「カメラだと?」
「そうよ!」
小山がポケットからカメラを取りだし、握り潰した。何故握り潰したのかは聞かないでおこう。
「…雄二はどこ?」
目からハイライトが消えた霧島が高虎に詰め寄る。
「アイツは鉄人の所だ。少し用事があってな。」
「…用事?」
(吉継、脅迫状の事、話して良いか?)
(ああ。)
「明久の下に脅迫状が届いてな。弱味を握っているみたいな内容だった。」
「…」
霧島の表情は変わらなかったが、木下が少し眉をひそめた。…何か知っているのか?ここで問い詰めるのも良いが、暫く様子を見た方が良いか。
その前に、話を戻すか。
「で、何故俺達をカメラを仕掛けた犯人だと考えたのだ?」
「こんなことをするのはアンタ達しか居ないじゃない。」
木下が俺を睨んで、低い声で言う。失礼な奴だな、明久や雄二はともかく俺や高虎はそんなことしないぞ。
それに、しそうな二人は西村教諭の所に行っている。
秀吉とムッツリーニは…分からん。
「証拠が余りにも乏しいな。俺達がやったと言う確たる証拠は無いのか?それに、雄二達は解散後すぐに鉄人の所に向かった。何時カメラを仕掛ける時間があるんだ?」
「黙りなさい!みんな、この二人を捕まえるわよ!」
木下、頼むから聞く耳を持ってくれ…
「ちっ、吉継!雄二達が来るまで耐えるぞ!」
高虎が部屋の端に向かう。俺は高虎と反対の壁に背中を付ける。
「覚悟しなさい!」
縄を持った女子が三方向から襲いかかってきた。まず逃げ切ることは出来ない。なので…しゃがんだ。
「うわっ!?」
正面から突っ込んできた女子は壁に頭をぶつけ、左右から挟み込もうとした二人は正面衝突して気を失った。
高虎は上手く縄を避け、逆に女子を縛りあげている。因みに小山も縛られて部屋の隅に転がっている。
これ、雄二達に見られたらどう言い訳しようか…
と、少しぼんやりしていると、右側から殺気が感じ取れた。
「…覚悟。」
霧島がスタンガンを持って突っ込んできたのだ。
「なっ…!?」
どうにか避ける事ができたが、危なかった。少しでも触れたら気を失ってただろう。と言うか、殺る気満々じゃないか。
「…霧島、あんた、雄二に嫌われるぞ。」
凶器を持ち出したのを見て、高虎が呆れた声で霧島に話し掛ける。
「…雄二なら、分かってくれる。問題ない。」
何故、友人を襲った人間を信じると言った思考になるのだろうか。
清涼祭の一件で好感度はかなりダウンしている。これを雄二が見たら、どう思うのか。
「それに、アンタ達が悪いんじゃない。何があっても自業自得よ。」
横から木下が付け加える。
「…高虎、西村教諭を呼んでくれ。話にならない。」
「俺もそれを考えてた。雄二を迎えに行くついでに行ってくる。」
そう一言いって高虎は部屋を出ていった。
「ま、待ちなさい!何も先生を呼ぶこと無いじゃない!」
木下が部屋を出て行こうとした。
「どこに行くつもりだ?西村教諭に平等に話を聞いて貰おうと考えているのだぞ。」
「くっ…!」
上目遣いで俺を睨み付けてくる。流石にここでボロは出さないか…
数分後、西村教諭に雄二、明久を連れてきた高虎が戻ってきた。
西村教諭は俺達と霧島、木下から話を聞いた後、俺達に非はないと判断したらしく、女子達を抱えて補習室に連行して行った。
晩飯前からこれか…今日は、もう何も無いと良いのだが。