良かったか。合宿のしおりにも異性の部屋に入ってはいけないみたいに書いていたし、表向きは優等生のあいつだ。あからさまに規則を破る事はしないだろう。
部屋に入って入浴の時間まで待っていると、高虎が炭酸飲料を片手に戻ってきた。
「遅くなったな。」
「いや、別に良い。それより、木下がこの部屋の前に来ていたぞ。」
「あいつの思考回路は理解できんな…で、何と言っていたんだ?」
「雄二と明久を連行して自白を強要する、って言っていたはずだ。」
「…あいつ、学年でトップクラスの成績だよな。何故ここまで堕ちてしまったんだろうな…」
高虎が少し残念そうに呟いた。一年生の頃は高虎は霧島や木下を高く評価していた。『何でも器用にこなしているあの二人を、いつか追い抜いてやる』だったかな。
話を戻そう。木下や霧島が堕ちた原因は、十中八九俺達だ。設備交換で一気に劣悪な環境に放り込まれた訳だからな。ストレスも溜まるし、俺達への憎悪も掻き立てられただろう。
だが、同情はしない。やって良いことと悪いことの区別はしっかりとすべきだ。
「…早く風呂に入るぞ、高虎。」
「そうだな。もう俺達の入浴時間だ。」
明日から色々と大変だ。今日の疲れは今日の内に取らないとな。