バカと無双と下剋上   作:走り高跳び

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前回の続きで教室に入る所までです。


新学期

 春休みを終えて、今日から高校二年生になる。

家を出てしばらく歩くと、見慣れた背中が見える。あれは…

「…高虎か」

春休みには顔を合わせなかったから、振り分け試験の前日以来だな。

少し早足になって高虎の近くまで行く。

「おお、吉継か。」

「この前は残念だったな。」

「ああ、本当にな。大事なときに風邪をひくとはついてない。」

 少し悔しそうな顔をしている。

「だが、二年生からは試召戦争がある。最底辺のFクラスでどこまで上がれるか試してみるさ。」

「ああ、そうだな。…誰だ?」

不意に後ろから人の気配があった。

 「よう、久しぶりだな。」

「おお、雄二か。」

俺と高虎の悪友の雄二。こいつはFクラス代表になると言っていたが、上手く出来たのだろうか?

「おはよう雄二。結局テストは上手く行ったのか?」

「多分な。俺と似たような奴が他に居たなら無理かもだが。」

「おいお前ら、何言って…」

今のところ俺と雄二しか知らない事だ。ばらすのは校門に着いてからだな。

 「俺と吉継が言ってる事か?そろそろ分かるさ。」

こんな他愛ない話をしているうちに学校まで到着した。

「・・・鉄人か。」

「西村先生とよべ、藤堂。」

  校門前には鉄人こと西村宗一が立っていた。脇に大きな箱を抱えている。

「おはようございます、西村先生。」

「おお、大谷か。横に居るのは坂本だな。」

「ああ、そうだ。」

他愛の無い挨拶をした後、鉄人が箱の中から三つの封筒を取り出す。

「三人とも受け取れ。中にお前たちのクラスが書かれている。」

「なあ、何でこんなややこしい事をするんだ?普通に掲示板に張り出すだけでも良いだろ。」

雄二が素朴な疑問を口に出す。

「他の学校とは違うという感じを出したいからだそうだ。」

「ほう・・・さて、上手く行ったか・・・?」

俺たちのクラスはこうだった。

『坂本雄二 Fクラス代表』

『大谷吉継 Fクラス』

『藤堂高虎 Fクラス』

 「俺は休んでたから仕方ないな・・・ん?お前達もか!?」

「ああ、そうだ。俺も吉継もFクラスだ。」

 高虎は俺と雄二がFクラスな事に驚いている。まあ、無理も無いが。 

「藤堂は休みだから仕方ないとしてだな・・・坂本、大谷、お前達は何のつもりだ?」

「俺はFクラスでやりたい事がある。そのために点数を調整した。」

「俺は雄二の話の流れを読み取って、それに乗ったまでです。」

 「そうか・・・まあいい、一年間悔いの無いようにしろよ。」

「「「了解!」」」

 クラスも分かり、俺達は揃って旧校舎の方に向かうのだった。  

「ところで雄二、お前がやりたい事って何なんだ?」

「そうか、高虎には言っていなかったな。・・・下剋上だ!」

高虎の問に、雄二が高らかに言う。

「下剋上?」

「ああ。この学校には試験召喚システムがある。これを使って最底辺から上まで行けるか試してみたいんだ。」

 雄二の説明を聞いているときの高虎はずっと驚いたままだったが、一通り聞いた後、高虎が雄二に、

「目標は?」

と聞いた。

「Aクラスだ。」

それに答える雄二。

「・・・分かった、協力しよう。俺もAクラスの豪華な設備が欲しいしな。」

「そうだな。さて、Fクラスはどのような教室だろうか。」

喋りながら教室まであるいて、俺がガラッと扉を開けるとそこは・・・

廃墟のような空間だった。

「・・・俺、振り分け試験の追試を受けさせてもらえるよう、掛け合ってくる。」

「それは出来ない流れだ。」

いきなり不安ばかりの一年の幕開けだ。


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