書くのがむずい…
厨房班、接客班、準備班を決めた次の日、準備班と共にテーブルの手配をしていた時、放送が流れた。
『Fクラス、藤堂高虎君、大谷吉継君、学園長室に来てください。』
この声は明智先生だ。一体何があったんだろうか。
「雄二、少し学園長室に行ってくる。」
「ああ、行ってこい。」
代表の許可を得られたし、行きますか。
~時間経過~
「「失礼しまーす」」
学園長室に入る。今居るのは…学園長の藤堂カヲルと、明智先生か。
「おお、アンタ達が藤堂と大谷だね。」
「はい。」
白髪が多く混じっているせいか、少し老けて見える。
「何か失礼なこと考えなかったかい?」
「いえ、何も。」
「ならいいよ。さっさと話を終わらせようじゃないか。」
この学園長、話をする気があるんだろうか。
「一応聞いておくけど、清涼祭で召喚獣を使ったトーナメントがあるのは知ってるかい?」
「ん・・・吉継、知ってるか?」
「ああ。二、三年生合同の大会だな。」
もっとも、Fクラスからは誰も出る予定が無い。店で忙しいから抜ける奴が出て欲しくない、と雄二が言っていたな。
「大谷、その大会の優勝商品は何かわかるかい?」
「確か・・・腕輪だったはずですが。」
教師がつけてる腕輪と同じ型だ、と説明があった。「今日アンタ達をここに呼び寄せたのは、この景品をアンタ達に回収して欲しいからさ。」
「ん?でも、何故俺や吉継なんですか?Aクラスの連中の方が確実では?」
「…余り大きな声では言えませんが、腕輪に欠陥が見つかってしまったのです。」
横から明智先生が答える。
「一定の点数以上になったら、腕輪が暴走してつけている生徒に被害が出る可能性があるんだよ。」
「例えば、どの様な事が…」
「服がいきなり破けたりします。」
それは大変だ。女子が使ったら大惨事じゃないか…
「でも、俺や吉継、姫路は点数がかなり高い部類だと思ってますが…」
「優勝し、腕輪を受け取ったら学園長室に持ってきて下さい。観客の前で使う訳ではありませんし。」
それならAクラスに依頼しなかった理由がますます分からない…だが、無闇に聞けないし、考えるのは止めた方が良いか。
でも、腕輪を無事回収できて、学園長に貸しができたら後々良いことがあるかもな。
「分かりました、引き受けましょう。ただし、お願いしたいことがあります。」
「ほう、何だい?」
「同じクラスの吉井明久、坂本雄二をこの依頼に参加させて良いでしょうか?」
俺達だけでは心配だ。同じクラスのあいつらなら信頼できるしいいところまで勝ち進めるだろう。
「うーん…まあ良いよ。事情はアンタ達が説明しな。」
「ありがとうございます。それと、俺から幾つか宜しいでしょうか?」
高虎?何かおかしい所があったのだろうか…
「良いよ、言ってみな。」
「此度の依頼、他の者にもしているのでは?」
先程俺が思った事だ。俺達だけに頼む様な事はしないと思ったのだろう。
「・・・明智先生、代わりに言ってくれるかい?アタシからはあまり言いたくない。」
「はい・・・二人とも、中々に鋭いですね。Aクラスの木下さんや霧島さんにも同様の依頼をしています。」高虎と俺の予想が的中したか・・・
あの二人はいつの間にが学園長と接触を・・・?
「話の始まりはAクラスの木下さんと久保君がここに来たところからです。『劣悪な環境で体調が悪くなった人がいる。改善して下さい。』と。」
「教室の改修をする代わりに召喚大会で優勝し、腕輪を回収しろと言った訳ですね。」
「勝手に理解してくれて助かるよ。」
「教室の改修くらいしてやっても良いのでは・・・」
高虎が疑問を投げ掛けた。体調を悪くする程の酷さなら、多少の改善はやむを得ないとは俺も思うがな。「その時に出した改善案に、きちんとした机と書いていて、さすがにそれはできないと学園長が断り、先程学園長が言っていた依頼が達成出来たら考える、と言うところでAクラスが了承した、と言う事です。」
そりゃ無理だろうな。仕方ない。せめて脚の折れてない卓袱台とかだったら良かったのにな。
「それと、俺達がこの依頼を達成したときの報酬はどうなるんでしょうか。それがなければ依頼は引き受けかねます。」
すっかり忘れてたな…タダで学園長に利用されるところだった。
「そうだねえ…一度、可能な限りアンタ達個人のお願いを聞いてやろうじゃないか。あ、アンタ達の中には勿論吉井と坂本が入ってるよ。」
「…どう見る、吉継。」
「損な取引ではないと思うぞ。何か困ったことがあったら頼ることができる。」
「…分かりました、引き受けましょう。」
「そうかい、なら頼んだよ。」
「それでは、準備が残っているので教室に戻ります。」
「はい。お手数をおかけしました。」
学園長室を出る。戻ったらとりあえず雄二と明久にこれを知らせねばならんな。
「吉継、急ぐぞ。雄二から早く戻ってこいと連絡があった。」
「分かった。」
~移動中~
「おお、二人とも戻ってきたな。何の話だったんだ?」
「実はな…」
~説明中~
「…と言うことだ。お前や明久にも大会に出て欲しい。」
「成る程、事情は分かった。ババアに貸しを作れるのは大きいし、喜んで大会に出よう。…にしても、Aクラスも関わってるとはな…」
「あいつらとお前や明久がぶつかっても勝ち目はない。後日、トーナメント表をいじって貰うように俺と高虎で掛け合ってみよう。」
「とにかくこの話は後だ。今は模擬店の準備をしないとな。戻るぞ、吉継。」
高虎に手を引かれつつ、俺は厨房班がいる一角に戻った。