次回からは強化合宿となります。
「それじゃあ、行ってくる。」
「…四人とも、頑張れ。」
試合開始まであと三十分。俺に高虎、雄二に明久が店から抜ける。
「それでは、明智先生と西村教諭、お願いします。」
「はい、分かりました。」
「うむ。」
俺達の試合がある辺りに霧島が雇った不良がこの教室に来る手はずになっている。
奴らに気付かれるとまずいので、二人とも客に扮しているのだが…西村教諭、全然馴染んでない。
「鉄人、目立つな…」
「高虎、それは言うな。」
来なかったら誰も何も無くて良かった、となる訳だし、別に何も気にする必要は無い。
さて、色々考えている間に会場に到着した様だ。うむ、広いな。軽く1000人は入るスタジアムじゃないか。
「吉継、あれ…」
「ん?」
高虎が後ろを指差す。そこには…
「高虎、吉継!」
「頑張って下さいねー!」
「「長政様にお市様!」」
まさか来ていたとは、驚きだ。
いやいや、それは関係ない。これからの戦いに集中せねばな。
「吉継、決勝戦の教科は何だ?」
「確か、世界史のはずだ。」
世界史は苦手では無い。日本史の様に得意でも無いがな。
「それでは、決勝戦を始めます。教科は世界史です!」
世界史担当の田中教諭がフィールドを展開する。
「「「「サモン!」」」」
『 Fクラス 藤堂高虎
世界史 366点
Fクラス 大谷吉継
世界史 383点 』
VS
『 Fクラス 坂本雄二
世界史 223点
Fクラス 吉井明久
世界史 128点 』
雄二も明久もそこそこの点数を出している。簡単には勝たせてくれないだろう。
雄二の召喚獣は暴走族の特効服にメリケンサック。明久は改造学ランに木刀か…明久は操作技術に気をつければ良し雄二は一撃の威力が強そうだな。
「高虎、明久を頼む。」
「了解だ。」
高虎が明久に向かう。俺の相手は雄二だな。
「行くぞ。」
仕込んだ刀を出し、斬りかかる。が、メリケンサックで防がれる。
「甘い!それで俺を倒せると思ってんのか!」
もう片方の腕で殴りかかって来るが、間一髪避ける事ができた。…と思ったらすぐさま次の攻撃が繰り出される。身軽な装備故に速い!
点数には十分な余裕がある。すぐに決着を付ける必要は無い。
「ぐはあっ!?」
隣から悲鳴が上がる。声の主は明久。どうしたのだろう。
『 Fクラス 藤堂高虎
世界史 302点 』
VS
『 Fクラス 吉井明久
世界史 0点 』
戦死したらしい。…そうか、明久の召喚獣はフィードバックがついている。高虎の攻撃を受けて痛みが帰って来たのか。
「吉継、すぐに向かう!」
高虎が雄二の背後を取ろうとする。
「やらせねえぞ。」
雄二はすぐに後退し、壁に背を付けた。あくまで正面から来い、と言う事か。なら、そうするしかないな。
俺は首筋を、高虎は太ももを狙って斬りかかる。
雄二は良く反応し、俺の攻撃を防いだ。しかし太ももを防ぐ事ができず、深い傷を負った。そして雄二の召喚獣は足をやられたために動けない。
「これで終わりだ。」
「ちっ…!」
仕込み刀を喉に突き立てる。瞬く間に雄二の召喚獣の点数は0になり、消滅した。
「そこまで!藤堂・大谷ペアの勝利です!」
フィールドが消え、場内から歓声が上がった。これで学園長の依頼は達成できた。いや、一応準決勝が終わった時点で達成しているのだがな。
「それじゃあ俺と明久は店に戻る。お前達もババアと話したらすぐに戻って来いよ。」
そう言って雄二は明久を連れて帰っていく。悔しさが滲み出ているのが中々に面白い。
「さて、さっさと表彰式を終えるとしよう。」
「そうだな。」
………
その後は特に何も無く、清涼祭は終わりを告げた。
不良は教室に来たらしいが、西村教諭と明智先生が撃退し、連行して行ったとのことだ。
そいつらの口からも霧島と木下の名前が出て、二人は学園長室に呼び出された。処分は厳重注意。成績優秀な彼女らを厳罰には処せないらしいな。
店も元を取ることができたし、良い終わり方だったと思う。クラス内の打ち上げの後、長政様とお市様の家で晩飯をご馳走になり、長い二日間は終わりを告げるのだった。
次の大きい行事は…強化合宿か。